キャノンデール・フーリガン9キャノンデール・フーリガン9 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
独自のスタイルと革新性で、高い人気を誇るアメリカンブランドのキャノンデール。彼らが作り出す小径車フーリガンは、「キャノンデールらしさ」に溢れている。自慢の片持ちフォーク「レフティ」を備え、デザインもポップで個性あふれたモデルだ。遊び心満載のフーリガンは、見ているだけでいろんな走りのアイデアが湧き出てくるような、そんな楽しさ満載のバイクだ。

キャノンデール社の設立は1971年。アメリカ コネティカット州にある駅舎が発祥の地。以来、キャノンデールは数々の「世界初」を生み出してきた。バイシクルトレーラー"Bugger"、大径アルミフレームバイク"ST500"、リアサスペンション付きフレーム"E.S.T"。いつの時代も変わらず革新を貫き続けているブランドだからこそ、他とは違うこんな個性的な小径車が生まれたのかもしれない。

フロントトライアングルはキャノンデール伝統のデルタVデザインフロントトライアングルはキャノンデール伝統のデルタVデザイン いかにも剛性が高そうなリア周り。仕上げもキレイに処理されるいかにも剛性が高そうなリア周り。仕上げもキレイに処理される


フーリガンは2009年アーバンバイクの新カテゴリーモデルとして発表された。ヨーロッパの市街地は日本同様に道幅が狭く、取り回しのいいバイクが好まれる。しかし石畳や荒れた路面の場所が多いため、通常の小径車では圧倒的に強度が不足し、さらにオランダ人やドイツ人をはじめとするヨーロッパの人達は大柄で体重もあるため、彼らが安心して乗りこなせるように高い強度と耐久性が求められる。そんな要求が設計にも活かされていることが特徴だ。

フレーム部分には、キャノンデールがMTBに多く採用していた伝統の「デルタVデザイン」をフロントトライアングルに採用している。これにより小柄な人でも足着き性が良く、体重や体格を気にする必要のない強度と剛性を実現している。
上位2モデルのフーリガン3とフーリガン9には、キャノンデールの象徴的なソロ・リジッド(レフティ・タイプ)フォークを採用している。片側しかないフロントフォークが視覚的にもアンバランスで、より一層個性的なルックスの演出に成功している。

このグラフィックはフーリガンの特徴のひとつでもあるこのグラフィックはフーリガンの特徴のひとつでもある ダウンチューブ下にも大胆なグラフィックでブランドネームが入るダウンチューブ下にも大胆なグラフィックでブランドネームが入る 剛性を確保するためレフティフォークはかなりのボリューム剛性を確保するためレフティフォークはかなりのボリューム


まるでキャノンデールのフルサイズMTBをギュッと縮小したようなデルタVフレームの形状が、力強くPOPなルックスに貢献している。

お得意のレフティ・フォークを模したソロ・リジッドフォークは、前輪の支持が片側だけのため軽量に仕上がり、レフティと同じ片持ち構造のハブを使用することで、こちらもキャノンデールらしい個性的なルックスを獲得している。

またディスクブレーキがフレームのリアバック内側にマウントされた「SI ドロップアウト」を採用することで、転倒時の破損の心配を減らし、同時にすっきりした外観となっている。

面白いのはアジャスタブル・ステムを採用しているところ。これは角度調整することで、多くのライダーの体格に合わせやすいようにする装備だ。ワンサイズ展開であり、他のスポーツバイクのような厳密なサイズ合わせを要求されないフーリガンの、必要にして十分な装備といえる。

まるで吸盤のようなオリジナルペダルはその名も「オクトパス」まるで吸盤のようなオリジナルペダルはその名も「オクトパス」 ディスクキャリパーがリアバック内側にマウントされた、SI ドロップアウトを採用ディスクキャリパーがリアバック内側にマウントされた、SI ドロップアウトを採用


2010年のフーリガンは、3タイプ用意される。
まずフラッグシップモデルのフーリガン3は、ソロ・リジッドフォークと内装変速システム採用するモデル。内装変速により、シンプルな外観が特徴的な1台だ。

ベーシックモデルのフーリガン8は、フォークがオーソドックスな両持ちのファティ・リジッドフォークを採用する。カラーはホワイトと、フレッシュ・マンゴーの2色。

そして今回テストしたフーリガン9は、ソロ・リジッドフォークに外装式の変速システムとメカニカルブレーキを採用したセカンドグレードのモデル。フレームカラーはキャノンデールのコーポレート・カラーであるバーセカー・グリーンとマット(つや消し)グレー、そして鮮やかなサクラ・ピンクを採用し、シリーズ中でも1番人気のモデルだという。

左側しかフォークが存在しないレフティならではのフロント周りの眺め左側しかフォークが存在しないレフティならではのフロント周りの眺め フレームとタイヤのクリアランスは十分に確保されているフレームとタイヤのクリアランスは十分に確保されている 前後ともメカニカルディスクブレーキを採用する前後ともメカニカルディスクブレーキを採用する


どのモデルを選んでも完成度が高く、ポップなカラーとデザインは各グレードに共通なので、予算と好きなカラーで選んでも後悔はしないだろう。

見るからに楽しいキャノンデール・フーリガン9。今回はリラックスした雰囲気の中、対談形式で語ってもらった。
さて2人はこの注目のバイクをどう感じとったのだろうか?早速インプレッションをお届けしよう。




―インプレッション

シクロワイアード(以下CW):小さいのに大きな存在感がある小径車フーリガン。カッコ良さが人気のモデルですが、乗ってみたフィーリングはいかがでしたか?

