アメリカのフィットネス機器ブランド「ワフー」のスペシャルコンテンツでは、同社がサポートするチームスカイにフォーカス。選手が実際に行ったトレーニング内容や、チームスカイが採用するトレーニングプログラムを体感したYouTuberけんたさんのレポートを紹介しよう。

チームスカイの選手たちも納得「5年前にKICKRがあったら、もっと楽だったのに!」

今シーズンから白基調のキットに変わったチームスカイ。過去6年のツール・ド・フランスで5回優勝をさらっているその強さはワールドツアー・レースの常識を変えさせるほど圧倒的だ。

チームスカイは「アップ」と「ダウン」で必ずKICKRを使う

ローラー台でアップするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)らローラー台でアップするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームバスから出てきたルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)とアップ中のクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)。使用するワフー KICKRだチームバスから出てきたルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)とアップ中のクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)。使用するワフー KICKRだ photo:Tim de Waele / TDWsport表彰式後もローラーでのクールダウンに余念のないクリストファー・フルーム(チームスカイ)表彰式後もローラーでのクールダウンに余念のないクリストファー・フルーム(チームスカイ) photo:Makoto.AYANO

チームスカイのこの強さを支えているのは、徹底的なデータ分析とそれに基づいた緻密なトレーニングプラン、そして「マージナルゲイン」と呼ばれる、たとえ1%でもレースを取り巻く些細なことに徹底的にこだわり、変革を求める姿勢にあると言われている。レース直後に選手たちがローラーやターボトレーナーでウォームダウンをしながらインタビューに応える姿はもはやお馴染みだが、ウィギンスらチームスカイが最初にこれを始めた時には大きな話題になったのを覚えているロードレースファンも多いのではないだろうか。

そのチームスカイは、2014年からワフーのターボトレーナー、KICKR(キッカー)を使っている。KICKRはトレーナー側のスプロケットを自転車のドライブトレインで直接駆動するダイレクトドライブ式をいちはやく採用したスマートトレーナー。PCやスマートフォンなどを介しさまざまなプラットフォームでデータを自在に扱えることで一気にスマートトレーナーを代表する製品になっている。持ち運びができる軽さなのにスマートなトレーナー。データを大事にするチームスカイとの相性は抜群である。

「KICKRと他のローラーはリアルさが全然違う」タオ・ゲオゲガンハート

英国ファンの期待を背負う若手タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)英国ファンの期待を背負う若手タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
2016年のU23英国ロードチャンピオン、チームスカイに加わった2017年にはツアー・オブ・カリフォルニアとツアー・オブ・ヨークシャーで総合8位と、英国内のロードファンからは将来を担う若手選手としてアツい注目を浴びているタオ・ゲオゲガンハート選手は、KICKRを使ってのトレーニングをとても気に入っているという。

「KICKRでのトレーニングは、自分が経験してきたこれまでのインドア・トレーナーと全然違いますね。走行感がリアルだし、どんな天気の日も、用意されたプログラムに従って質の高いトレーニングができる。その時ターゲットとしているレースに向かって1日も無駄にせず仕上げていくことができます。自分はプロになる前は自宅のキッチンにトレーナーを置いてトレーニングするのが日課でしたが、もし5年前にKICKRがあったら、自分のトレーニングで成果を出すのはもっと楽になったに違いありません」(ゲオゲガンハート)

チームスカイの「強くなるトレーニング法」とは?

