9月にオーストラリア、パースで開催されたUCIグランフォンドワールドチャンピオンシップ。世界中から強豪アマチュアレーサーが集まった国際大会だ。日本から参加したスポーツジャーナリストの「ハシケン」こと橋本謙司さんによるレポートをお届けしよう。



グランフォンド世界大会に挑んだ日本選手団グランフォンド世界大会に挑んだ日本選手団 photo:Kenji.Hashimoto
日の丸を胸に、日本のアマチュアサイクリスト27名が日本代表として世界の強豪に挑んだ。舞台は、オーストラリアの西海岸の美しい街パースで開催された「UCIグランフォンドワールドチャンピオンシップ」。日本代表のひとりとしてこのレースに参加したスポーツジャーナリストのハシケン。集団の牽引から落車までリアルな参戦記をレポート。

また、来年この舞台を目指そうと考えている多くのホビーレーサーのためになる、UCIグランフォンドワールドシリーズの仕組みから、海外レース参加の際に知っておいて損のないノウハウも紹介。

ニセコでつかんだ世界大会への挑戦権

ハードケースにバイクをパッキングする。もう海外の飛行機輪行も慣れたものだ。渡航当日に慌ただしく荷物をまとめて、いざパースへ。9月4日の深夜便で羽田空港を出発。今回、海外遠征を共にするメンバーは僕を含めて4人。初めましてのメンバーもいたが、そこはサイクリスト同士、同じ世界大会を目指すメンバーなので不安はない。

UCIグランフォンド世界大会への道は、さかのぼること約2カ月前から始まった。7月10日、北海道のニセコで開催されたロードレース「ニセコクラシック」だ。このレースは、3年前に国内有数の公道ロードレースとして産声を上げた。140kmと70kmのカテゴリーがあり、道民を中心に、アマチュアレーサー300人ほどが参加してきた。

7月に開催されたニセコクラシック7月に開催されたニセコクラシック photo:Hideaki TAKAGI
グランフォンド世界大会へのキップをつかんだ仲間たちグランフォンド世界大会へのキップをつかんだ仲間たち photo:Kenji.Hashimotoその大会が、今年から、世界自転車競技連盟(UCI)が主催するアマチュアサイクリストのためのロードレースシリーズ「UCIグランフォンドワールドシリーズ」(以下GFWS)に組み込まれた。つまり、ニセコクラシックは世界14か国で開催される予選大会のひとつということだ。

このシリーズは、年代別のカテゴリーごとに競い合う。そして、予選大会の各年代上位25%が世界大会の出場権を得られる。なお、今年のニセコクラシックでは、49歳以下の男性は140kmの部、女性と50歳以上の男性は70kmの部が、世界へつながるGFWSの対象レースとなっていた。

私は、ニセコクラシックで19~34歳のカテゴリーで7位(総合14位)。今回、海外遠征を共にした他のメンバーも、ニセコで各カテゴリー上位25%に入り、世界大会の出場資格を得た。



現地に到着。試走を終えて、調子は良さそう!

レンタカーには、バイクケース4台がピッタリ収納レンタカーには、バイクケース4台がピッタリ収納 photo:Kenji.Hashimoto高速道路の電光掲示には大会開催を知られる表示高速道路の電光掲示には大会開催を知られる表示 photo:Kenji.Hashimoto


羽田からパースへの空の旅は、LCCのエアアジアを利用した。インドネシアのクアラルンプールでのトランジットを含め約15時間。格安だけあり、機内食や座席指定のオプションを付けても往復5万2千円。

荷物は、預け荷物の輪行用のハードケースと、機内持ち込み用のバックパックのみ。ハードケースにはバイク以外に小物や洋服などを詰め込む。それ以外のカメラやパソコンなどはバックパックへ。海外遠征時は、サイズと重量オーバーで超過料金を取られないように、ひと工夫しなければならない。

