歴史、格式、ライダー、メディア、オーガナイズ…これらすべてにおいてロードレースの頂点にあるツール・ド・フランスが今年も始まる。ロードサイクリングウェアの頂点を目指すRaphaが、この世界最高峰のレースに対して敬意を払わないはずがない。ツールの積もり積もった物語に刺激され生み出されたプロダクトを紹介しよう。

3つのストーリーから見る、Raphaのツール・ド・フランス。



STORY 1. COLOMBIA コロンビア

今年2012年で99回目を数えるツールは、20世紀の始めに産声を上げた。文字通りのフランス一周だったレースは、印刷技術や電信技術の発達とともに、フランスから西欧のイベントへと成長を遂げた。選手がフランスを一周する間、その写真や記事はヨーロッパを一周していたというわけだ。

やがて情報は世界中を駆け巡るようになった。しかし堅牢にして保守的なヨーロッパのプロサイクリング文化の中で、非西欧人が活躍の糸口を掴むには長い時間を要した。似て非なる、あるいはまったく体系の異なるヨーロッパの言語が入り乱れるプロトンへ分け入った先駆者たちには、初めてツールで区間優勝したアメリカ人グレッグ・レモンの名が挙げられるよう。だが彼がツールに足跡を残したのは1985年、たった四半世紀ほど前のことである。

カフェ・デ・コロンビアのエースだったルイス・エレラカフェ・デ・コロンビアのエースだったルイス・エレラ (c)Cor Vos山岳にあってはベルナール・イノーにひけをとらないばかりか制すことも多々あった山岳にあってはベルナール・イノーにひけをとらないばかりか制すことも多々あった (c)Cor Vos

その1980年代にやはり「エトランジェ」としてツールを席巻した外国人たちがいた。1983年にツールが「オープン化」したことで、世界屈指のクライマーがツールに登場する事になる。西欧が未だ知らぬ、新大陸は高地の国コロンビアが生んだクライマーたちである。

1984年、ラルプデュエズ。ツールの代名詞とも言えるこの伝統の峠を先頭で登ってきたのは、フランスの人気を二分したベルナール・イノーでもローラン・フィニョンでもなく小柄なコロンビア人、ルイス・エレラであった。ツールに走った衝撃は、その翌年、初のコロンビアのプロチームであるカフェ・デ・コロンビアの結成と区間3勝という形に結実する。この年の第12ステージのファビオ・パッラとエレラのワンツーフィニッシュは、コロンビア自転車競技の歴史における揺るぎない金字塔である。

コロンビアの威信を背負いツールに鮮烈な足跡を残したルイス・ヘレラコロンビアの威信を背負いツールに鮮烈な足跡を残したルイス・ヘレラ (c)Cor Vosルイス・エレラが初めてコロンビアにもたらしたツールのステージ優勝はラルプデュエズだったルイス・エレラが初めてコロンビアにもたらしたツールのステージ優勝はラルプデュエズだった (c)Cor Vos

Raphaは今年、このコロンビア人のツールに注目。ツールのグローバル化の先鞭をつけた「カフェ・デ・コロンビア」チームへのオマージュとして軽量な夏用ジャージSuper Lightweight Jerseyをコロンビアバージョンで限定リリースする。

コロンビアのネイションカラーでありチームのモチーフカラーであった黄・青・赤を取り入れ、コロンビア人たちの小柄ながらたくましい登坂スタイルを称した「エスカラバホ」(甲虫)をそのままデザインに落とし込んだ。ジャージの性能は東南アジアでの暑熱の元でテストされており折り紙付き。ツールの7月、日本の酷暑を走るのに最適な一枚だ。

Colombian Super-Lightweight JerseyColombian Super-Lightweight Jersey Colombian Super-Lightweight JerseyColombian Super-Lightweight Jersey

コロンビアのナショナルカラーワッペンがあしらわれるコロンビアのナショナルカラーワッペンがあしらわれる エスカバホ(甲虫)のモチーフが右肩にあしらわれるエスカバホ(甲虫)のモチーフが右肩にあしらわれる

コロンビアの血統は脈々と受け継がれ、今年はリゴベルト・ウラン(チームスカイ)がジロ・ディタリアで新人賞を獲得する活躍を見せた。コロンビア期待の星であるウランは若干25歳ながら自身の名を冠したサイクリングクラブを運営。コロンビアの子どもたちに自転車に乗る機会とレースの場を提供している。

ちなみにColombian Super-Lightweight Jerseyの売り上げから一枚につき5ドルが同クラブに寄付される。2007年のマウリシオ・ソレール以来、ツールではコロンビア人の目立った活躍が途切れているが、また時期はやってくるだろう。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Colombian Super-Lightweight Jersey”

2012ジロで新人賞を獲得したリゴベルト・ウラン(チームチームスカイ)は若くして母国の自転車文化の発展に心を砕いている2012ジロで新人賞を獲得したリゴベルト・ウラン(チームチームスカイ)は若くして母国の自転車文化の発展に心を砕いている photo:Kei Tsuji



