2012年のツール・ド・フランス第8ステージで劇的な逃げ切り勝利を挙げたティボー・ピノをはじめFDJビッグマットの選手が駆り、華々しくデビューしたのがラピエールの最新フラッグシップモデル「ゼリウス EFI」だ。ツールでステージ2勝を達成したフレンチバイクにフォーカスする。

ラピエール XELIUS EFI FDJ CPラピエール XELIUS EFI FDJ CP (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

フランスはディジョンに本拠地を置き、開発から性能テスト、組み上げまでを一貫して自社ファクトリー内で行うラピエールは、1946年創業の歴史あるブランド。シティサイクルからピュアレーシングモデルまでをラインナップする総合バイクブランドだが、長い歴史で培われた技術を活かし奇をてらわない確かな製品づくりを行っている。

そんなラピエールのラインナップにおいて、ロードモデルのフラッグシップに位置するゼリウスシリーズ。長年に渡り自国プロチームであるFDJへと供給が行われ、実戦からのフィードバックを活かしブラッシュアップを続けてきたゼリウスの最新モデルが今回のテストバイク、「ゼリウス EFI」だ。

シートチューブはしなやかさを求め、細身とされているシートチューブはしなやかさを求め、細身とされている トップ1-1/8、ボトム1-1/4インチの上下異型のテーパードヘッドチューブトップ1-1/8、ボトム1-1/4インチの上下異型のテーパードヘッドチューブ EFIのテーマを実現するために採用されたオリジナルフォーク。しなやかな乗り味を演出するEFIのテーマを実現するために採用されたオリジナルフォーク。しなやかな乗り味を演出する


車名に奢られるEFIとは、「Efficient Frame Interactive」の頭文字をとったもの。つまりゼリウスEFIは、高剛性と快適性という相反する性能を「効率的に作用させあう(Efficient & Interactive)」ことを目指したバイクだ。通じて硬さや弾性率の異なるカーボン素材を適材適所に配置することでそのテーマの実現を図っている。

具体的にはトップチューブ前方からヘッド~ダウンチューブ~チェーンステーに掛けてのラインを強化しパワー伝達効率を狙う一方で、トップチューブ~シートステーに掛けてとシートチューブ、フロントフォークは比較的ソフトに味付けし快適性を追求した。HMF40カーボンをメインとしたモノコックの一体成型でありながら、細く積層を変え乗り味をコントロールできるのは高い技術力の証明だ。

これまでアッセンブルされたきたイーストンEC90SLフォークを廃し、トータルでコンセプトを達成する目的からオリジナルフォークに変更したこともトピックスと言える。

鮮やかなFDJ・ビッグマットのレプリカカラー。フレンチトリコロールが美しい鮮やかなFDJ・ビッグマットのレプリカカラー。フレンチトリコロールが美しい トップチューブ前方からヘッドチューブ、ダウンチューブ~チェーンステーにかけては剛性を強化した作りトップチューブ前方からヘッドチューブ、ダウンチューブ~チェーンステーにかけては剛性を強化した作り


完成車パッケージに採用されるリッチーのアルミハンドルとステム。堅実なセットアップだが車重は7.1kgをマーク完成車パッケージに採用されるリッチーのアルミハンドルとステム。堅実なセットアップだが車重は7.1kgをマーク 湾曲したトップチューブは快適な乗り心地のための造作。従来モデルより引き継ぐポイントだ湾曲したトップチューブは快適な乗り心地のための造作。従来モデルより引き継ぐポイントだ


フレーム形状は細部に至るまで大きく変更が加えられ、特に強化されたボトムラインは大きく形状が進化したポイントだ。余分を削ぎ落としたすっきりとした意匠は全く姿を消し、ダウンチューブはBB86を用いたワイドなハンガーシェルを経由し、そのままの幅を持ってチェーンステーに繋がるパワー感溢れる形状に。

従来複雑な曲線を描いていたチェーンステーも角断面基調のシンプルなものとされ、ペダリングパワーの伝達に貢献している。しなやかさを狙ったシートチューブはワイドなBBシェルに対して細く成形され、「EFI」のテーマを垣間見ることができる。

チェーンステーは丸みを帯びた四角形断面で剛性を強化したチェーンステーは丸みを帯びた四角形断面で剛性を強化した BB周辺は大きくフォルムが変更された。パワー感溢れる造形が特徴BB周辺は大きくフォルムが変更された。パワー感溢れる造形が特徴


