2021/05/28(金) - 07:12
今大会最長231kmコースで、メイン集団に23分を超えるタイム差をつけて23人が逃げ切り。ジロ・デ・イタリア第18ステージの終盤に独走に持ち込んだアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)が自身初のステージ優勝を飾った。
5月27日(木)第18ステージ
ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★
ジロ第18ステージのコース全長は今大会どころか2021年のすべてのグランツールの中で最長の231km。前後を巨大な山岳ステージに挟まれたステージの大部分はポー平原を貫く平坦路だが、終盤にかけて4級山岳カスターナを含む4つの丘が選手たちを待ち構える。
登場する登りはいずれも勾配は4〜5%ほどで、最後の丘は残り5km地点。大会最後の平坦ステージであり、ピュアスプリンターもこなせる難易度だが、レースに残っているピュアスプリンターの数は少なく、さらにそれを支えるスプリンターチームの力も低下中。スプリンターチームが制御できない大逃げが決まる可能性が高いだけに、まだステージ優勝を飾っていないチームは積極的に逃げに選手を送り込んだ。
第17ステージで落車負傷した総合10位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)という今大会の主役級選手がこの日はスタートせず。さらに、総合逆転を狙うサイモン・イェーツ(イギリス)の重要な山岳アシストであるニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)もレースを去っている。
1時間にわたるアタック合戦は、23名の大きな逃げ集団を生むに至った。逃げ集団の中で総合成績が最も良いのは57分34秒遅れのゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)。総合成績に関係しない逃げを先行させることでイネオス・グレナディアーズは状況を安定化させ、翌日からの山岳2連戦に向けてリカバリーに勤しむエースのエガン・ベルナル(コロンビア)を安全にエスコートした。
逃げグループを形成した23名
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームDSM)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
ニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)
シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
アンドリー・ポノマル(ウクライナ、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、UAEチームエミレーツ)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
サムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・スタートアップネイション)
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター)
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
ウェスリー・クレダー(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
ポイント賞1位ペテル・サガン(スロバキア)擁するボーラ・ハンスグローエは逃げに選手を送り込まなかったが、ステージ優勝に向けてメイン集団を牽引することなく、ライバルたちのポイント獲得阻止につながる逃げ集団を見送った。なお、他の選手たちへの威嚇や不適正な行為を働いたとしてサガンには1000スイスフラン(約12万2000円)とUCIポイントの50ポイント減点の処分が与えられている。ポイント賞のポイントは減点されなかったため、サガンはマリアチクラミーノをほぼ手中に収めたことになる。
ハイペースを刻んでポー平原を駆け抜けた逃げ集団と、フィリッポ・ガンナやサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)率いるメイン集団とのタイム差は広がる一方。10分、15分、そして20分まで広がった状態で終盤のアップダウン区間へと入っていく。残り33kmを切ると、バティステッラとザナのアタックを切っ掛けにステージ優勝に向けた動きが始まった。
ベッティオルやロッシュら6名の飛び出しが引き戻されると、4級山岳カスターナに向けてカヴァニャが加速した。フィニッシュまで25kmを残して独走に持ち込んだ『クレルモンフェランのTGV』ことカヴァニャ。葡萄畑を縫うワインディングをスムーズに抜けてステージ優勝に向けて突き進んだカヴァニャだったが、追走グループとのタイム差を思うように広げることができない。ともに追走したロッシュをふるい落としたベッティオルが、最後の登りで先頭カヴァニャを視界に捉えた。
残り7km地点で先頭カヴァニャに追いつくと、間髪入れずにそのまま腰を上げてアタックしたベッティオル。第17ステージの1級山岳セーガ・ディ・アーラでフィニッシュまでヒュー・カーシー(イギリス)をアシストしていたベッティオルが、その抜群の登坂力を生かしてカヴァニャを千切った。
「カヴァニャよりも登れている自信があったけど、追いついてすぐにアタックすることで精神的にダメージを与えることができたと思う。誰もが疲れ切っている3週目には、精神的な強さが差を生むんだ」と語るベッティオルが先頭に躍り出ると、2019年ロンド・ファン・フラーンデレンでそうしたように、最後まで独走を貫いた。残り5km地点からフィニッシュラインまで平均スピード57.4km/hで駆け抜けたベッティオルが後続を振り切って独走勝利。ステージ2位にはロッシュを追い抜いたコンソンニが入っている。
「これまで何回か惜しいところでステージ優勝を逃していたので、念願の勝利だ。逃げることにGOサインを出してくれたチームリーダーのヒュー・カーシーに感謝している。多くの選手がステージ優勝を狙うジロ最終週で逃げに乗るのは難しい。でも今日はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。終盤まで落ち着いて勝負に持ち込めたし、スーパーハッピーだ」と、2020年エトワール・ド・ベセージュの個人タイムトライアル以来、1年3ヶ月ぶりの勝利を掴んだベッティオルはグランツールステージ初優勝を喜ぶ。EFエデュケーション・NIPPOにとってはこれが今シーズン3勝目。
メイン集団は23分30秒遅れでフィニッシュにたどり着き、ベルナルがマリアローザを着用したまま翌日からの山岳2連戦に挑むことに。ベルナルの総合首位は10日目に突入。9日間のナイロ・キンタナを抜いて、コロンビア人選手として最も長いマリアローザ着用者となった。
5月27日(木)第18ステージ
ロヴェレート〜ストラデッラ 231km ★★
ジロ第18ステージのコース全長は今大会どころか2021年のすべてのグランツールの中で最長の231km。前後を巨大な山岳ステージに挟まれたステージの大部分はポー平原を貫く平坦路だが、終盤にかけて4級山岳カスターナを含む4つの丘が選手たちを待ち構える。
登場する登りはいずれも勾配は4〜5%ほどで、最後の丘は残り5km地点。大会最後の平坦ステージであり、ピュアスプリンターもこなせる難易度だが、レースに残っているピュアスプリンターの数は少なく、さらにそれを支えるスプリンターチームの力も低下中。スプリンターチームが制御できない大逃げが決まる可能性が高いだけに、まだステージ優勝を飾っていないチームは積極的に逃げに選手を送り込んだ。
第17ステージで落車負傷した総合10位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)という今大会の主役級選手がこの日はスタートせず。さらに、総合逆転を狙うサイモン・イェーツ(イギリス)の重要な山岳アシストであるニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)もレースを去っている。
1時間にわたるアタック合戦は、23名の大きな逃げ集団を生むに至った。逃げ集団の中で総合成績が最も良いのは57分34秒遅れのゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)。総合成績に関係しない逃げを先行させることでイネオス・グレナディアーズは状況を安定化させ、翌日からの山岳2連戦に向けてリカバリーに勤しむエースのエガン・ベルナル(コロンビア)を安全にエスコートした。