STORY 2. Circle of Death サークル・オブ・デス

ツールの勝負所として不可欠なピレネー山脈。難易度の高い数々の峠を擁する山脈にあって、悪名高き4つの峠をつなぐルートは“Circle of Death”と呼ばれて畏怖の対象になっている。その峠とはオービスク、アスパン、ペイルスルド、そして伝説のツールマレ。

今年のツール・ド・フランス第16ステージのコースプロファイルを見る者は、この全ての峠が含まれていることに気づくだろう。紛れもないクイーンステージ。この“Circle of Death”でツールの大勢が決定することは想像に難くない。

ツールマレ峠はツールの伝統であり、伝説の舞台ともなるツールマレ峠はツールの伝統であり、伝説の舞台ともなる (c)Cor Vos1950年代、砂利道のオービスク峠1950年代、砂利道のオービスク峠 (c)Cor Vos

この“Circle of Death”へのRaphaによる独自の視点は、ピレネーが初めてツールに取り入れられた100年前をみつめている。当時ほとんど未舗装路だったピレネー山脈を越えることは常軌を逸しており、オクターブ・ラピーズがいみじくも発言しているように殺人的な厳しさがあったことは間違いない。「ツールの主催さんたちよ、あんた方は人殺しだ!」

この登りの険しさに加えて、ライダーたちを脅かしたもの。それはそこに生息する野生動物、熊や猛禽類たち。今日では熊の姿をピレネー見ることは少なくなったものの、猛禽たちは今も谷と頂きの間を獲物を探し空を旋回している。ハゲワシやヒゲワシこそがこの地域の生態系の頂点なのだ。

初めてツールマレ峠を越えたオクターヴ・ラピーズを記念するモニュメント初めてツールマレ峠を越えたオクターヴ・ラピーズを記念するモニュメント (c)Cor Vosピレネーの峻厳な峠道がツールには不可欠だピレネーの峻厳な峠道がツールには不可欠だ (c)Cor Vos

ピレネーの生物の中で最も知的だと言われるヒゲワシは、獲物である生物の死体を見つけてもすぐさま飛びつくようなことはしない。彼らの時間が来るまでじっと待つのだ。他の猛禽類があらかた獲物を食べきり飛去っていった後、彼らは残された骨を集め、そして空高く飛翔したのちに地上へと落とす。「ボーンブレイカー」として知られるヒゲワシの真骨頂、彼らは砕けた骨からタンパク質に富んだ骨髄をたっぷりと楽しむ。

ピレネーの怪物的な峠へと挑む恐れ知らずのライダーたちも、頭上を周回する彼ら猛禽類を見ると、なんとも不吉な気持ちになるかもしれない。あたかも自分が獲物になってしまったかのような、そんな気持ちに。

Rapha Circle of Death JerseyRapha Circle of Death Jersey
襟には4つの峠の名前と標高が刺繍される襟には4つの峠の名前と標高が刺繍される ピレネーの4つの峠を祝うCircle of Death Jerseyピレネーの4つの峠を祝うCircle of Death Jersey

“Circle of Death”ジャージの背中には2つのポケットを装備。クラシカルなボタン式ながら、このボタンはヒゲワシの眼をモチーフにしたデザインでジャージのテーマを表現。襟には“Circle of Death”の4つの峠の名前と標高が刺繍され、襟の内側にはヒゲワシの羽根からインスパイアされたフェザーのプリント。上質なメリノ素材で吸湿速乾と着心地の良さを両立した、汎用性の高いジャージに仕上がっている。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Circle of Death Jersey”




チャレンジ! Rapha Rising:サークル・オブ・デス

この“Circle of Death”にちなんだ、Raphaからサイクリストへの挑戦状。4つの峠の総標高6881mを、ツールがピレネーを走る7月15日〜22日の間に登ることはできるのか?

達成者にはもれなく記念ワッペンと、限定バージョンのトレック・マドン6.9へのエントリーが自動的になされる。GPSを使用するサイクリングソーシャルサイトSTRAVAに登録するだけで参加が可能だ。
誰でもチャレンジできるこのRapha Risingの詳細は、公式サイトを参照。サイクリストのスピリットは、ツールを走る選手たちとともにある。



STORY 3. L'Etape du Tour Acte I & II

R.M.Oのライトグリーンジャージを纏うティエリー・クラヴェローラ。スリムな体形、クレバーな走り。彼は典型的なヒルクライマーだったR.M.Oのライトグリーンジャージを纏うティエリー・クラヴェローラ。スリムな体形、クレバーな走り。彼は典型的なヒルクライマーだった (c)Cor VosRapha Risingはツールのプロトンとピレネーを登るスピリットを共有するチャレンジだが、我々にはより実際的にツールを走るチャンスがある。プロ選手たちと一緒に、というわけにはいかないがアルプス&ピレネーのツール屈指のステージをそのまま走れる市民参加型スポルティーブイベント、エタップ・デュ・ツール(通称エタップ)を忘れるわけにはいかない。

この世界最高峰(という表現はなんら差し支えないだろう)の市民スポルティーブをRaphaは放っておかない。ツールの主催組織A.S.O.(アモリー・スポール・オリガニザシオン)とのコラボレーションにより、昨年はエタップの公式ジャージをデザイン。イベント当日に着ることのできるサマージャージを発表した。

