アストゥリアス山岳2日目、史上18回目の登場となる定番峠・超級山岳ラゴス・デ・コバドンガが姿を現した。総合上位陣による激しいバトルが繰り広げられる中、レース序盤に大きなリードを稼いだ逃げグループのアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)が勝利。ブエルタにその名を刻んだ。

第15ステージ・コースプロフィール第15ステージ・コースプロフィール image: Unipublicいよいよ超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの頂上ゴールが登場する。1983年の初登場以来、実に17回もゴールを迎えてきた定番山岳だ。

逃げるダビ・デラフエンテ(スペイン、カハルーラル)やサイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)ら逃げるダビ・デラフエンテ(スペイン、カハルーラル)やサイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)ら photo:Unipublicカスティーリャ・イ・レオン州のラ・ロブラからラゴス・デ・コバドンガに至る186.5kmの道のりはアップダウンの連続で、翌日のゴール地点であるパハレス峠を逆から登り、72km地点で3級山岳サントエミリアーノ、そして146km地点で1級山岳ミラドール・デル・フィト(登坂距離6.8km・平均勾配8.3%)を越える。

その後、登坂距離が13.5kmにおよぶ長い長い超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登坂が始まる。標高1120mに至る登りの平均勾配は7%だが、頂上手前に下り区間が2カ所あるため、体感的にはずっと10%近い勾配が続く。今大会最初の超級頂上ゴールだ。

レースは開始直後からペースアップ。19名が飛び出したが、これを容認しないチームがメイン集団を率いて追走する。強い向かい風によってメイン集団が割れたこともあり、しばらくハイスピードな状態を維持したままレースは進行。集団が一つに戻り、逃げグループが10名に絞られた時点でようやく落ち着いた。

アンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)
パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)
ビセンテ・レイネス(スペイン、ロット・ベリソル)
セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)
サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)
ダビ・デラフエンテ(スペイン、カハルーラル)

逃げグループを形成したのは上位の10名。総合成績トップのカシェチキンは22分34秒遅れ。メイン集団は余裕を持ってこの逃げグループを送り出すとともに、最大で15分ものリードを許す。実質的に逃げ切り容認。集団コントロールを担ったカチューシャに逃げ吸収の意思は無かった。

超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを先頭で駆け上がるアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを先頭で駆け上がるアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル) photo:Kei Tsuji独走でゴールするアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)独走でゴールするアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル) photo:Unipublic

10分近く遅れて超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを登るメイングループ10分近く遅れて超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを登るメイングループ photo:Kei Tsuji

超級山岳ラゴス・デ・コバドンガでアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)超級山岳ラゴス・デ・コバドンガでアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Unipublic最後から2つめの1級山岳ミラドール・デル・フィト通過時点でメイン集団は13分遅れ。逃げ切りをほぼ確定された逃げグループが、最後の超級山岳ラゴス・デ・コバドンガに差し掛かる。カシェチキンのアタックやラストラスのカウンターアタックも不発。すると、ゴールまで11kmを残してピエドラが飛び出した。

登り中盤、15%ほどの急勾配区間でもピエドラのペースは落ちない。後方では、チームメイトのデラフエンテが追走グループを抑え込む。

コンタドールのアタックを抑え込んだホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がメイングループをリードするコンタドールのアタックを抑え込んだホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がメイングループをリードする photo:Kei Tsujiピエドラは後続を30秒、1分、1分30秒と順調に引き離し、最終的に2分のリードを得て超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの頂上にフィニッシュした。

今年でプロ6年目の26歳ピエドラは「理解するのに時間がかかりそうだ」と、キャリア最大の勝の印象を述べる。

超級山岳ラゴス・デ・コバドンガで大きく遅れたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)超級山岳ラゴス・デ・コバドンガで大きく遅れたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji「後ろではダビ(デラフエンテ)が上手くカウンターアタックを処理してくれていた。今はこの勝利を喜んで、自分の選手としての将来についてじっくり考えたい」。カハルーラルは設立3年目で念願のグランツール初勝利を飾った。

