超級山岳シエラ・ネバダにゴールする今大会有数の難関山岳ステージで、山岳王ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)が飛び立った。モンクティエは全ての山岳ポイントを獲得してステージ優勝。総合争いは激しさを増したが、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)がマイヨオロを守った。

低木や枯れ草に覆われた山岳地帯を進むプロトン低木や枯れ草に覆われた山岳地帯を進むプロトン photo:Cor Vosレース序盤に1級山岳ラグア峠が登場し、終盤にかけて1級山岳モナチル峠と超級山岳シエラ・ネバダが連続する第13ステージ。最後のシエラ・ネバダは単体で見ると登坂距離16.9kmで平均勾配5.5%だが、直前の1級山岳モナチル峠とセットで考えると、登坂距離は26.2kmに達する。

つまりラスト26kmが登りっぱなし。前日の第12ステージは本格的な総合争いは影を潜めたが、この日は総合が動かない訳が無い。今年のブエルタを代表する難関山岳ステージだ。

ケースデパーニュが牽くメイン集団がいくつもの山岳を越えていくケースデパーニュが牽くメイン集団がいくつもの山岳を越えていく photo:Cor Vosレース開始直後の3級山岳ベルハ峠で形成されたのは30名の巨大な逃げグループ。この中には山岳賞1位モンクティエと同賞2位ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)、総合9位のダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)、さらには世界王者のアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)や、TTでステージ2勝を飾ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)らが入った。

しかしさすがに30名は大所帯。人数が多すぎる。続く1級山岳ラグア峠の上りが始まると先頭グループは9名まで絞り込まれ、メイン集団を大きく引き離して逃げ始めた。モンクティエは3級山岳ベルハ峠と1級山岳ラグア峠を連続で先頭通過。山岳賞に向けて順調に山岳ポイントを稼いだ。

モンクティエのために献身的に逃げグループを牽くレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)モンクティエのために献身的に逃げグループを牽くレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Unipublicレースが動いたのは70km地点。先頭グループからモンクティエとレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、コース・ムーレンハウト(オランダ、ラボバンク)の3名が飛び出し先行。

このエスケープトリオは後続の巨大な追走グループを6分、メイン集団を12分引き離して1級山岳モナチル峠に突入した。

1級山岳モナチル峠でメイン集団のペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)1級山岳モナチル峠でメイン集団のペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Unipublicモナチル峠は登坂距離は8.6kmほど。しかし平均勾配は7.9%で、最大勾配は16.6%に達する急勾配の上りだ。ターラマエのアシストを受け続けていたモンクティエはムーレンハウトを突き放し、快調に上りで独走を開始した。

モンクティエはメイン集団を7分引き離したままこのモナチル峠を通過。一方のメイン集団はシュミット&クロイツィゲルのリクイガスコンビのペースアップによって崩壊し、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)やトーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)が脱落。総合首位バルベルデ(ケースデパーニュ)、総合2位エヴァンス(サイレンス・ロット)、総合3位ヘーシンク(ラボバンク)、総合5位バッソ(リクイガス)、総合8位モスケラ(シャコベオ・ガリシア)の5名に絞られた状態でモナチル峠を上りきった。

1級山岳モナチル峠の頂上手前でパンクし、ニュートラルサポートを受けるカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)1級山岳モナチル峠の頂上手前でパンクし、ニュートラルサポートを受けるカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット) photo:Cor Vosしかしここでエヴァンスに不運なパンクが襲う。後続のチームカーやアシストは来ず、ニュートラルサポートを受けて再スタートを試みたエヴァンス。しかしホイールがはまらない。チェーンも脱落。結局チームカーからスペアバイクを受け取って再スタートを切るまで実に1分を擁し、メイン集団から完全に脱落してしまった。

エヴァンスは前走のサンチェスに追いつき、協力して集団を追撃したが、超級山岳シエラ・ネバダに突入したメイン集団とのタイム差は縮まらず、結果的に総合争いにおいて1分のタイムロスを被った。登坂時間だけを見ると総合のライバルたちと同等。しかし総合2位から5位まで転落してしまった。