シートステーはよりフレキシブルな動きを出すために縦方向に湾曲した形となり、従来のモノステー構造も一新された。上下異型のテーパードヘッドこそ同様だが、EFIのテーマを実現するためベアリング径はトップ1-1/8"、ボトム1-1/4"インチに変更されている。ケーブル取り回しは電動・機械式コンポーネントどちらにも対応するコンパーティブル仕様だ。

こうしたブラッシュアップが施された結果、ゼリウス EFIは2012年モデルと比較してヘッドチューブ周りを20%、BB周りのねじり剛性を10%向上させつつ、リア三角の柔軟性を7%引き上げることに成功。80gの軽量化を達成し、フレーム+フォークで1160gと超軽量に仕上げられている。

リア三角はチェーンステーの剛性強化を行いつつ、全体で7%の柔軟性向上を達成しているリア三角はチェーンステーの剛性強化を行いつつ、全体で7%の柔軟性向上を達成している シートステーはモノステー方式を廃し、しなやかさを追求しているシートステーはモノステー方式を廃し、しなやかさを追求している ダウンチューブ下側に位置するDi2バッテリーマウントダウンチューブ下側に位置するDi2バッテリーマウント


従来モデルと比較し、ライダーのエネルギー支出を約4%カット。マニクールの風洞施設において2%の空力能力向上をマークしたというゼリウス EFI。今回のテストバイクはコンポーネントにメカ式アルテグラ、ホイールにキシリウムエリートをアッセンブルした完成車「ゼリウス 400 EFI FDJ」だ。早速インプレッションをお届けしよう。





―インプレッション

「レベルの高いパワーライダーが真価を発揮できる、そんな実戦用バイク」藤野智一(なるしまフレンド)

まず非常に剛性の高いフレームです。それでいて振動吸収が悪いかと言ったらそんな事もありません。しっかりと路面の情報を伝えてきますが尖った衝撃を優しく丸い感じに変換してくれ、硬い割に滑らかな走りを見せてくれました。

プロレースでバリバリ走っているバイクですので、スキルと力を兼ね備えた人に向くバイクに仕上げられていると感じました。初心者でも乗れないことはありませんが、やはりレベルの高いライダーこそがこのフレームの持ち味を最大限活かすことができるでしょう。今年のツールでステージ2勝したのもうなずける、そんな第一印象でした。

「レベルの高いパワーライザーがこのバイクの真価を発揮できる、そんな実戦用バイク」藤野智一(なるしまフレンド)「レベルの高いパワーライザーがこのバイクの真価を発揮できる、そんな実戦用バイク」藤野智一(なるしまフレンド) 具体的に感じる性格ですが、まずフロントフォークはかなり縦に平べったい形状ですね。見た目的には横剛性が弱いかと思いましたが、しっかり粘るし、もちろん縦方向には長いのでブレーキングでビビッたりすることもありませんでした。

ねじれにも強いのですが、その分突っ張り感がありダンシングした時にその性格を癖と感じる場面もありました。悪く言うと振りにくいですが、良く言えばパワーのロス感がありません。従来の社外フォークを止めたとのことですが、正解だと思いますね。フレームとのマッチングもちぐはぐしておらず、適正です。

フレームやリアバック全体については横に柔らかいといったイメージは無く、硬い味付けになっています。グンと力を掛けて踏み込んでいった際、チェーンステーが車体のセンター付近、つまりBBの方向に向かって内側にねじれるような感覚がありました。推測ですが、踏み込んだパワーを横に逃さないためのものかと思いました。

アウターで、トップから2枚下げたギアでゴールスプリントしている感覚で踏んでもバックステーが負けて跳ねる感じもありませんでした。しっかりと路面を捉えつつ、力は逃がしません。

反対に、低速域ではある程度ケイデンス高めのペダリングをした方が良いでしょう。ヒルクライムではシッティングではなくある程度の回転数をもってダンシングすると良く登ってくれました。

先ほどフォークがしっかりしていると述べましたが、下りでは特に主張し過ぎているということもありません。しっかりと前後のバランス感があって、ギュッとブレーキを握りこんだ時もフォークがしっかりとパワーを受け止めてくれます。普段私のバイクは左前仕様でこの試乗車は右前です。いつもと同じ感覚でブレーキングしたら滑らせてしまったのですが、すぐにリカバリーできました。ちゃんとしているんだなって分かりますね。素早い動きにも反応してくれる実戦用バイク。フラッグシップ、つまり第一線で戦えるマシンということですね。

