ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第20ステージは、険しい1級山岳の後に平坦路が続くコース。スプリント勝負を制したのはブエルタ通算5章のベンナーティ。総合1位にはコーボが王手。山岳賞はモンクティエが実質的に4連覇を達成。ポイント賞争いは最終ステージまでもつれ込んだ。

シャンパンを開けるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)シャンパンを開けるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック) photo:Kei Tsujiステージ優勝したダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)

僕にとってもチームにとっても、とても大切な勝利だ。ここ最近、チームは過酷な試練を経験している。この勝利は、僕らがチーム分断の混乱にも関わらず、がんばって走ったことへの報償だ。マキシム(モンフォール)は総合成績で6位だし、ヤコブ・フグルサングは総合11位だ。そういった選手たちにスプリントでリードアウトしてもらったのは、とても素晴らしい気分だ。

ここでの勝利で、世界選手権に向けてプラン通りに準備できているのが確認できた。この3週間で調子が上がってきているのが確かめられたので、士気も高まった。とくにうれしいのは、このステージがスプリンター向けの設定じゃなかったことだ。このステージはなにが起きてもおかしくない。だから、ここで勝てたのは自信につながる。

逃げグループに入ったダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ランプレフォンディタル)逃げグループに入ったダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ランプレフォンディタル) photo:Kei Tsuji逃げ集団に入るつもりはなかった。予定では、傍観者としてステージの展開を見守るつもりだった。20人以上の選手が集団で逃げたとき、僕たちはこれを見過ごせなかった。だから、僕ができあがっている逃げ集団に飛び込んでいった。逃げ集団にひとり以上の選手を送りこんでいるチームも多かったから、僕は自分で動かないで、彼らに仕事してもらうことができたんだ。

登りをこなせるかは自信がなかったけど、気楽にかまえていた。なにが起きるかを見る必要があるのはわかっていたからね。登りが始まったときは、逃げ集団はメイン集団から50秒先行していた。僕は自分のリズムで走ることにして、ひとりで登った。登りのトレーニングの気分だったよ。結局、メイン集団が後ろに迫ってきて、捉えられてしまった。
(チーム公式リリース)


両手を挙げてゴールするダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)両手を挙げてゴールするダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック) photo:Kei Tsuji- グランツールの最終ステージのスペシャリストとして(訳注:2007年のツールとブエルタの最終ステージで勝利)、今日ではなく明日を狙うと思われていました。今日は狙っていた?

狙ってなかった。今朝の時点では、ビトリアで勝てるとは思っていなかった。プランでは、ウルキオラ峠の登りが終わるまでは動かずに、レース展開を見るつもりだった。いつものようにスタートはとても高速だった。20人の選手が逃げ集団を形成したけれど、レオパード・トレックの選手は入っていなかった。逃げに追いつくには少し加速するだけでよかった。逃げ集団の中での走りを計算したんだ。
登りでは、自分のスタイル通りに登った。最初の3kmはたった一人で、結果としてはうまくいった。集団スプリントでの勝利に向けて、集中力を切らさないように走ったんだ。

- 今日ここで勝てたことへの満足度は? 落車でシーズンの大部分を損なってしまったけど。

すばらしい気分だよ。これまで2011年のシーズンはずっと苦しかったからね。ジロ・デ・イタリアに向けて調子を上げていたツール・ド・ロマンディの第1ステージで落車した。鎖骨骨折が4ヵ所で肋骨も骨折していたので、当然、肺に影響があった。2ヵ月かけて快復したんだけど、最初の1ヵ月は自転車に乗ることすらまったくできなかった。

- ブエルタの序盤にはたくさんのスプリンターがいたけど、今はわずか。2週間後の世界選手権で彼らに勝つためにも、これは有利なことでは?

ずいぶんと長い間、(イタリアナショナルチーム監督で選考委員の)パオロ・ベッティーニは、僕にナショナルチームのリーダーの資質があると言っている。その役割へのためらいはない。僕は世界選手権の翌日に31歳になる。自分はベテランのライダーではあるけれど、チャンピオンとは自負していない。仮にイタリアチームを率いることになったら、全力を尽くして、その機会を活かしたいと思う。世界選手権の最近の傾向では、アルカンシェルのジャージはブエルタの結果に基づいている。今ここで絶好調なのが、他の多くのスプリンターたちと違うところだ。これはやる気が高まるよ。まずはマドリードへ着くことが重要だ。そして明日のマドリードでもう1勝したいね。

- 現在のチームとレディオシャックが来年合併することについて。

すでに出ている公式アナウンス以上のことは、なにも知らない。このチームは居心地がいいし、2年契約を結んでいるから、来年もきっと、このチームの一員になれると思うよ。


マイヨロホを守ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)マイヨロホを守ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Kei Tsuji総合1位・複合賞のファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)

