今大会最長の255kmで争われた第11ステージは再びスプリンター達が火花を散らした。ゴール前で発生した落車をくぐり抜け、2位以下を大きく離し先頭でゴールラインを駆け抜けたのはロベルト・フェラーリだった。

マリアローザを着て登場したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)マリアローザを着て登場したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsujiジロ・デ・イタリア第11ステージは北上を続け、トスカーナ州へと到達する。前日のゴール地点となった世界遺産サンフランチェスコ大聖堂のあるアッシジをスタートし、フィレンツェにほど近い温泉地、モンテカティーニ・テルメへと至るその距離は今大会最長となる255km。

逃げグループを形成するミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ・ビッグマット)ら逃げグループを形成するミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ・ビッグマット)ら photo:Kei Tsujiワンデークラシックさながらの長距離を走る大会11日目の通称は、「タッパ・バルタリ」。この地域出身の名選手、ジーノ・バルタリに由来する今ステージは、距離は長いもののコース中盤と後半にカテゴリー3級と4級の山岳が一つずつ配置されているのみと、スプリンターが脱落するような難易度は無い。

しかし4級山岳が用意されているのはゴール手前11km地点と、アタッカーにもステージ優勝の可能性がある。雨が降り、若干肌寒く感じられるアッシジを全190名の選手がスタート。7時間弱に渡るレースが始まった。

トラジメーノ湖沿いを西進するトラジメーノ湖沿いを西進する photo:Kei Tsuji天候はやがて回復し、この日の逃げは15km地点で6名が抜け出しに成功。逃げメンバーは、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)、ステファン・デニフル(オーストリア、ヴァカンソレイユ・DCM)、アドリアン・サエス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ・ビッグマット)、シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ)。

ブドウ畑を縫ってプロトンが進むブドウ畑を縫ってプロトンが進む photo:Kei Tsujiカイセンは11ステージを消化した今大会にして、すでに3度目のエスケープと積極的に逃げに乗る姿勢を見せる。やがてポンツィが遅れると、残る5名は協力して順調にタイム差を拡大させていった。

スプリンターを含むメイン集団が逃げグループを追うスプリンターを含むメイン集団が逃げグループを追う photo:Kei Tsujiこの動きを見送ったメイン集団は、スプリント勝利を狙うチームスカイとラボバンクが中心となってタイム差の調整を担う。マリア・ローザのホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャはこの日、逃げグループに総合を脅かすメンバーが入っていなかったためコントロールには加わらなかった。

逃げグループから飛び出し、最後まで粘るマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)逃げグループから飛び出し、最後まで粘るマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク) photo:Riccardo Scanferlaこの日は距離が長いこともあり、逃げグループとメイン集団ともにスローペースでレースを展開し、そのタイム差は中盤まで3分前後で推移。平均速度は35km/h台と山岳ステージ並のペースを刻んでいく。

154.5km地点の3級山岳ポッジオ・アッラ・クローチェでも先頭5名の協調体勢は崩れず、争わずしてカイセンが先頭通過を果たした。

レースはトスカーナ州へと突入し、濃い緑の丘陵地帯と特産であるオリーブやブドウの畑を縫って先を急ぐ。この頃には気温も上昇し、ジャージを大きく開けて走る選手も見られた。

残り62kmの第2補給地点でタイム差は一旦50秒弱まで縮まるものの、早すぎるタイミングでの吸収を嫌ったメイン集団は再び間隔を広げていく。

残り30km。集団もスピードが上がり始め、タイム差が10秒を切ったところで先頭からボアーロがアタック。単独抜けだすと、一時1分ほどまでアドバンテージを稼ぎだす。

一旦ゴール地点を通過し、残り14.5km地点からモンテカティーニ・テルメの周回コースへ入るとやがて220km超を逃げたボアーロは吸収された。

そして4級山岳へ向けてスピードを上げる集団からは、ミルコ・セルヴァッジ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)とデニス・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)が抜け出しを図るも成功せず。

4級山岳ヴィコに向けてペースを上げるモビスターやオリカ・グリーンエッジ4級山岳ヴィコに向けてペースを上げるモビスターやオリカ・グリーンエッジ photo:Kei Tsuji続いてアタックを掛けたのはジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)。ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら3名を引き連れたまま頂上通過すると、テクニカルな下りでは総合ジャンプアップを狙うダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)とロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が合流した。

しかしこの動きもスピードの上がりきった集団を振り切るには至らず、残り距離はわずかに。スカイとサクソバンクが主導権を争う形で3つのコーナーが連続するラスト1kmへと突入していった。

ゴールスプリントを制したロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)ゴールスプリントを制したロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Kei Tsujiそしてラスト350mの鋭角右コーナーでこの日も落車が発生した。6番目でサーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CFSイノックス)がスリップ落車すると数名の選手が突っ込みここで集団は分断。

モードロの1つ前につけていたフェラーリは、アシスト選手がバランスを崩したことで失速したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)をかわしてスプリントを開始すると、先行していたトーマス・ヴァイクス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)も追い抜いた。

46秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ)46秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiその勢いは最後まで衰えず。後方を確認する余裕をみせたフェラーリが、歓喜のガッツポーズでゴールラインを駆け抜けた。

第3ステージの斜行によって落車を引き起こしてしまったフェラーリの、完璧なスプリント勝利。自身初となるグランツールでのステージ優勝を飾ることに成功した。

ステージ優勝のロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) 
(第3ステージのことで)批判されて動揺し、僕自身がっかりしていたけれど、ほっとしているよ。ずっと辛い毎日だったんだ。ずっとチェックされていたから、スプリントに加わるのは簡単なことではなかった。今はハッピーだと言えるよ。イタリア人選手にとってジロで勝つのは最高の気分なんだ。

別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は終盤、フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)らの落車で足止めを受け、46秒遅れの97位でゴールしている。

ステージ優勝を飾ったロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)がスプマンテを開けるステージ優勝を飾ったロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)がスプマンテを開ける photo:Kei Tsuji豪快にスプマンテを開けるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)豪快にスプマンテを開けるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2012第10ステージ結果
1位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) 6h49'05"
2位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)
5位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、アージェードゥーゼルラモンディアール)
6位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
7位 ダニエル・ショルン(オーストリア、チームネットアップ)
8位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
9位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)
10位 ジョフレ・スープ(フランス、FDJ・ビッグマット)
97位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)+46″

個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)47h16’39”
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +17"
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ) +32"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +52"
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)+52"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+57"
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)+1'02"
8位 ダリオ・カタルド(イタリア) +1'03"
9位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′09″
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +01′10″
112位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ) +51′05″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
ミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)

新人賞 マリアビアンカ
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)

チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,Riccard.Scanferla