水上都市ヴェネツィアの近くを通り、冷たい雨を全身に浴びながらオフシーズンのビーチリゾートを目指す一団。暖かい太陽が似合う観光地なので周りにはドイツやオーストリアのナンバープレートが目立つようになる。グライペルが再び勝利した第12ステージの現地レポート。



最も早くスタートラインについた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)最も早くスタートラインについた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
雨にもかかわらず暖かくジロを迎え入れたノアーレの街雨にもかかわらず暖かくジロを迎え入れたノアーレの街 photo:Kei Tsuji
仕事に出かける福井響メカニック仕事に出かける福井響メカニック photo:Kei Tsujiプロトンに浸透している雨の日の必需品プロトンに浸透している雨の日の必需品 photo:Kei Tsuji


「広大なロンバルディア平原」という表現は使い古されているのでいい加減に控えたいが、本当にそうなのだからどうしようもない。オランダ以上に真っ平らなステージ。「パンケーキのようなステージ」とはこのことだ。序盤はいつも通り高速化し、終盤はテクニカルコーナーが連続したが、開幕からここまでの中で最も平穏なステージになった。

前日に続いてヴェネト州の自転車競技についての話になるが、沿道に立っている一般的なおじさんおばさんのロードレースの知識が他の州よりも豊富だ。「逃げているのはオス?ああトレント出身の彼ね」といった具合に。そして「ジェンキ・ヤマモートという日本人も出ているな」と声をかけられる。その度に「発音はゲンキ」と訂正すること数限りなし。

雨にも負けず、傘もささずに忍耐強くジロの通過をワクワクした表情で待っている。コース近くの小学校・中学校・高校の児童生徒たちは授業を中断して賑やかに沿道に集まっているし、警察や警備員による規制や誘導も慣れたもの。自転車競技が地域に深く浸透していることを感じる。



グライペルの脚が太いのかお姉さんの脚が細いのかグライペルの脚が太いのかお姉さんの脚が細いのか photo:Kei Tsuji
雨のノアーレをスタートしていく雨のノアーレをスタートしていく photo:Kei Tsuji
逃げるダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)逃げるダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsuji
ピンクに塗られた自転車はもはや定番ピンクに塗られた自転車はもはや定番 photo:Kei Tsuji


「マリアロッサを着てリタイアするのは残念だが、これは開幕前から決めていたこと。ジロをリスペクトしているけど、予定を変更するつもりはない。まだシーズンは長いんだ」。そう言ってアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)はウィニングバイクに乗って颯爽と記者会見場を後にした。

グライペルは昨年もこのヴェネト州でジロを離脱し、1月から休みなく走り続けた身体を癒している。グライペルは束の間の休息をとり、6月1日開幕のツール・ド・ルクセンブルクに出場予定。そして昨年ステージ4勝を飾ったツール・ド・フランスに挑む。

グライペルの離脱はイタリアメディアを落胆させたが、彼らにとってはマリアロッサがジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)に移るという嬉しいニュースでもある。ニッツォロは「グライペルが最強だった」と白旗を上げたが、ここまでスプリントポイントで着実にポイントを加算する走りが功を奏し、2年連続で真っ赤なジャージが手元にやってきた。なお、第12ステージを終えた時点でのポイント賞トップはグライペルであり、第13ステージでニッツォロがマリアロッサを着ることはできない。



雨によって路面は常にウェットな状態雨によって路面は常にウェットな状態 photo:Kei Tsuji
ロット・ソウダルが主導権を握ったまま最終周回へロット・ソウダルが主導権を握ったまま最終周回へ photo:Kei Tsuji
失意のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)失意のカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiプロセッコを振り回すアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)プロセッコを振り回すアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji
ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)はもちろんマリアビアンカもキープボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)はもちろんマリアビアンカもキープ photo:Kei Tsuji


雨が降るヴェネト州を走ってアドリア海沿いのビーチリゾートにフィニッシュするというレイアウトは昨年の第13ステージと似通っている。個人的な話をさせてもらうと、1年前のその日、レース後に車上荒らしに遭って機材のほとんどを盗まれたので、またあの絶望を味わってしまうのじゃないかと想像してどうも落ち着かない。ジロがヴェネト州を訪れる時は何かしらのトラブルが起こっており、2012年にはヴェローナのプレスセンター駐車場で車上荒らしが発生している。

実際に昨日の第11ステージのレース後にプレスの何名かが車上荒らしの被害に遭った。そのうち1名は機材を完全に盗まれた。しかも警備員が立っているプレスセンターの駐車場で発生するという信じがたい話。ワイヤレスキーで鍵がかけたと思いきや実はかかっておらず、運転手が離れたタイミングで車の中から荷物を奪う手法らしい。奪う側も完全にプロフェッショナルだ。

そして第12ステージのレース後に自分のレンタカーがパンクしていた。故意にパンクさせて修理中に荷物を奪うパターンかと思って注意を払ったが幸い無事だった。取材にトラブルはつきものとはいえ、2年連続ヴェネト州でトラブルが起きるとは、落ち着かない。レースに影響するようなトラブルが起こらないことを願うばかりだ。

text&photo:Kei Tsuji in Bibione, Italy

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