オートクレーブなどの先進技術を使い、イタリアらしさの漂う美しいバイクを作り上げる新興ブランド、ペンナローラ。今回のインプレッションでは、そんなペンナローラの最新2013年モデル「RC4」にフォーカスを当てる。同社が「マイルドレーシング」と位置づけるフルカーボンバイクだ。

ペンナローラ RC4ペンナローラ RC4 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

ヨーロッパの中においても自転車熱の非常に高い国、イタリア。100年以上の歴史を持つメーカーが幾つも存在する中で、1985年ロベルト・ペンナローラ氏の手によって創業した新進ブランドがペンナローラだ。北イタリア・ロンバルディア州の州都であるミラノに居を構えるペンナローラが目指すのは、美しく、常に先進的で、ライダーに感動と、満足感を与えるバイクをつくること。

オートクレーブなどの先進技術を積極的に取り入れることで高められた性能は競合ブランドからも認められ、OEM生産を手がけるほどの実力を持つことがトピックスだ。年間製造台数は約3000台と規模こそ大きくは無いが、着実なモノづくりを土台に数量を限定して高機能・高品質なバイクを作り続けている。

曲線で構成された艶やかなBBシェル周りの造形曲線で構成された艶やかなBBシェル周りの造形 ボリューム感たっぷりのヘッドチューブ。1-1/8、1-1/2というベアリング径を採用するボリューム感たっぷりのヘッドチューブ。1-1/8、1-1/2というベアリング径を採用する フォークはストレート形状。トレイル量を45mmとすることで直進安定性を増しているフォークはストレート形状。トレイル量を45mmとすることで直進安定性を増している


そんなペンナローラが2013年モデルとして2012年の9月に発表したバイクが、「マイルドレーシング」として銘打ち、RC8の弟分として生まれたRC4だ。

フルカーボンモノコックで製造され、イタリアンバイクらしい曲線を多用した艷やかなフォルムが特徴のRC4。テーマとする「マイルド」、「レーシング」という2つの要素を満たすため、ピュアレーシングモデルであるRC8の意匠を受け継ぎつつ、穏やかな乗り心地を実現する工夫を盛り込んでいるのが特徴だ。

チューブ集合部は奇をてらわないスタンダードな作りだチューブ集合部は奇をてらわないスタンダードな作りだ トップチューブ前半は緩やかにアールを描く流麗なフォルムトップチューブ前半は緩やかにアールを描く流麗なフォルム


トップチューブに刻まれるRC4の文字トップチューブに刻まれるRC4の文字 BBシェル幅いっぱいに広げられたハンガー部分は、高い剛性を誇るBBシェル幅いっぱいに広げられたハンガー部分は、高い剛性を誇る


ヘッドチューブからダウンチューブ、チェーンステーにかけてのパワーラインは剛性を確保するため、大径化されているのがひとつの特徴だ。1-1/8、1-1/2インチのボリューム感に溢れる上下異型テーパードヘッドチューブは、もちろんダンシングの際の軽やかな振りなどを実現するヘッド剛性を上げるための造作だ。

シンプルな丸断面を用いたダウンチューブから繋がるハンガー部分は、ワイドなBB86規格を採用して横剛性の強化を。さらに一見シンプルに見えるチェーンステーは左右非対称構造とすることで、剛性と振動吸収性を最適化。柔軟な乗り心地とペダリングパワーのロス無い伝達を目指している。

ワイヤー類は全てフレーム内蔵とし、美しいルックスを向上させるワイヤー類は全てフレーム内蔵とし、美しいルックスを向上させる チェーンステーは左右非対称とし、振動吸収性と剛性のバランス取りを行うチェーンステーは左右非対称とし、振動吸収性と剛性のバランス取りを行う


そうして走り性能を求める一方で、RC8には無い「マイルド」さを求めるRC4。フロントフォークはオフセット量45mmとし、直進安定性と穏やかなハンドリングを目指すため。ヘッドチューブには前方に緩やかな曲線を設けることでねじれ剛性を向上させながら、素早い振動吸収性が与えられている。

そしてRC4の完成度を高めるのは、ペンナローラがこだわり抜くペインティングだ。専用のクリーンルーム内で行われるハンドペイント技術は高く評価され、著名なブランドも塗装も請け負うほど。フレームセット24万円強というプライスながら、RC4はトップモデルと遜色ない高級感を漂わせる。ケーブル類をフル内蔵としたフレームは、各社の機械式/Di2、EPS全てに対応する兼用仕様となる。

リアバックは比較的オーソドックスな作りを見せるリアバックは比較的オーソドックスな作りを見せる シートチューブから穏やかなラインを描き繋がるシートステーシートチューブから穏やかなラインを描き繋がるシートステー シートステーは緩やかにベンドする形状とし、振動吸収性の向上に配慮しているシートステーは緩やかにベンドする形状とし、振動吸収性の向上に配慮している


グランフォンドやロングライドも視野に入れつつ、アマチュアからプロレベルまでのレーサーをターゲットとして生まれたRC4。今回のテストバイクはプロトタイプの為、機械式コンポーネント専用となっていることを付け加えておく。早速テストライダー両氏によるインプレッションをお届けしよう。



―インプレッション

「平坦路でのダッシュ力に秀でている。人とは違うバイクを求める方に」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

このバイクはリアバックの出来が非常に良く、平坦路を後ろ荷重で踏み込んでいった際に抜群の加速性能があることが特徴ですね。比較して上りは得意ではありませんが、平坦のスピードレースで真価を発揮できるバイクだと感じました。

