CONTENTS

ロードUSTチューブレスホイール第1弾 キシリウム PRO & ELITE UST

マヴィック KSYRIUM PRO USTマヴィック KSYRIUM PRO UST
チューブレスタイヤは転がり抵抗の低減や、インナーチューブを使用しない事による耐パンク性能の向上と軽量化など、今までのロードバイク用タイヤよりも根本的な高性能化が図れることで注目を受けるタイヤ規格だ。しかし登場から今までなかなか普及の道を歩まなかったのは、ひとえに取り扱いの難しさが原因としてあった。それらを排除したのがマヴィックが満を持して打ち出すロードUSTチューブレスシステムである。

詳しいテクノロジーはvol.1で紹介した通りであるが、要点を掻い摘んで説明するならば、リムとタイヤの製造精度を上げることで、タイヤを装着しやすく、ビードが上がりやすいトラブルレスなチューブレスシステムを完成させたということ。これにより今までのチューブレスとは一線を画す高品質なホイールタイヤシステムが誕生した。

マヴィック KSYRIUM ELITE USTマヴィック KSYRIUM ELITE UST
マヴィックはロードUSTを同社の誇るホイールラインアップのほぼ全てに順次採用し発売する予定だが、その第1弾として登場したのが定番中の定番であるアルミホイール、KSYRIUM PRO USTとKSYRIUM ELITE USTだ。

KSYRIUM PRO USTとKSYRIUM ELITE USTで共通するのがリムである。マヴィックの誇る切削加工技術ISM4Dが施されたリムは、剛性が必要な部分を除いて贅肉を削ぎ落とすように切削することで、剛性を維持しつつも軽量に仕上げる同社渾身の一作だ。リムサイズは内径17mmと前作より2mm広げることにより現在主流となってきた太さ25mmのタイヤに最適化。もちろんリムの断面形状はロードUSTチューブレスに最適化された構造と完璧な精度を誇っている。

リムは剛性が必要な所以外の全てを切削するISM4D加工により剛性と軽量性を両立リムは剛性が必要な所以外の全てを切削するISM4D加工により剛性と軽量性を両立 リムとニップルにネジを切るFOREテクノロジーはチューブレス化に大きく貢献リムとニップルにネジを切るFOREテクノロジーはチューブレス化に大きく貢献

また今回のチューブレス化に際して効果を発揮したのが、KSYRIUMを中心にマヴィックのアルミホイールに広く採用されているFORE(フォー)テクノロジーだ。1999年に登場したこの技術は、スポークとニップルにネジを切る一般的な方式とは違い、リムとニップルにネジを切ることで、リム外周に開ける穴を不要とする構造。このFOREテクノロジーによりKSYRIUMはもともとリムテープの要らない滑らかなリム外周面を獲得していたが、これがチューブレス化に必要不可欠な気密性の高い構造をもたらすこととなった。

KSYRIUM PRO USTのスポークにはキシリウムシリーズの特徴とも言うべき7075アルミ系合金のZICRAL(ジクラル)スポークを採用。太く扁平した形状で空力性能、剛性、軽量性という3点を高次元で両立しているのが特徴だ。なおKSYRIUM ELITE USTにはステンレス製エアロスポークが採用され、太さに関してはKSYRIUM PRO USTのものに比べ KSYRIUM ELITE USTのスポークは少し細い。

ペイントが出来るほど面の広いZICRALスポークはKSYRIUMのアイデンティティの1つだろうペイントが出来るほど面の広いZICRALスポークはKSYRIUMのアイデンティティの1つだろう KSYRIUM ELITE USTのフロントハブはKSYRIUM PRO USTに比べると少し太いKSYRIUM ELITE USTのフロントハブはKSYRIUM PRO USTに比べると少し太い

最新のInstant Drive 360を搭載したリアハブ最新のInstant Drive 360を搭載したリアハブ フリーは取り外しが容易な構造となっているためメンテナンス性は高いフリーは取り外しが容易な構造となっているためメンテナンス性は高い

接続されるハブは最新のInstant Drive 360を搭載。ラチェット2枚が面同士で噛み合わさることでパワー伝達性高める算段だ。また、スプロケットを装着したままフリーが外せるなど、整備性にも優れているのも特徴だろう。なおハブもグレードにより形状が異なる差別化が図られる。

リアは駆動側がラジアル、反駆動側がクロス組となるISOPULSE(イソパルス)組みを引き続き採用する。またチューブレスはクリンチャーに比べ空気圧の上昇によるスポークテンションのズレが15%ほど高いため、事前に高めのテンションで組まれるのも特徴だ。

KSYRIUM UST スペック

マヴィック KSYRIUM PRO UST

タイヤタイプロードチューブレス
リムアルミISM4D
スポークZICRALスポーク
重量1,420g(前後ペア)
付属タイヤマヴィック YKSION PRO UST
タイヤサイズ700x25C
税別価格フロント 60,000円、リア 70,000円、ペア130,000円

