処女作の登場から10年以上が経過したクォータのロングセラーモデル、KHARMA(カルマ)。フレーム販売されるミッドレンジとして登場したこのフルカーボンモデルは、フレーム形状を変えながら現在は「KHARMA EVO」として、シマノ アルテグラ仕様(313,330円)と、同105仕様(246,665円)の2種類の完成車で販売される。

レース性能をベースに、幅広い用途に対応するエントリーモデル

クォータ KHARMA EVO(ホワイト/レッド)クォータ KHARMA EVO(ホワイト/レッド)
「完成車販売になってから、このモデルで2代目。前モデルもよくできていたけれど、今回KHARMA EVOに進化して性能はさらに向上している。フレームは決して求めやすい完成車価格用に設計されたものではなく、それ単体で販売しても性能・スペックともに満足してもらえる内容だと思うよ」と今中さんは、KHARMA EVOの仕上がりのよさに自信を見せる。
 
翼断面形状のシートチューブが際立つフレームワークは、ロワーベアリングを1-1/2インチに設計したテーパードヘッドチューブに始まり、ダウンチューブもボリューム感にあふれる形状に仕上げられ、パワフルなペダリングにも負けないフレーム剛性が追求されている。
 
さらに翼断面形状のシートチューブには専用シートポストがセットされ、その向きを変えれば前乗りポジションも可能。タイムトライアル/トライアスロンバイクへのコンバートも容易に行なえる。また電動変速に対応したワイヤシステムも標準装備なので、購入後の幅広いパーツのアップデートに対応しているのもうれしい点だ。

横方向への扁平をかなり強めたトップチューブは、さらにアール状とすることで柔軟性が増して快適な乗り心地を生む横方向への扁平をかなり強めたトップチューブは、さらにアール状とすることで柔軟性が増して快適な乗り心地を生む シートステーは空力性能を意識して、ブレーキ固定部から下のブレード部分をフィン状に成形しているシートステーは空力性能を意識して、ブレーキ固定部から下のブレード部分をフィン状に成形している
ブレードに緩やかなベンド形状を与えたフロントフォーク。快適性を重視した設計といえるだろうブレードに緩やかなベンド形状を与えたフロントフォーク。快適性を重視した設計といえるだろう

「元々KHARMAはレース系のモデルとして登場したけれど、以前のモデルは今よりもチューブの肉厚もあった。それでも乗りやすかったけれど、今回のモデルは上位機種のKURARO(クラーロ)のフィーリングに近づいたので、踏力に対して反力を感じることの少ない、より脚になじみやすい仕様になっている。ジオメトリーは基本的にレースを意識したものだけれど、入門レベルの人にも乗りやすいようにヘッドチューブは少し長め(K-UNO(クノ)などと同じレベル)に設計されるので幅広いレベルのライダーに対応できるでしょう」

今中さんの言葉にもあるように、KHARMA EVOはレース性能をベースにしながらも、より広い用途やライダーをターゲットにしている。垂直方向の荷重に対して柔軟性を発揮して乗り心地を高めるアーチシェイプのトップチューブを見ても、ロングライドに対応できるだけの快適性をめざしていることが分かる。また、より広いユーザーレベルを意識する点においては、女性用モデルをラインナップするのも見逃せない。

オーソドックスなヘッドチューブに見えるが、下側のベアリングに1-1/2インチ径を用いたテーパードスタイルを採用するオーソドックスなヘッドチューブに見えるが、下側のベアリングに1-1/2インチ径を用いたテーパードスタイルを採用する ほぼ三角形断面に成形されるダウンチューブ。底辺を上側に位置することでヘッド部のねじれ剛性を高めるほぼ三角形断面に成形されるダウンチューブ。底辺を上側に位置することでヘッド部のねじれ剛性を高める 翼断面形状のシートチューブはタイヤに沿った大胆なカットアウトにより、BB周辺の空気抵抗を削減する翼断面形状のシートチューブはタイヤに沿った大胆なカットアウトにより、BB周辺の空気抵抗を削減する

