9月9日までの合計8日間で争われるイギリス最大のステージレースツアー・オブ・ブリテンが開幕。ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)の地元で開催された第1ステージで、アンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル)が久々の勝利を挙げた。



ツアー・オブ・ブリテン2018コースマップツアー・オブ・ブリテン2018コースマップ photo:www.tourofbritain.co.uk9月2日に開幕したツアー・オブ・ブリテンは、ロード世界選手権を前にしたイギリス最古かつ最大のステージレース。1999年を最後に一旦休止したものの2004年に復活し、2008年から8ステージに拡大して現在に至る。UCIのレースカテゴリーはHC(超級)でブエルタ・ア・エスパーニャと同時開催されるが、自国のチームスカイを筆頭に毎年豪華メンバーが集結する。今年は11のワールドチームと、イギリスを代表するプロコン/コンチネンタルチームなどがラインアップに加わった。

最大の注目はツール・ド・フランス総合優勝のゲラント・トーマス(イギリス)とジロ・デ・イタリア覇者でツール総合3位のクリストファー・フルーム(イギリス)が揃って出場したことだ。二人とも休養明けであり、チームスカイのエースはジロ・ツール共にスーパーアシストとして活躍したワウト・プールス(オランダ)が務めるが、そのチーム力は随一だ。

昨年大会まではスプリンターが集結したが、今年はツール総合4位と区間1勝のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)、ツール山岳賞と区間2勝、更にはクラシカ・サンセバスティアンで優勝しているジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)といった総合系布陣も非常に豪華なことが話題。

サインに応じるアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル)サインに応じるアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) photo:www.tourofbritain.co.uk式典に引っ張りだこのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)式典に引っ張りだこのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:www.tourofbritain.co.uk

チームスカイを先頭にペンブリー・カントリー・パークをスタートチームスカイを先頭にペンブリー・カントリー・パークをスタート photo:www.tourofbritain.co.uk
山岳が厳しいブエルタをスキップしたスプリンターも相変わらず多く、絶好調フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)を筆頭にアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、エドワド・トゥーンス(ベルギー)とフィル・バウハウス(ドイツ)のサンウェブコンビなどが主だった面々。更に逃げでツールを沸かせたシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)なども集まった。なおアクアブルースポートも出場予定だったが、チーム解散を発表したことで見送りとなっている。

第一ステージの舞台はトーマスの生まれ故郷であるウェールズ。ペンブリー・カントリー・パークをスタートし、山岳地帯を経由し産業革命時代に炭鉱の町として栄えたニューポートにフィニッシュする175kmで、フィニッシュ前7kmで頂上を迎える2級山岳ベルモントヒル(登坂距離800m/平均勾配9.3%)が逃げ屋にとっては鍵となる。

この日は6名の逃げが生まれ、ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)が唯一のワールドツアー所属選手。威信を見せたいドラミニは中盤までに用意された2箇所の山岳ポイントで先着し山岳賞ジャージの着用を決めている。

山岳賞を獲りに行くニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)山岳賞を獲りに行くニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:www.tourofbritain.co.uk集団をコントロールするクイックステップフロアーズやミッチェルトン・スコット集団をコントロールするクイックステップフロアーズやミッチェルトン・スコット photo:www.tourofbritain.co.uk

沿道には無数のファンが詰め掛けた沿道には無数のファンが詰め掛けた photo:www.tourofbritain.co.uk
メイン集団は逃げグループ内で粘ったロリー・タウンセンド(イギリス、キャニオン・アイスベルグ)を吸収して、最後のベルモントヒルへ。チームスカイが組織的なペースアップを行い、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)の牽引で集団の人数が減少。そんな中真っ先にアタックしたのはツール覇者トーマスだった。

「地元レースだから何かトライしたかったけれど、アタックしたら全然ダメだった」と笑うトーマスはすぐに捕まり、追従したアラフィリップがチームメイトのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)と共に頂上を超え逃げ切り体制に入った。マッズ・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)とジョナサン・イヴェール(フランス、ディレクトエネルジー)の合流を経て残り5km地点からユンゲルスが独走に持ち込んだが、スプリントを目指す集団はわずか10秒後方に迫っていた。

圧倒的なスプリントで若手を蹴散らしたアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル)圧倒的なスプリントで若手を蹴散らしたアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) photo:www.tourofbritain.co.uk
総合首位に立ったアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル)総合首位に立ったアンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) photo:www.tourofbritain.co.uk
残り1kmでユンゲルスを飲み込んだ集団はスプリントになだれ込み、グライペルの発射台ジャスパー・デブイスト(ベルギー)の番手からガビリアがロングスプリント。タイミングを見たユアンが追い上げたが、二人を蹴散らしたのがグライペルだった。

終盤に伸びる豪快なスプリントを披露したベテランスプリンターが、5月末のベルギーツアー以来の勝利を飾った。「暫く勝利から遠ざかっていたので、今回の勝利はより美しく感じるよ。終盤に抜け出したメンツに対しても素晴らしいチームワークで対処できたし、ロットのスプリント布陣はトップクラスにあると思う。ガビリアの早い仕掛けには驚かされたものの、自分のスプリントをすることを心掛けたんだ」とグライペル。

来季フォルトゥネオ・オスカロへの移籍を発表している36歳はボーナスタイムを獲得して個人総合首位にも立っている。

ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) 4h00'54"
2位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
4位 ガブリエル・クライグ(イギリス、チームウィギンズ)
5位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、BMCレーシング)
6位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
7位 エイサン・ハイター(イギリス、イギリスナショナルチーム)
8位 パオロ・シモン(イタリア、バルディアーニCSF)
9位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) 4h00'44"
2位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) +04"
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) +06"
4位 ガブリエル・クライグ(イギリス、チームウィギンズ) +10"
5位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、BMCレーシング)
6位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
7位 エイサン・ハイター(イギリス、イギリスナショナルチーム)
8位 パオロ・シモン(イタリア、バルディアーニCSF)
9位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)
ポイント賞
1位 アンドレ・グライペル(ベルギー、ロット・スーダル) 15pts
2位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 14pts
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 13pts
山岳賞
1位 ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ) 13pts
2位 トーマス・モーゼス(イギリス、JLTコンドール) 10pts
3位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 8pts
チーム総合成績
1位 イギリスナショナルチーム 12h02'42"
2位 バルディアーニCSF
3位 ワンティ・グループゴベール
text:So.Isobe
photo:www.tourofbritain.co.uk

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