「夢を支えたタイヤ」

「全日本選手権優勝」。ひとつの大きな夢を叶えた宮澤選手。彼の優勝を支えたのは、一丸となってレースに挑んだ信頼できるNIPPOのチームメイトたちであり、信頼できるタイヤの存在だったという。レースタイヤにおける「信頼」とは? アマチュア時代からパナレーサーのタイヤを使用し続けてきた宮澤選手が、レースにおけるタイヤの重要性を綴ってくれた。

全日本選手権エリート男子、ゴールスプリントを制し雄叫びを上げる宮澤。昨年2位の雪辱を果たし、日本の頂点に立った全日本選手権エリート男子、ゴールスプリントを制し雄叫びを上げる宮澤。昨年2位の雪辱を果たし、日本の頂点に立った photo:Hideaki.TAKAGI
全力でアシストしてくれた佐野淳也ほかチームメイトに支えられてこその勝利だった全力でアシストしてくれた佐野淳也ほかチームメイトに支えられてこその勝利だった photo:Makoto Ayano 全日本選手権は、自転車選手として走ってきた中で、どうしても取りたいタイトルのひとつだった。そして今年は、このレースを迎える前に自分の出身地である長野県長野市でチーム合宿を行ったこともあり、何か今までと違った雰囲気の中、レース当日を迎えたのである。

このチーム合宿、練習は毎日ほぼ200kmペースで行った。
路面はいつもドライとは限らず、雨の下り坂もあれば、道路の修復部分、路肩との間にある白いラインといった滑る要素がいくつもある厳しい状況だった。そんななかの10日間、合計2,000km以上も走ったのだが、誰ひとり一度もパンク無しという奇跡的な結果を残した。

パナレーサーは自転車のタイヤを50年以上作っている老舗。年々その性能の向上は目覚ましく、実は現在のタイヤのプロトタイプもテストしてきたが、選手も納得するタイヤを投入してきたのは流石だ。選手の目線で見て、ここ最近リリースされるレースタイヤに関して言えば「信頼」という言葉を強く感じる印象のメーカーだ。

そこで今回は、選手にとってタイヤがどれだけ大事な存在であるかを書こうと思う。

ヨーロッパの道路事情は、「古い街並み」、「石畳」、そして「山間の荒れた舗装」と、日本よりも過酷な状況が頭に浮かぶ。私達チームNIPPOは、そんな道路環境のイタリアで活動を進めるプロチームなので、想像以上に練習やレースでパンクを防ぐ配慮が必要なのだ。

練習に持っていくチューブの数は1人2本。最近はほとんどパンクすることもなくなったが、7~8年前はそのチューブ2本ともをパンクで失い、「他の選手に借りて直した」なんてことは良くあった。タイヤ自体が裂けてしまい、歩いて、あるいは電車で家へ帰ったなんて苦労話も良く聞いた。

道路状況だけが変わらない中、パンクトラブルがこれだけ減少したのは、選手の生の声を聞き、カタチにしてきた開発者とタイヤメーカーの努力の賜物と言えるだろう。

「最強のアンチパンクタイヤ RACE typeD」

私がタイヤを使ううえで特に気にすることは3つある。

ひとつはタイヤのグリップ感。走行時に安心してコーナーリングするための基本性能だ。晴天、雨天にかかわらず、時には90km/hというハイスピードで走る自転車にとって、グリップ力は選手の安全を踏まえた上でも最重要ポイントだ。

一般的に知られていないことだが、自転車タイヤは雨と晴れで性格が変わるものもある。これはゴムの性質などによって違うらしいのだが、ご存知のように雨の路面で滑りやすくなる製品が多い。

パナレーサーのタイヤがドライだけでなくウェットコンディションでもグリップ力が高いのは、私たちサポート選手たちのテストデータが新製品に活かされているからだろう。

全日本選手権ロードを走る宮澤崇史(TEAM NIPPO)全日本選手権ロードを走る宮澤崇史(TEAM NIPPO) photo:Makoto Ayano 広島中央森林公園コースはパンクがもっとも多いコースとして選手たちに恐れられている広島中央森林公園コースはパンクがもっとも多いコースとして選手たちに恐れられている photo:Makoto Ayano

次に挙げられるのが耐パンク性能。

パンクはだれもが避けたい自転車の落とし穴。レースでは絶対にパンクはしたくない! 今年のツール・ド・フランスでもあった。大事な場面でパンクをしたがために勝てるレースが勝てなくなってしまった、なんてことがあったら、その選手にとっては最も痛手だ。

ロードレースにおける路面状況は想像以上に過酷な環境で、車から漏れたオイルや、路肩から流れ出る砂、事故後のガラス破片などの障害物が路上には無数に存在する。

とくに今回の全日本選手権が行われた広島中央森林公園は過酷なコースで、あまりのパンクの多さからレースの展開すら変えてしまう事で有名だ。

パンクの原因となるのは、路肩の砂壁や削れた路面から出てくる米粒半分くらいの小さく尖った小石。それがタイヤに刺さってしまうのだ。特に雨のレースで多発する。今回の全日本ロードも、当日の朝まで降った雨がもとで、午前中に行われた女子のレースでパンクが頻発した。だから私は、レース中はなるべく集団の真ん中付近で、道路の真ん中を通るよう心がけた。前を走っている選手の後ろにつけば、自分が小石を踏む確率が低くなるからだ。

TEAM NIPPOのバイクには「雨の広島でパンクしないこと」をテーマに開発されたRACE TypeDが装着されていたTEAM NIPPOのバイクには「雨の広島でパンクしないこと」をテーマに開発されたRACE TypeDが装着されていた photo:Makoto Ayano
パンクと一言でいっても、刺さりパンクやリム打ちパンク、そしてカットパンクなど様々。しかし日本の一般道は比較的きれいな路面なので、刺さり(石)パンクが多い。リム打ちパンクは基本的に適正空気圧が入っていれば防ぐことができるが、刺さりパンクやカットパンクはそうはいかない。構造的にも工夫され、刺さった石の貫通を許さない「RACE typeD」は、チーム合宿でも実証されたとおり、最強のアンチパンクタイヤだと実感している。

そして最後に、振動吸収性と走りの軽さ。
5~6時間に及ぶ自転車レースは、地面からの振動が選手の体力を奪ってゆく。だが、タイヤにおいて乗り味と走りの軽さの両方を兼ね備える事は非常に難しいし、乗り心地と耐パンク性能の両立も難しい。
選手は一言「もっと軟らかく、パンクしにくくしてくれ!」なんてことを言うが、それをカタチにするのは大変なことだ。選手とタイヤメーカーの度重なるコミュニケーションからやっと生まれてくるものなのだ。

「そして頂点へ」

2010年、全日本選手権「優勝」という私の「夢」が一つ叶った。レースでは1度もパンクすることなく、パーフェクトなグリップ力で終始安定した走りができた。レース中に選手たちを見守るパナレーサーのタイヤ企画者、宮路佳秀さんの想いと責任感は、選手の感じているもの以上だったに違いない。

全日本選手権エリート男子の表彰台で喜びを噛み締める宮澤全日本選手権エリート男子の表彰台で喜びを噛み締める宮澤 photo:Makoto Ayano
勝利してすぐにパナレーサーの宮路佳秀氏のところに駆けつけた宮澤。サポートしてくれたことへの感謝の気持ちを伝えた勝利してすぐにパナレーサーの宮路佳秀氏のところに駆けつけた宮澤。サポートしてくれたことへの感謝の気持ちを伝えた photo:Makoto Ayano選手生活におけるひとつの夢、全日本チャンピオン。それが叶った喜びに浸る選手生活におけるひとつの夢、全日本チャンピオン。それが叶った喜びに浸る photo:Makoto Ayano

スポーツバイクの進化と発展もさることながら、それに伴ってパーツの重要性もあがっている昨今、タイヤは唯一地面に接している最も重要なパーツとして今まで以上に目が向けられるだろう。また、より速く・安全に走りたいというワガママなレースマンやサイクリストたちの欲求は、まだまだ高まっていくことだろう。そして、それを影で支えるメーカーの努力は留まる事を許されないだろう。