「フレームワークはエアロ形状の鋭いエッジなど男性的な面もあるけれど、XXSやXSサイズではトップチューブのアールがより強調されて、女性モデルらしい優しい雰囲気がある。サイズもXXSからあってトップチューブも485mmという短いサイズなので、カバーできる身長もかなり広いでしょう。カラーリングもラベンダーとピンクの2色があるので、女性らしく乗れる1台じゃないかな。実際にかなり女性の方からも好評なんです」

1,070gのフレーム重量、480gのフォーク重量は、耐久性の面でも安心できる実用的な軽量性といえるだろう。

「幅広いレベルのライダーに対応するフレーム設計」「幅広いレベルのライダーに対応するフレーム設計」 パーツアッセンブルもコンポーネントは全てシマノ製で、デダのハンドルセットやマヴィックのホイール(アルテグラ仕様の場合。105コンポ仕様はシマノ WH-R501)など信頼できるブランドの製品で固められ、中級レベルまでの完成車にあがりがちなコスト優先のパーツ選びは一切ない。このあたりは走行性能を重視する今中さんの、さすがの見立てだ。

「KHARMAの105仕様は、インターマックスのベストセラー。年を重ねるごとに性能と内容がよくなって、ミドルグレードに近くなっている。いい感じに進化しているし、僕自身も自信を持って皆さんにおすすめできる1台なんです」

クォータ KHARMA EVO スペック

フレームカーボンモノコック
フロントフォークカーボン製 トップ=1-1/8インチ、ボトム=1-1/2インチ インテグラルオーバーサイズ
重量フレーム単体重量1060g、フロントフォーク重量480g
コンポシマノ アルテグラまたは105
ホイールマヴィック アクシウム(アルテグラ仕様)、シマノ WH-R501(105仕様)
サイズXXS(435)、XS(470)、S(495)、M(525)、L(540)C-T
※XXSサイズのみシングルボトル仕様
カラーダークグレー、ホワイト/シルバー、ホワイト/レッド、
ホワイト/ピンク(XXS、XSのみ)、ホワイト/パープル (XXS、XSのみ)
価格313,330円(アルテグラ仕様完成車)
246,665円(105仕様完成車)


インプレッション

初心者でもカルマのように、ロードバイク然とした性能のモデルに乗ってほしい(今中大介)

パッケージのよさも魅力。ホイール交換だけで超レース仕様になる(吉本司)


吉本 : 初・中級者を狙った価格帯とアーチ型のトップチューブを見ると、試乗前はコンフォート寄りの設計かと想像しましたが、走らせると結構スパルタンな印象ですね。

今中 : 僕はね、そこが逆にいいと思うんだけどね。

吉本 : 最近のエントリー〜ミッドレンジのモデルは、レースというよりもロングライドやなどを重視して、ふわっとした走行感覚と脚当たりのいい剛性感など快適性に重きを置くモデルも多いですよね。

今中 : 確かにそうだね。今は技術が進化して、昔に比べるとエントリーモデルでもかなりロードレーサーらしい性能を出せるようになってきた。そんななかでも最近はとくに、初心者向けのモデルは性能をあえて快適性に振っている。それはそれでいいのだけれど、僕はせっかくロードバイクに乗るのなら、初心者でもロードバイクらしい走りのモデルに乗る方がいいと思う。だからKHARMA EVO(以下KHARMA)はこの方向でいいんじゃないかな。

初心者でもカルマのように、ロードバイク然とした性能のモデルに乗ってほしい(今中大介)初心者でもカルマのように、ロードバイク然とした性能のモデルに乗ってほしい(今中大介)
吉本 : なるほど。確かにKHARMAは一体感のあるフレーム剛性でしっかりしている。加速で大きなトルクをかけてもどこかが変にたわむこともないので、それが気持ちいいですね。そこそこのトルクとスピードで平地を流すのもいいけれど、ある程度ギヤをかけながら、自分なりに出せるスピードを追い求める走りの方が楽しいですね。そういうキャラクターからしても、これは純粋なレーサーだと感じました。といっても、パワーがないと踏み抜けないような脚当たりの悪さがあるわけでもないので、長距離を走ってもストレスを感じることも少ないでしょう。

