市民レース最高の舞台であるツール・ド・おきなわ市民210km。2007年の独走勝利から5年。ふたたび高江からの約70kmの独走を決めて優勝を飾った高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)が2度目の栄冠に輝いた。

名護市街を背に走る市民210kmの468人の選手たち名護市街を背に走る市民210kmの468人の選手たち (c)Makoto.AYANO

ホビーレーサーの夢の舞台

「市民レースの最高峰」、あるいは「ホビーレースの甲子園」とも呼ばれるツール・ド・おきなわ市民210km。2010年度からコース変更により210kmに距離を伸ばし、難易度もアップした。
沖縄北部のやんばる地方の自然豊かな公道を利用したコース、そしてアップダウンの連続する厳しさなど、どの面をみてもこのレースに匹敵するホビーレースは他にないものだ。

このグレードアップした憧れの舞台で勝利することはホビーレーサーたちにとって最高の夢。おきなわ市民210kmは、趣味で自転車レースを楽しむ選手たちにとって大きな目標となっている。

2010年大会の市民210kmはなるしまフレンドの岩島啓太、小畑郁がワン・ツーフィニッシュを決めたが、今年はチームがUCIチャンピオンレースに出場権を得たため、二人はそちらに出場。昨年その2人と逃げた末に3位となった高橋義博はチームCBレーシングからイナーメ・アイランド信濃山形に移籍。ゼッケン1(401)をつける。
しかし高橋は今シーズンなかばに大腿骨骨折の大怪我を負い、調子を取り戻しつつあるもののまだ本調子ではないという。

スタートラインに並んだ市民210kmの選手たちスタートラインに並んだ市民210kmの選手たち (c)Makoto.AYANO高橋義博(イナーメ・アイランド信濃山形)高橋義博(イナーメ・アイランド信濃山形) (c)Makoto.AYANO


名護市街をパレード走行する市民210kmの選手たち名護市街をパレード走行する市民210kmの選手たち (c)Makoto.AYANOスタートラインに着くのは468人の精鋭たち。過去大会の優勝者たちを筆頭に、優勝候補は複数いるのが現状だ。

スタートして本部半島に入り、リアルスタートが切られると同時に中尾峻(オーベスト)、一丸忠生(セカンドウィンド)、高橋史仁(大阪府立大学)の3人が抜け出し、差を開いて逃げに出る。

80km以上の海岸線の平坦路をこなし、普久川ダムの上りに入った先頭グループは安藤光平と鈴木和典(ともにオーベスト)、今田裕一(DOKYU)、大村寛(フジ・Cyclingtime)、永田将司(Team Via)、台湾の程永源、朱凡心ら7人がわずかに先行。メイン集団もオーベスト勢がコントロール。昨年強烈なペースで引き続けた西谷雅史を温存しながらリアルスタートが切られると同時に抜けだした中尾峻(オーベスト)、一丸忠生(セカンドウィンド)、高橋史仁(大阪府立大学)の3人リアルスタートが切られると同時に抜けだした中尾峻(オーベスト)、一丸忠生(セカンドウィンド)、高橋史仁(大阪府立大学)の3人 (c)Makoto.AYANOも攻撃するオーベストのチーム作戦が試みられた。

先頭集団は上りを繰り返すごとに人数を絞りながらも、大きくは分解せず、2度目の普久川ダムの上りをクリア。ここで高岡亮寛が抜け出す。ゴールまで70kmを残すこの動きに先頭集団からは追う選手がいなかった。高岡は順調に差を開いていく。

延長された区間の最後の上りである羽地ダムの上りで、単独で逃げる高岡を清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)が3分の差でひとり追走する。そしてその30数秒後に7人の追走グループが続くという展開になった。

追走の7人のメンバーは、山本雅之(ブリヂストンサイクル西日本)、橋本健(イナーメ・アイランド信濃山形)、チュー・1回目の普久川ダムの上りで先行する7人。安藤光平と鈴木和典(ともにオーベスト)が西谷雅史をアシストする動きだ1回目の普久川ダムの上りで先行する7人。安藤光平と鈴木和典(ともにオーベスト)が西谷雅史をアシストする動きだ (c)Makoto.AYANOファンシン(台湾車連)、宇津野邦之(日野自動車レーシング)、米内蒼馬(明星大学)、山本浩史(ペダル)、高橋聡一(シマノドリンキング)。


最後の厳しい上りで後続に4分近い差をつけた高岡は残り10kmに入り、逃げ切りが確実に。後続の7人はそれでも順調なローテーションを繰り返しながら高岡を追う。
7人は下りきって国道56号線に出たところで清宮を捉え、8人の集団となって走る。高岡のチームメイトの橋本健を含む全員で先頭交代を繰り返すが、それでも高岡との差はほとんど縮まることがなかった。

1回目の普久川ダムの上りをこなすメイン集団。先頭に西谷雅史が出てくる1回目の普久川ダムの上りをこなすメイン集団。先頭に西谷雅史が出てくる (c)Makoto.AYANO結果的に8人に4分37秒の大差をつけ、余裕いっぱいのガッツポーズを繰り返しながらゴールに飛び込んできた高岡。2007年に約40kmの独走で優勝して以来、5年ぶりの勝利となった。

2位争い8人のゴールスプリントは山本雅之(ブリヂストンサイクル西日本)がラスト500mで早めのロングスパートを開始し、追い込まれるもののゴールラインまで逃げきって2位を獲得。山本は中央大学自転車競技部の出身で、ブリヂストンサイクルに勤務するサラリーマン。
3位には高岡をアシストする動きに徹した橋本健(イナーメ・アイランド信濃山形)が入った。

優勝した高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)のコメント

様子見のアタックをかけたら誰も着いてこなかった。タイムが3分、5分と開いたので、後ろのローテは順調じゃないことが判ったんです。「もうこれはいくしかない」と思ったんです。平坦と上りが繰り返すこのいやらしいコースに、何度も脚が攣っていました。
2007年に40kmの独走で勝ったとき、「これをもう一度やれ」と言われても不可能だと思ったけど、また勝つことができた。2008年と2009年に2位が続き、昨年は5位。ようやく勝てました。しかも今年はできすぎのレースでしたね。
3位にアシストしてくれたチームメイトの橋本が入ったのも嬉しいです」。

後続に4分近い差を持って独走する高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)後続に4分近い差を持って独走する高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形) (c)Makoto.AYANO2位争いをする8人の集団の先頭は山本雅之(ブリヂストンサイクル西日本)がとった2位争いをする8人の集団の先頭は山本雅之(ブリヂストンサイクル西日本)がとった (c)Makoto.AYANO


市民210km結果
1位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)5時間33分04秒1
2位 山本雅之(ブリヂストンサイクル西日本)+4分37秒
10位争いのメイン集団の頭は今田裕一(DOKYUレーシングクラブ) がとった10位争いのメイン集団の頭は今田裕一(DOKYUレーシングクラブ) がとった (c)Makoto.AYANO3位 橋本健(イナーメ・アイランド信濃山形)
4位 チュー・ファンシン(台湾車連)
5位 宇津野邦之
6位 清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)
7位 米内蒼馬(明星大学)
8位 山本浩史(ペダル)
9位 高橋聡一(シマノドリンキング)+4分43秒
10位 今田裕一(DOKYUレーシングクラブ) +5分44秒


photo&text:Makoto.AYANO,Hideaki,TAKAGI