上りが不得意と述べましたが、それは恐らくフォークの横剛性がやや少ないことに起因しているのでは無いかと思いました。ダンシングでは左右にフォークがブレる雰囲気があり、大きく振った際にはロスを生み出しているようです。そのため乗って直ぐには少しモタついた印象を感じたのですが、じっくり乗り込んでいくと、リアバックの良さが見えてきました。

「平坦路でのダッシュ力に秀でている。人とは違うバイクを求める方に」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)「平坦路でのダッシュ力に秀でている。人とは違うバイクを求める方に」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

また、コーナリングではフォークの性格から、イン側にスパッと切れ込む特徴があって、左右の切り返しが非常に速いですね。慣れて、その性質を上手く味方に付けることができれば、ダウンヒルがとても速く下れそうです。恐らくジオメトリーでも早いハンドリングを可能とするように味付けされているのでしょう。ややクセがありますが、使いようによってはテクニカルコーナーの多いレースでは武器になるかもしれない、と感じます。

ヘッドからチェーンステー、特にBB周りにはミドルグレードのバイクらしからぬ剛性感がありますね。そのため前述したような加速性能の良さが生み出されているのでしょう。乗り心地は意外にゴチッと固く、アルミバイクのような雰囲気も感じられます。少々その硬さが目立ったので、乗り心地を重視したり、サンデーライドに使うのであればソフトな乗り味のホイールとタイヤのチョイスをしたほうが良いでしょう。

そのような性格のため、レース機材として見た場合はサーキットを使ったエンデューロや平坦レースや、ブレーキとダッシュが連続するクリテリウムのようなシチュエーションに向いているバイクだと感じました。特にトルクの強弱が連続して掛かる場面では武器になってくれると思います。

普段サンデーライドを楽しみつつ、時々ビギナークラスまでのレースに出る方にフィットするバイクです。値段も高く無く比較的リーズナブルで、この価格帯の中では際立つ美しいフォルムが特徴ですね。人とは違うイタリアンバイクを求める方には良い選択ではないでしょうか。



「マイルドという言葉がピッタリとはまる、伸びやかさのあるバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

「マイルドという言葉がピッタリとはまる、伸びやかさのあるバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「マイルドという言葉がピッタリとはまる、伸びやかさのあるバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 極端に踏み出しが軽いという訳では無く、ややタメのある加速性能が特徴あるバイクですね。それは恐らくリアの剛性が比較的柔らかいためですが、比較的大きなギアを掛けて踏み込むと、加速性能に光るものを感じました。脚を使わされてしまうような踏み心地の硬さがあまり無いため、ハイスピードで巡航しても比較的楽だと感じました。

メーカーの掲げる「マイルドレーシング」という言葉が見事にピッタリと合うような印象を持ちました。ピーキーさは感じられず、しっとりと落ち着いた乗り味が特徴です。縦方向の振動吸収性・クッション性は適度にあり、例えば後輪だけ跳ねてしまったり、前輪の方向が定まらないような不安定感が無く、両輪の接地感は絶えず感じられ、荒れた路面を通過した際などでも安心感があります。

フロントフォークは前後方向の力、つまりブレーキングに対しては何らブレたりヨレたりすること無く、対して横方向には積極的に動く性格がありますね。フォークの根本が横方向の荷重に対してしなるサスペンションのような働きをすることで、雑なダンシングや大きなショックもいなしてくれます。その為ロスが生まれていることは否めませんが、常に路面に吸い付くようような安心感があって、振動やショックに対するコントロールもしてくれます。

加えてハンドリングはかなりクイックですね。アールの小さなコーナーが続くような場面ではヒラヒラと曲がることができ、急なラインの変更や切り返しが得意です。この部分だけは初心者ですと慣れが必要です。

ルックスと乗り味は似通っていて、決して派手さはありません。しかし価格以上の落ち着いたしっとり感があり、良く言えばマイルドで、悪く言ってしまうと突出した性能が無いと言えるでしょう。価格的にも、性能的にも全体的に中級者レベルのライダーまでに対応する性格となっていると感じます。しかし全体的にクセは無く、バイクコントロールに慣れていないビギナーから、ある程度乗りなれた方にまで、誰にでも乗りこなせるバイクと言えるでしょう。

テストバイクにはロープロファイルのアルミホイールが装着されていましたが、これをカーボンディープリムホイールなどに交換すれば、より伸びやかな加速感を伸ばすことができ、気持ち良いフィーリングで走らせることができるかと感じました。

フレームの各部分を見ても雑な作りが無く、デカールの張り合わせなど細かい部分を見ても雑な作りが無く、クリア塗装もとても艶っぽくて価格以上の美しさ、存在感が漂っていますね。


ペンナローラ RC4ペンナローラ RC4 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

ペンナローラ RC4
フレーム:カーボンモノコック
カラー:Black X Blue , Black x Red
サイズ:XS / S / M / L
ヘッドセット:1-1/8、1-1/2
ボトムブラケット:BB86
重 量:1,100g (frame : M)
付属品:ヘッドセット、バーテープ
価 格:241,500円(税込、フレームセット)、317,100円(税込、シマノ105+マヴィックアクシウムS完成車)、283,500円(税込、シマノティアグラ+同R501完成車)、319,200円(税込、カンパニョーロヴェローチェ+同カムシン完成車)




インプレライダーのプロフィール

 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ。

サイクルポイント オーベスト



戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。

OVER-DOバイカーズサポート

ウェア協力:BIEMME(ビエンメ)


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano