ひんやりとした空気もどこへやら、半袖ジャージがぴったりの気持ち良い天気が続く5月。自転車に乗るには最高の季節に、神奈川県宮ケ瀬エリアを釣りと自転車で満喫する「釣-リング」に出かけてきたレポートをお届け。



今回のツーリングの舞台は宮ケ瀬・中津川エリア 前置きが長いけど、お付き合いください。今回のツーリングの舞台は宮ケ瀬・中津川エリア 前置きが長いけど、お付き合いください。
CW編集部は休日が少ない。唐突だが事実である。「いやいや、自転車が好きなんだからいいじゃない」「取材で自転車乗れるんでしょ」なんて思われることもあるけれど、休みが無いと自転車にも乗らなくなる。乗らないので体力が衰える、もっと乗らなくなるという、よくある負のスパイラル。

嘘か真かは、STRAVAのアカウントを見てもらえば一発だけれど、そもそもガーミンをつなぐミニUSBケーブルが所在不明。いつからログをアップロードしていないのかと思ったら、去年の9月と来た。ガーミンの電池もずっと切れたままである。コンビニへ行くのにスピードもケイデンスもパワーも不要なのだから仕方あるまい。最近スポーツバイクらしい乗り方というと、会社の駐車場(未舗装)でカッティーズの練習をしてる時くらいか。ずざー。

入社当時は走力に期待されていた新人二人。どうしてこうなった。入社当時は走力に期待されていた新人二人。どうしてこうなった。 ちなみに乗っていないのは私だけではない。実業団レースで優勝経験のある新人・ムラタも自転車に乗っていない。「自転車って、なんのために乗ってたんでしたっけ?」自分が3年かけてたどりついた境地に、この新人は半年で追いついてきた。そんなスピードまで速くなくてもいい。エキップアサダで走っていたという、もう一人の大型新人・カマタに至っては入社当初から乗る気が皆無である。「速く走れないんだったら、自転車乗ってる意味ないですから」と嘯くカマタ。まあ、ある程度乗れていた人が、少し乗らなくなるとこういう風になりがちである。自転車の楽しみ方をもう一度再発見しなくては!

とはいえ、寒いよ自転車乗るのイヤ、という言い訳が使える季節は過ぎ、花粉症だよ自転車乗るのイヤ、という時期も過去となった5月中旬、最高の自転車シーズンにすら乗らないというのは、些かサイクリングメディアの編集部員としていかがなものか。大体今乗らないと、梅雨だよ自転車乗るのイヤからの、暑いよ自転車乗るのイヤ、という連続コンボが待っている。このチャンスを逃すわけにはいかないのだ。

というわけで、何とか自転車に乗るべくツーリング企画を考える。会長の鶴の一声により、編集部員によるツーリングレポート記事をちょくちょく出していく、という流れが生み出されているのは、願ったり叶ったりだ。(※CW編集部が行く!ツーリングシリーズ)つまり、出勤扱いで自転車に乗れるということ。これこそ、皆さんが良く羨ましがっている編集部員の特権(らしきもの)ではないだろうか。ふっふっふ。

今回、声を掛けたフジワラ 普段からソロライドを楽しんでいるという今回、声を掛けたフジワラ 普段からソロライドを楽しんでいるという
さて、どこに行こうか。撮影もあるので、2人以上で動くことが暗黙の了解になっているため、暇そうにしている隣のフジワラに声を掛ける。「どっか行きたいとこある?」「渋峠」「いいねー」。ちゃちゃっとコースを引いて、メタボ会長に出張申請を済ませれば、後は天気を見計らって出発するだけ、とはいかなかった。「ヤスオカ君、本店まで」会長からのスカイプである。不吉な気配を感じつつ、出頭した自分に浴びせられたのは「この程度の企画なら単独行で処理できない?」というお達しだった。

「え、なんでですか?さすがにそれは写真も撮りづらいですし厳しいかと…。」「君のカメラにはセルフタイマーが付てるよね?」「理論上は可能かと思いますが…。」「大体、2人で動くと人件費がかかりすぎるんだよ!遊びじゃないんだぞ!」「それは重々承知しておりますが…。(マズイ、遊び気分であることがバレている)」「とにかく、この内容に2人は割けない!これは業務命令だから!」

ぴしゃり!と言い放つと話は終わったとばかりに手を振って退出を促す会長。しかし、すごすごと引き下がるというのはできない相談だ。半年のブランクがあるのだ、一人で渋峠とか心が折れる。「それでしたら、ソロ取材ということでプランを変更したいのですが」「まあ、初めての試みだからな、そこは任せるよ」。なんとか譲歩を引き出し、新たなプランを練り始めることに。

