マイヨジョーヌを着てツール・ド・フランス最後の休息日を迎えたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)。アルプスを舞台にした最終週の展望とともに、真夏の暑さのニームで行われた記者会見の模様をお届けします。


ルフェーブルGMとともに記者会見に臨むジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ルフェーブルGMとともに記者会見に臨むジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
マイヨジョーヌを着てキャトーズジュイエ(フランス革命記念日)を迎えたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイヨジョーヌを着てキャトーズジュイエ(フランス革命記念日)を迎えたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini前半からトップタイムを連発したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)前半からトップタイムを連発したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji

マイヨジョーヌを着るアラフィリップがアルプスの山岳をこなすことができるのか否か。大会最後の休息日を迎えたニームの、ドゥクーニンク・クイックステップが滞在するチェーン系ホテルの会議室にすし詰め状態となったジャーナリストやフォトグラファー、TVクルーの興味関心はそこに集まった。最高気温37度の真夏日に、むせ返る暑さの会議室に、整った髭をたくわえたアラフィリップが涼しい顔で入ってきた。

絶好調ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とともにフランス国内で英雄的な扱いがなされているアラフィリップ。過度な期待を避けるように、本人は「ここまでのツールに満足している」という言葉を会見の中で繰り返した。「最後までマイヨジョーヌを守ることが果たして現実的なのかどうかわからない。毎日ボーナスを追加しているような日々がこれからも続けばいいと思う。そのために最後まで正しく戦い続けたい。ツールでマイヨジョーヌを着ることは栄誉なこと。これまでの2週間と変わらず走るだけだ」。

第3ステージで独走勝利を飾ってマイヨジョーヌを手にしたアラフィリップは、そこから何度も観るものを驚かせ、フランスを沸かせてきた。「第6ステージの1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで首位を守れるかどうか?」というテストを軽々とクリアしたアラフィリップは「ピレネー初日の第12ステージは?」「第13ステージのタイムトライアルは?」「第14ステージの超級山岳トゥールマレー峠は?」「第15ステージの1級山岳フォア・プラットダルビは?」という、難易度の高いテストを立て続けにクリアした。クリアするどころか、タイムトライアルではステージ優勝を飾ってリードを広げ、超級山岳トゥールマレー峠でもさらにそのリードを上乗せした。

英語とフランス語で質問に答えるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)英語とフランス語で質問に答えるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
トップタイムでフィニッシュに向かうジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)トップタイムでフィニッシュに向かうジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji

平均身長181cm/平均体重68.9kgというプロトンの中で、身長173cm/体重62kgというアラフィリップはかなり小柄な部類に入る。2014年に22歳でオメガファーマ・クイックステップ(現ドゥクーニンク・クイックステップ)でプロ入りしたアラフィリップは、これまでミラノ〜サンレモ、ラ・フレーシュ・ワロンヌ、クラシカ・サンセバスティアン、ストラーデビアンケというワンデーレースで勝利を重ねてきた。

2016年にツアー・オブ・カリフォルニアで、そして2018年にツアー・オブ・ブリテンで総合優勝を飾っているものの、あくまでもアラフィリップはオールラウンダーでもクライマーでもなく、スプリントをこなせる登りに強いパンチャーという扱いだった。しかし2017年にはパリ〜ニースの個人タイムトライアルで優勝し、2018年ツールでは山岳ステージで逃げに逃げて2勝を飾るとともに山岳賞を獲得。振り返ってみると、明確にオールラウンダーとしての資質を示してきたと言える。

春のクラシックシーズン終了後に、このツールに向けての身体作りを行ったかという質問には素早く「もちろん」とアラフィリップは答える。「ツールに向けて(短時間高強度の登りではなく)長い登りを想定したトレーニングをこなしてきた。そしてもちろん重要な山岳ステージは試走済みだ」という。

ツール3週目はアルプスの厳しい山岳が連続。フィニッシュ手前で標高2,642mの超級山岳ガリビエ峠を越える第18ステージ、標高2,113mの1級山岳ティニュにフィニッシュする第19ステージ、そして標高2,365mの超級山岳バル・トランスにフィニッシュする第20ステージと、例年以上に標高のある山岳が詰め込まれている。

勝負の最終週に挑むジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)勝負の最終週に挑むジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
超級山岳トゥールマレー峠でスプリントするジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら超級山岳トゥールマレー峠でスプリントするジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら photo:Kei Tsuji
エンリク・マス(スペイン)の総合成績とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)のスプリント勝利、アラフィリップのステージ優勝+αという目標を立ててブリュッセルでの開幕を迎えたドゥクーニンク・クイックステップ。開幕から2週間が経ち、マスは総合で順位を落とし、ヴィヴィアーニは山岳ステージでメイン集団を牽引している。つまりベルギーチームはアラフィリップのマイヨジョーヌキープに注力している。「チームはマイヨジョーヌをできるだけ長く守るために作戦を変更した。逃げに乗ることもないし、ツールのリーダーとして立ち振る舞うことにしたんだ。これからもマイヨジョーヌを守るために走る」とアラフィリップは語る。

2週間にわたって積み上げた貯金が第15ステージで初めて目減りしたものの、アラフィリップは2回目の休息日を迎えた時点でまだ総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)に対して1分35秒のリードを得ている。「1分30秒というタイム差はとても大きくもあり、同時に、ほとんど無いと思ってもいい。弱みを見せると一気に逆転する。大会3週目のプロフィールを見ると、1分30秒のリードなんてほとんど無いに等しい。チームイネオスにはベルナルとトーマスの2人がいて、クライスヴァイクには強力なチームメイトがいる。どの選手もそれぞれ自分のレースをしているので、誰かが飛び抜けているというわけじゃない。いずれにしてもアルプスの戦いがツールの総合優勝者を決めることは間違いない」。

第16ステージで今大会のマイヨジョーヌ着用11日目を迎えるアラフィリップ。1919年のマイヨジョーヌ導入以降、1大会で10日以上マイヨジョーヌを着用した選手はのべ55人。そのうち50人が総合優勝に輝いている。

アラフィリップにとっての勝負の3週目が始まる。

text:Kei Tsuji in Nimes, France

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