前日に試走をして当日のシミュレーション前日に試走をして当日のシミュレーション photo:Kenji.Hashimoto唯一の登坂「Zig Zag」をのぼる唯一の登坂「Zig Zag」をのぼる photo:Kenji.Hashimoto


グーグルマップなどを複数駆使して前日試走グーグルマップなどを複数駆使して前日試走 photo:Kenji.Hashimoto前日は会場でレジストレーションを受けた前日は会場でレジストレーションを受けた photo:Kenji.Hashimoto


現地に到着し、レンタカーで高速道路を飛ばして街中の会場へと向かう。その途中にも、アルカンシェルに彩られた世界大会の看板や、高速道路の交通規制を告知する表示があり、気分が高揚しだす。

レース前日は、朝からコースの試走へ。現地では、グーグルナビが神様だ。海外でも日本語でナビゲーションしてくれるので難しいことはない。どこまでも便利な世の中だ。コースを辿るために、グーグルナビの他に、詳細なコースMAPを表示させた画面、さらにコースを取り込んだガーミンの3台を駆使。勝負のポイントとなるであろう区間でバイクを降ろし、約40kmほど実走。前日の長距離移動もあったが、思いの外に身体は動き、調子は良さそう。

スタートゲートを前に全員で記念写真スタートゲートを前に全員で記念写真 photo:Ryo.Satoh
ヨーロッパと違い、オーストラリアは時差がほぼないためかもしれない。翌日のレーススタートは7時。朝も早いので、今回滞在したコンドミニアムで、自炊によるカーボローディングパーティを済ませ、早々に眠りについた。



日の丸ジャージで世界に挑む!

まだ薄暗いパース市街のスタート会場まだ薄暗いパース市街のスタート会場 photo:Kenji.Hashimoto
いよいよスタートのときいよいよスタートのとき photo:Ryo.Satoh日本から参戦のMIVROのみなさん日本から参戦のMIVROのみなさん photo:Kenji.Hashimoto


気温8°C。早朝は気温がグンと下がり、肌寒い。南半球のオーストラリアは春先だ。宿泊先から会場までは目と鼻の先。とりあえず余裕を見て、スタートの1時間前にみんなで自走で移動し出す。まだ日の出前なので、会場のライトが煌々としている。ところが、ライダーらしき人がまばら。どうも、早く到着しすぎてしまったようだ。約1時間、なんとか寒さをごまかしながら、7時のスタートを待った。30分前くらい前になると、ようやく世界各国の選手たちが集まりだす。

皆、国旗をデザインにあしらったり、出身国がわかるジャージを身にまとっている。当然、今回参戦した僕ら4人も、世界大会参加を決めてから、日の丸入りのオリジナルジャージをオーダー。無理を言って製作してくれたサンボルトさんには感謝したい。

地元オーストラリア勢が多数地元オーストラリア勢が多数 photo:Kenji.Hashimotoグレートブリテンの女性ライダーたちグレートブリテンの女性ライダーたち photo:Kenji.Hashimoto

会場に設けられたローラー台を設置したVIPテント会場に設けられたローラー台を設置したVIPテント photo:Kenji.Hashimoto
ちなみに、世界大会の参加条件には、出身国がわかるデザインのジャージを着用するようにと、公式ホームページにも記載されている。ジャージを用意できなければ、ワッペンやステッカーなどでも大丈夫とのことだ。ただ、仲間で統一した日の丸入りのジャージは、アマチュアライダーにとって特別。いつも以上に気合が入る。



序盤は高速道路をハイスピードで駆け抜ける

コースは、パースの街中をスタートし、序盤50kmは平坦な高速道路を走り周回コースへ入る。そこから1周約50kmの起伏に富んだコースを2周してゴールする全長155kmだ。 レース前のプランは、終盤の勝負どころまではムダ脚を使わないことだけに徹して走ること。その中で、周回コースに入った直後の約4kmの登坂区間だけは集団前方でクリアすることだ。ここは、前日の試走の時にチェック済み。道が極端に狭い上に、スイッチバックのつづら折れが連続し、しかも勾配は緩くハイスピードにになることは想像できた。

カテゴリーごとにレースがスタートカテゴリーごとにレースがスタート photo:Ryo.Satoh
世界39カ国から全カテゴリー1182人が出走。参加した19~34歳のカテゴリーは、出走87人と少なめ。世界のグランフォンドは、40代がボリュームゾーンだ。スタート直後の混乱もなく、曇り空のパース市街から、すぐに高速道路へと入っていく。もちろん、片側3車線完全封鎖。さすが、世界大会というべきか、さすが自転車大国オーストラリアというべきか。

リアルスタートが切られると、一気にペースアップ。みんな各国の予選を通過した選手たちなので、レベルは当然高い。その中で、みんな上位を狙っている。集団の前方ではアタックがかかっては吸収。ペースが上がったり下がったりを繰り返す。集団が縦に伸びて、ガーミンのメーターが軽く時速60kmを超えた時はさすが世界大会だと身をもって感じた。

半数は地元のオーストラリア勢だろう。他、フランス、イギリスやドイツ、ロシア、ブラジルなどナショナルカラーのジャージが目立つ。そして、みんな大柄でパワフルだ。それでも、小柄な日本人は、空力の面からはアドバンテージだと前向きにとらえて、大柄な選手を風よけに利用させてもらう。序盤の50kmの集団の平均スピードは時速40kmほど。集団内で脚を温存して走ることができた。

狙いどおり、登り口を前方でクリア!

平坦な高速道路区間を終えて、4kmの登坂を含む1周50kmの周回コースが近づいてくる。このエリアは、自然あふれるカラマンダ国立公園内にあり、コースはとにかく高速で駆け抜けるアップダウンのみ。まずは4kmの登坂が迫ってくる。まもなく、予定通りにプランを遂行だ。

周回コースへの入口にある約4kmの登坂を前に、じわじわと集団の前方へ上がっていく。前方で上り坂に入りたい気持ちは皆同じ。もう一段ギヤを上げて、入り口の400mほど手前で集団の一番先頭へ。直後に、3名の飛び出しがあり、そこに引っ張られるように集団からやや抜け出す形で、単独4番手で上りに入る。後ろを見ると集団は一列棒状。前方で抜け出した分、余裕を見ながら登坂をこなしていく。


絶対的なパワーレベルが明らかに高い世界の舞台絶対的なパワーレベルが明らかに高い世界の舞台 photo:Ryo.Satoh
ちなみに、この登坂区間の名称は「Zig Zag」。ジグザグという正式名称だけに強烈なスイッチバックだ。そして、斜度は3~4%ほどなので、パワーウエイトレシオよりも絶対的なパワーがものを言うかなりハイスピードな登坂だ。この登りを終え、ゴールゲートを通過したら、1周50kmの周回を2周回してフィニッシュ。まだ勝負どころは先なので、この「ZigZag」区間は、上りのピークで先頭集団に残ることだけを意識して、踏みすぎないように気をつけながら走る。集団の中ほどで登りを終えると、50人ほどに絞られたか。ここまでは省エネで計画どおりだ。

そこからは、絶対的なパワーがものを言うハイスピードのアップダウンが連続。しかも、全体的にアスファルトの粒子が大きく、路面抵抗が大きいことが気になる。下りでも常に踏み続けていないと、スピードが乗らない感覚だ。先頭集団は155kmのうち半分を通過。アップダウンはあるものの、どれも短く、逆に仕掛けどころのないコース。それだけに、集団にはまったりとした雰囲気も漂う。途中でトニー・マルティンのような体格と風貌のドイツ人選手が、まるでプロツアーライダーのような切れ味のあるアタックを見せるも、様子見アタックらしく、ほどなく吸収。