マヴィック KSYRIUM ELITE UST

タイヤタイプロードチューブレス
リムアルミISM4D
スポークZICRALスポーク
重量1,490g(前後ペア)
付属タイヤマヴィック YKSION PRO UST
タイヤサイズ700x25C
税別価格フロント 40,000円、リア 45,000円、ペア85,000円


今回は元全日本ロードチャンピオンであり、ブエルタ・ア・エスパーニャへの出場経験もある土井雪広選手(マトリックスパワータグ)とホビーレーサーの甲子園とも言われるツール・ド・おきなわでの優勝やUCIグランフォンド世界選手権出場など輝かしい経歴を持つ西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)にKSYRIUM PRO USTとKSYRIUM ELITE USTをテストしてもらった。普段からマヴィックのホイールを使うプロレーサーと市民レーサーの雄ふたりは、USTチューブレスホイールをどのように体感したのだろうか?

ホイールインプレッション

「空気圧を変更することによって別のタイヤを履いているような感覚になる」

土井:僕はチューブレスタイヤを使うこと自体が初めてになるのですが、このロードUSTチューブレスは非常にしなやかな乗り心地なのに、タイヤ自体の剛性は高いという印象を受けました。空気圧を変更することによって、設定した空気圧ごとに別のタイヤを履いているかのような感覚になるほどタイヤの柔軟性が高いです。素晴らしい乗り心地と性能です。

普通のクリンチャータイヤでこのような乗り味を出すためには、サイドウォールとタイヤトレッドを別々のコンパウンドや素材にする必要があると思います。サイドウォール部分は硬いケーシングや素材を使用して剛性を上げ、トレッド部には柔らかいコンパウンドを配置することなどで、剛性がしっかりあるが、しなやかで快適性の高い乗り心地を作り出します。しかし、このタイヤは外見からは素材を切替えているようには見えません。これもチューブレスならではの特性だと感じます。

「非常にしなやかな乗り心地なのにタイヤ自体の剛性は高い」「非常にしなやかな乗り心地なのにタイヤ自体の剛性は高い」
西谷:僕はチューブレスタイヤが出てきた当初に、いくつかのブランドの製品を試したことがあるのですが、どれもタイヤが嵌めづらく、ビードも上がりにくいという扱いづらい印象がありました。ですのでチューブレスタイヤには良いイメージを持ってなく、毛嫌いしていた部分があります。ですが今回マヴィックが打ち出したロードUSTチューブレスは扱いづらさが払拭されており、尚且つ乗り心地にも確実なメリットを感じられました。

「5気圧で走り出すと、今までに味わったことのない弾むような乗り心地が非常に快適」「5気圧で走り出すと、今までに味わったことのない弾むような乗り心地が非常に快適」 最初は空気圧を5気圧にセットして乗り出したのですが、今までに味わったことのないようなボヨンボヨンとした弾むような乗り心地が非常に快適ですね。マヴィックのKSYRIUMというと伝統的に剛性の高い硬い乗り味が特徴的なホイールですが、その特性を消してしまうほど衝撃吸収性や快適性が高いです。昨今のロードバイクは様々な方法でフレームに振動吸収性を持たせる加工を施しているものが多いですが、そのフレーム側の工夫よりも、まずタイヤを見直すことのほうが快適性の向上にとって大切なんだと再確認させられますね。

その上で空気圧を6気圧、7気圧と上げていくと、クリンチャータイヤに近いような硬めのフィーリングに変化していきます。それでも大元にあるしなやかな乗り心地が消えないのが素晴らしいです。気圧によって乗り心地が変化していきますので、ロングライドでは5気圧、レースなら7気圧と空気圧を調整していくと良いと思います。どの空気圧でもそれぞれ良い性能が出ており、空気圧の変化による差がクリンチャータイヤより明確に現れるので楽しいですね。

土井:そう考えると、僕は7気圧が好みですね。5気圧で40km/hほどのスピードを出すともたつくような印象があるので、スピードを求める選手の目線からすると7気圧ぐらいが転がり抵抗も少なくて良いですね。また、空気圧を7気圧にすることでリムが外側から押され、スポークテンションが緩むため、ホイールそのものも僕好みのしなやかな乗り心地を実現してくれると感じます。

どうやらチューブレスタイヤは空気を入れることでリムを外側から押す力が強く作用するようです。そのためこのロードUST用KSYRIUMはスポークテンションを高めに組んであるそうですが、これが低めの空気圧で走ってしまうと、ホイールが硬くリムで走っているように感じます。僕はホイールとタイヤを合わせた全体の剛性感は7気圧の方がしなやかに感じます。

