上り勾配のゴール地点が設定されたツール・ド・フランス第11ステージは、本来上りスプリントを得意とするトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)らを打ち破ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が優勝。カヴはステージ4勝目を飾るとともにマイヨヴェール奪回に成功した。

ハイスピードな展開にフミのアタックは成功せず

15km地点で一旦ストップしたレース15km地点で一旦ストップしたレース photo:Cor Vosちょうどツール折り返し地点の第11ステージは、フランス中部、なだらかな丘陵地帯が続くヴァタンからサン・ファルジョーまでの192kmで行なわれた。4級山岳が2つあるだけで、残りは小さなアップダウンが続くのみ。スプリンター向きのこのコースで、別府史之(日本、スキル・シマノ)がファーストアタックを決めた。

追い風の中、集団から飛び出したフミにはヘイデン・ロールストン(ニュージーランド、サーヴェロ)が合流。しかしメイン集団はこの飛び出しを許さず、6kmほどを逃げた後、フミらはメイン集団に吸収されてしまう。

田園風景の中を走るメイン集団田園風景の中を走るメイン集団 photo:Makoto Ayanoこの日は序盤から落車やトラブルが続き、コース上に障害物があるとして15km地点でレースは一旦中断。落車にはクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)やウラディミール・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)らが巻き込まれた。

落車最大の被害者はケースデパーニュで、24km地点で発生した落車には、ホセホアキン・ロハス(スペイン)やルイ・コスタ(ポルトガル)、ダビ・アローヨ(スペイン)、ルイス・パサモンテス(スペイン)、ホセイバン・グティエレス(スペイン)ら5名が一度に巻き込まれた。

協力して逃げるマルチン・サパ(ポーランド、ランプレ)とヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、サイレンス・ロット)協力して逃げるマルチン・サパ(ポーランド、ランプレ)とヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:Makoto Ayanoこの5名は全員再スタートを切って完走したが、コスタは鎖骨骨折の可能性が高く、チームはコスタの第12ステージDNSを発表している。

ハイスピードで進行するメイン集団から、25km地点で飛び出したのはヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、サイレンス・ロット)とマルチン・サパ(ポーランド、ランプレ)の2人。タイム差は45km地点で4分45秒まで広がった。

駆け抜けるメイン集団駆け抜けるメイン集団 photo:Makoto Ayano最初の1時間の平均スピードは、追い風も影響してこれまでのステージ最速の49.3km/hを記録。以降、時間を追うごとに42.0km/h、40.8km/hとペースダウン。メイン集団はアージェードゥーゼルとチームコロンビア・HTCがコントロールし、タイム差を常に4分以内に抑え込んだ。

逃げが少数の2人のため、スプリントポイントを集団先頭で通過すれば2ポイントを獲得出来る。しかしこの日、マイヨヴェールを着るフースホフトは動かなかった。動けば3つのスプリントポイントで計6ポイントを加算出来たにもかかわらず、フースホフトは興味を示さなかった。

4級山岳では、山岳賞ランキング3位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)が集団先頭でポイントを狙う動きを見せ、マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)狙いを表明。エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)が序盤の4級山岳でポイントを加算したため、両者のポイント差は23ポイントで変わらず。

上りスプリントで飛び立ったカヴ

メイン集団をコントロールするチームコロンビア・HTCメイン集団をコントロールするチームコロンビア・HTC photo:Cor Vosチームコロンビア・HTC、ガーミン、ラボバンクの3チームが積極的に集団のペースを上げると、タイム差は残り50kmで2分、残り30kmで1分30秒、残り15kmで30秒と縮小。粘り強く逃げた2人も、残り5km地点で吸収された。サパが最後まで粘ったが、この日の敢闘賞はファンスーメレンが受賞している。

隊列を組むチームコロンビア・HTCにはミルラムが対抗したが、人数を揃えてハイスピードで引くコロンビアトレインは打ち崩せず。

上りスプリントで先頭に立つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)上りスプリントで先頭に立つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Makoto Ayanoフラムルージュ(残り1kmアーチ)通過後もトニ・マルティン(ドイツ)とジョージ・ヒンカピー(アメリカ)が順に先頭を引き、上り勾配が始まるとカヴェンディッシュの最終発射台マーク・レンショー(オーストラリア)が先頭へ。

ファラーを下したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)ファラーを下したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos上り勾配のためスプリント開始を待つカヴェンディッシュに対し、上りスプリントを得意とするフースホフトがラスト200mで先に仕掛けた。しかしこれに反応したカヴェンディッシュが鋭い加速でフースホフトを置き去りにし、追撃したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)を振り切って先頭へ。

勢いあるスプリントは最後まで伸び続け、カヴェンディッシュが先頭で笑顔のガッツポーズ。早めに勝負に出たフースホフトが5位に沈んだため、ステージ連勝&4勝目を飾ったカヴェンディッシュがマイヨヴェールまで手に入れた。

レンショーと喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)レンショーと喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vosこの日もコロンビアトレインは完璧に機能し、カヴェンディッシュが完璧なスプリントで勝利を飾った。昨年4勝を飾ったカヴェンディッシュはこれが通算8勝目で、1975年にバリー・ホーバンが記録した通算8勝のイギリス人最高記録に並んだ。ホーバンは8年間で8勝を飾ったのに対し、カヴェンディッシュはたったの2年間で8勝。更に勝利数を伸ばす可能性大だ。

日本人選手2人は、ハイスピードな展開に持ち込まれたレース終盤にもずっと集団前方をキープし、は別府が27位、新城幸也(Bboxブイグテレコム)が32位でゴールしている。Bboxブイグテレコムはウィリアム・ボネ(フランス)の9位、スキル・シマノファンケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ)の15位が最高位だった。


ツール・ド・フランス2009第11ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h17'55"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
4位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
5位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
6位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
7位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
8位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
9位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
10位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、カチューシャ)
27位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
32位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)43h28'59"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+39"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
7位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
9位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
144位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h17'56"
154位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h23'04"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)176pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)169pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)110pts
31位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
57位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)79pts
2位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)59pts
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)56pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)43h29'59"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"

チーム総合成績
1位 アージェードゥーゼル 128h53'09"
2位 アスタナ +03"
3位 チームコロンビア・HTC +4'45"

第11ステージ敢闘賞
ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、サイレンス・ロット)