「もっと他のチームが激しくアタックすると思っていた。とにかくチームメイトに助けられた」。強烈な太陽が降り注ぐロベサルの街で、後続を数メートル引き離して勝利したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)。遅れてゴールするチームメイトを最後まで待ってから表彰台に向かった。

スタート準備OKの宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)スタート準備OKの宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji「簡単な勝利に見えたかも知れない。もちろん自分のコンディションが良いことに違いはないけど、チームメイトがその“簡単な勝利”を演出してくれたんだ。一日中ずっと集団の先頭に立ち、ゴール前では最後までサポートしてくれた」(グライペル)

ロット・ベリソルがコントロールするメイン集団ロット・ベリソルがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsujiアデレード東部に広がる“アデレードヒルズ”と呼ばれる丘陵地帯を舞台にしたツアー・ダウンアンダー第1ステージ。アデレードの外れにある住宅街を発った選手たちは、標高400mほどの丘陵地帯へと入って行く。コース全長は135km。

この日の最高気温は30度。強烈な紫外線が降り注ぐため、どの選手もスタッフもメディアも入念に日焼け止めを塗ってUCIワールドツアー開幕を迎えた。

ロベサルの周回コースに入るジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)ロベサルの周回コースに入るジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji2013年の記念すべきファーストエスケープは、ブリスベン出身のジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。今年からデンマークのクリスティーナ・ウォッチズに所属する20歳は、単独で7分のリードを稼ぎ出すことに成功する。

カービーは42km地点のKOMチェッカーヒルを先頭で通過し、リードを保ったままゴール地点ロサベルの周回コースに突入。ロット・ベリソルとアルゴス・シマノが徹底的にコントロールするメイン集団は、じわりじわりとカービーとの間合いを詰めて行く。

上位3名までポイント&ボーナスタイムが与えられるスプリントポイントが近づくと、にわかにメイン集団が活性化。2番手通過のボーナスタイム2秒を巡るスプリントが繰り広げられ、ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、チームスカイ)が合計3秒、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が合計3秒を稼ぎ出すことに成功する。

大きなタイム差がつかないツアー・ダウンアンダーでは、このスプリントポイントでのボーナスタイムが最終的な総合争いに大きく響く。ジルベールは「総合争いにおいても大事だけど、今日はチームカーの順番を上げる意味もあった」と言う。この日のBMCレーシングチームのチームカーは18番目。ジルベールの動きによって、翌日からBMCレーシングチームのチームカーはより集団に近い位置を走ることが出来る(ボトル運びが楽になる)。

内陸の貯水池を横目にプロトンは進む内陸の貯水池を横目にプロトンは進む photo:Kei Tsuji

スカイプロサイクリングが集団ペースアップを開始スカイプロサイクリングが集団ペースアップを開始 photo:Kei Tsujiやがて、カービーとの距離が近づくと、メイン集団からジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が飛び出して一気に先頭へ。ピノーは1分のリードを得たものの、ゴールまで20kmを残して吸収される。

平坦ステージとは言え、ワインやリンゴ畑が広がる周回コースはアップダウンの連続。「登りに強いスプリンター」を擁するスカイプロサイクリングやモビスターが強力にメイン集団のペースを上げ始めた。

ゴールスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ゴールスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)のカウンターアタックもラスト5kmで吸収。イアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)らが刻むハイペースによって、マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、そしてアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)までが脱落する。

「ダウンヒルで遅れてしまった。プロトンの中での走り方を忘れてしまっていた」と、1分19秒遅れでゴールし、早くも総合争いから脱落したシュレク。

チームスタッフと喜ぶアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)チームスタッフと喜ぶアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiゴールまで3kmを切り、スカイプロサイクリングやブランコプロサイクリング、FDJとのハイスピードバトルに競り勝ったのはロット・ベリソル。最も人数を揃えたロットトレインの後ろからグライペルが発進。後続を置き去りにする圧倒的なスピードで、早々に両手を挙げる余裕の勝利を飾った。

引退したロビー・マキュアン(オーストラリア)がもつ最多勝記録ステージ通算12勝に並んだグライペル。プロトンの中で一人だけトップコンディションに近いような印象。最終日前日にオールドウィランガヒル頂上ゴールが設定されてるため総合成績は諦めているが、この先のステージで勝利を量産しそうな勢いだ。

「チームオーダーは無かった」という宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)はステージ101位「チームオーダーは無かった」という宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)はステージ101位 photo:Kei Tsujiステージ2位に入ったのは、2011年のロード世界選手権U23ロードレースで優勝した21歳のアルノー・デマール(フランス、FDJ)。ステージ3位に入ったマーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)は「グライペルが最速なのは間違いない。でもコンディションは良く、自分にも勝つチャンスはある」と話す。

「今日はチームオーダーが特になく、ツアー後半に向けて体調を上げるように走ることを考えてスタートした」と話す宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は、1分19秒遅れでゴール。気温が45度まで上がった前週のトレーニング中に熱中症になった影響で、体調は万全とは言えない状況。「今は落ち着いて、良いステージを作って行きたい。体調を整えて、どこかで狙えるように頑張ります」。

ステージ通算12勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ステージ通算12勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiステージ2位に入った21歳のアルノー・デマール(フランス、FDJ)が新人賞ジャージを獲得ステージ2位に入った21歳のアルノー・デマール(フランス、FDJ)が新人賞ジャージを獲得 photo:Kei Tsuji





ツアー・ダウンアンダー2013第1ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)            3h35'24"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)
4位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ)
5位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                 +1'19"

個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)            3h35'14"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                    +04"
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)       +06"
4位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        +07"
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 ジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)      +08"
7位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ)                  +10"
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)                 +1'29"

山岳賞
ジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

新人賞
アルノー・デマール(フランス、FDJ)

チーム総合成績
ランプレ・メリダ

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia