地中海に面したトルコ南部の都市アランヤで開催された第1ステージは、トラックレーサーとしても名高いテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)がゴールスプリントを制し、リーダージャージを獲得した。日本人選手唯一の参加となる宮澤崇史もステージ7位と健闘した。

ヨーロッパからアジアへ! 熱気溢れる8日間のレース
スタートを待つアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)スタートを待つアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Sonoko.TanakaヨーロッパツアーHCにランクされるプレジデンシャル・ツアー・オブ・ターキーが4月22日にスタートした。今年で48回目を迎える約半世紀の歴史をもつレースで、その名のとおりトルコで開催される8日間のステージレースとなっている。国を挙げての開催で、2014年のワールドカレンダー入りをめざしているという、世界的に見て現在もっとも勢いに乗るレースの1つだろう。

宮澤崇史は2回目のツアー・オブ・ターキーに挑む宮澤崇史は2回目のツアー・オブ・ターキーに挑む photo:Sonoko.Tanaka今年からレースルートを大胆に変更。これまでトルコ最大の都市イスタンブールからスタートしていたが、今年は逆の行程となる。南部のリゾート都市アランヤで開幕すると地中海沿いに一行は西へ向かう。第3ステージに大会初となる1,850mの山頂ゴールが設定され、そこがクイーンステージとなる。

その後第7ステージで西端クシャダスに到着すると飛行機でイスタンブールへと移動。アジアとヨーロッパのちょうど境目に位置するイスタンブールで最終ステージを迎える。全8ステージ、総走行距離は1,174kmで争われる。

第1ステージ アランヤ〜アランヤ 135km
第2ステージ アランヤ〜アンタルヤ 153km
第3ステージ アンタルヤ〜エルマリ 152km(山頂ゴール)
第4ステージ フェトヒイェ〜マルマリス 132km
第5ステージ マルマリス〜トゥルグトレイス 178km
第6ステージ ボドルム〜クシャダス 179km
第7ステージ クシャダス〜イズミル 124km
第8ステージ イスタンブール〜イスタンブール 121km


スプリンターたちのジロ前哨戦
スタートを待つアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)スタートを待つアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Sonoko.Tanakaアランヤで開幕した48回目のツアー・オブ・ターキーアランヤで開幕した48回目のツアー・オブ・ターキー photo:Sonoko.Tanaka今年の参加チームは9つのUCIプロチームを含む全25チーム。レースの中盤は山頂ゴールもあり、起伏に富んだレイアウトになっているが、スプリンター向きのレースとして定着しており、ジロ・デ・イタリアに向けて調子を上げたいスプリンターたちが多く参戦するのがツアー・オブ・ターキーの特徴でもある。

序盤に形成された8人の先頭集団序盤に形成された8人の先頭集団 photo:Sonoko.Tanaka昨年、ステージ優勝を挙げているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)や、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)、ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)。

さらにシュヘルデプライスを制したマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)、ロビー・マキュアン(オーストラリア、グリーンエッジ)、マシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)とそうそうたるビッグネームが集まった。また今季現役復帰を果たしたアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やディフェンディングチャンピオンとなるアレクサンドル・エフィムキン(ロシア、チームタイプ1)らも大会に華を添える。


宮澤崇史「大事な時期にしっかりと結果を残したい」
ビーチサイドを疾走する選手たちビーチサイドを疾走する選手たち photo:Sonoko.Tanaka日本からは宮澤崇史(サクソバンク)が2年連続で出場する。全日本選手権と日程が重なっているため、全日本選手権への出場は見送ったが、「シーズン前半の締めくくりとなる自分にとってもチームにとっても非常に大切な時期。」

大規模な落車が起こり、人数を減らしての集団スプリント大規模な落車が起こり、人数を減らしての集団スプリント photo:Sonoko.Tanaka「全日本選手権も非常に大切なレースだったが、出ないと決めた分、ここでしっかりと走りたい。調子は上がっているので、このレースだけというわけではないが、この時期に確実に結果を残したいと思う。チームの目標は、ステージ、総合ともに狙いに行く。ゴールスプリントになるなら、自分はフアンホセ・アエドのアシストをするし、逃げの展開なら、そこに乗って勝ちを狙いたい」と話す。


アランヤ市内を駆け抜けた第1ステージ
テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)が僅差のスプリントを制したテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)が僅差のスプリントを制した photo:Sonoko.Tanaka大会幕開けとなる第1ステージは真っ青なエーゲ海に面するアランヤの街中で開催された。16.9kmの周回コースを8周回、計135kmのフラットコースで、スタート直後に3人のアタックが決まる。そこに5選手が合流する形で8人の先頭グループが形成され、38km地点で集団から8分25秒のリードを奪った。

