エースをアシストし続け、最後はライバルを振り切って自ら勝利。大会最初の1級山岳フィニッシュが設定されたブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージで、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がステージ優勝とマイヨロホを獲得した。



海岸線を離れ、アンダルシア州の山岳地帯へと入って行く海岸線を離れ、アンダルシア州の山岳地帯へと入って行く photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第6ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第6ステージ image:Unipublic2014年大会に設定された合計8つの山頂フィニッシュの1つ目、1級山岳クンブレス・ベルデスの山頂フィニッシュが姿を現した。前半からオーシャンロードを走った後、内陸の2級山岳サファラヤ峠と3級山岳ベルメハレス峠をクリア。アルハンブラ宮殿で名を馳せるグラナダを通過してすぐに勝負が始まる。

山岳賞ジャージを着るルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)がエスケープ山岳賞ジャージを着るルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)がエスケープ photo:Unipublic前日に長時間ソロエスケープを敢行し、赤い敢闘賞ゼッケンを付ける(そして翌日も敢闘賞ゼッケンを付けることになる)ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)が2日連続の逃げ。この日は山岳賞ジャージを着るルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)をお供につけて、2人で暑いアンダルシアの旅に出た。

ガーミン・シャープが積極的にメイン集団をコントロールするガーミン・シャープが積極的にメイン集団をコントロールする photo:Unipublic最大14分のリードを得て逃げるリヒハルトとマスボネ。当然のように2級山岳と3級山岳をマスボネが連取して行く。この狙い澄ました逃げによってマスボネは山岳賞首位の地位を固めることに成功した。

オリカ・グリーンエッジに代わってメイン集団をコントロールしたのは、チームスカイでもティンコフ・サクソでもなくガーミン・シャープだった。長身ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・シャープ)らの牽引によってタイム差は縮小を始め、カチューシャやモビスターが加わったことで縮小が加速する。

残り60kmで9分あったタイム差は残り30kmで6分、残り10kmで2分に。オリカ・グリーンエッジやモビスターがゴールスプリントさながらのリードアウトで集団を率い、ポジション争いを繰り広げながら1級山岳クンブレス・ベルデスに向かう。

タイム差は残り6kmで1分を割り込み、マイヨロホを着るマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)までもが集団を牽引して登りに突入。すぐに先頭リヒハルトとマスボネを視界に捕らえた。



海岸線を逃げるピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)とルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)海岸線を逃げるピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)とルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル) photo:Tim de Waele
メイン集団をコントロールするガーミン・シャープとカチューシャメイン集団をコントロールするガーミン・シャープとカチューシャ photo:Tim de Waele単独になっても逃げ続けるピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)単独になっても逃げ続けるピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル) photo:Unipublic



直線的な急坂が続く1級山岳クンブレス・ベルデス直線的な急坂が続く1級山岳クンブレス・ベルデス photo:Tim de Waeleブエルタ初登場の1級山岳クンブレス・ベルデスは登坂距離4.6km/平均勾配7.8%/最大勾配13%。実質的な勾配が10%を超える急勾配の登りであり、グラナダを見下ろす山を直線的に駆け上がる。

キンタナのためにハイペースを刻むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)キンタナのためにハイペースを刻むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleメイン集団から真っ先にクリストフ・ルメヴェル(フランス、コフィディス)が飛び出したものの、先頭で粘っていたリヒハルトもろとも残り3kmで吸収される。続くジョージ・ベネット(ニュージーランド、キャノンデール)の攻撃も失敗に終わった。

集団先頭で走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)集団先頭で走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Unipublicナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)のためにバルベルデがペースメイクを開始すると、もはや集団から飛び出すことは不可能な状態に。バルベルデのハイペースがメイン集団の人数を絞り込み、10名に満たない状態で残り1kmに差し掛かる。

残り700mでアタックしたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)残り700mでアタックしたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waeleアタックの気配を感じて徐々にフルームが前に出ると、そこから先陣を切ってホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がアタックする。この動きにいち早く反応したのはバルベルデ。遅れてクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、キンタナが合流し、互いを警戒しながらスプリントへと入って行く。

フルーム、キンタナ、バルベルデ、コンタドール、ロドリゲスという今大会ビッグファイブの中から抜群のスプリントで抜け出したバルベルデが勝利。フルームとコンタドールが同タイムで入り、ロドリゲスが8秒遅れ、キンタナが12秒遅れでフィニッシュする結果となった。

ツールを自己最高の総合4位で終え、クラシカ・サンセバスティアンを制し、好調のまま9回目のブエルタに挑んだバルベルデがマイヨロホを獲得。キンタナをアシストしながらも、最後まで脚を残していた。

「今日の作戦はライバルたちを積極的にコントロールすること。ナイロのために走ったんだ。彼にアタックする脚が残っていたのかどうかは分からない。でもプリート(ロドリゲス)がアタックした時、フルームとコンタドールに反応して、そのままステージ優勝した」と、ステージ通算9勝目を飾ったバルベルデ。

「ナイロがチームリーダーであることに変わりはない。でも自分の総合成績も狙えたら良いね」。マイヨロホを奪回したが、あくまでもモビスターはキンタナをエースに据える構えだ。フィニッシュ手前で失速したキンタナは「調子は良かったのに、最後はリズムを掴めなかった」とコメントしている。

大会最初の山頂フィニッシュで明らかになった各選手のコンディション。「まだ好調とは言えないし、ツール出場時よりも体重があり、自分よりもずっと調子が良いライバルが数多い」と謙遜していたコンタドールがステージ3位&総合3位。「今日はトップ10に入ることが出来れば満足だった。だから優勝争いに絡めたこと事態が勝利のようなもの。チャンスが有ればこの先のステージでアタックしたい」とコンタドールは意気込んだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



ライバルを振り切ってフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ライバルを振り切ってフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第6ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
6位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
7位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
9位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
10位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)

11位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
12位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)
13位 ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキン)
14位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
15位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
16位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
17位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
18位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
19位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
20位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
4h35'27"


+08"
+12"
+18"
+25"

+32"
+33"


+40"
+44"

+47"
+56"
+59"

+1'04"
+1'07"


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
22h48'08"
+15"
+18"
+22"
+41"
+45"
+55"
+58"
+1'02"
+1'06"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
72pts
50pts
49pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)
18pts
10pts
10pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
13pts
16pts
24pts


チーム総合成績
1位 ベルキン
2位 モビスター
3位 カチューシャ
67h58'17"
+45"
+2'28"


ステージ敢闘賞
ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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