メリダ2013モデルに新たに登場したフラッグシップモデルがSCULTURA SLだ。今回のインプレッションでは、2013シーズンヨーロッパ最高峰プロチームが駆り、グランツールを始めとするビッグレースを走るであろう、このバイクの実力、そして魅力を掘り下げる。

メリダ SCULTURA SL TEAMメリダ SCULTURA SL TEAM (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

マルチバン・メリダバイキングチームを擁し、MTBの世界でその名を轟かせる巨大台湾ブランド、メリダ。ロードやMTBを含め、多くの有名メーカーのOEM生産を手がけるなど比較的新しいブランドながら高い技術レベルを保持し、その規模は同台湾ブランドのジャイアントに次ぎ世界第2位を誇る。

これまでもロードバイクはラインナップに加えられていたが、メリダは2013年シーズンはイタリア籍のUCIプロツアーチームであるランプレの共同タイトルスポンサーとなることを発表。それを見越して開発され、2013年モデルの旗艦として、ランプレ・メリダのチームバイクとしてデビューしたのが、今回のテストバイクであるSCULTURA(スクルトゥーラ) SLである。

チューブ内にリブ補強を施す「ダブルチャンバーテクノロジー」を導入するチューブ内にリブ補強を施す「ダブルチャンバーテクノロジー」を導入する 1-1/8、1-1/2インチの大口径上下異型テーパードヘッドチューブを採用する1-1/8、1-1/2インチの大口径上下異型テーパードヘッドチューブを採用する カーボンレイアップにバイオファイバーを添加し、振動吸収性を向上させているカーボンレイアップにバイオファイバーを添加し、振動吸収性を向上させている


スプリンター向けのエアロバイク、パリ・ルーべに代表されるパヴェ(石畳)用のクラシックレース用バイクの開発がアナウンスされる中、スクルトゥーラSLが目指したのはグランツールに対応するオールラウンドな性能だ。つまりプロサーキットにおいて最高性能の軽量性と推進力、そしてコンフォート性能を同じ水準で獲得することを目標とした。

スクルトゥーラSLに投入されたテクノロジーの中において特徴的なのが、チューブ内にリブ補強を施す「ダブルチャンバーテクノロジー」だ。チューブ内を縦に区分けして2つの独立したチャンバーを設けるという、MTBトップモデルに採用されてきた技術を用いることで、曲げや捻りに対する剛性を向上させ、通じて軽量化を達成している。

トップチューブから緩やかにつながるシートステートップチューブから緩やかにつながるシートステー ボリューム感の高いヘッドチューブ周辺の造形ボリューム感の高いヘッドチューブ周辺の造形


緩やかなアーチを描くトップチューブ。扁平形状とされ、しなやかな乗り味を生み出す緩やかなアーチを描くトップチューブ。扁平形状とされ、しなやかな乗り味を生み出す BB386EVOなど、積極的に最新のシステムを導入したBB386EVOなど、積極的に最新のシステムを導入した


トップ~ヘッド~ダウンチューブとシートチューブ+BBシェル、リアバックの3ピースを接着する構造とし、応力の掛かる部分を下げつつ軽量化する「ストラクチャーエレメント」や、成形過程において内部を滑らかに仕上げる工夫など、手間を掛けてスクルトゥーラSLは生産される。

カーボンチューブの成形時に使用されるエポキシ樹脂にはナノテクノロジー素材を配合し、チューブ構造自体の強度を高め、小石などのヒット耐傷性を従来比で40%高めている。

主張の強いロゴはレーシング機材たる雰囲気を漂わせる主張の強いロゴはレーシング機材たる雰囲気を漂わせる シャープなラインで形作られるチェーンステーは、路面追従性を求めたシャープなラインで形作られるチェーンステーは、路面追従性を求めた


1-1/8、1-1/2インチの大口径上下異型テーパードヘッドチューブや、BB386EVOなど最新スペックを注ぎ込み、剛性とシャープな走りを追求するスクルトゥーラSL。その一方でグランツールなどのステージレースを走り抜くための快適性も忘れられてはいない。

