今年で25回目を迎えるツール・ド・北海道(UCI2.2)。帯広市スタートで道東を中心に回る、9月16日(金)から同19日(月)までの、4日間4ステージ580kmのレースだ。最終日がTTとなって最後の最後まで目が離せない戦いになる。

雄大な大地を舞台に繰り広げられるツール・ド・北海道。10年第2ステージより雄大な大地を舞台に繰り広げられるツール・ド・北海道。10年第2ステージより photo:Hideaki.TAKAGI

ツール・ド・北海道は、日本で唯一のタウン・トゥ・タウンのステージレース。その雄大な大地を舞台に繰り広げられるレースとして、選手にとっても観客にとっても楽しみなレースだ。

雄大な大地を舞台に繰り広げられるツール・ド・北海道。09年第4ステージより雄大な大地を舞台に繰り広げられるツール・ド・北海道。09年第4ステージより photo:Hideaki.TAKAGIシクロワイアードでは全区間を事前に実地調査した。その結果を踏まえて、コースから見どころを紹介しよう。

最終日がTTとなった今年の北海道
公道の3ステージは、2008年のコースとおよそ半分が同じだ。今年は3日間とも200km前後と長いのが特徴。北海道の山岳は緩くて長く、差がつきにくいのが特徴だが、そうではない上り坂を取り入れており、登坂で差をつけさせようという意図がくみ取れる。
例年との大きな違いは、最終日モエレ沼のクリテリウムが、個人タイムトライアルになったことだ。ただでさえ秒差の争いの北海道。最終日で逆転劇が見られるかもしれない。

最終日はモエレ沼。今年は個人TTになった最終日はモエレ沼。今年は個人TTになった photo:Hideaki.TAKAGIボーナスタイムは公道3ステージに設定されており、それぞれ中間のホットスポットで3、2、1秒。ゴールは10、6、4秒だ。

展開の最大の見どころは、3年前と同じく第1ステージの阿寒湖から多和平までの区間だろう。KOM目指して集団が長く伸びて分断。そのまま下りに入って、分裂と吸収を経て、ラストの丘陵地帯へ。確実に大きな動きを生み出すステージだ。

第2ステージ序盤の津別峠の走り方も注目だ。強力な選手が逃げた場合、その後の平坦が長いので、リーダーチームのメイン集団のコントロールも容易ではない。

第3ステージは終盤がカギ。10秒以上の差をつける最後のステージなだけに、総合争いが頂点に達する。

そして第4ステージの個人TTで総合順位が上位陣でもひっくり返ること必至。例年はそれこそ1秒、2秒差で上位陣が決まっているので、最終走者がゴールするまで総合の行方はわからない。

第1ステージゴールの多和平第1ステージゴールの多和平 photo:Hideaki.TAKAGI08年大会の第1ステージゴール08年大会の第1ステージゴール photo:Hideaki.TAKAGI9月16日(木)第1ステージ 帯広市から標茶町多和平 198km
帯広市内をスタートした集団は、4kmほどをパレード走行。序盤にホットスポットが2つあり、激しく争われるだろう。小さな丘はあるが決定的なものではない。

その後は阿寒岳方面へ向けて直線状の緩い上りに。緩く上ったまま標高645mの足寄峠を越えて阿寒湖畔のホットスポットへ。これを過ぎるといよいよKOMへの標高差およそ350mの上りだ。ようやく峠らしい峠でヒルクライマーたちの出番に。
そして下りはテクニカル。3年前の同コースでは、この下りで飛び出した宮澤ら5名が1分21秒の差をつけて、この年の大会の大勢を決めてしまった。なお、このときの総合6位はジョニー・フーガーランド(オランダ、現・ヴァカンソレイユ・DCM)だ。
長い直線状の下りを経て、およそ平坦基調で弟子屈へ。

このステージはラスト8キロが面白い。牧草地帯の丘陵を駆け抜けるもので、緩いアップダウンとカーブがあり、差をつけるには十分なコース設定。そしてゴールは丘を登りきったところの多和平。頂上ゴールと言うほどではないが、上位陣でも確実に秒差の付くゴールだ。

第2ステージ津別峠KOM。急峻な峠だ第2ステージ津別峠KOM。急峻な峠だ photo:Hideaki.TAKAGI9月17日(土)第2ステージ 弟子屈町川湯から鹿追町 210km
序盤に標高差700mの津別峠を配置した山岳コース。しかしそのピークからゴールまでは180kmもあるので作戦の難しいもの。
弟子屈町川湯温泉をスタート。川湯は文字通りにPH1.7という強酸性の温泉が湧き出てくることが由来。また、大相撲の大鵬関がこの川湯出身のため、相撲記念館がある。スタートはその相撲記念館横からだ。

しばらく屈斜路湖畔沿いの平坦な道を走ってから津別峠へ。いきなり8%ほどの勾配の上りになり、緩急はややあるものの上り続ける。北海道の峠では急なほうだ。下りも急で1.5車線、幅5mほどの狭く曲がりくねった下り。テクニカルだが路面状態は良いので、ハイスピードでのダウンヒルになる。この津別峠は、上り下りともに狭い区間は交通規制がされ、全幅員が使用可能だ。
第2ステージ2つ目のKOM第2ステージ2つ目のKOM photo:Hideaki.TAKAGI上り標高差700m、平均勾配8%は、まさしくヒルクライマーたちの活躍の場だ。しかし下りと、続く長い平坦路で差を詰められ吸収される可能性もまた高い。その後が長いので、数人で逃げ切るのは難しいだろう。むしろ風の影響を考えたほうがいいかもしれない。
また、中位以下の選手たちにとっては、下りきってから早めにメイン集団へ追いついておかないと、完走はできない。

補給地点へは迂回するように町道を通る。少し上り、下りきってから補給地点。

このコースのポイントは次のKOMだろう。「ミルクロード」を上りきったNTT鉄塔のある場所がKOMだ。下からの標高差は400m。終盤に現れることもあり意外にきつく感じられるだろう。ここでアタックが決まればゴールまで30km。逃げ切ることも可能な距離。勝敗に重要な影響を与えるのがこのKOMの存在だ。

ここからゴールまではひたすら平坦の直線。風向きも気になる。圧倒的に集団有利な区間。逃げが決まるかどうかは集団の意思次第だ。
ゴール前はクランク状に曲がって1.6kmでフィニッシュ地点。鹿追町中心部へ、広く直線状の道路でたどりつく。クランク状の箇所からゴールまでは長いので、集団ゴール時は態勢を十分に整えてスプリントできる。

戦略上の難易度は高いが、ぜひとも序盤の津別峠からの大逃げを期待したいところだ。そして大勢を決するのはラスト30kmのKOM。力のある選手たちが逃げ勝つシーンを見てみたいステージだ。

第3ステージはひたすら農場や牧草地帯を走る第3ステージはひたすら農場や牧草地帯を走る photo:Hideaki.TAKAGI第3ステージ1つ目のKOM第3ステージ1つ目のKOM photo:Hideaki.TAKAGI9月18日(日)第3ステージ 占冠から江別市 171km
上りの少ない、牧歌的風景の中を走るコース。
占冠村をスタート、すぐに日高峠への緩い上り。ヒルクライマーが活躍するような坂ではない。序盤で唯一差をつけるポイントはここだけ。ここで逃げができるかもしれないが、集団がコントロールするだろう。ゴールまで逃げるのは難しい。
南部のむかわ町方面を走るが両側はのどかな風景が広がる。基本は平坦。逃げが決まれば集団は穏やかに、決まらなければアタックがかかる場面。
国道274号のKOMは緩い上りで、最後1kmほどだけようやく峠らしい勾配。でも山岳ジャージの行方を占う大事な場面だ。ここから緩い下りや平坦が長いので、このKOMでは逃げは決まらないだろう。
このステージは終盤が面白い。ゴールまで40キロを切るあたりから丘陵地帯に入る。緩いアップダウンとカーブが連続し、決して集団は穏やかには通過しないだろう。そして小さいながらも2つ目のKOMを通過。ここからゴールまで26.5kmあり、独走力のある選手の逃げ切りを期待したいところ。


最終日はモエレ沼での個人TTだ最終日はモエレ沼での個人TTだ photo:Hideaki.TAKAGI9月19日(月)第4ステージ モエレ沼個人TT 2.75km
最終ステージはモエレ沼の個人タイムトライアル。例年はボーナスタイムに一喜一憂するクリテリウムだったが、今年は時間との戦いに興味が移る。
全選手にTTマシンは禁止なので、海外やクラブチームにとってもありがたい規定。パワーとハンドルさばきに長ける選手がもちろん有利。
最終ステージがTTなので、秒差の争いになりやすいツール・ド・北海道では大変に意味合いの大きなステージになる。最終ステージでの逆転は十分にありうる。

photo&text:高木秀彰
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