正直、一人でどうやって写真撮るねんという思いはあるものの、ここは前向きにとらえるしかない。ソロということは時間の使い方だって行先だって全部自分で決められるのだから、自分の好きなものを詰め込んでしまおう!ということで、もう一つの趣味である「釣り」を軸に据えることに。名付けて「釣ーリング」企画。シマノやグローブライドなど、釣り用品と自転車用品を扱うメーカーも多いのだ。きっと親和性は高いはず。

バイクプラスの河井店長は自転車と鉄道という2つの趣味をうまく両立している好例だバイクプラスの河井店長は自転車と鉄道という2つの趣味をうまく両立している好例だ photo:Kosuke.Kawaiそもそも、最近思っていたのが、「自転車だけで休日が終わるのってもったいないよな」ということ。繰り返すが、CW編集部は休日が少ない。しかし、自転車以外の趣味も楽しみたい。それが乗らない一因にもなっている。そこを解決できるような楽しみ方を見つけられればいいのでは?と考えたのだ。

例えば、鉄道&遺構好きのバイクプラス河井店長。「河井孝介の輪行サイクリング紀行」として輪行を楽しんでいる様子を連載してくれている。まさに、自転車とそれ以外の趣味を両立させている好例だ。例えば、スキーとMTB。あるいは、近年流行りのバイクパッキングもキャンプと自転車を両方楽しむためのものだろう。

さて、そんなわけで初「釣ーリング」企画の舞台に選ばれたのは、神奈川県の水がめである宮ケ瀬ダム。週末ともなれば、ダムの周回路には多くのサイクリストが集まり、周辺の峠を走っている。もちろん私もかつてはよく訪れていたエリアである。そして、宮ケ瀬ダムから流れ出る中津川は、東京近郊からアクセスが良く、入渓しやすいこともあってシーズン中は鮎やトラウトを狙う釣り人が絶えない人気河川である。つまり、この企画にはぴったりのロケーションということだ。



早朝の立川駅で輪行開始(私の最寄り駅はもっと東の方です)早朝の立川駅で輪行開始(私の最寄り駅はもっと東の方です)
午前4時、まだ薄暗い中編集部を出発し、立川駅へと向かう。なぜ編集部出発なのかという野暮なツッコミはご遠慮願おう。とにかくサイクリストの朝は早いものだが、釣り人の朝はもっと早いのだ。釣りといえば、朝マヅメ、夕マヅメという言葉があるように朝と夕方が魚たちの捕食スイッチが入っている時間であり、他の釣り人のプレッシャーがかかっていない状況ということもあって早朝が最も釣りやすいと相場が決まっている。

先頭車両のスペースにお邪魔させていただきます。始発なのでガラガラですが、もはや習性のようなもの先頭車両のスペースにお邪魔させていただきます。始発なのでガラガラですが、もはや習性のようなもの そんなわけで、私もご多聞に漏れず始発電車で輪行し、相模線の上溝駅へと向かう。平日の始発時間とあって、普段は人でごった返す立川駅も静かなものだ。これから長距離出張に出かけると思しきサラリーマンや、オール明けの若者グループ、朝帰りらしき年の差カップルなどがぽつぽつと駅に集まってくる様はまさに人間交差点。その中で一人釣り竿と三脚を括り付けたバックパックを背負いながら輪行袋を担いで構内を歩く自分へ集まる視線はまさに針の筵。「こんな平日から遊びに行きやがって!」というようなねっとりとした視線(主観です、念のため)を浴び、少しの優越感を感じつつ「悲しいけどこれ、仕事なのよね」とひとりごちる。

上溝駅で輪行解除。空が明るくなってきました上溝駅で輪行解除。空が明るくなってきました 正直、車内もガラガラなので輪行といってもそこまで気を遣うこともないのだが、悲しい習性でついつい先頭車両まで歩いてしまう。運転席周辺の空間に自転車を置いて、しばしの電車旅。といっても、立川~八王子~橋本~上溝と2回も乗り換える上、その間は3駅程度と忙しない。自走してもいい距離ではあるのだけれど、もしこの記事を読んで真似してみようかなという奇特な御仁がいるのであれば輪行のほうが気楽な距離でもあるだろうという想定のため。決して走るのがイヤだったわけじゃないんだからね!