リアバックとフロントフォークにはカーボンレイアップに植物由来のバイオファイバーを加え、高周波の振動をカット。更にリアバックは薄い扁平形状かつ緩いアールを持たせることで、素材自体と構造の2方向から振動吸収性を高めている。

チェーンステーやシートステーは扁平加工することで、衝撃吸収性を向上させるチェーンステーやシートステーは扁平加工することで、衝撃吸収性を向上させる シートステーは先端部から細く、振動吸収性に貢献シートステーは先端部から細く、振動吸収性に貢献 完成車に付属するシートポストはモノリンク方式を採用する完成車に付属するシートポストはモノリンク方式を採用する


そうしてつくり上げられたスクルトゥーラSLのフレーム重量は、57サイズで830g。ただ単に軽さを追い求めたバイクではないが、各ブランドのトップモデルと比較しても十分に超軽量といえる部類に入る。フレームの剛性はドイツの権威ある雑誌のテストにおいてトップレベル、しかし一方でシートステーの剛性は抑えられ、衝撃吸収性に貢献していることが証明されたという。

メリダが培ってきたテクノロジーが惜しみなく投入されたスクルトゥーラSLは、メリダのエンジニアによれば「技術の全てを投入し、軽量性と走り性能を究極のバランスでミックス」させたマシンだ。その真価はどのようなものだろうか。テストライダー両氏が検証する。




―インプレッション

「軽さ故のピーキーさが無く、オールラウンドに使えるレーシングバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

どこにも癖が感じられず、軽さ故の不安感も無く、私にはほとんど欠点が感じられませんでした。来シーズンはランプレチームに採用されるバイクですが、瞬発力に優れる点、そしてシャープなハンドリングにプロユースバイクの性格を特に強く感じました。

プロバイクというと乗り辛かったりピーキーなイメージがありますが、スクルトゥーラSLにはそんな雰囲気がありません。ツーリング用途にも対応するような安定感があり、ダンシングやハンドリング、下りのコーナリングで切れ込み過ぎることも無く扱いやすいですね。狙い通りのオールラウンドな性能が出ていて、私だったらどんなタイプのレースでもこれ一台あれば文句が出ませんね。

「軽さ故のピーキーさが無く、オールラウンドに使えるレーシングバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)「軽さ故のピーキーさが無く、オールラウンドに使えるレーシングバイク」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

思いっきりトルクを掛け、リアをねじ曲げるようなダンシングをしてもフレームが負けることがありません。剛性感は特にフロント~BB周辺が高いため、脚が無くなった時には苦労するかなと思います。しかし使用用途がレースですので、その辺りは多少犠牲になっていて然るべきでしょう。

単純な振動吸収性は特にリア周りに強く感じるのですが、フレームが軽量なためか荒れた路面ではバイクのバタつきが出る傾向にあります。小石を拾った時にも跳ねを感じたので、少しだけバイクに慣れる期間が必要です。

それを抑えるためには低圧で乗れるタイヤとホイールの組み合わせが良いと感じます。例えばチューブレスやチューブラータイヤ、そしてフレームが軽いため、少しどっしりとしたホイール、例えばコスミックカーボンなどは良い選択かもしれませんね。

メリダというとやはりMTBのイメージが強いかもしれませんが、このスクルトゥーラSLは完全なレーシングロードバイク。それもトップレーサー用機材として非常に完成度が高いと感じました。これでいてフレームセットは20万円台半ばという価格で非常にコストパフォーマンスも高いですよ。

オールラウンドな性能がありますので、どんな性格のコースやレースでも対応してくれるでしょう。どんなホイールも嫌わないような雰囲気ですので好みの乗り味を探すのも楽しいかもしれません。大手メーカーだけあって話題の機構を盛り込んでいてアピール度も高いですし、かなり研究しているんだろうなと伝わってきます。2台目、3台目のバイクでもレース機材として決して不満が出ることは無いと感じました。


