「これは上りで大きなアドバンテージになる」。テストしたジャーナリストは皆そう思ったハズだ。アナウンス間もない「サブK」ホイール、R-SYSアルティメイトを、イタリア北部の丘陵地帯でインプレッションした。

マヴィックR-SYSアルティメイトマヴィックR-SYSアルティメイト photo:Kei.Tsuji

R-SYSアルティメイトは、R-SYS同様にトラコンプテクノロジーによる中空カーボンスポークと背の低いカーボンリムが採用された登り専用のクライミングホイールだ。重量は前後セットで950gという驚くべき数値を達成している。

ジロ・デ・イタリア開幕まで3日を切る5月7日に正式にアナウンスされたR-SYSアルティメイト。シクロワイアードではまだ数少ない製品版をテストする機会を得た。現地プレゼンに参加したフォトジャーナリストの辻啓が試乗レポートする。

中空カーボンスポークによるコンプレッション構造だ中空カーボンスポークによるコンプレッション構造だ photo:Kei.Tsuji
ハブはオールカーボン製だハブはオールカーボン製だ photo:Kei.Tsuji
リアのフリー側スポークもトラコンプカーボン製で、クロス組みだリアのフリー側スポークもトラコンプカーボン製で、クロス組みだ photo:Kei.Tsuji

マヴィックR-SYSアルティメイト スペックデータ


・250gのチューブラーリム、リム高22mm
・100%カーボンスポーク、フロント16、リア20
・モノブロックフルカーボン構造
・フロント410g、リア540g

インプレッション


上りでの軽さは正義だ。前後で950gという軽さは持って軽く、当然走って軽い。従来のR-SYSホイールから履き替えると、飛躍的に軽快感が増した。

登坂性能に文句は無く、上りでの加速にも小気味よく反応してくれる。ひ弱なイメージが付きまとう「究極のクライミングホイール」としては剛性も充分で、「山岳でアタックを一発で決めるための最終兵器」という開発コンセプトに思わず頷く。

物理的にエアロダイナミクス性能はコスミックカーボン・アルティメイトに譲る。しかし両者の間に200g以上のウェイト差(F520g→410g、R665g→540g)があることを忘れてはならない。ブレーキング性能の良さについて他のジャーナリストと話していると、「ブレーキ面は、すでに実績のあるコスミックカーボン・アルティメイトと同じ処理を施している」とスタッフが念を押してきた。
ブレーキが驚くほど良く利くのは、シューの当たるサイド面の表面処理のためか、コンプレッション構造のおかげか。

リムサイド面はブレーキ用の特殊処理がしてあるリムサイド面はブレーキ用の特殊処理がしてある photo:Kei.Tsuji
製品版の実戦デビューとなるジロ・デ・イタリアでは、リクイガス、サイレンス・ロット、アージェードゥーゼルの3チームに2組ずつ供給。ここ一番の山場で投入されるようだ。まだデリバリーの時期は決まっておらず、プロのフィードバックをもとに完成度を詰めていくと思われる。

マヴィック供給チームのなかでもイヴァン・バッソ(リクイガス)の存在は大きい。総合優勝がかかる難関山岳の局面で使われることになるのだろう。


photo&text:辻啓