これからも選手としてドンドン自分の声をメーカーに伝えて、より多くの人達に自転車に楽しく乗ってもらえる環境作りに貢献していきたい。

全日本選手権の後、宮澤はブエルタ・ア・レオン2010第2ステージで優勝。欧州UCIレース勝利というもう1つの夢を叶えた全日本選手権の後、宮澤はブエルタ・ア・レオン2010第2ステージで優勝。欧州UCIレース勝利というもう1つの夢を叶えた photo:www.lavueltaleon.net

プロフィール
宮澤 崇史 みやざわ たかし
1978年生 32歳
長野県出身。
日本を代表するスプリンターであるとともに、ツール・ド・北海道2連覇などオールラウンダーとしても活躍。

肝硬変を患った母親に生体肝移植をしながらも、北京オリンピック日本代表の座を獲得した努力家でもある。

主な戦歴:
2008 ツール・ド・台湾 総合3位 アジアリーダー獲得
2008 アジア選手権ロードレース エリート3位
2008 北京オリンピック ロードレース日本代表
2008 ツール・ド・北海道 個人総合優勝
2009 全日本選手権ロードレース エリート2位

2009 シルクイト・デ・ゲッチョ(スペイン) 4位
2009 ツール・ド・北海道 個人総合優勝(2連覇)
2010 アジア選手権ロードレース エリート2位
2010 全日本選手権ロードレース エリート優勝
2010 ブエルタ・ア・レオン第2ステージ優勝

Panaracer 「RACE」シリーズ
Race type DRace type D 写真クリックで拡大 Race type ARace type A 写真クリックで拡大 Race type LRace type L 写真クリックで拡大

パナレーサーのロードレーシングトップモデルが「RACE」シリーズとしてリニューアル。

オールラウンドタイプのtypeA(All-around)、耐パンク強化タイプのtypeD(Duro)、そして軽量タイプのtypeL(Light)がラインナップされており、用途や目的に合わせてチョイスできる。全タイプとも従来のEVO3シリーズと同じく高いグリップ力を誇る。

typeAでは従来のバリアントEVO3PTに比べて20gを軽量化。typeDはシリーズ最強の耐パンク性能を誇り、typeLは耐パンクベルトを内蔵しながら、20Cで175g、23Cで185gの軽さを実現している。

参考価格  type D:6,480 円(税込)/type A:5,680 円(税込)/type L:5,680 円(税込)

スペシャルコンテンツ:「新しい戦闘力 パナレーサー RACE」
Panaracerサポート選手の注目リザルト
■全日本選手権ロードレース2010
U23 優勝 山本元喜選手(鹿屋体育大学)、3位 野口正則選手(鹿屋体育大学)
関連ニュース:U23は鹿屋体大の山本、ジュニアは別府商高の池部、U17は湘南ベルマーレの内野が制する
エリート 優勝 宮澤崇史選手(チームNIPPO)、4位 佐野淳哉(チームNIPPO)
関連ニュース:鉄壁の結束力を見せたチームNIPPO 宮澤崇史が初の日本王者に輝く
Jサイクルツアー第10戦 サイクルロードレースin石川
優勝 佐野淳哉選手(チームNIPPO)、2位 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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Jサイクルツアー第11戦 サイクルロードレースin小川
3位 佐野淳哉選手(チームNIPPO)、4位 真鍋和幸選手(マトリックス・パワータグ)
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Jサイクルツアー第12戦 全日本実業団サイクルロードレースin南信州松川
優勝 中村誠選手(宇都宮ブリッツェン)、4位 内間康平選手(鹿屋体育大学BLUE SKY)
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ブエルタ・ア・レオン(UCI 2.2) 第2ステージ
優勝 宮澤崇史選手(チームNIPPO)
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トライアスロン NTTジャパンカップ大阪大会 2位 平野司選手(HANS・Sua・稲毛インター)
車イス陸上 ジャパンパラリンピック陸上競技大会
800m優勝、5000m優勝 土田和歌子選手(サノフィ・アベンティス)

提供:パナソニック ポリテクノロジー株式会社