逃げグループを形成した23名
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームDSM)
ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM)
ニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)
シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
アンドリー・ポノマル(ウクライナ、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、UAEチームエミレーツ)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・プレミアテック)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
サムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO)
ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・スタートアップネイション)
アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ダリオ・カタルド(イタリア、モビスター)
レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
ウェスリー・クレダー(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)
ポイント賞1位ペテル・サガン(スロバキア)擁するボーラ・ハンスグローエは逃げに選手を送り込まなかったが、ステージ優勝に向けてメイン集団を牽引することなく、ライバルたちのポイント獲得阻止につながる逃げ集団を見送った。なお、他の選手たちへの威嚇や不適正な行為を働いたとしてサガンには1000スイスフラン(約12万2000円)とUCIポイントの50ポイント減点の処分が与えられている。ポイント賞のポイントは減点されなかったため、サガンはマリアチクラミーノをほぼ手中に収めたことになる。
ハイペースを刻んでポー平原を駆け抜けた逃げ集団と、フィリッポ・ガンナやサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)率いるメイン集団とのタイム差は広がる一方。10分、15分、そして20分まで広がった状態で終盤のアップダウン区間へと入っていく。残り33kmを切ると、バティステッラとザナのアタックを切っ掛けにステージ優勝に向けた動きが始まった。
ベッティオルやロッシュら6名の飛び出しが引き戻されると、4級山岳カスターナに向けてカヴァニャが加速した。フィニッシュまで25kmを残して独走に持ち込んだ『クレルモンフェランのTGV』ことカヴァニャ。葡萄畑を縫うワインディングをスムーズに抜けてステージ優勝に向けて突き進んだカヴァニャだったが、追走グループとのタイム差を思うように広げることができない。ともに追走したロッシュをふるい落としたベッティオルが、最後の登りで先頭カヴァニャを視界に捉えた。
残り7km地点で先頭カヴァニャに追いつくと、間髪入れずにそのまま腰を上げてアタックしたベッティオル。第17ステージの1級山岳セーガ・ディ・アーラでフィニッシュまでヒュー・カーシー(イギリス)をアシストしていたベッティオルが、その抜群の登坂力を生かしてカヴァニャを千切った。
「カヴァニャよりも登れている自信があったけど、追いついてすぐにアタックすることで精神的にダメージを与えることができたと思う。誰もが疲れ切っている3週目には、精神的な強さが差を生むんだ」と語るベッティオルが先頭に躍り出ると、2019年ロンド・ファン・フラーンデレンでそうしたように、最後まで独走を貫いた。残り5km地点からフィニッシュラインまで平均スピード57.4km/hで駆け抜けたベッティオルが後続を振り切って独走勝利。ステージ2位にはロッシュを追い抜いたコンソンニが入っている。
「これまで何回か惜しいところでステージ優勝を逃していたので、念願の勝利だ。逃げることにGOサインを出してくれたチームリーダーのヒュー・カーシーに感謝している。多くの選手がステージ優勝を狙うジロ最終週で逃げに乗るのは難しい。でも今日はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。終盤まで落ち着いて勝負に持ち込めたし、スーパーハッピーだ」と、2020年エトワール・ド・ベセージュの個人タイムトライアル以来、1年3ヶ月ぶりの勝利を掴んだベッティオルはグランツールステージ初優勝を喜ぶ。EFエデュケーション・NIPPOにとってはこれが今シーズン3勝目。
メイン集団は23分30秒遅れでフィニッシュにたどり着き、ベルナルがマリアローザを着用したまま翌日からの山岳2連戦に挑むことに。ベルナルの総合首位は10日目に突入。9日間のナイロ・キンタナを抜いて、コロンビア人選手として最も長いマリアローザ着用者となった。
ジロ・デ・イタリア2021第18ステージ結果
1位 | アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・NIPPO) | 5:14:43 |
2位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) | 0:00:17 |
3位 | ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームDSM) | 0:00:18 |
4位 | ニキアス・アルント(ドイツ、チームDSM) | |
5位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・プレミアテック) | |
7位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ) | |
8位 | ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) | |
9位 | レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:24 |
10位 | ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード) | 0:01:12 |
29位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:23:30 |
35位 | 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
DNS | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
DNS | ニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
DNS | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) |
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 110pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 180pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 109pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 79pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | チームDSM | 231:54:20 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:05:07 |
3位 | トレック・セガフレード | 0:13:18 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, LaPresse
photo:CorVos, LaPresse
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