アドリア海沿いのテルモリ~テーラモ159kmで行われた第10ステージは、別府史之(レディオシャック)がスタート直後から3人でゴールまで残り11kmまで逃げ続けた。勝負は集団スプリントに持ち込まれ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がジロ通算6勝目となるステージ優勝を挙げた。

逃げる別府史之(日本、レディオシャック)ら3名逃げる別府史之(日本、レディオシャック)ら3名 photo:Riccardo Scanferla

スタートの街テルモリに並んだ各賞ジャージの選手たちスタートの街テルモリに並んだ各賞ジャージの選手たち (c)RCS Sportsジロ第1週を終え、休息日明けの第10ステージはイタリア本土に戻り、アドリア海沿いを北上する海岸線を走るコース。やや短めの159kmはほぼ平坦で、このジロでは数少ないスプリンター向けの平坦ステージだ。

スタート直後、フミこと別府史之(レディオシャック)がピエール・カゾー(フランス、エウスカルテル・エウスカディ)とユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)とともにアタックし、逃げを敢行した。

スタート直後に決まったこの逃げを集団は容認した。タイム差はすぐに5分前後に広がる。

メイン集団内で走るマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)メイン集団内で走るマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) photo:Kei Tsujiこの日、イタリアは曇空の涼しい天候。風が出たこの日は海も荒れ気味で、海岸線を走る選手に海風が吹きつけた。

しかし第9ステージまでのイタリア南部、とくにシチリアの暑さが身体に堪えたというフミは、スタート前に「この涼しさが助かる」とコメント。しかしこの日のスタート前、「逃げるなら明日(第11)のステージ」と話していた。しかし、いったん逃げ出したらからには止まらない。

3人は規則正しく先頭交代を繰り返し、順調に逃げ続ける。しかしスプリンターにチャンスのあるこのステージで集団が最後まで逃げを容認してくれるわけがないことは分かりきっていたことだ。

鉛色の空とアドリア海を見ながら集団は進む鉛色の空とアドリア海を見ながら集団は進む photo:Kei Tsujiちなみにフミは逃げの序盤で歯の詰め物が取れてしまう。それをチームカーに渡し、再び走りに集中したようだ。
途中約98km地点の中間スプリントポイントでは3人がスプリントで争い、フミが先頭通過でポイントを獲得した。

コースはラスト25kmで左折して海岸線道路を離れ、内陸に向かう。ここからは3人もそれまで以上にペダルに力を込めて差を維持する。ハンドルを深く握り、深い前傾姿勢を保ってペダリングを続けるフミ。3人の力強い逃げに、集団との差は開く気配さえ見せた。

しかし集団はやはり見逃してはくれなかった。スプリントに持ち込みたいHTCハイロードやランプレ、クイックステップなどが集団のペースを上げ、残り20kmでペースは一気に上がり、差は見る間に縮まった。

ラスト11km地点でメイン集団に吸収される別府史之(日本、レディオシャック)ラスト11km地点でメイン集団に吸収される別府史之(日本、レディオシャック) photo:Riccardo Scanferla3人の必死の逃げはゴールまで残り11km地点で終りを告げた。ここまで約148km。この逃げでフミはステージ・フーガ賞(=逃げ賞)を獲得することになる。

集団のスピードは残り10kmを切って上がるが、ここからは緩い上り勾配となる。集団から遅れる選手も出始める。コース幅は広く、横に広がった集団先頭はいくつも枝分かれした列車が伸びる。上り勾配に集団のスピードが鈍るなか、ゴール前2kmでデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)が単独で勢い良く飛び出した。

ミラーは集団に距離をつけて先行するが、残り1kmで捕まる。まず集団のスプリントの主導権をとったのはベントソで勝利を狙いたいモビスターの2人。それにペタッキとカヴェンディッシュが続く。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)に並ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)に並ぶ photo:Kei Tsuji

ベントソをパスしたペタッキが先行。しかし後ろにつけていたカヴェンディッシュが加速するとみるみるペタッキに差をつけた。

カヴはそのまま余裕を持ってゴール。大きく両手を広げ、笑顔をみせながらのフィニッシュ。その後ろではベントソがペタッキを差し込んだ。

第1ステージのチームTTで優勝し、マリアローザを着たカヴェンディッシュだが、このジロでの自身のステージ優勝は初。ステージ優勝としてはジロ通算6勝目となる勝利を挙げた。




両手を広げてゴールするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)両手を広げてゴールするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsuji

JSPORTSの電話に出る別府史之(日本、レディオシャック)JSPORTSの電話に出る別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiカヴェンディッシュのコメント
「イタリアで勝利することは僕にとってとても大きなことだ。この国は僕が初めてグランツールで勝利を挙げた国。パルマ(第2ステージ)で勝てなかったことは本当に残念だったけど、ジロは僕のハートに近い好きなレースの一つなんだ。

山岳(エトナ山)ではひどく苦しんだ。しかしここで勝つためになんとか耐え忍んだんだ。
僕らはこのジロに最高の経験をもつスプリントチームで臨んではいない。しかしそれでも勝ちたいという思いはいつもと変わらない。彼らは100%尽くしてくれる。それ以上望むものはないよ。
僕らは逃げを完全にコントロールした。僕はペタッキのホイールについた。彼はラスト250mで加速したけど、僕は150mで彼を追い抜いて勝ったんだ。

フミはフーガ賞獲得 

フミは80位でゴールした後、フーガ賞(=逃げ賞)を獲得。昨年の新城幸也に続き日本人として2年連続、第9ステージのポポヴィッチに続き、レディオシャックとしても2ステージ連続のフーガ賞獲得となった。フミは「捕まってしまったけど、楽しんで走れた。またチャンスを見つけていい走りがしたい」とご機嫌だ。


ジロ・デ・イタリア第10ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) 4h00'49"
2位 フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスターチーム)
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
4位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)
5位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
6位 フランチェスコ・キッキ(イタリア、クイックステップ)
7位 クラース・ロデウィック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
8位 サーシャ・モードロ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
9位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
10位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)


個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)37h04'40"
2位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+59"
3位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)+01'19"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+01'21"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+01'28"
6位 ダビ・アローヨ(スペイン、モビスターチーム)+01'37"
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+01'41"
8位 ホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)+01'47"
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)+02'21"
10位 マッテーオ・カラーラ(イタリアヴァカンソレイユ・DCM)


ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)

山岳賞 マリアヴェルデ
フィリッポ・サヴィーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

フーガ(逃げ)賞
別府史之(レディオシャック)


text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,Luca Bettini,CorVos

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