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正屋(まさや)

コンセプトは大人の秘密基地 ワクワクの詰まったプロショップ
福岡市南区、博多の中心街から少し離れた那珂川添いに福岡県を代表するプロサイクリングショップ「正屋(まさや)」はある。巨大な倉庫を改造したショップは、ときたま醤油屋さんか酒屋さんと間違えられたりするそうだが、それもどこか納得できる。

ここまで「大人の秘密基地」というコンセプトがぴったりとはまるショップもそうなかなか無いだろう。アメカジ調のデザインでまとめられた100坪の店内には50台ほどの展示バイクが並び、金網で仕切られたテックスペースや、貨物用のコンテナで作ったフィッティングラボ、スピニングスタジオ、そして正面入り口には本格的なスペシャルティコーヒーを提供する「5CAFE(ファイブカフェ)」まで、遊び心に満ち溢れたたくさんの工夫が店舗に詰め込まれている。

「正屋って、自転車好きが高じすぎてしまった自転車バカが、自転車バカ」のためにつくったショップなんです。」とは代表の岩崎正史さん。ご察しの通り、屋号の「正」は岩崎さんの名前からとったものだ。

正屋の創業は19年前に遡り、現在のお店は2011年にオープンさせて現在3年目。独立した際、岩崎さんは弱冠27歳だったそうだ。そのいきさつは店内に置かれているマンガ調のリーフレット「正屋全史」にまとめられているのだが、その中身が「独立の理由=自分で店をやれば欲しい自転車が卸値で買えるから」や、「カフェ併設の理由=ボクがおいしいコーヒーを飲みたいから」と、なんとも面白い。「だいたいその通りですよ(笑)」とは岩崎さん。「自分たちが面白いと思ったものを取り入れていった結果、こんなお店ができたんです。」と笑いながら話す。
およそ80坪のショップ店内。岩崎さんをはじめスタッフのこだわりが凝縮された空間だ
正屋代表の岩崎正史さん。27歳で独立し、店舗経営と同時にプロMTBチームの監督兼メカニックも務めた
貨物コンテナを使ったフィッティングコーナー。シマノのバイクフィッティングシステムが導入されている
およそ80坪、カフェと合わせて100坪を数えるショップ店内には、トレック、キャノンデール、ピナレロといったブランドの展示車がおよそ50台展示販売されている。クロスバイクからロード、MTBまでジャンルを問わず幅広いラインナップが特徴で、中にはクリスキングのハンドメイドフレームブランド「Cielo(シエロ)」といったマニアックなブランドや、サーリーのファットバイクといった、通をうならせる品揃えも。パーツやアクセサリー類も豊富に在庫している。

「マニアックなブランドやパーツを取り扱っているのは、お客様に対しての提案の一つです。お店のスタイルと一緒で、我々がおすすめできる自転車を集めていたらこうなりました。」とは岩崎さん。昨今では取り扱いを大手ブランドのみに絞るショップも少なく無いが、正屋ならどのように趣味が変化しても長く付き合うことができるはず。

正屋の正式な会社名称は「株式会社ジラボ」。「自」転車で「楽」しく「暮」らせる社会を創造するというコンセプトをもって取り組んでいるのは、「お客様へのサポートを第一にすること」にあるという。つまりただ自転車や用品を販売するだけではなく、ユーザーがずっと楽しい自転車ライフを続けていけるように遊び場を提供すること、それが岩崎さんの、ひいては正屋の目標だ。

実際に今一番に力を入れているのは、ビギナーサイクリストに安全にサイクリングを楽しんでもらうこと。ビギナーズライドや、毎週日曜日には2時間ほどの「サンデーモーニングライド」を開催しているうえ、ハンドサインやパンク修理、基本の走り方の講習やワークショップも随時行っている。年に一回、博多から鹿児島までの330kmを2日間かけて走破するロングツーリングも行うが、そのメインは1日目夜の飲み会だったりするそうだ(笑)。

「でも、おんぶに抱っこではなく、オウンリスクで自転車を楽しめる方、つまり"一人前の自転車乗り"を育てることがビギナーの方々と接する上での目標です。」とは岩崎さん。前述したワークショップを頻繁に開催しているのもそのためであるし、今では毎回かなりの人数を集めるほどの盛況ぶりだという。

「100万円の自転車で通勤したって、お買い物に行ったっていいし、僕らはそれを絶対に否定しません。人ぞれぞれいろんな遊び方があるし、たとえばロードバイクでグラベル(未舗装路)を走る遊びもじわじわと認知されはじめてきましたよね。自転車のいろいろな可能性をお客さまと一緒に見つけていきたいんです。」という岩崎さんの言葉が響く。最近では正屋に集う方々の中でトライアスロンブームが起こり、「カンパイビアアスリートクラブ」なるクラブチーム(名前が素敵ですね)が立ち上がったそうだ。
店内にはロードバイクやクロスバイクの他、大迫力のファットバイクもある
マニアを唸らせるハンドメイドフレームブランド、Cielo。クリスキングの姉妹ブランドだ
店内には過去に岩崎さんが携わってきたトレックMTBチームのジャージやゼッケン、サインなどが飾られていた
ピセイの正屋オリジナルジャージを始め、各社のアパレルが豊富に揃う
そんな多彩な魅力を持つ正屋の根幹を支えているのが、テック部門。岩崎さんは店舗経営と同時に10年間プロMTBメカニックとして国内レースを中心に転戦し、7シーズンは檀拓磨選手の専属メカニックとして、3シーズンはトレックファクトリーチームの監督兼メカニックを務め上げたという経歴を持つ。当時、野口忍さん、片山梨絵さんほか、今も第一線で活躍する小野寺健選手などを擁し、全日本選手権での優勝経験もあるという文字通りのトップチームだ。最近では山本幸平選手が国内でレースを戦う際の専属メカを務めてきた。