「選手目線からすると7気圧の方が転がり抵抗も少なくて良い」「選手目線からすると7気圧の方が転がり抵抗も少なくて良い」 「ロングライドでは5気圧、レースなら7気圧と空気圧を調整していく楽しみがある」「ロングライドでは5気圧、レースなら7気圧と空気圧を調整していく楽しみがある」

西谷:確かに5気圧でスピードを上げていくとタイヤがよれる感覚はありますね。7気圧だと転がり抵抗も低く、よく進む感じがあります。ですが、5気圧の何ともいえないしなやかな乗り味も確実にメリットを感じます。そのままグラベルライドに行っても楽しいでしょう。ライダーの体重にあわせて空気圧を調整するというよりは、乗り方、コースによって空気圧を調整して使い分けるようにすると良いと思います。

土井:レースを走る場合は7気圧で、シティライドからグランフォンドのようなロングライドでは5気圧と使い分けるのが良いですね。使用できるシーンが幅広いと思います。

「完成度が高かったKSYRIUMにまだ進化する余地があったのかと感心した」

西谷:ホイール自体はグレード順の通り、KSYRIUM ELITE UST、KSYRIUM PRO USTの順に乗り心地も走行性能も良くなっていきますが、値段差はあるのですが、是非KSYRIUM PRO USTをチョイスして欲しいですね。ハブ、スポーク、リム全てが進化していますので、これ1セットで本格的にロードライディングを楽しむことが出来ます。KSYRIUMというとマヴィックの定番ホイールということもあって、前作の時点で非常に高い完成度でしたが、まだ進化する余地があったのか! と感心してしまいます。

「ハブ、スポーク、リム全てが進化していて、まだ進化する余地があったのかと感心する」「ハブ、スポーク、リム全てが進化していて、まだ進化する余地があったのかと感心する」
土井:上位グレードということもあってKSYRIUM PRO USTの方がリムとタイヤの一体感が強いです。また、ロードインフォメ―ションが素早くライダーに伝わるため、コーナリング時に滑った時やリムがたわんだ瞬間などにリカバリーを掛けやすいですね。ちょっとした段差でバランスを崩しても回避しやすいですし、バイクをコントロールしやすくなっています。これならプロのレースにも使用することができますね。

「KSYRIUM PRO USTはリムとタイヤの一体感が強く、滑ったときのリカバリーも掛けやすい」「KSYRIUM PRO USTはリムとタイヤの一体感が強く、滑ったときのリカバリーも掛けやすい」 西谷:対してKSYRIUM ELITE USTはKSYRIUM PRO USTと同じリムを使用していながら、10万円以下というプライスが魅力的ですね。手軽にロードUSTチューブレスを体験したいという方にはおすすめですし、サイクリング目的の使用や日常的なハードユース目的であれば十分な性能を有しています。カラーも3色用意されているため、自分の愛車に合わせたコーディネイトができるのもポイントです。

土井:決戦用のカーボンホイールをすでに持っていて、練習用としてチューブレスを使用したいという人にもKSYRIUM ELITE USTは価格的に最適でしょう。正直思った以上にロードUSTチューブレスは良かったので、是非使ってみてほしいですね。

西谷:正直このロードUSTチューブレスをインプレッションするにあたり、クリンチャーやチューブラーと比べて違いが分かりづらい物だったらどうしようという気持ちがありました。ですが、これは声を大にして「全然違う!」と言うことが出来る製品です。今回のこのロードUSTのシステムを、他社のチューブレスタイヤの規格としても広めて欲しいですね。

土井:同じ空気圧で15%も転がりが軽いということですし、これで扱いやすくてパンクもしづらいんだから練習でもレースでも使用したいですね。実際に、今年のツールでもキャノンデール・ドラパックの選手がTTでチューブレスを使用していたとのことですし、近い将来チューブラーに代替する可能性すらあるかもしれません。

インプレッションライダープロフィール

ショップ店長であり市民レーサーとして活躍する西谷雅史(サイクルポイント オーベスト、左)とヨーロッパでの選手経験もあるプロ選手、土井雪広(マトリックスパワータグ)がインプレッションしたショップ店長であり市民レーサーとして活躍する西谷雅史(サイクルポイント オーベスト、左)とヨーロッパでの選手経験もあるプロ選手、土井雪広(マトリックスパワータグ)がインプレッションした
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。

土井雪広(マトリックスパワータグ)
1983年山形県出身の33歳。幼少時代はアルペンスキー競技をメインスポーツとして行い、その夏のオフトレーニングの一環として自転車と出会う。大学時代に学生のロードレースタイトルを全て獲得し、2005年にシマノメモリーコープでプロデビュー。2011年にはブエルタ・ア・エスパーニャに日本人として初出場し、2012年に全日本選手権制覇。2013年からは国内に活動の場を移し、現在はマトリックスパワータグに所属している。

提供:アメアスポーツジャパン 製作:シクロワイアード