追いすがるライバルを完全に黙らせるマイヨジョーヌの激走。大歓声に包まれた「魔の山」モンヴァントゥーでクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)の登坂力が炸裂した。フルームは4分以上のリードを得て大会2回目の休息日を迎える。

ツール・ド・フランス2013第15ステージ・高低図ツール・ド・フランス2013第15ステージ・高低図 image:A.S.O.242.5kmのコースの先に「プロヴァンスの巨人」モンヴァントゥーが待つ。プロヴァンスを見下ろす標高1912mの禿げ山で、マイヨジョーヌ争いがヒートアップ。登坂距離20.8km・平均勾配7.5%の超級山岳が2週目のクライマックスだ。

レース序盤のアタック合戦によって縦に長く伸びるプロトンレース序盤のアタック合戦によって縦に長く伸びるプロトン photo:A.S.O.今大会最長コースでファーストアタックを仕掛けたのは、世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)。レース序盤に連続して登場する3つの4級山岳で激しいアタックが繰り返された結果、レース開始2時間の平均スピードは49.3km/hをマークする。

逃げグループに入ったマイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)逃げグループに入ったマイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:A.S.O.アタック合戦をくぐり抜けたのは9名。マイヨヴェールを着るペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)が先行した。

追走するピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)とマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)追走するピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)とマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム) photo:A.S.O.フランス革命記念日だけに、ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ.fr)やクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)も逃げに乗る。マイヨアポワを着るピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)は懸命に追走を試みたが、あと一歩届かずにメイン集団に引き戻された。

メイン集団を最も積極的にコントロールしたのはモビスター。前々日の第13ステージで総合成績を落としたスペインチームの集団コントロールによって、逃げグループのタイム差は4分以内に抑え込まれた。

208km地点のスプリントポイントは当然のようにマイヨヴェールのサガンが先頭。20ポイントを獲得したサガンはポイント賞リードを広げることに成功している。

やがてモンヴァントゥーの麓が近づくと、スカイプロサイクリングが代わってメイン集団のペースアップを開始する。

先頭ではゴールまで25kmを残してシャヴァネルが独走を開始。フランスの期待を一身に背負って、シャヴァネルはメイン集団から1分45秒リードで超級山岳モンヴァントゥーに差し掛かった。

ひまわり畑を南下するプロトンひまわり畑を南下するプロトン photo:A.S.O.
選手たちを待ち構える禿げ山モンヴァントゥー選手たちを待ち構える禿げ山モンヴァントゥー photo:A.S.O.本格的な登りが始まるとまずはメイン集団からヤン・バケランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード)とミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)がアタック。2人は軽々とシャヴァネルを追い抜いて先頭に立つ。

クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)に食らいつくナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)に食らいつくナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) photo:A.S.O.すると頂上まで13kmを残して新人賞2位のナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)がアタック。クインターナはそのまま先頭ニエベと合流し、30秒リードでラスト10kmアーチを潜った。

クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)がナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)を引き離すクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)がナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)を引き離す photo:A.S.O.ピーター・ケノー(イギリス、スカイプロサイクリング)からバトンを引き継いだリッチー・ポルト(オーストラリア、スカイプロサイクリング)のペースが、メイン集団を破壊する。新人賞2位のクインターナが残り8kmから独走に持ち込む中、新人賞3位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が集団から遅れ、続いてマイヨブランのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)も脱落した。

独走でモンヴァントゥーを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)独走でモンヴァントゥーを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.樹々に覆われた区間を抜け、岩肌がむき出しになった荒涼とした区間に差し掛かると、メイン集団はポルト、フルーム、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)の3名に絞られる。残り7kmでポルトの牽引が終了。するとフルームが強烈なアタックを仕掛けた。

食らいつくコンタドールをハイケイデンスのシッティングで振り切ったフルームは、先頭クインターナをキャッチ。観客に覆われた禿げ山を、フルームとクインターナが高速で駆け上がる。後方ではニエベとコンタドールがジョインし、風の強い登りに挑んだ。

何度かアタックを仕掛けたフルームに反応するクインターナ。しかしラスト1300mでのマイヨジョーヌの加速に、ついにクインターナが千切れる。「ステージ優勝が見えていたけど、力が足りなかった。全力を尽くしたものの、長くて速いステージも影響し、疲れきっていた」と語るクインターナがスピードを失った。

コンタドールを引き離し、クインターナを振り切ったフルームがモンヴァントゥー頂上に向けて猛進。最終的にクインターナを29秒、そしてコンタドールを抜いたニエベとホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を1分23秒引き離してゴール。歓喜のガッツポーズが決まった。

「総合リードを広げることが出来ればいいと思っていたけど、100回大会の歴史的なこの登りで勝つことが出来るとは予想していなかった。110%の力でアシストしてくれたチームメイトの走りがモチベーションになったよ」と語るフルームが今大会2勝目。ライバルを圧倒する王者の走りで、総合リードを揺るぎないものにしている。コンタドールが第13ステージで奪ったタイム差をいとも簡単に挽回した。
先頭でゴールに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)先頭でゴールに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.

総合リードを広げたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)総合リードを広げたクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:A.S.O.1分46秒遅れでゴールしたバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)と1分40秒遅れでゴールしたコンタドールは、それぞれ総合2位と総合3位をキープ。ステージ2位のクインターナはマイヨブランに返り咲くとともに、総合6位にジャンプアップを果たしている。

新城幸也(ユーロップカー)は30分23秒遅れの142位でフィニッシュ。この日、181名の選手たちが全員タイムリミット内でモンヴァントゥーの頂上にゴールした。翌日は大会2回目の休息日。選手たちは3週目のアルプス決戦に向けて英気を養う。

選手コメントはレース公式サイトならびにチーム公式サイトより。

ツール・ド・フランス2013第15ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)         5h48'45"
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)               +29"
3位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                +1'23"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)           +1'40"
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +1'43"
8位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)           +1'46"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)        +1'53"
10位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)       +2'08"
142位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                   +30'23"

敢闘賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)

個人総合成績 マイヨジョーヌ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)         61h11'43"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)           +4'14"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)         +4'25"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)           +4'28"
5位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)        +4'54"
6位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)              +5'47"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +6'22"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +7'11"
9位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)        +7'47"
10位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ+7'58"

ポイント賞 マイヨヴェール
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)       377pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)  278Pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)              223pts

山岳賞 マイヨブランアポワルージュ
1位 クリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング             83pts
2位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)               66pts
3位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                 53pts

新人賞 マイヨブラン
1位 ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)             61h17'30"
2位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)+2'11"
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)         +6'45"

チーム総合成績
1位 サクソ・ティンコフ                          183h01'46"
2位 ベルキンプロサイクリング                         +3'36"
3位 アージェードゥーゼル                           +8'03"

text:Kei Tsuji
photo:A.S.O., Cor Vos, Makoto Ayano

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