今中 : KHARMAは、フレーム単体で販売されていたときはレースモデルとして位置づけられていた。それからシマノ 105を搭載した完成車になって、少し優しい乗り味にキャラクターが変わったのだけれど、今はまたレースまで対応できる幅広い性能のモデルになっている。ボーナスで買えるぐらいの金額でレース志向のモデルとしては、いい線いっていると思う。

パッケージのよさも魅力。ホイール交換だけで超レース仕様になる(吉本司)パッケージのよさも魅力。ホイール交換だけで超レース仕様になる(吉本司) 吉本 : フレームの肉厚は極端に薄くないし、走りのキャラクターからすると、典型的なエンデュランスロードのような安楽さのあるバイクではありません。上位機種と比べるとチューブの肉厚はあるので、やや振動を伝えやすい場面もあります。

しかし安楽な乗り心地を求めた作りをしてしまうと、KHARMAのレーシーな部分が薄くなってしまうので、目指した性能とのバランスとしては今の状態がいいと思います。

カーボンフレームなので基本的に振動吸収性は良く、乗り心地をもっと求めるのなら、空気圧を調整したり幅を変えたり、タイヤのセットアップを見直すほうが、KHARMAの魅力を損なうことなく走りの楽しみの幅を広げられると思います。

今中 : 今のバイクはホイールで性能を調整できる部分も大きいよね。イベントなんかに参加するのなら、それ用のホイールが1セットあれば理想的だけど、そのままのホイールでもタイヤとチューブを交換するだけで走りの性格が変えられる。

やっぱりロードバイクに大切な性能や醍醐味は、加速をはじめとするレスポンスの良さだから、それをできるだけ損なわずに、タイヤ交換で快適性を増すことができれば一番いいよね。

吉本 : 走りのストレスがないという点においては、安定感が高いというのもKHARMAのいいところですね。安定しているけど重い感覚はなく、レーンチェンジのような横への動き、複合コーナーの切り返しでもこのクラスのモデルとしては十分な反応性を持っています。

クォータ KHARMA EVO(ホワイト/レッド)クォータ KHARMA EVO(ホワイト/レッド) 今中 : 安定感というのは主観的な要素だけど、乗っていてそわそわしちゃうようなバイクだと下りも思い切り攻められないね。ハンドリングはニュートラルだから、走りながらウインドブレーカーを脱ぎ着するような場面でもストレスはないでしょう。

吉本 : 完成車としてのパッケージがいいのも魅力ですね。コンポーネントは全部シマノですし、ハンドルもデダの製品で実用的にも見た目にもいいレベルのパーツが装備されていて、手抜きがないですね。イベントとかレース用にカーボン製のホイールとか装備したら、かなり戦闘力の高いバイクになりそうですね。

今中 : 昔、僕が現役だった頃、ベルギーのレースとかに遠征すると小さなプロチームがアルテグラのコンポを使っていた。それと同じ様に、このKHARMAだってカーボンホイールを装備すれば、レベルの高いレースに対応できるぐらいの性能は持っているよ。もしも自分が学生とかでお金にあまり余裕のないレーサーだったら、これで全日本選手権を走ってもいいかなって思えるぐらいの性能だよ。

吉本 : 僕の場合は脚を鍛えるのが先決ですけど……。それはともかくKHARMAはレースからロングライドまで幅広く対応できる性能を持っていると思いますが、レースライクな走りを目指すと楽しめますね。レースに対応できる優れた潜在能力を持つ、オールラウンドな一台でしょう。
提供:インターマックス text:吉本司 編集:シクロワイアード