「キビキビ走るけど、低重心の設計だから結構安定している」 鈴木祐一「キビキビ走るけど、低重心の設計だから結構安定している」 鈴木祐一 鈴木祐一(以下鈴木) :まさか小径車でレフティにするとは思っていなかったので、ちょっとビックリ。でもキャノンデールの遊び心がよく出ているよね。

三上和志(以下三上):乗ってみたら「なんだ、こんなに良かったんだぁ!」という感じ。置き場所さえあればぜひ1台持っていたい。

鈴木 :オシャレな自転車なので、近所に買い物や町中を走るのも気持ちイイ。このまま乗るか、パーツ交換してチューンナップするか?三上さんはどう思いますか? 

三上:小径車って、手を入れはじめるとどうしても走行性能を追い求めてしまうから、これはギア比もこのままで「今日はゆっくり走りたいな」ってときに乗るバイクとして、あえてこのまま持っていたいな。このままで十分良く走るから。

鈴木 :でも、それは気楽でいいとは思うけど、ホイールがしっかりしているし、もともとの性能は高いよ。MTBと共通のパーツが使えるようになっているから、うまく流用して遊ぶと面白いと思う。チューンナップしても楽しそう。

三上:結局改造のベース車両になって、余っているクランクなどが投入されて、もの凄いスピードで街中を走るようになるんでしょ?(笑)

鈴木 :それはそれでありでしょ(笑)。太いタイヤを履いて、マウンテンバイクっぽく走っても面白そうだよね。

三上:ディスクブレーキ仕様だから、性能上げればオフロードもまともに走れちゃうもんね。MTB並にイケる。

鈴木 :BMXのタイヤとか履かせて・・・そんな遊びをしても面白いかもしれないね。

三上:思いのほかハンドリングがいいんだよ。じつは小径車にはネガティブなイメージを持っていて、フラつくんじゃないか?とか、スピード出したら危ないんじゃないか?という先入観があったんだけど、やっぱりそこはキャノンデールだね。スポーツバイクの専門メーカーだし、飛ばしても全然大丈夫! でも、なるべくなら僕は飛ばさないバイクとして付き合っていきたいなぁ。

「どうせならこのフーリガンに自分を合わせるというのもいい」 三上和志「どうせならこのフーリガンに自分を合わせるというのもいい」 三上和志
CW:どんな乗り心地? そして誰にオススメの自転車ですか?

鈴木 :乗り心地はシャキシャキ走る自転車って感じ。例えばBMXってアクションをメインに考えられた自転車だから、慣れない女の子が乗ると「怖い」ってなっちゃう。でもこれは低重心の設計になっているから、結構安定してるんですよね。スポーツ車には縁がないけど、スポーツバイクに乗っている彼氏と一緒に軽くサイクリングに付き合おうっていう女性には、こういう自転車もありかなぁ。と思う(笑)。だからサイクリストの彼氏が彼女にプレゼントしてあげるには絶好のバイクでしょう。僕らはいつも山へ行っちゃう山の住人だけど(笑)、これは街中、それこそ青山とかが似合うんじゃないでしょうか。

三上:自分が似合うかどうかは別だけどね(笑)。ペダルもビンディングじゃなく、ペダルまでトータルにデザインされた遊び心もあるので、どうせならこのフーリガンに自分を合わせるというのもいいんじゃないでしょうか。 とにかくオシャレに頑張ってみる!今までとは、ちょっと違う努力が必要だけど(笑)。

「マウンテンバイクっぽく走っても面白い!」 鈴木祐一「マウンテンバイクっぽく走っても面白い!」 鈴木祐一



キャノンデール・フーリガン9キャノンデール・フーリガン9 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp

キャノンデール・フーリガン9
フレーム:フーリガン デルタV, アーバンコンパクト, 6061アルミ, 20" wheel
フォーク:キャノンデール ソロ リジット
リム:Jalco X320 Disc, 20"
フロントハブ:Cannondale Lefty
リアハブ:Formula DC-22 Di
タイヤ:Schwalbe Kojak, 20 x 1.35"
ペダル:Cannondale New Octopus, Urban
クランク:FSA Vero, 42T/アウターガイド付き
リアカセット:Sunrace, 11-23T
フロントディレーラー:なし
リアディレーラー:シマノ 2300 ショートケージ
シフター:シマノ・デオーレ
ハンドルバー:Cannondale C3
ステム:Satory Race Fit Adjustable
ヘッドセット:Tange Integrated
ブレーキ:AVID BB5 メカニカルディスク
ブレーキレバー:Avid FR 5
サドル:Cannondale Custom
シートポスト:Cannondale Hooligan
サイズ:1サイズ
価格:89,000円




インプレライダーのプロフィール

鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド

 三上 和志 三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI



text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO