今大会最長231kmコースで、メイン集団に23分を超えるタイム差をつけて23人が逃げ切り。ジロ・デ・イタリア第18ステージの終盤に独走に持ち込んだアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)が自身初のステージ優勝を飾った。



5月27日(木)第18ステージ
ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★


平穏に平坦ステージをこなしたマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)平穏に平坦ステージをこなしたマリアローザのエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:LaPresse
5月27日(木)第18ステージ ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★5月27日(木)第18ステージ ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★ image:RCS Sport5月27日(木)第18ステージ ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★5月27日(木)第18ステージ ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★ image:RCS Sport

ジロ第18ステージのコース全長は今大会どころか2021年のすべてのグランツールの中で最長の231km。前後を巨大な山岳ステージに挟まれたステージの大部分はポー平原を貫く平坦路だが、終盤にかけて4級山岳カスターナを含む4つの丘が選手たちを待ち構える。

登場する登りはいずれも勾配は4〜5%ほどで、最後の丘は残り5km地点。大会最後の平坦ステージであり、ピュアスプリンターもこなせる難易度だが、レースに残っているピュアスプリンターの数は少なく、さらにそれを支えるスプリンターチームの力も低下中。スプリンターチームが制御できない大逃げが決まる可能性が高いだけに、まだステージ優勝を飾っていないチームは積極的に逃げに選手を送り込んだ。

第17ステージで落車負傷した総合10位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)という今大会の主役級選手がこの日はスタートせず。さらに、総合逆転を狙うサイモン・イェーツ(イギリス)の重要な山岳アシストであるニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)もレースを去っている。

ロヴェレートをスタート後、葡萄畑が広がる渓谷を走るロヴェレートをスタート後、葡萄畑が広がる渓谷を走る photo:LaPresse
イネオス・グレナディアーズ率いるメイン集団イネオス・グレナディアーズ率いるメイン集団 photo:LaPresse
バンド演奏がジロを迎えるバンド演奏がジロを迎える photo:CorVos
1時間にわたるアタック合戦は、23名の大きな逃げ集団を生むに至った。逃げ集団の中で総合成績が最も良いのは57分34秒遅れのゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)。総合成績に関係しない逃げを先行させることでイネオス・グレナディアーズは状況を安定化させ、翌日からの山岳2連戦に向けてリカバリーに勤しむエースのエガン・ベルナル(コロンビア)を安全にエスコートした。

逃げグループを形成した23名
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームDSM)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
ニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)
シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
アンドリー・ポノマル(ウクライナ、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、UAEチームエミレーツ)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
サムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・スタートアップネイション)
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター)
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
ウェスリー・クレダー(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)

ポイント賞1位ペテル・サガン(スロバキア)擁するボーラ・ハンスグローエは逃げに選手を送り込まなかったが、ステージ優勝に向けてメイン集団を牽引することなく、ライバルたちのポイント獲得阻止につながる逃げ集団を見送った。なお、他の選手たちへの威嚇や不適正な行為を働いたとしてサガンには1000スイスフラン(約12万2000円)とUCIポイントの50ポイント減点の処分が与えられている。ポイント賞のポイントは減点されなかったため、サガンはマリアチクラミーノをほぼ手中に収めたことになる。

ハイペースを刻んでポー平原を駆け抜けた逃げ集団と、フィリッポ・ガンナやサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)率いるメイン集団とのタイム差は広がる一方。10分、15分、そして20分まで広がった状態で終盤のアップダウン区間へと入っていく。残り33kmを切ると、バティステッラとザナのアタックを切っ掛けにステージ優勝に向けた動きが始まった。

1時間に及ぶアタック合戦の末に形成された23名の逃げ集団1時間に及ぶアタック合戦の末に形成された23名の逃げ集団 photo:CorVos
逃げを見送ったメイン集団が平地を駆け抜ける逃げを見送ったメイン集団が平地を駆け抜ける photo:LaPresse
ベッティオルやロッシュら6名の飛び出しが引き戻されると、4級山岳カスターナに向けてカヴァニャが加速した。フィニッシュまで25kmを残して独走に持ち込んだ『クレルモンフェランのTGV』ことカヴァニャ。葡萄畑を縫うワインディングをスムーズに抜けてステージ優勝に向けて突き進んだカヴァニャだったが、追走グループとのタイム差を思うように広げることができない。ともに追走したロッシュをふるい落としたベッティオルが、最後の登りで先頭カヴァニャを視界に捉えた。

残り7km地点で先頭カヴァニャに追いつくと、間髪入れずにそのまま腰を上げてアタックしたベッティオル。第17ステージの1級山岳セーガ・ディ・アーラでフィニッシュまでヒュー・カーシー(イギリス)をアシストしていたベッティオルが、その抜群の登坂力を生かしてカヴァニャを千切った。

「カヴァニャよりも登れている自信があったけど、追いついてすぐにアタックすることで精神的にダメージを与えることができたと思う。誰もが疲れ切っている3週目には、精神的な強さが差を生むんだ」と語るベッティオルが先頭に躍り出ると、2019年ロンド・ファン・フラーンデレンでそうしたように、最後まで独走を貫いた。残り5km地点からフィニッシュラインまで平均スピード57.4km/hで駆け抜けたベッティオルが後続を振り切って独走勝利。ステージ2位にはロッシュを追い抜いたコンソンニが入っている。

カヴァニャに追いつくとともにアタックするアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)カヴァニャに追いつくとともにアタックするアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO) photo:LaPresse
独走でフィニッシュしたアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)独走でフィニッシュしたアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO) photo:LaPresse
「これまで何回か惜しいところでステージ優勝を逃していたので、念願の勝利だ。逃げることにGOサインを出してくれたチームリーダーのヒュー・カーシーに感謝している。多くの選手がステージ優勝を狙うジロ最終週で逃げに乗るのは難しい。でも今日はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。終盤まで落ち着いて勝負に持ち込めたし、スーパーハッピーだ」と、2020年エトワール・ド・ベセージュの個人タイムトライアル以来、1年3ヶ月ぶりの勝利を掴んだベッティオルはグランツールステージ初優勝を喜ぶ。EFエデュケーション・NIPPOにとってはこれが今シーズン3勝目。

メイン集団は23分30秒遅れでフィニッシュにたどり着き、ベルナルがマリアローザを着用したまま翌日からの山岳2連戦に挑むことに。ベルナルの総合首位は10日目に突入。9日間のナイロ・キンタナを抜いて、コロンビア人選手として最も長いマリアローザ着用者となった。

23分30秒遅れでフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)23分30秒遅れでフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:LaPresse
ステージ初優勝を飾ったアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)ステージ初優勝を飾ったアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO) photo:LaPresse
ジロ・デ・イタリア2021第18ステージ結果
1位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO) 5:14:43
2位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) 0:00:17
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームDSM) 0:00:18
4位 ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
5位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
6位 サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)
7位 フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
8位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
9位 レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:24
10位 ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード) 0:01:12
29位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 0:23:30
35位 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス)
DNS レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
DNS ニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
DNS ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 135pts
2位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) 113pts
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 110pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) 180pts
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 109pts
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) 79pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 チームDSM 231:54:20
2位 イネオス・グレナディアーズ 0:05:07
3位 トレック・セガフレード 0:13:18
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, LaPresse