キャンプ地でも使用するワフー KICKRキャンプ地でも使用するワフー KICKR (c)wahoo
チームスカイでは、冬のトレーニングキャンプでマヨルカ島に行く際にも、KICKRを多数携行している。冬でも比較的温暖な地中海の島に行ってまで室内トレーナー?と思うが、チームスカイのトレーニング部長のティム・ケリソン氏は「天気などのコンディションに左右されずに、KICKRの正確なデータ読み出し機能や負荷コントロールでトレーニングすることは、選手たちのピークパフォーマンスを得るために欠かせない」と言う。

スカイ選手の実際のトレーニングをチラ見

タオはどんな室内トレーニングをしているのだろう。例としてチームスカイが公開してくれたのが以下のプログラムだ。翌日から始まるステージレースの前日、空港に向かう前に自宅のKICKRでトレーニングしたという。

このトレーニングは、翌日からのレースに備え、スレッシュホールド(閾値)を高めつつ疲労を残さないことを目的に、また移動日なので短時間で済むように設計された。

チームスカイが公開したToday's Planによる1時間のトレーニング例チームスカイが公開したToday's Planによる1時間のトレーニング例
1時間のプログラムは、ウォームアップの後にゾーン3、ゾーン3のまま低ケイデンスでトルク練習など、いくつかのケイデンスを経て、より強度の高い、シュレッシュホールドを超えたゾーンにも入っていくメニューになっている。最後には700wを超える高い負荷のブロックが30秒ずつ入っているのが見える。

チームスカイではこのToday's Planに選手たちの食事内容や補給の記録もとっていき、天気データなども併せてすべての面から各選手のベストコンディションを再現できるよう管理しているという。僅かな利点(ゲイン)をも漏らさず積み上げていく「マージナルゲイン」をよく口にするチームスカイらしい徹底した戦略だ。

スマートトレーナー×コーチングプログラムで強くなる

トレーニングの「質」を担保できるKICKRトレーニングの「質」を担保できるKICKR (c)wahoo
チームスカイでは、トレーニングデータの収集とプランニングに、オンライントレーニング&コーチングプログラムの「Today's Plan」を使っている。上記で紹介したグラフもこのToday's Planで作成されたものだ。このプログラムをPCなどを介してKICKRと連携させれば、メニュー通りにKICKRのブレーキ抵抗が自動的に変わり、簡単に質の高いストラクチャード・プログラムをこなすことができる。

また、トレーニング内容を記録していくことで、選手たちも自分が行っているそのトレーニングがどんな意味を持つのか、そのとき身体がどう感じるのかなどを理解するようになり、適切なトレーニング負荷や量が自分でもわかるようになるのも効果のひとつだという。

天気は関係なく、KICKRで室内トレーニングの意味は大きい天気は関係なく、KICKRで室内トレーニングの意味は大きい (c)wahoo

YouTuberのけんたさんが最新トレーニングに挑戦してみた

データを積み上げてどんどん強くなったチームスカイの快進撃が示すように、強いライダーになりたいならスマートトレーナー+トレーニングプログラムの組み合わせが、今最も効果的なトレーニング方法だと分かってきた。

「その『Today’s Plan』っていうんですか、アマチュアライダーの僕がやってもやりきれるんでしょうか? ちょっとやってみたいです!」と名乗りを挙げたのは日本の自転車YouTuberでナンバー・ワンのけんたさん。10万人のフォロワーを持つ彼、番組の楽しさについ忘れてしまうが、実はシリアスな自転車乗り。峠を登りながら自分を撮影するのは当たり前。今年は「ブルベでシュペールランドヌールを取得し、来年パリ〜ブレスト〜パリを走りたい」というのが目標のひとつなのだとか。で、日々KICKRでトレーニングを重ねている。

Wahooligan(ワフーリガン)と呼ばれるワフー・アンバサダーのYouTuberけんたさんWahooligan(ワフーリガン)と呼ばれるワフー・アンバサダーのYouTuberけんたさん photo:Seiya Matsumura
「KICKRのいいところのひとつは自動負荷調整機能がついてるのに簡単に移動させられる重さだってことですよね。チームスカイが使っているのには重さって理由もあるんじゃないかと邪推します。常時ローラー設置できる広さがある家ならいいですが、ウチもそんなに広くない。だいたいは避けたりしなくちゃいけないですからね」(けんたさん)

自分だけのストラクチャードトレーニング

夜な夜なズイフトライブを行うくらいスマートトレーナーでのバーチャルサイクリングに親しんでいるけんたさんだが、より本格的なコーチングプログラムに挑戦するのは初めてだ。