しかしオメガファーマ・クイックステップやファルネーゼヴィーニらスプリンターチームにより徹底的にコントロールされた集団は徐々に先頭とのタイムを詰め、残り22km地点で集団は先行する選手をすべて飲み込んだ。

宮澤崇史はステージ7位で第1ステージを終えた宮澤崇史はステージ7位で第1ステージを終えた photo:Sonoko.Tanaka5周回目のフィニッシュラインには通常のスプリントポイントとは別に設定される「ターキッシュビューティポイント」が用意され、フレデリック・ロバート(ベルギー、ロット・ベリソル)が首位通過。白いリーダージャージを獲得したが、その後のクラッシュにより手を負傷するというバッドラックに見舞われ、明日のスタートを取りやめる方向。


テオ・ボスがサバイバルスプリントを制す
道幅の広いシンプルなコースで、ゴールスプリントに向けて各チームが位置取りを繰り広げたが、残り1kmで集団の中盤で大規模な落車が発生。多くのスプリンターが後方に取り残され、落車を免れた選手たちによる小さな集団でのゴールスプリントとなり、テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)が僅差でマシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)を下して、ステージ優勝とともにターコイズブルーのリーダージャージに袖を通した。

ツアー・オブ・ターキー第1ステージ、ステージ上位の表彰式ツアー・オブ・ターキー第1ステージ、ステージ上位の表彰式 photo:Sonoko.Tanakaゴスは、トラック競技のスプリントやケイリンなどの種目で計6回の世界チャンピオンに輝いた経歴をもつ選手で、スプリンターとしても活躍し昨年はシーズン5勝、最近では4月4日に開催されたクラシックレース、シュヘルデプライスで3位に入賞している。

「チームには自分とマーク・レンショー、2人のスプリンターがいるが、今日のステージには厳しい上りがなかったため、自分をエースとしてチームは動いてくれた。今日勝てたことをすごく嬉しく思っているよ。今後、レンショーがエースとなるなら、自分たちは100%の力を彼に注ぐ。」

「最終周回でチームはうまく機能していたけど、ラスト4kmの最終コーナーを抜けたとき、もっと多くのアシスト選手がいてほしかった。レンショーとグレーム・ブラウン、2人のチームメイトしか自分の前にはいなかったんだ。しかし、ブラウンはとてもいい走りをしたし、最後はマーク・レンショーがいい位置へと牽引してくれた。トラック競技で世界記録をもつ彼らから学ぶことは多いんだ」とレースを振り返る。

ゴールスプリントに加わった宮澤崇史は7位でフィニッシュ。「いい位置をキープしながらエースのJJ(フアンホセ・アエド)を待っていた。いつになっても来ないな〜と思ったら、後ろで落車が起こった。自分が行こうと思ったとき、自分はペタッキの後ろに付けていた。」

「そのまま彼のあとを追ってスプリントに入ったが、スピードが上がりきらなかったこともあり、前には届かなかったが、自分のコンディションは好印象。明日からのステージもチャンスがあれば狙うし、チームの結果に繋がる走りをしていきたい」とコメントする。

ディフェンディングチャンピオンであるアレクサンドル・エフィムキン(ロシア、タイプ1)ディフェンディングチャンピオンであるアレクサンドル・エフィムキン(ロシア、タイプ1) photo:Sonoko.Tanaka副賞に贈られた大量のバナナ副賞に贈られた大量のバナナ photo:Sonoko.Tanakaリーダージャージを獲得したテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)リーダージャージを獲得したテオ・ボス(オランダ、ラボバンク) photo:Sonoko.Tanaka


明日からラインレースが始まり、第2ステージは海沿いを西にアランヤ〜アンタルヤまで走る153kmの平坦なコース設定となっている。落車により集団後方に取り残されたスプリンターたちのフラストレーションが爆発するステージとなることを期待したい。


ツアー・オブ・ターキー2012 第1ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)3h05'55"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)
3位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、チームタイプ1)
4位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ボイ・ファンポーペル(オランダ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 宮澤崇史(日本、サクソバンク)

個人総合成績
1位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)3h05'45"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)+04"
3位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、チームタイプ1)+06"
4位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)+10"
5位 ボイ・ファンポーペル(オランダ、ユナイテッドヘルスケア)
6位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 宮澤崇史(日本、サクソバンク)

ポイント賞
テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)

ターキッシュビューティ賞
フレデリック・ロバート(ベルギー、ロット・ベリソル)

チーム総合成績
ウテンシルノルド・ネイムド(アイルランド)


photo & text : Sonoko.Tanaka
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