全体的に非常にバランスの取れたバイクですので、レース志向の方から一般ユーザーまで十分に乗れる自転車だと思います。ただ、硬いレースバイクですので、軽量ライダーや単純なロングライドですと反発を食らってしまう場合もあるでしょう。

オススメはパワーライダーや、単純に力の強い方。そんな方がレースやイベントで使えば、自分の持っているパワーを遺憾なく発揮させてくれる、そんなバイクです。


「硬いのに乗りやすい。オールラウンドに対応してくれるレーシング性能がある」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)


第一印象としては、乗りやすさのある今どきのカーボンレーサーといった感じでしょうか。乗り心地が良くて快適性が高いのに、力を逃がす感じが一切無くて、ガツンと踏んでいった時にも頑張れる。FDJ・ビッグマットのロゴを入れたフランスカラーにもやられてしまいましたね。文句なしにカッコイイです。

乗り心地に関して具体的に言うと、フレーム自体のバネ感は感じるのですが、それがロスになっているような感じはありません。単純に「硬い、軽い」といったことろからもう一つ上のレベルに到達しているな、というのを感じましたね。フロントフォークを含めたフロント周りは若干ソフトで、BBを中心としたフレームの下側に粘りのある強さを感じました。

「硬いのに乗りやすい。オールラウンドに対応してくれるレーシング性能がある」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)「硬いのに乗りやすい。オールラウンドに対応してくれるレーシング性能がある」三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

剛性感については、僕の力などでは全く破綻しないような強さが感じられます。いわば跳び箱の踏み切り台を使って高く飛び出すような「力の貯め感」がありますね。ペダルを下方向に向かって踏み込んでいるのに、BB付近で上手くまとめて前に自転車を進ませてくれる、そんなイメージでしょうか。そんな性格がありますので、多少ペダリングがぎこちなくなったり、ガチャ踏みしてもある程度は対応してくれました。

上りや下り、コーナリング含め、オールラウンドに様々なシチュエーションをこなすことができるバイクですね。レーシングバイクにしてはマイルドな味付けのハンドリングかと思いますが、疲れてきた時にも直進性は安心感に繋がってくれますよね。オリジナルフォークを初めて採用したゼリウスとのことですが、とてもフレームとのバランスがピッタリでコーナリング中も癖を感じることがありませんでした。

レースで使うことを考えると、このバイクが1台あれば様々なシチュエーションで使うことができるでしょう。癖が無いバイクですので、どんなホイールとのマッチングも問題無いと思います。正直走りでの個性はありませんが、低速から高速まで、バイクが乗る人に合わせてくれるような許容範囲の広さを感じます。

ルックス的にはとにかくレプリカカラーがカッコイイですよね。特に実車を見て強く感じました。意図的にトップチューブに段差(剛性バランスを調整している部分)を設けたり、細かい見た目のアクセントもあって私は好みです。ヨーロッパレースに憧れのある方にはお勧めできますね。組むのだとしたらこのカッコ良さを破綻させないパーツ選びをしたいですね。アッセンブルされているリッチーのパーツも実戦的で間違いがありません。

見た目の良さに一目惚れして買ってしまっても後悔することもないでしょう。素性が良く、もちろんプロレースを走っているバイクですから、自分のレベルが上がっても十分対応してくれます。一緒にどこまでも走っていけるバイクです。


ラピエール XELIUS 400EFI FDJ CPラピエール XELIUS 400EFI FDJ CP (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

ラピエール XELIUS 400EFI FDJ CP
サイズ:46、49、52、55
フレーム:EFIカーボンモノコック、HMF40
コンポーネント:シマノ・6700アルテグラ
ハンドル、ステム、シートポスト:リッチーWCS
サドル:フィジーク:ANTARES MG
ホイール:マヴィックKSYRIUM ELITE S WTS
カラー:FDJレプリカ
重 量:7.1kg(完成車)
価 格:449,000円(税抜)





インプレライダーのプロフィール

藤野智一藤野智一 藤野智一(なるしまフレンド)

92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務する。

なるしまフレンド


 三上 和志 三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。地元でのスクール活動も積極的に展開。ロードレースやシクロクロスレースにも参戦し、ジャンルを問わず自転車遊びを追求している。使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。

サイクルハウスMIKAMI


ウェア協力:レリック


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
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