Today's Planの無料プランは7日間だけだが、有料プランに参加すると自分だけのストラクチャード・プログラムを立てることが可能となる。有料プランでは目標=出場レースの日程、目標の重要度、自分の身体の現在の仕上がり状態など、細かい質問でユーザーの目標を分析。その目標実現に向けた8週間〜16週間分のやるべき日々のパーソナル・トレーニング内容を設定してくれる。

これがユーザーのトレーニングプログラムだ。ベースとなるのは自分の体重、パワー平均値、スレッショルド時のパワーもしくは心拍。それが不明な場合、1日目はすべての基本となるスレッショルド測定からスタートする。

Today’s Planが出してきたけんたさんのためのトレーニングToday’s Planが出してきたけんたさんのためのトレーニング
トレーニングはカレンダーに自動で反映されるトレーニングはカレンダーに自動で反映される
今回けんたさんは冬の今若干体重多めの70kg、スレッショルドパワーは260w。「16週間後、ロードレース160km、獲得標高が4500mくらいあるのでクライムを強化したい、現在はベースは出来ているものの本格的には身体は仕上がってない」と正直ベースで現状を設定。Stravaの記録を検索してスレッショルド値を入れてみたら、30秒くらいの計算ののち、こんなトレーニングが示された。

けんたさんが初日にやるべき1時間半のトレーニングは以下の通り。

  1. ウォームアップ10分 115w〜176w
  2. インターバル10分 150w
  3. テンポ走 4分走(200w~213w)×6セット、インターバル30秒
  4. スレッショルド走 1分(227〜245w)×6セット、インターバル10秒
  5. クールダウン10分 115〜176w

けんたさんが行う1時間半のトレーニング内容けんたさんが行う1時間半のトレーニング内容
「英語が苦手なんですが、そのことよりも、みっちりと細かくその日やるべきことで埋まっていて追い詰められた感じがします。休息日も指定されている。ただ、一日のスケジュールを開いて見てみると、その日このトレーニングを何のためにやるのか、目的をしっかり設定して解説してあるのがいいですね。ウォームアップ、テンポ走、スレッショルド、休憩、クールダウンと細かく時間とワット数指定してあるのもいい。これに合わせてKICKRが負荷を変えるんですか……」(けんたさん)

こうして立てたToday's Planのトレーニング内容はファイルとしてエクスポートすることができる。ズイフトのユーザーの場合、2018年1月末からToday'sPlanのトレーニングが自動で自分のアカウントに追加されるようになったので、室内でバーチャルな空間を走りながら目標レースに向けた「自分だけのストラクチャード・トレーニング」ができる。これはけんたさんのようなズイフトヘビーユーザーにとっては嬉しいアップデートだ。

いざ、Today's Plan×KICKRでひた走る

サイクルコンピューターはワフー ELEMNT(エレメント)サイクルコンピューターはワフー ELEMNT(エレメント) photo:Seiya Matsumuraズイフトの自分のアカウントに自動でトレーニングが追加されるズイフトの自分のアカウントに自動でトレーニングが追加される

けんたさん、人生初のストラクチャード・プログラムに基づくトレーニングがスタート。最初のウォームアップパートは余裕しゃくしゃく。手元ではワフー ELEMNTを確認しながら画面のパワー指示に応じてペダルを回す。

「よくダイレクトドライブ式だと後輪がないので実走感が減る、という人がいますが、KICKRは踏んだ感じも自然です。ズイフトの中の既存プログラムは僕も週に何回か利用しているんですよ」とおしゃべりするさまは、まるでYouTubeを生で見ている感じ。だが、ズイフトの仮想空間走行中、ストラクチャード・プログラムに従って負荷が変わるKICKRに、けんたさんの実況は途絶える。

このあとToday's Planのけんたさん用トレーニングに従って1時間のメインパート。「なんかいつもより全体的にKICKRが重い気がしています。あれ、僕、パワーの設定間違えて適正よりも多い数字入れちゃったのかな」とけんたさん。

