レース当日、ロンバルディア平原には雪が舞った。春の訪れを告げる「ラ・プリマヴェーラ」ことミラノ〜サンレモを襲った寒波。予想外の積雪によってコースは245kmに短縮され、アタックの攻防戦を切り抜けたゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)が春の栄光を手にした。

いつもより緊張した面持ちのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)いつもより緊張した面持ちのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Kei Tsujiスタート地点ミラノは雨。天気予報によるとゴール地点サンレモまで、一日を通して雨。最高気温5度という低温が、季節外れの雪をもたらした。

レース序盤から落車が多発するレース序盤から落車が多発する photo:Riccardo Scanferlaどの選手もチームジャージが見えないほどレインジャケットを着込んでスタートした。広大なロンバルディア平原を南下し、標高532mのトゥルキーノ峠を越えてリグーリア海岸まで下り、そこからひたすら海岸線を縫ってサンレモを目指す。

コース短縮が決まり、メイン集団のスピードが上がるコース短縮が決まり、メイン集団のスピードが上がる photo:Kei Tsuji15km地点で形成されたラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)やパブロ・ラストラス(スペイン、カチューシャ)を含む6人の逃げグループは、すぐさま10分を超えるリードを稼ぎ出すことに成功する。

雨はスタート後まもなく本降りとなり、徐々に水分は液体から固体に変わる。音も無く降り始めた雪が、標高100mほどのロンバルディア平原を白く染める。

当然標高532mのトゥルキーノ峠の頂上付近は真っ白。除雪が追いつかずに一般車両も立ち往生する始末。そのためレースオーガナイザーはトゥルキーノ峠を含む117km地点から162km地点までをニュートラル扱いとし、選手たちをバスに乗せて移動することに。

急遽ゴールまでの距離が縮まったため、メイン集団は慌ててペースを上げて逃げとのタイム差を詰める。117km地点のニュートラル区間に差し掛かったころには、タイム差は7分10秒まで縮まっていた。

気温0度の雪と雨、ジャーベット状の路面を走り続けた選手たちは、血色の悪い凍えた表情でバスに乗り込み、束の間の暖を取る。

再スタート地点は、雪の降っていないリグーリア海岸のコゴレート。バスでの移動後、先頭6名は7分10秒のリードを得たままレースを再開する。

ニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かうマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)ニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かうマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsujiバイクにはシャーベット状の雪がへばりつくバイクにはシャーベット状の雪がへばりつく photo:Kei Tsuji
ニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かう選手たちニュートラル区間に差し掛かり、チームバスに向かう選手たち photo:Kei Tsuji

再スタートを待つヴィーニファンティーニのチームバス内再スタートを待つヴィーニファンティーニのチームバス内 photo:Riccardo Scanferla合計45kmのニュートラル区間に加え、ゴール時間の遅延を防ぐためにオーガナイザーはレマニエの登りも削除した。結果的にレース全長は53km短縮され、合計245kmで争われることに。再び雨の中を走り始めたプロトンの中に、トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)らの姿は無かった。

暗いリグーリア海岸を走るプロトン暗いリグーリア海岸を走るプロトン photo:Kei Tsujiスカイプロサイクリングやキャノンデールプロサイクリング、アスタナ、オメガファーマ・クイックステップが牽引するメイン集団は、リグーリア海岸を西に向かいながら、先頭グループのリードを削り取る。メイン集団はスピードを落とさずに3つの岬(メーレ、チェーロ、ベルタ)をクリアした。

優勝経験者のマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)や、ティレーノ〜アドリアティコ覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)といったビッグネームが相次いでリタイアする中、ゴールまで30kmを残して逃げは全て吸収。どんよりとした雲の下、レースは佳境を迎える。

サンレモの前に連続して登場するする2つの登り、高低差234mのチプレッサ(平均4.1%、最大9%)と高低差136mのポッジオ(平均3.7%、最大8%)がレースの行方を決める。

まずはチプレッサでシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)らがアタックしてみせたが、決定的なリードを奪えないまま吸収。続いて雨に濡れたテクニカルなダウンヒルでフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が飛び出す。

いくつもの岬を越えて西を目指すいくつもの岬を越えて西を目指す photo:Kei Tsuji
チプレッサでアタックするトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、IAMサイクリング)チプレッサでアタックするトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、IAMサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaチプレッサの下りで動くフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)チプレッサの下りで動くフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla

先頭でポッジオを登るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)とイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)先頭でポッジオを登るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)とイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferlaジルベールの動きには、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)やペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)ら、優勝候補たちが反応。チプレッサの下りで9名ほどが先行する展開に。

そこからイギリスチャンピオンのイアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)が飛び出すと、エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)とシャヴァネルが飛びつく。3人が先行したままポッジオに差し掛かった。

モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がポッジオで集団をリードモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がポッジオで集団をリード photo:Riccardo Scanferlaスタナードとシャヴァネルがペースを上げてポッジオを駆け上がるその後ろでは、モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)がサガンのためにメイン集団を引く。マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)とルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)がメイン集団からそれぞれアタックを仕掛けたが、先頭には届かない。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)がポッジオでアタックファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)がポッジオでアタック photo:Riccardo Scanferla続いてカンチェラーラが猛烈なペースでポッジオを駆け上がり、サガン、チオレック、ポッツァートを引き連れてパオリーニに合流。先頭スタナードとシャヴァネルの通過からわずか数秒後に、ポッジオの頂上をクリアした。

ポッジオの危険なダウンヒルでついに先頭スタナードとシャヴァネルにカンチェラーラ、サガン、チオレック、そしてパオリーニが合流。ゴールまでの3km平坦路に入る。スタナードやサガン、カンチェラーラが互いに高速アタックを繰り出したが決まらない。

すっかり暗くなったサンレモの街に入り、スプリントに向けての牽制がスタート。後方の集団から一人で抜け出したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)が迫るが届かない。サガンが好位置からスプリントをスタートさせたが、ギアがかからない。サガンを徹底的にマークしたチオレックに軍配。まだプロトンの中でも目新しい、アフリカを連想させる濃い黄色と黒色を組み合わせたMTNキュベカのジャージが、サンレモで手を挙げた。

スプリントで競り合うペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)とゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)スプリントで競り合うペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)とゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji

雨のゴールスプリントを制したのはゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)雨のゴールスプリントを制したのはゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ) photo:Kei Tsuji「信じられないような一日の最後に、信じられない勝利がやってきた」。2006年にロードのU23世界チャンピオンに輝き、以降Tモバイルやミルラム、クイックステップに所属してきた26歳のチオレックは語る。2009年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ1勝を飾っているが、将来を嘱望されていたライダーとしては物足りないシーズンが続いていた。

14秒遅れの集団先頭はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が取る14秒遅れの集団先頭はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が取る photo:Kei Tsuji「ワイルドカードで出場した我々が、表彰台のてっぺんでトロフィーを受け取っている。本当に素晴らしい。ポッジオでは最も強い選手たちにとにかく着いていった。それが功を奏した」。

ミラノ〜サンレモ2013表彰台ミラノ〜サンレモ2013表彰台 photo:Kei Tsuji今年UCIプロコンチネンタルチームデビューしたばかりの南アフリカチームが大金星。チオレックはチームの移籍についてこう説明する。「このチームを選んだとき、みんななぜプロコンチネンタルチームに移籍するのか首をひねっていた。でも選手のケアを含めたマネジメントはこれまでにないほど素晴らしい。このチームに移籍して本当によかったと思っている」。

アフリカチームとして初めてUCIワールドツアーレースで勝利を収めたMTNキュベカ。また、同チームは南アフリカ出身のソンゲソ・ジムを出場させ、黒人選手のUCIワールドツアーレース初出場の歴史も同時に作っている。

2位に終わったサガンは「グループ内で動きすぎたことで脚を使ってしまった。スプリントを仕掛けるタイミングも早すぎた。残念だけどこれも経験の一つ。ミラノ〜サンレモ2位の成績は悪くない」とコメントする。

「ここまで走れるとは思っていなかった」と話すのは3位のカンチェラーラ。「チオレックが勝利したけど、今日は走った選手全員がヒーローだ」。この日の完走者は135名。実に65名がレース途中でバイクを降りた。


ミラノ〜サンレモ2013
1位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)              5h37'20"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
6位 イアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)
7位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)           +14"
9位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、スカイプロサイクリング)

text&photo:Kei Tsuji in Sanremo, Italia
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