ジロ・デ・イタリア第3ステージはマリアチクラミーノのアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)が勝利。イタリア最強スプリンターの連勝、ならびにマリアローザ獲得にプロセッコ(スパークリングワイン)の街ヴァルドッビアーデネは沸いた。

「長い人生の中で10分なんて些細なもんだ」

スタート後20km、パルマノーヴァの街に向かうスタート後20km、パルマノーヴァの街に向かう photo:Kei Tsujiジロ・デ・イタリアも3日目、ここまでずっと天候に恵まれている。この日もスタート地点はアドリア海沿いで、ビーチリゾートとして知られるグラードの街にチームバスが集結。ズンズンと平野を突き進み、ドロミティの入り口に近いヴァルドッビアーデネにゴールする。

スタート地点での撮影を終え、選手が駆け出す前に足早にビーチリゾートを脱出。通過する街はどこも歓迎ムード一色で、薄いピンクの風船は一体何個製造されたんだと思うぐらい。20kmほど走って、パルマノーヴァという街の入り口に腰を落ち着けた。

交通規制が敷かれたロータリーで、行く手を阻まれた一人の紳士がクルマから降りてきた。係員が「10分ぐらい待ってくれ」というと、紳士は「Dieci minuti non cambiano la vita.(長い人生の中で10分なんて些細なもんだ)」と優しく語り、こだわりの塊のような茶色いタバコで一服。その一言が、時間に追われて切羽詰まっていた自分を解きほぐしてくれた。

結局レース通過まで30分ほどかかり、紳士が徐々にイライラしていたのはここだけの話。
ジロはプロセッコ帝国に侵攻

突如現れた最大勾配15%の短い急坂、路上ペイントはプロセッコ突如現れた最大勾配15%の短い急坂、路上ペイントはプロセッコ photo:Kei Tsujiゴールが置かれたヴァルドッビアーデネ周辺の一帯は、プロセッコ(スパークリングワイン)が有名で、一面ブドウ畑の丘陵が果てしなく続いている。中間スプリントポイントが設定されたコネリアーノの街(ラスト70km)を抜けると、いよいよプロセッコ帝国だ。

突如、目の前に壁のような激坂が登場した。その名もポッジォ。ブドウ畑を縫うように、2kmちょっとで高低差150mを駆け上がる急坂だ。カテゴリー山岳ではないが、地元では有名な上りのようで、沿道は鈴なりの観客で埋め尽くされていた。

終盤の周回コースはブドウ畑を縫うように進む終盤の周回コースはブドウ畑を縫うように進む photo:Kei Tsujiみんな、やけにテンションが高い。

窓を開けてみると、なるほど、辺りはワインの香りが充満していた。観客をかき分け、エンストしないように1速で慎重に上っていると、前を走っていたガーミンのクルマがプロセッコの襲撃を受けた! 「あ〜あ、かわいそうに」と思った瞬間、顔面に何かが当たった。

そう、こちらもプロセッコ攻撃を食らった。開けていた窓からプロセッコが進入し、車内はあちこちべっちょり。半泣きになりながら、何とかゴール地点に辿り着いたのは、最初の集団通過予定の30分前だった。

ブルセギンのアタックに大興奮

地元の英雄ブルセギンのファンが至る所に!地元の英雄ブルセギンのファンが至る所に! photo:Kei Tsuji昨年のジロで総合3位に入ったマルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ)は、前述のコネリアーノの出身。地元が近いだけにゴール地点では英雄的に崇められ、路上ペイントはもちろんのこと、ロバの帽子をかぶったファンが闊歩していた。

そんな地元の英雄が、ゴールまで3kmを残してアタック。その時の盛り上がりっぷりったらなかった。ちなみにイタリア人の名前で、母音ではなく「n」で追われる名字はヴェネト州特有のものだそうだ。ブルセギンの他には、バッラン、レベッリン・・・。

ペタッキ有言実行の連勝

先頭で姿を現したアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)先頭で姿を現したアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス) photo:Kei Tsujiマリアローザのいない集団が、中継ヘリを引き連れてヴァルドッビアーデネにやってきた。ブルセギンが吸収されると、元イタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)がカウンター。しかし成功せず、LPRブレークス先頭で最終ストレートに姿を現した。

下ハンドルを握り、低い体勢で猛進するペタッキ。後方からタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が追撃しているのが見えたが、最後まで優位を守りきったペタッキが熟練のガッツポーズでゴール。連勝に会場のボルテージは最高潮に。

止まらない止まらない・・・止まらない止まらない・・・ photo:Kei Tsujiしかし、ファインダーに映りこむペタッキの雄姿がどんどん近づいてくる。危険を感じたペタッキはフルブレーキングするが、間に合いそうにない。カーブの外側に陣取っていた自分に向かってアレジェットが飛んできた。

幸い脇をかすめただけで接触せず、ペタッキもフェンス寸前でストップ。危うくマリアローザ獲得を決めた5秒後に病院に運ばれるところだった。危機を回避したペタッキは「上りが予想よりも厳しかったけど、今日はずっと感触が良かった。アタックを封じ込めるチームメイトに食らいつき、いい形でスプリントに持ち込めたよ」と、喜びに満ちた顔でコメント。ステージ2連勝、マリアローザ獲得のペタッキ、完全復活だ。

ジロは4日目にしてドロミティに突入

平坦シリーズを終え、ジロは早くも山岳へと歩を進める。第4ステージはサンマルティーノ・ディ・カストロッツァ(標高1466m)の頂上ゴールが登場。長さ13.7kmで勾配は6%ちょっと。ペタッキがようやく手にしたマリアローザは、早くも総合狙いの選手の手に移る。

photo&text:Kei Tsuji

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