しかし、コイツには勝てそうにない……。そう感じてしまうほど、鮮烈なアタックでもあった。後日、リザルトを確認すると、この選手は、昨年の優勝者で今年も3位のアマチュアの世界トップ選手。これが世界のレベルか。レースも後半戦を迎え、集団は40人ほどか。明らかに余裕があるライダーと、わりと脚にきているライダーに分かれてきている様子。自身はまだ余裕を感じられて、いい感じ。ラスト1周に入る手前の2回目の「Zig Zag」の登りの展開をイメージしながら走る。

それにしても、今回のコースは、休む区間がなく、とにかく踏み続けることが特徴だった。そのため、エネルギー補給はシビアになる必要があった。序盤から、余裕があり安全なタイミングを見計らいながら、都度補給。ちなみに、今回の補給食は、現地のスーパーで大量買いして好物となったシリアルバーがメイン。1本200kcalほどを7本。このほか、日本から持ち込んだエネルギージェルや脚攣り防止のための塩サプリだった。
 
悔しい結果にも、大きな財産を得る

初めての世界大会への挑戦。これまでも、ヘル・オブ・マリアナやツール・ド・グアムなどの海外のローカルロードレースは走ってきたが、グランフォンド世界大会は別世界。不安がありながらも、実質はじめて日本人が参戦する今年の世界大会で、日本人の存在感を示してやろうという野心もあった。中盤まで、世界のトップレベルの強さを感じながらも、手応えもあり。ここからの本当の勝負・・・・・・。

そんな矢先だった。直角の右カーブからの立ち上がりで、前のライダーがダンシングを開始したタイミングで車間が詰まり、前輪をすくわれて大きく落車。一瞬の出来事で、気付いた時には、地面にうつ伏せになって、顔はさっき曲がってきたコーナーの方を向いていた。身体が縮こまるほどの痛さに加え、バイクも正常には動かず、その場でリタリアとなってしまった。頭の中は「悔しい」という文字で埋め尽くされ、その場で救急車へ。

こうして、初めての世界大会は90km地点手前で突然終わりを迎えてしまった。しかし、これもロードレース。今、こうして怒涛のごとくレポートを書き進めていていながら、その後のレースレポートができないことが残念だ。あの後、どのような展開が待っていたのだろうか。

UCIレースらしく格式のある特別な表彰台UCIレースらしく格式のある特別な表彰台 photo:Kenji.Hashimoto
国家斉唱では、全員が立ち上がり敬意を表する国家斉唱では、全員が立ち上がり敬意を表する photo:Kenji.Hashimoto地元オーストラリア出身のロビー・マキュアンがMC地元オーストラリア出身のロビー・マキュアンがMC photo:Kenji.Hashimotoゴール地点で、一緒に参加した仲間全員の完走と、続々とゴールした日本人選手たちと談笑していると、自分も完走したかったという思いがこみ上げてきたが、そこは前向きにとらえている。

春先には、まさかアマチュアの世界一を決める世界大会の舞台に立っていようとは想像もつかなかった。世界大会への道が身近に感じ出したのは、7月のニセコクラシックに気軽な気持ちでエントリーしてから。そして、実際に出場権を獲得できても、実際に出場するかどうかは躊躇していた。そう思うと、世界大会では結果が出なかったが、この夏、ニセコからパースまで走り抜けた経験は大きな財産になった。

ニセコから世界へ。今年、アマチュアライダーの世界一を決めるレールがニセコから世界へと敷かれたことで、27名の日本人が世界に挑戦。そして、私を除くすべての日本人が完走を果たし、世界への扉は確実に開かれた。来年の世界大会はフランス開催。ニセコからフランスへ。今年、ググッと注目度が増したUCIグランフォンドシリーズに、来年はより多くのアマチュアライダーたちが挑戦することだろう。その中の一人として再び挑戦したい。パースに置き忘れてしまった課題はフランスでクリアしたい。

なお、参加レポートについては西谷雅史さん(オーべスト)にバトンタッチしてお伝えします。

text&photo:Kenji.Hashimoto,Ryo.Satoh
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