超級山岳シエラ・ネバダでメイングループのペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)超級山岳シエラ・ネバダでメイングループのペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vosメイン集団はバルベルデ、ヘーシンク、バッソ、モスケラの4名に絞られ、互いの動きを警戒しながら超級山岳シエラ・ネバダを上って行く。そんな中、先頭モンクティエはペースを崩さずに標高2380mの頂上まで単独で上りきった。

モンクティエは2年連続ブエルタの山岳ステージ制覇。この日のカテゴリー山岳5つ全てを先頭で通過し、山岳賞争いのリードを揺るぎないものにした。

ラスト2kmでメイン集団から飛び出したエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)ラスト2kmでメイン集団から飛び出したエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Cor Vosモンクティエの山岳ポイント連取&ステージ優勝におおきく貢献したのは、逃げグループを献身的に引き続けたターラマエだろう。「(総合上位のロドリゲスが入っていたので)メイン集団は逃げを完全には容認しなかった。だから逃げグループから飛び出したんだ。ターラマエにはとても感謝している」。

第8ステージの超級山岳アイタナ峠でもモンクティエは独走。しかしモンクティエはステージ優勝目前にして後続のダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)に抜き去られ、ステージ2位に甘んじていた。今回は「ステージ優勝するためにどうすればリードを保てるのかノウハウがあるんだ」と、ベテランの走りで勝利を掴んだ。

ガッツポーズでゴールに飛び込むダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)ガッツポーズでゴールに飛び込むダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Cor Vosシエラ・ネバダで勃発した総合争いは、モスケラがラスト2kmでアタックを成功させてライバルを突き放し、ステージ優勝のモンクティエから52秒遅れでゴール。バルベルデ、ヘーシンク、バッソの3名はスプリント争いを繰り広げ、バルベルデが先着してステージ3位。

総合2位のエヴァンスが脱落したため総合2位にヘーシンク、総合3位にバッソがジャンプアップ。ステージ3位でボーナスタイム8秒を獲得したバルベルデはマイヨオロを堅守し、初のグランツール制覇に向けて順調に駒を進めた。総合争いは翌第14ステージの超級山岳シエラ・デラ・パンデラ峠でクライマックスを迎える。

ステージ3位でボーナスタイムを獲得し、バッソやヘーシンクとの総合タイム差を広げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)ステージ3位でボーナスタイムを獲得し、バッソやヘーシンクとの総合タイム差を広げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Unipublicこの日はトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やサイモン・ジェランス(オーストラリア、サーヴェロ)、オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)ら10名がレースを去った。今大会ここまでのリタイア者は28名に。まだフルメンバーを揃えているのはケースデパーニュ、エウスカルテル、コフィディス、リクイガスの4チームだけ。ブエルタにかける意気込みを感じさせる。

選手コメントはレース後インタビュー、レース公式サイトより。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2009第13ステージ結果
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)5h09'22"
2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+52"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+1'16"
4位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+1'17"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'37"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+2'09"
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+2'24"
9位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+2'31"
10位 アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)+3'37"

マイヨオロ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)56h23'08"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+27"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'02"
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+1'32"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1'33"
6位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+2'06"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'02"
8位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、ランプレ)+5'33"
9位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン)+6'52"
10位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)+8'21"

モンターニャ(山岳賞)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)160pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、フジ・セルヴェット)83pts
3位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)60pts

プントス(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームコロンビア・HTC)74pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)68pts
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)58pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)11pts
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)12pts
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)21pts

チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 169h16'22"
2位 アスタナ +23'06"
3位 シャコベオ・ガリシア +23'27"

リタイア(DNS=未出走・DNF=途中リタイア)
DNF リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
DNF フランク・ブイエ(フランス、Bboxブイグテレコム)
DNF サイモン・ジェランス(オーストラリア、サーヴェロ)
DNF ドミニク・ロラン(カナダ、サーヴェロ)
DNF セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
DNF エロス・カペッキ(イタリア、フジ・セルヴェット)
DNF ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)
DNF トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
DNF オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
DNF ビョルン・シュレーダー(ドイツ、ミルラム)


text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic