アルド・サッシ氏の脳腫瘍との長い闘いが、昨晩、終わった。イヴァン・バッソ(イタリア)やカデル・エヴァンス(オーストラリア)を始め、数々の選手を育てた名トレーナーは、51歳の若さで息を引き取った。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を指導するアルド・サッシ氏イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を指導するアルド・サッシ氏 photo:Cor Vosマペイのスポーツトレーニングセンターを主宰し、多くの選手を育てたサッシ氏。今年のジロ・デ・イタリアで2度目の優勝を果たしたバッソもその中の一人。バッソは出場停止中からトレーニングセンターに通い、サッシ氏に指示を仰いだ。

サッシ氏のサポートを受けたもう一人のスター選手であるエヴァンスは、今年のフレーシュ・ワロンヌで優勝し、ジロでマリアローザを着用。ツール・ド・フランスでもマイヨジョーヌを着た。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)をジロ・デ・イタリア総合優勝に導いたアルド・サッシ氏イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)をジロ・デ・イタリア総合優勝に導いたアルド・サッシ氏 photo:Kei Tsujiサッシ氏は過去にマイケル・ロジャース(オーストラリア)やシャールズ・ウェゲリュース(イギリス)、マシュー・ロイド(オーストラリア)、ダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア)らのトレーナーを務めている。サッシ氏が最後に取り組んだのは、リカルド・リッコ(イタリア)の復活だった。

サッシ氏はスポーツサイエンスの分野において博士号を取得し、1984年にトレーナーとしての道を歩み始めた。当時、フランチェスコ・モゼール(イタリア)のアワーレコードをバックアップ。1999年から2002年まで、チームマペイのマネージングディレクターを務めた。エヴァンスやロジャースと会ったのはその時だ。

1996年にイタリア北部のカステランツァにマペイのトレーニングセンターを立ち上げ、所長として選手たちの活躍を陰で支え続けた。しかし今年4月に脳腫瘍が発覚。7月に腫瘍摘出手術が行なわれ、それ以降抗がん剤治療を続けていた。

「コントロール可能なレベルにまでは回復可能。でも完全に癌細胞を取り除くことは出来ない」。9月のインタビューでサッシ氏はそう語っていた。「腫瘍はゆっくりと成長している。ゆっくりと、確実に」。

生涯トレーナーとして働き、腫瘍と闘い続けたサッシ氏。しかし治療の甲斐無く、12月13日、息を引き取った。妻マリーナと娘キアーラ、そしてトレーナーとしての情熱を残して。享年51歳。

「歴史に名を残したいとは思わない。そんなことよりも、ここで君とサイクリングについてずっと語っていたい」。そう活き活きと自転車競技について語っていた彼の顔が忘れられない。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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