「良い選手がいっぱいいた時代でしたね。」と岩崎さんは当時を振り返る。「レース現場での作業とショップでの作業は全く内容が異なります。でも過酷な状況で使うバイクに携わってきた経験と、そのノウハウは正屋での作業に活かされています。気持ちよく遊ぶためには、しっかりと整備された自転車でなくてはなりませんからね。」と言う。

正屋で購入した自転車の調整や点検は生涯無料。入荷してきた自転車は客注・在庫問わず、一旦全てバラしてからグリスアップを行って丁寧に組み付ける。「自転車販売店ではありますが、気持ち的には"修理屋さん"です。だからできる限りの要望に応えますし、スペシャルなカスタムチューンにもなるべく対応します。だからいつ使うかも分からない工具まで揃えてあるんです(笑)」と岩崎さん。

金網で仕切られた奥にあるテックエリアはその幅約10M程、ここにはプロチームのメカニックとして経験を積んできた岩崎さんのこだわりが凝縮されている。そしてその思いは正屋で働くスタッフ全員に受け継がれているようだ。全国的に見てもMTBを徹底的に整備できるショップは少ないが、正屋ならば心配無用。もちろんロードバイクやクロスバイクだって言わずもがなである。
正屋の根幹を支えるのが10Mのテックエリア。プロの手によって自転車に命が吹き込まれる場所だ
入荷してきた自転車は全て分解し、グリスアップをし直してから再び組み上げていく
テックエリアに立つスタッフの横田さん、優勝経験もあるトライアスリート
「いつ使うかも分からない工具まで揃えてありますよ」とは岩崎さん
さて、ひとしきりショップを見て回ったら、併設の「5CAFE」で一休みすることをオススメしたい。ゆったりと落ち着く雰囲気のこちらは、スペシャルティコーヒーを頂けるカフェ。フレンチプレスで頂くコーヒーは厳選された豆だけを使うこだわりようで、店内のオーブンで焼き上げるベーグルやガトーショコラ、チーズケーキといったスイーツから、カレーやベーグルサンドといったランチまで、サイクリストのお腹を満たす本格メニューが勢揃いだ。

岩崎さんは「自転車屋とカフェの相性ってすごく良いし、自然だと思うんですよね。」と言う。過去にポートランドやカリフォルニアといったアメリカのショップ事情を視察した際、インスパイアを受けて作ってみたという。

今ではその味と雰囲気が評判を呼び、サイクリストのみならず、地元の方々も多く訪れているそうで、周辺敬老会の寄り合い場所としても使われているという。確かに居心地は良いし、実際に頂いてみればドリンクも軽食も、それからスイーツも美味しい。とても居心地が良いから、カフェでくつろいでいる間に仲間が次々と来店し、帰るに帰れなくなってしまう人がよくいるという話にも納得できる(笑)。どこか自宅のようにくつろげて、仲間と会える空間なのだ。

「単なる自転車屋ですが、目指すは地域に愛されるお店です。昔の八百屋さんとか、魚屋さんとか、そういう感じですね。自転車を広めるという意味では、地元の人とジャージ姿の自転車乗りが近くに存在しているから叶っているのかな」と岩崎さんは笑う。

「100%の完成形ですか?それはこの先にもずっとできないでしょう。時代とともにニーズも、僕らが面白いと思うことも変化していきますから、その都度正屋は変化していくと思うんです。これからも自転車バカが楽しめるお店をスタッフ、そしてお客様と一緒に作っていきたいですね」
人気のベーグルはもちろん、ケーキも全て店内で焼き上げる。フレンチプレスで頂くコーヒーもこだわりの逸品だ
取材時は人気のBLTベーグルサンドを頂きました。コーヒーともに文句なしに美味しい
正屋の正面玄関に併設された5CAFE。あたたかく、落ち着ける空間が広がっている
店舗情報
ブログ更新情報
アクセス 
博多駅から約9分、JR鹿児島本線竹下駅西口下車徒歩3分
スタッフからのメッセージ
「当店のスタッフは自転車を愛し、自転車を通して最高の笑顔を提供するプロフェッショナルの"自転車バカ"ばかり。でも今以上にもっともっと楽しいことを提案し、お客様の自転車ライフをより上質なものにしたいですね。初心者の方にこそ来て頂きたいですし、カフェだけを使って頂くのだってウェルカムです。

ロングツーリングやレース・イベント参加、トライアスロンなど、ご自身がステップアップしてもずっと楽しめるイベントを多数企画していますから、どうぞお気軽にお越し下さい。一緒に自転車を楽しみましょう。」

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