バッソとペッリツォッティのダブルエース体制

第1ステージのチームTT、リクイガスはスピードマンを欠く中、ステージ8位とまずまずの発進第1ステージのチームTT、リクイガスはスピードマンを欠く中、ステージ8位とまずまずの発進 photo:Kei Tsuji
リクイガスはジロ制覇の熱い思いを胸に、水上都市ヴェネツィアに降り立った。当初からチームのオーダーは、2006年大会の覇者で出場停止処分明けのイヴァン・バッソ(イタリア)と前年度総合4位のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)の二枚看板。昨年海外勢に奪われたマリアローザを取り戻すべく、イタリアが最も注目を注いでいたのはバッソに違いない。

チーム力が問われる初日のチームタイムトライアルは、22チーム中8位というまずまずの成績でスタート。山岳での闘いに備えて平地のスピードマン抜きのチームとしては好成績だと言えるだろう。

やがてレースが山岳地帯へと移行すると、リクイガスが本領を発揮する。山岳アシストとして知られるシルヴェスタ・シュミット(ポーランド)の献身的な働きによりレースは動き、序盤戦最大の難所であるアルペ・ディ・シウージの頂上ゴールでバッソはステージ4位に食い込む。総合でも6位に順位を上げた。

賢者ペッリツォッティの躍進

第6ステージ、並んでゴールするフランコ・ペッリツォッティとイヴァン・バッソ第6ステージ、並んでゴールするフランコ・ペッリツォッティとイヴァン・バッソ photo:Kei Tsuji ダブルエース体制に賛否両論あったのは確かだ。しかし監督や選手、スタッフに聞くと「状況を見ながらエースを決める。レースが進むに連れてそれはハッキリするだろう。とにかく総合を狙える選手が2人いることは、チームにとって大きな力になる」という自信にあふれた答えが返ってきた。

バッソとペッリツォッティ。ともに31歳の2人の総合順位が逆転したのは、第12ステージのテクニカルなタイムトライアル。上りと下りしかない距離60kmオーバーの“時間との闘い”でペッリツォッティはステージ5位に入った。

一方ステージ11位と出遅れたバッソは、続く山岳ステージでリスクを背負ってアタックを連発。決定的なリードは奪えなかったが、バッソの攻撃により、ペッリツォッティは集団内で力を温存することになる。

大会5回目の頂上ゴールが設定されたブロックハウスで、名手シュミットが連れ出したのは「休息日明けのステージとしてはステージが短すぎた」と語るバッソではなく、総合4位のペッリツォッティ。ステージ優勝と総合順位ジャンプアップを狙うペッリツォッティは、追いすがるライバルを全て振るい落とし、そのまま霧に包まれる頂上まで猛進。ペッリツォッティは昨年のプラン・デ・コロネス山岳個人タイムトライアルに続く難関山岳制覇で、最終表彰台圏内の総合3位を射止めた。

第17ステージの表彰台で喜び爆発、豪快にシャンパンを開けるフランコ・ペッリツォッティ第17ステージの表彰台で喜び爆発、豪快にシャンパンを開けるフランコ・ペッリツォッティ photo:Kei.Tsuji

終盤の山場で活きたダブルエース体制

第19ステージ、バッソがステージ5位でゴール。総合3位のペッリツォッティを献身的にアシスト。見事な走りだった第19ステージ、バッソがステージ5位でゴール。総合3位のペッリツォッティを献身的にアシスト。見事な走りだった photo:Kei Tsuji 総合争いが加熱する3週目は、各チームとも全力で残り少ないチャンスを狙って動いてくる。最後の難所ヴェスヴィオ頂上ゴールで、リクイガスのダブルエースは再び飛び立った。ステージ優勝を狙って真っ先にアタックを仕掛けたバッソは、元チームメイトのサストレに先行を許すと、自身の成績を棒に振ってまで後方のペッリツォッティを待った。

バッソにアシストされたペッリツォッティは、ライバルからタイムを奪ってステージ2位でゴール。この日のバッソのアシストぶりをペッリツォッティは「イヴァンは真のチャンピオンとしての資質を見せてくれた」と賞賛。ダブルエース体制に対する批判をはね除け、力を合わせて総合3位の座を最後まで守り抜いた。

ペッリツォッティは総合3位に加えてポイント賞3位、山岳賞4位。ジロには過去7年間連続出場しており、総合トップ10でフィニッシュすること5回。7度目の挑戦で遂に表彰台に上った。その実力だけでなく真摯な態度や戦況を読む頭脳も評価され、イタリア国内のみならず、31歳にして世界的なグランツールレーサーとしての名声を手に入れた。

最終ステージのゴール、暮れ行くコロッセオ前での表彰式。ペッリツォッティは自身初のジロ総合の表彰台へ上がった最終ステージのゴール、暮れ行くコロッセオ前での表彰式。ペッリツォッティは自身初のジロ総合の表彰台へ上がった photo:Kei Tsuji
総合5位でローマにフィニッシュしたバッソ。しかしその名声が決して地に落ちたわけではない。むしろイタリア国内での評価は上がっている。総合優勝を諦め、後半の山岳ではペッリツォッティをアシストしながらステージ優勝を狙って何度もアタック。2年間のブランクも影響し、勝利には結びつかなかったが、これまで「バッソはアタックしない」という論評を打ち消すような積極的な走りが目立った。

ジロでのミッションを終えたリクイガスは、7月のツール・ド・フランスに向けて再び動き出す。ツールでは若きステージレーサーのロマン・クロイツィゲル(チェコ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)をエースに立て、念願のマイヨジョーヌ獲得を目指す。リクイガスの闘いはまだまだ終わらない。

Vol.2 リクイガスが闘った3週間、ダブルエースがもたらしたローマ表彰台 Report Vol.4 Coming Soon!
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