プログラムの要求に応じて踏みまくるけんたさんプログラムの要求に応じて踏みまくるけんたさん photo:Seiya Matsumura
いよいよ身体も暖まったころ、デザートのようにテンポ走6回の山がやってくる。6回のテンポ走を終えた瞬間に軽くなるKICKRの負荷。「でも今走ってるのはズイフト内のバーチャルでは登り区間なんですよね(苦笑)。画面の僕、超遅い」

そしてさらに6回ピークがあるスレッショルド走が始まると、画面に表示される目標パワー値に近づこうとしてまったく無言になるけんたさん。KICKRはその間も静かに淡々と、時に軽く、時に重くなりながら回り続けている。

KICKRのERGモードならプログラムが負荷コントロールをしてくれるから、目標パワーを見ながら、ひたすら滑り落ちないよう頑張り続けるだけでしっかりとしたストラクチャード・トレーニングができるのだ。

1時間半のプログラム終了して燃え尽きるけんたさん1時間半のプログラム終了して燃え尽きるけんたさん photo:Seiya Matsumura
「燃え尽きました……なんだこれ、自分の限界をうっかり知られてしまった気がする。同じ1時間半でも、今までズイフトで既存プログラムをやっていたのとはまったく濃さが違いました。これを16週間続ける間に、日々の記録がToday's Planにアップされて、分析されて、僕に足りないところがどんどん強化されるんですよね」とけんたさん。

ただ漫然と走るのではなく、目的をもって弱点を強化していくストラクチャード・プログラムと、自在に負荷を再現できるKICKRのコンビネーションに「参りました。今までちゃんと使えてなかったかもしれない、と思いいたりました」と感服。来年のパリ~ブレスト~パリ(1200km)完走に向けて、もっとロングタームでロングライドトレーニングを設定していきたい意向だ。

「そのためにはウィークデイはKICKRで室内走、週末はELEMNTつけてロングライドですね。ワフーはスマートトレーナーとサイクルコンピューターを両方作っているブランドなので、内と外、両方の走りのデータのアップも快適です」(けんたさん)

ちなみに、ELEMNTでもKICKRをコントロールできるので、Today's Planのストラクチャードプログラムを直接ELEMNTで読み込み、ズイフトもPCもなしでトレーニングも可能だ。

結論、KICKRの強みとは

ズイフト+KICKRでトレーニングの質が変わるズイフト+KICKRでトレーニングの質が変わる (c)wahoo
今回見てきたのはプロサイクリングの頂点にあるチームスカイが行っているトレーニングだが、プロには程遠いレベルのアマチュアであっても、その効率を極めたトレーニング内容は確実に役に立つはずだ。仕事や家事などの後、外に走りに行くことはできなくても、KICKRにまたがれば1時間みっちりと密度の濃いトレーニングができる。

KICKRに連携させて、タオの行っているようなストラクチャード・プログラムをできるオンラインサービスはToday's PlanだけでなくTrainerRoadなど多数ある。寒い季節の今から8週間、あるいは16週間のトレーニングプログラムを始めれば、シーズンには格段に強くなった自分を発見できるに違いない。

ワフー KICKR

ワフー KICKRワフー KICKR
サイズ(展開時)54cm×71cm
重量約21kg
対応ホイールサイズ24”、650c、700c、26”、27.5”、29”
対応ハブタイプ130/135mm QR、142×12mm Thru Axle with Adapter
ドライブトレイン11 Speed Shimano/SRAM(compatible with 8, 9 & 10)
負荷装置電磁式
精度+/-2%
計測データスピード、距離、パワー、ケイデンス
通信規格ANT+、ANT+ FE-C、Bluetooth
最大ワット数2000w
最大斜度20%
価格152,550円(税抜)


シクロワイアードのインプレッション記事は→こちら
提供:ワフー 文:青木陽子 写真:松村誠也