相模川を渡ります。死亡事故多発というほど水量があるよう相模川を渡ります。死亡事故多発というほど水量があるよう
相模川と中津川を隔てる丘を越えていく相模川と中津川を隔てる丘を越えていく 平山橋はアメリカ軍の機銃掃射を受けた時の弾痕が残っているのだそう平山橋はアメリカ軍の機銃掃射を受けた時の弾痕が残っているのだそう


そして、2つの乗り換えを経て上溝駅に到着。相模線のスイッチ式扉に気付かず10秒ほど開かない扉の前で佇むというハプニングを挟みつつ、輪行解除し走り出す。県道54号線を一直線に走り、高田橋で相模川を越えると小高い丘が現れる。途中に現れる「ラオス文化センター」の醸し出すエスニック感と久しぶりのヒルクライムに圧倒されつつ、ピークを越えると中津川はすぐそこだ。

自然河川での釣りも良いものだが、今回は管理釣り場へお邪魔することに。エサ釣りからルアー・フライフィッシングまで楽しめる「フィッシングフィールド中津川」は中津川の水を引き込むことで、常にフレッシュでクリアな水質が保たれていることで人気のフィールド。猫がくつろぐ受付で3時間券を購入し、釣り場へと向かう。道路の上から釣り場全体を観察して目星をつけていた、上流側のインレット(流れ込み)に入ることが出来て一安心。初めての釣り場というのは、どこが釣りやすいかを判断するところからドキドキである。

中津川の流水を引き込んだ管理釣り場がフィッシングフィールド中津川だ中津川の流水を引き込んだ管理釣り場がフィッシングフィールド中津川だ
少し解説しておくと、魚というのは基本的に流れがあるところを好むもの。流れがあるというのは、水中の溶存酸素量が豊富であると同時に、水生昆虫などのエサとなるものが流れてきやすいということで、魚が集まりやすいのだ。今回自分の入った釣り座はエサ釣り場から流れ込んでくる本流と、導水管から流れ込む細目の流れが複雑に絡まり合うポイントで、多くの魚が集まりそうなポイントである。平日でなければ、オープンと同時に埋まってしまうこと間違いなしの一級ポイントだ。これもまた役得である。

いそいそと釣り具を準備。レンタルもあるが、自前の竿を取り出し、リールを付けて糸を通していく。「釣り竿をどうやって持っていくの?」と不思議に思う人もいるかもしれないが、自転車にもフォールディングバイクがあるように、コンパクトに折りたたむことが出来る「パックロッド」というジャンルがあるのだ。今回持参したのは、4本に分割できる竿で仕舞寸が40cmほどに収まるもの。これをケースに入れて、バックパックのサイドポケットとコンプレッションベルトを使って括り付ければ全く苦にならずに持ち運べる。

まずは受付を済ませようまずは受付を済ませよう ルアー・フライ釣り場へ到着ルアー・フライ釣り場へ到着

今回持参した釣り具たち。リールはダイワの13イージス 少年心をくすぐるネーミングがダイワの魅力今回持参した釣り具たち。リールはダイワの13イージス 少年心をくすぐるネーミングがダイワの魅力 繊細なアタリを捉えるために集中するが足元はSPDシューズだ繊細なアタリを捉えるために集中するが足元はSPDシューズだ

クリアな池の中には、多くの魚が放流されている。だが、彼らはそう簡単には遊んでくれない。多くの仲間が釣られていく様子を見続けた彼らは、野生の魚と違い大幅に学習しているのだ。一言でいうとスレているのである。ぽつぽつと水面へと捕食活動を行う魚の波紋が出ており、意識が表層へ向いているように見える。一投目に選んだのは、ヤリエ ピリカモア0.6gのオレンジ×金。朝一ということもあり、アピールの強いカラーでやる気のある魚を探っていく作戦だ。

しかし、魚はルアーに興味を示すもののフッキングまでは至らない。ということで、カラーを変える。イエローへと交換、やはりアタリはあるものの乗せきらない。クリアな水質ということで、青銀をチョイス。すると、1投目からヒット!25cmほどのアベレージサイズの虹鱒だ。初めての企画でいきなりのボウズ(一匹も釣れないこと)という最悪の事態はこれで免れて一安心。

この日のファーストフィッシュ 25cmほどのレインボートラウトこの日のファーストフィッシュ 25cmほどのレインボートラウト
その後もコンスタントに釣れ続き、中には50cmほどの大物も姿を見せた(カメラを用意しているうちに逃げられてしまったが)。スプーンに反応が少なくなったら、プラグの出番。ハンクルのディープミノー、ザッガーをアクションを付けつつ巻いてくるとわらわらと魚が寄ってくる。水がクリアなのでそんな様子もよく観察できるため、フッキングに至らなくとも楽しめる。結局3時間で20匹弱の魚に遊んでもらい、大満足の釣行となった。ん?仕事じゃないのかって?いやいや、楽しみながら仕事をしてはいけないという法律は無いのである。9時半ごろには道具を片付け、受付でレンタルのネットを返却し、経費申請用の領収書を受け取ってもう一つの目的であるサイクリングに出発だ!



ここまでのところ、自転車要素が輪行しかない釣ーリング企画。ただの自分の趣味のブログなのではないかという批判を予想しつつ、後編は宮ケ瀬湖を巡るツーリングへ!しかし、その矢先に訪れた不幸とは!?次回「マイロッド、死す!」

text&photo:Naoki.YASUOKA

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