そしてエタップが数日先まで迫った今年もエタップのオフィシャルジャージが新着。今年はかつてツールの山岳で輝きを放ったイギリスとフランス、2人のヒルクライマーにスポットライトを当てている。

7月8日に開催されるエタップ・デュ・ツール Acte Ⅰ はツール第11ステージ、アルベールヴィル〜ラ・トシュイールが舞台。この152kmのルートが通過するイゼール県は、1990年のツールで熱狂に包まれた。この県出身のティエリー・クラヴェローラが山岳で区間1勝、そして山岳賞に輝いたからだ。イゼールの英雄となったクラヴェローラは翌年も山岳で区間優勝を遂げたが、引退後、不幸な事故に端を発し1999年にその生涯を閉じている。求道的なヒルクライマーの典型であった彼は、クライマーに共通する繊細な心の持ち主であったのだ。

Etape Acte I JerseyEtape Acte I Jersey エタップActe Ⅰの日程と行程がプリントされるエタップActe Ⅰの日程と行程がプリントされる

Etape Acte I Jerseyはこのクラヴェローラへ捧げるジャージ。彼が当時所属したR.M.Oチームのライトグリーンカラーをモチーフに、背中にはイゼール県の紋章をプリント。Rapha得意のスポーツウールを使用せず、求めやすい価格でイベントを楽しむことができる。シンプルなデザインは往年のファンも、ロードレースに興味を持ち始めた若者にも訴えるものがあるだろう。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Etape Acte I Jersey”

7月14日に開催されるエタップ・デュ・ツール Acte Ⅱ は今年のツールのクイーンステージとなる第16ステージ、ポー〜ルション間の201kmを走る。ピレネーの凶悪な4つの峠オービスク、ツールマレ、アスパン、ペイルスルドを越えるルート。このルートについてはSTORY 2. Circle of Deathに詳しい。

英国に初のツール区間優勝と山岳賞ジャージをもたらしたロバート・ミラー英国に初のツール区間優勝と山岳賞ジャージをもたらしたロバート・ミラー (c)Cor Vosプジョーチームのジャージをまとうロバート・ミラープジョーチームのジャージをまとうロバート・ミラー (c)Cor Vos

1983年ツール、やはりポーをスタートしルションへゴールする山岳ステージで一人のイギリス人が、祖国で初となるステージ優勝をもたらした。その風貌とタフな登坂力から「山ヤギ」と渾名されたロバート・ミラーその人だ。そして彼はその翌年には、やはりイギリス初となる山岳賞ジャージを獲得することになる。この年の総合4位は今もなおイギリス史上最高の成績である(今年はブラッド・ウィギンズがその記録を更新するとほとんどの英国人は信じている)。

Etape Acte Ⅱ JerseyEtape Acte Ⅱ Jersey エタップActe Ⅱの日程と行程がプリントされるエタップActe Ⅱの日程と行程がプリントされる

この偉大なイギリス人クライマーを讃えるEtape Acte Ⅱ Jerseyは、当時彼が所属していたプジョーのチームカラーをアレンジ。モノトーンのチェッカボード模様に、慎ましげなイエローが差し色に加わった上品な一枚。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Etape Acte Ⅱ Jersey”



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Great Road Climbs of the Northern AlpsGreat Road Climbs of the Northern Alps
物語は何も、言葉だけに限らない。言葉にならない山岳への畏怖を表現する媒体として、優れた写真のもつ力は非常に強い。Raphaからはこの夏、北アルプスの写真集「Great Road Climbs of the Northern Alps」をリリース。これまでに出版した南アルプスとピレネーに続く、3冊目となるハードカバーの上質な写真集。ラルプデュエズ、ガリヴィエ、マドレーヌなどツールでお馴染みの峠道から、コアなファンが知る高難度の峠などをフィーチャー。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Great Road Climbs of the Northern Alps”

Le Tour AlbumLe Tour Album
五感を使うサイクリストが、目でだけツール・ド・フランスを楽しむことはありえない。耳から味わうツール・ド・フランス。「Le Tour Album」はフランス往年の名歌手から近年のハウス・ミュージックまでを取り入れたコンピレーションアルバム。この夏のサウンドトラックに。

■Raphaの製品紹介ページへ → “Le Tour Album”



※Raphaのアイテムは 特約ショップおよび公式サイトにて購入可能だ。価格はドル表示だが、円高の昨今買い物に関しての敷居は下がっていると言えるだろう。ウェブで購入するとサイズが不安な向きもあるだろうが、サイズの交換や落車による破れの修理などは完全無料で行なっている。カスタマーサービスを充実させることで、ネットショッピングの弱点をカバーしているのだ。

また、現在は大阪北区にRapha Cycle Club Osakaをオープンしており(7月22日まで)、ほぼ全てのRapha製品を直接試着・購入できるだけでなく、オリジナルメニューの充実したカフェや、ツールをLIVEで(夜中まで!)観戦できるラウンジなどサイクリングを愛する人なら誰でも歓迎してくれる。訪れる価値のある「サイクリングの総合空間」だ。