ピエドラがゴールしたちょうどその頃、11分後方ではマイヨロホを懸けた動きが本格化。サクソバンク・ティンコフバンクのダニエル・ナバーロ(スペイン)とヘスス・エルナンデス(スペイン)がアタックを仕掛け、これにイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が追いつく。

超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ photo:Kei Tsuji必然的にカチューシャがメイン集団を率いて追走し、アントンらを吸収。それでもアタックは止まず、ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)らが断続的にアタック。アントンやヘーシンク、そしてラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク・ティンコフバンク)もアタックに加わる。

こうしてペースが上がり続けたメイン集団から最初の脱落者が出る。総合3位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)。リゴベルト・ウラン(コロンビア)やセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)にアシストされながらも、フルームはずるずるとメイングループから遅れていく。

馬に乗ってレース観戦馬に乗ってレース観戦 photo:Kei Tsujiフルームの脱落に伴い、暫定総合3位に浮上したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がタイム差を広げるためにクインターナの力を借りてアタック。これにホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)が合流し、フルームを除く総合上位陣によるグループが形成された。

ここからコンタドールのアタックが始まる。コンタドールは合計5回アタックを繰り出したが、ロドリゲスは千切れない。クインターナにアシストされたバルベルデはペースを守って総合1位と2位に食らいつく。

笑顔で超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを登る土井雪広(アルゴス・シマノ)笑顔で超級山岳ラゴス・デ・コバドンガを登る土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsuji結局ロドリゲス、コンタドール、バルベルデの三強は一塊のまま、先頭ピエドラから9分25秒遅れでゴール。スプリントでバルベルデが先着したが、タイム差はつかなかった。

ライバルたちの攻撃を凌ぎきったロドリゲスは「何度コンタドールがアタックしたのか覚えていない。苦しんだけど耐え抜いた」と胸を撫で下ろす。

一方のコンタドールは「今日は調子が思わしくなかったので、まず最初にチームメイトに動いてもらった。自分も『ブエルタで勝つために』5〜6回アタックしたけど、プリート(ロドリゲス)は今までにないほど強い」と、ライバルを讃える。両者の総合タイム差は22秒と変わらず。バルベルデが1分41秒遅れの総合3位に浮上した。

「72km地点の3級山岳でまだ逃げが決まっていなかった場合のみ力を使う(逃げを狙う)」というオーダーでスタートした土井雪広(アルゴス・シマノ)は、メイン集団内で山岳をこなし、超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登りで集団から離れた。

「楽しみながら淡々と登った」と言うが、ステージ成績は57位。逃げていた10名を除くと、メイン集団の47番目でゴールしたことになる。2週間走ってなお「体調はとても良い」と土井。平坦ステージでのアシストの役目をこなすため、継続的に体力温存に努める。

超級山岳ラゴス・デ・コバドンガをグルペットが登る超級山岳ラゴス・デ・コバドンガをグルペットが登る photo:Kei Tsuji

ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第15ステージ結果
1位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)              5h01'23"
2位 ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)                +2'02"
3位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
4位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、カハルーラル)
5位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)                 +2'07"
6位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)                +2'12"
7位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)             +2'25"
8位 アンドレイ・カシェチキン(カザフスタン、アスタナ)             +3'35"
9位 ビセンテ・レイネス(スペイン、ロット・ベリソル)              +3'49"
10位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)       +6'45"

11位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +9'25"
12位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
13位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
15位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)               +9'48"
17位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)                +10'00"
19位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
22位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
23位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)           
26位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)                +10'08"
30位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)          +10'55"
57位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                     +15'50"

敢闘賞
アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              58h17'21"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)      +22"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)               +1'41"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                  +2'16"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                 +4'51"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)                 +5'42"
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)          +6'48"
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)                 +7'17"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)           +7'21"
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)               +7'39"
118位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                   +1h44'29"

ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               148pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              127pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)              112pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        34pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               30pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              26pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               4pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)    10pts

チーム総合成績
1位 モビスター                               174h32'38"
2位 エウスカルテル                               +2'52"
3位 チームスカイ                                +6'12"

text&photo:Kei Tsuji in Lagos de Covadonga, Spain

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