2.75kmのTTでそれまでのタイム差は8秒。そのリーダーのジャンよりもなんと11秒も速く駆け抜けたチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が、逆に3秒差をつけて個人総合優勝。チームは個人・団体・ポイント・山岳の各賞を獲得。NIPPOの圧倒的な勝利でツール・ド・北海道の戦いが幕を閉じた。

ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOのマシンはKYKLOS+カンパニョーロ+パナレーサーダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOのマシンはKYKLOS+カンパニョーロ+パナレーサー photo:Hideaki.TAKAGI9位のジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)9位のジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟) photo:Hideaki.TAKAGI3位の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)3位の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGI最終日は2.75kmの個人TT

4日間4ステージの今年のツール・ド・北海道。その最終ステージが9月19日(月)、札幌市モエレ沼で2.75kmの個人TTとして行われた。
コースは一ヶ所上りがあり、直角コーナーやカーブ、滑りやすい路面が組み合わされたテクニカルなもの。朝まで残った雨は上がり、路面はドライに。涼しさを越えて寒いほどの気温。

注目は個人総合優勝争いだ。リーダーのジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)と2位のチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)とのタイム差は8秒。2.75kmの個人TTは3分30秒ほどで終える。短いTTで8秒は普通ならば逆転は難しい。ましてや前日の第3ステージゴールで、スプリントでルビアーノよりも先着したジャンのスピードも脅威。2人とも脚質はヒルクライマー。

ルビアーノが驚異的なタイムを叩き出す

総合下位の選手から1分間隔でスタートしていく。
28番手スタートの青柳憲輝(シマノレーシング)が3分31秒70で暫定トップタイムに。上位陣は3分30秒をどれだけ切るかの戦いが予想される。
スプリンターのマッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)がいきなり3分24秒13のタイムを出し、会場がどよめく。鈴木譲、西薗良太らシマノレーシング勢も3分30秒程度の好タイムを出す。
そして注目は最後から2番目スタートのルビアーノだ。ルビアーノの走りはダンシングでも上体が崩れず、段差をしなやかに吸収、コーナーは誰よりも深く自転車を傾けて抜けていく。飛びぬけて速い印象は無いが、スムーズでしなやかさが印象の走りだ。そして出したタイムは3分20秒36。驚異的なタイムだ。
最終走者のジャンはすでにスタートしている。ジャンもコーナーを攻めて全開走行するがタイムは3分31秒28。全体の9位でヒルクライマーとしては速いタイム。ルビアーノが驚異的に速いのだ。
「ジャンとのタイム差8秒だけが頭にあった。前に走ったチームメイトから、コーナーは滑らないと聞いていたので攻めた。タイヤもグリップしてくれた」とルビアーノは語る。

この結果、11秒タイムを上回ったルビアーノが、ジャンを逆転して3秒差で個人総合優勝に。

1位のチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)1位のチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGI
しだいにペースを掴んだNIPPO

圧倒的なタイムで逆転優勝したチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)圧倒的なタイムで逆転優勝したチャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGI第4ステージ表彰 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOが表彰台を独占第4ステージ表彰 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOが表彰台を独占 photo:Hideaki.TAKAGI団体総合表彰 1位ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO、2位シマノレーシング、3位マトリックスパワータグ団体総合表彰 1位ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO、2位シマノレーシング、3位マトリックスパワータグ photo:Hideaki.TAKAGI個人総合時間賞表彰 優勝チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、2位ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)、3位シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)個人総合時間賞表彰 優勝チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、2位ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)、3位シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGIこれでNIPPOはステージ2勝、個人総合、団体総合、ポイント、山岳の各賞を独占。第1ステージが誤算だったが、第3ステージで取り戻し、当初の評判どおりに各賞を総なめする強さを見せた。
NIPPOの各選手は、1チーム5名で戦うレースは初めてという選手がほとんど。それぞれがどう戦っていいかわからない状況だった。第1ステージではラスト8kmまでは望む展開だったのに、連携ミスでシマノの後塵を拝した。ようやく第3ステージで5名での戦い方を学習してペースを掴んだ。最後はルビアーノの別格の強さで総合を手中にした。ルビアーノはヒルクライマーだ。それでも高い基礎能力で、3分少々のTTでライバルに10秒以上の差をつけた。ほか3名もTTで上位を独占、シマノ勢はその次に位置し、明らかにワンランク上の力を見せた。

シマノレーシングは第3ステージですべてを失った。だが第1ステージでの、チームプレーと個人の力がかみ合ったときの走りは、NIPPOさえも打ち負かせる力を持つことを証明、また西薗の実力を改めて示した。だがしかし、やはりステージ優勝だけと個人総合優勝は全く評価が違う。今回の経験を糧に、チームはまた一段上のレベルを目指すだろう。

マトリックスパワータグは、山下貴宏の第2ステージ優勝、団体総合3位と好結果を残した。今季にコンチネンタルチームに再登録し、メンバーを補強したことが好結果をもたらした。

宇都宮ブリッツェンは増田成幸が第2ステージで山岳ジャージを手にした。第3ステージではそれを手放したが、チーム一丸でそれを守る動きをした結果のことであり、評価されよう。

鹿屋体育大学など大学生が活躍

今年も大学生が活躍した。特に鹿屋体育大学のメンバーがコンチネンタルチームと同等の走りで席巻。U23の連続優勝は、あくまでも全体での優勝を目指した結果のものだった。初日にメカトラで遅れた吉田隼人だったが、その後2ステージは長距離を福島と逃げ続け、その総距離は200kmにも及ぶ。2年生の黒枝と山本は連日最前線でアタックしてゴールに絡む走りで沸かせた。チームはインカレロード惨敗から完全復活した。

早川朋宏(法政大学)も積極的に走り、特に第3ステージでは長距離を先行した結果の2位に。
U23で3位の中尾佳祐(順天堂大学)は全体の16位と上位につけた。辻本尚希と布施光も上位完走して同大の層の厚さを見せた。


結果
第4ステージ 2.75km個人TT
1位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)3分20秒36
2位 マッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+3秒77
3位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+7秒27
4位 シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+8秒47
5位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+8秒96
6位 福島晋一(トレンガヌ・サイクリングチーム)+10秒38
7位 鈴木譲(シマノレーシング)+10秒49
8位 西薗良太(シマノレーシング)+10秒86
9位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)+10秒92
10位 青柳憲輝(シマノレーシング)+11秒34

個人総合時間賞 
1位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)13時間56分47秒
2位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)+03秒
3位 シモーネ・カンパニャーロ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+22秒
4位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+29秒
5位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)+1分27秒
6位 山本元喜(鹿屋体育大学)+2分44秒
7位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+3分14秒
8位 西薗良太(シマノレーシング)+3分20秒
9位 畑中勇介(シマノレーシング)+3分24秒
10位 鈴木譲(シマノレーシング)+3分37秒

個人総合ポイント賞
1位 マッシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)49点
2位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)47点
3位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)42点

個人総合山岳賞
1位 チャヴェス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)20点
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)17点
3位 ジャン・キュング(大韓民国自転車競技連盟)11点

個人総合U23賞
1位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)13時間58分14秒
2位 山本元喜(鹿屋体育大学)+1分17秒
3位 中尾佳祐(順天堂大学)+5分27秒

団体総合時間賞
1位 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO 41時間51分20秒
2位 シマノレーシング +9分41秒
3位 マトリックスパワータグ +13分10秒

photo&text:高木秀彰
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