チームブリヂストンアンカーに所属する西薗良太が中国籍のUCIプロコンチネンタルチーム「チャンピオンシステム・プロサイクリングチーム」と契約。全日本選手権TTでチャンピオンに輝き、ツール・ド・北海道で総合2位という成績を残した25歳が、活動の場をヨーロッパとアメリカに移す。

全日本選手権個人タイムトライアルで優勝した西薗良太(ブリヂストンアンカー)全日本選手権個人タイムトライアルで優勝した西薗良太(ブリヂストンアンカー) photo:Sonoko TANAKA2012年、活動2年目にしてアジアチームとして初めてUCIプロコンチネンタルチーム(セカンドディビジョンチーム)に昇格したチャンピオンシステム。10の国と地域の選手が集う多国籍なチームは、新たにオランダやアイルランド、カナダ、ドイツ、アメリカ人選手を獲得し、2013年シーズンに向けて補強を行なっている。

タイムトライアルのナショナルチャンピオンジャージに袖を通した西薗良太(ブリヂストンアンカー)タイムトライアルのナショナルチャンピオンジャージに袖を通した西薗良太(ブリヂストンアンカー) photo:Sonoko Tanaka現アイルランドチャンピオンのマシュー・ブラマイヤー(アイルランド、オメガファーマ・クイックステップ)や、2010年のクールネ〜ブリュッセル〜クールネで優勝したボビー・トラクセル(オランダ、ランドバウクレジット)、今年ジャパンカップで来日したカナダチャンピオンのライアン・ロス(カナダ、スパイダーテック・パワードバイC10)、かつてEQA・梅丹本舗・グラファイトデザインで走っていたグレゴール・ガズヴォダ(スロベニア、アージェードゥーゼル)もその中の一人だ。

「アジアの選手をトッププロに育てる」というミッションを担うチームには、すでに中国と香港、マレーシア出身選手が在籍。そこに日本人選手として初めて西薗良太が加わる。同時に、中国チャンピオンのガン・シュウと、韓国チャンピオンのジャン・チャンジェの契約も発表された。

「移籍先として英語圏のチームを探していましたが、日本人選手を探していたチャンピオンシステムが最適だと判断し、移籍を決めました。僕としては『ヨーロッパ』にこだわりはなくて、一つずつステップを踏んで行くことが大事だと思っています」と、西薗は契約に至った気持ちを語る。

「これまでは技術的な面で優れていない選手だったと思いますが、今年フランスから帰ってきて日本のレースを走ると、バイクコントロールやポジション取りなどが本当に楽になっていた。ロードレースのエッセンスが凝縮されたヨーロッパで走ることで実力がつくということを今シーズン実感しました。フランスに放り込まれたことで、技術が磨かれたと思います。これまでも自分のフィジカルには自信を持っていましたが、そういうこと(技術)はセンスだと思っていた。でも、UCIアジアツアーでは考えられないようなフランスレースの恐ろしいダウンヒルでもポジションを落とさなくなった時に、自分の中で『これはやっていける』という自信が生まれました。良いレースを走らせてもらったことに感謝しています」。

2012年にアジア初のUCIプロコンチネンタルチームに昇格した「チャンピオンシステム」2012年にアジア初のUCIプロコンチネンタルチームに昇格した「チャンピオンシステム」 photo:Yuko SATOインタビュー中、西薗の口から何度もこぼれたのは「楽しみです」という言葉。特にUCIアメリカツアーへの参戦を心待ちにしている様子が伺える。「UCIアメリカツアーがとても楽しみです。『自分が結果を出しやすいレース』を考えるとUCIアメリカツアーがちょうど良いのかもしれない」と西薗。チームの拠点は香港だが、主戦場はアジアではなくヨーロッパとアメリカ。とくにUCIアメリカツアーへの積極的な参戦が期待される。チャンピオンシステムはベルギーとアメリカ・カリフォルニアに活動拠点を持っており、シーズン中は世界中を転戦することになる。

「12月にチームミーティングやプレゼンテーション、メディカルチェックが香港であって、来年1月にカリフォルニアで行なわれるトレーニングキャンプに合流する予定です。2013年は自分の気質に合っているタイムトライアルの全日本タイトル防衛を狙っていきますし、今年チームが出場したツアー・オブ・ジャパンにも参加したいとチーム側に希望は伝えていくつもりです」。

現在25歳の西薗は、2011年にシマノレーシングに加入し、2012年ブリヂストンアンカーに移籍。ここまで毎年チームを変える選手は珍しいが、着実にステップアップを果たしている。「プロコンチネンタルまで上がると、山の頂上(世界のトップシーン)が少しずつ見えてくる。一気にステップアップするに越したことはないけど、プロコンチネンタルレベルで一度腰を据えないといけないと感じています。レースを始めた年齢が年齢なので、一歩も無駄に出来ない。無理矢理でも進んで行かないと、世界に通用する選手にならないという思いがあります」。

text:Kei Tsuji