(スタート前)
不安はある。でも、昨日も不安だったし、マイヨロホを獲得して以来、ずっとそうだった。僕の戦略は変わらない。フルームの後に付くことだ。

(ゴール後)
数学的には、僕はまだブエルタの勝者じゃない。まだ2つの中間スプリントとマドリードのゴールが残っている。かき集めると計32秒のボーナスタイムが稼げる。そして幸いなことにフルームはスプリンターじゃない。明日の最終ステージは祝勝パーティになってほしいね。でも、フルームも優勝する可能性はある。今日最後の登りでは、自分の調子はよかった。フルームのアタックは、残り15kmの標識を中間スプリントのひとつと考えたからだろう。彼は僕にトラップを仕掛けるつもりだったんだろうけど、自分のミスに気づいてダンシングしたんだ。


山岳賞ジャージを着るダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)山岳賞ジャージを着るダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Kei Tsuji山岳賞4連覇が確定したダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)

(スタート前)
このジャージを勝ち取って、かならず4連覇したい! モンタグティに置いていかれるつもりはないし、登りでも彼に勝てると信じているよ。

(ゴール後)
これだよ。4年連続でブエルタの山岳賞を獲得した。このレースでは史上初なんだよ。来年も参加して、5回目のブエルタの山岳賞ジャージに挑戦したい。そう、(ホセマリア)ヒメネスのようにね(訳註:ヒメネスは連覇ではなく、実際には山岳賞4回)。
ここ数日はとても疲れていたから、厳しいステージだった。モンタグティの動きをチェックしていて、もう危険がないとわかったら安心できた。この勝利は、チームメイト、とくにニコ・セイメンスのおかげだ。2日前、彼はモンタグティから8ポイント奪ってくれた。僕とモンタグティの差は、ほんの7ポイントしかない。


クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji13秒差で総合2位に付けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

(スタート前)
ブエルタもほとんどが終わった。トラブルに巻き込まれないようにして、勝てるチャンスをうかがいたいけど、難しいね。強く感じたのは、バスク国が寄せる自転車競技への支援と情熱だ。僕たちの競技に対して、ものすごく好意的なんだ。ここでもっと多くのレースが開催されたらいいと思う。

(ゴール後)
今日もまた本当に厳しくて暑い1日だった。水分補給が大事だったから、ボトル15本は飲んだと思う。中間スプリントではなくて、残り20kmの標識でスプリントしてしまった。混同してしまった。でも、またトライした。レース全体を通じてコーボにプレッシャーを与え続けたけれど、彼は屈しなかった。ここ数日、父と兄弟が帯同していて、マドリードまで同行することになった。ブエルタで優勝して、彼らを喜ばせたい……。


チームスカイのスポーツディレクター、ステフェン・デヨンフ

このブエルタの今までのステージ同様、今日もチームのメンバーにとても満足している。彼らは本当によく走ったが、コーボとの14秒差を詰めることはできそうになかった。

ブラッド(ウィギンズ)はうまく数秒稼いだし、フルーミー(フルーム)もアタックしようとした。だけど距離の標識を見誤った。あそこでのアタックは誰もが驚いた。実際には僕らが揺さぶりをかけたと思われたようだ。
ブラッドとフルーミーはブエルタでずっとミスをしていない。チームの全員が彼らを誇りに思う。コーボとジェオックスもよくやっている。彼らはとても強いことを証明し、とてもクレバーなレースでの走りを見せている。


ステージ2位のエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)

満足している。ダニエーレ(ベンナーティ)と違って、僕はウルキオラ峠で強力なクライマーたちに付いていかなければならなかった。フレデリック・ケシアコフが助けてくれたおかげで、先頭集団を捉えられた。僕らはアスタナのチーム戦略として、集団を再編するような走りをした。僕らは全力でスプリントをした。僕もスプリントしたかったけれど、ゴール近くで向かい風のせいで無理そうだとわかった。ダニエーレは、世界選手権に先駆けて今日の勝利を期待されるプレッシャーが強かった。今日は、僕の力を示せた。でも、ナショナルチームのパオロ・ベッティーニ監督のプランとしては、僕の代表入りは今年ではなく、むしろ来年のオリンピックと世界選手権のほうがありそうだ。彼の選抜は最大限に尊重すべきだよ。13日の火曜日にイタリア代表チームのリストが出るはずだから、それまではチームの一員になれることを願っているよ。


ステージ59位のスチュアート・オグレディ(オーストラリア、レオパード・トレック)

とても戦略的なレースだった。僕らはカルロス・バレード(スペイン、ラボバンク)とカルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)は意図的に逃がしたんだ。他の選手たちのアタックを封じるためにね。ベンナーティの勝利をうれしく思う。彼は一流のプロ選手だよ! 僕たちにとっては、ブエルタのいい締めくくりになる。



translation & text : Taiko.YAMASAKI + Seiya.YAMASAKI

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