「タメのある乗り味で、レースからコンフォートユースまでに使える」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

バネ感があって、猫足的な雰囲気のあるレーサーバイクだなという印象を受けました。ソフトと言うと単純な柔らかさをイメージするかもしれないのですが、それとは少し違って適度なしなやかさが感じられました。コーナリングやペダリングに対してもタメがありますので、コンフォート用途としても使えるのかなと言う印象を持ちました。

踏み心地に関してもマイルドなのですが、BB辺りがヨレるような弱さではなく、踏み込んだ際に奥の方で粘るような感覚がありました。フレームが踏ん張りつつも極端に跳ね返ることもありませんでした。少しクロモリフレームのような雰囲気も漂っていました。

「タメのある乗り味で、レースからコンフォートユースまでに使える」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「タメのある乗り味で、レースからコンフォートユースまでに使える」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

そのため少し重たいギアでトルクを掛け続けてもタレる雰囲気が無く、トラクションコントロールをバイクが自然に行なってくれる感覚がありますね。レースの後半、しっかりとしたペダリングができなくなってもある程度カバーしてくれるかもしれませんね。

極端に振動吸収性が良いわけでは無いですが、レースバイクとして見るならば十分な身体への優しさはあると思いました。ツール・ド・フランスのような、高強度のレースが2、3週間続く時のダメージを最小限にするような設計にしてあるのだろうと感じます。ホビーユースでも、例えば土曜日にライドを楽しんで、日曜日にも脚が残せるでしょう。

性能のバランス取りが良くなされたバイクですが、一方で若干のクセも感じられました。コーナーが連続して左右へ切り返す際や旋回する際、自分からアクションを起こしていかないと少し反応が遅く出る傾向にあります。諏訪さんは荒れた路面で跳ねると話していましたが、踏んだ時のウィップの戻りがやや遅いため、路面の凹凸に対してベストなタイミングを探す必要があるかもしれません。しかしバイクとしての完成度は高いですし、この性能を持っていながらフレームで26万円と、非常にコストパフォーマンスも良いですね。

バランスから生まれる軽さを非常に感じますので、上り、高速レース、先ほど述べたクセに慣れれば、高速クリテリウムやヒルクライムでも戦闘力は高いはずです。フレームがソフトですので、軽量で少し硬めのホイールを組めばトータルバランスも向上するでしょう。

メリダというとMTBのイメージが強いのですが、今回実際にテストしてみて完成度の高さに驚きました。多数のブランドのOEM生産を行なっていることからも、技術力の高さは察しが付くところ。今後ランプレ・メリダチームが使用し、印象が強くなれば一気にロードでもメジャーブランドとなる力を秘めています。そんなことを感じさせてくれるバイクでした。


メリダ SCULTURA SL TEAMメリダ SCULTURA SL TEAM (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


メリダ SCULTURA SL TEAM
サイズ:44,47,50,52,54,56
フレーム:SCULTURA Superlite BB386
フロントフォーク:BC Carbon superlite-S
コンポーネント:スラム RED
ホイール:DT Swiss RR1450 tricon
価 格:699,000円(税込)、269,000円(フレームセット・税込)





インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。

OVER-DOバイカーズサポート


諏訪孝浩諏訪孝浩 諏訪 孝浩(BIKESHOP SNEL)
バイクショップSNEL代表。自転車歴26年、過去にオランダのアマチュアチームに3シーズン在籍しクリテリウムに多数参戦。オランダクラブ内クリテリウム選手権3位など。
2008年3月に東京都大田区にショップをオープン。オランダで色々なショップを見てきた経験を元に、独自のセンスでショップを経営中。主にシクロクロスをメインに参戦し、クラブ員の約半数がシクロクロスに出場している。

BIKESHOP SNEL


ウェア協力:biciBISLEY 


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
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