ドーピング捜査の影響で、ランプレ・ISDはチームオーダーの変更を余儀なくされ、複数の選手が土曜日にトリノで開幕するジロ・デ・イタリアの出場を見合わせることになった。ランプレ・ISDは公式にロベルト・ダミアーニを監督として迎え入れ、捜査線上に浮上した選手たちを出場させないことにしたのだ。

アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferlaイタリアのマントヴァでの捜査対象となったのは、ランプレのGMジュゼッペ・サロンニ、スポーツディレクターのマウリツィオ・ピオヴァーニとファブリツィオ・ボンテンピ。さらに最大14名のランプレの選手が、マントヴァの検察官の監視下に置かれているという。

その中にはランプレを離れた選手である、アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)、マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)も含まれている。

昨年のツールでエヴァンスを献身的にアシストしたマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)昨年のツールでエヴァンスを献身的にアシストしたマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor VosランプレのGMサロンニは、この件に関してシクロワイアードのインタビューを断った。

「彼は資料がすべて手に入るまで話すのを控えたがっている」と、チームの広報担当者アンドレア・アピアーニは言う。「不正確なことは言いたくないんだ」

「まだ何の資料も手にしていないんだ。今はコメントを出すつもりはない。何も言わないほうがいいだろう」と、ピオヴァーニはシクロワイアードに語った。「どんな言葉も悪い方に解釈されてしまうから」

マントヴァのアントニオ・コンドレッリ検察官は、昨年から証拠書類の作成に取り組んできた。書類は先月完成し、CONI(イタリア五輪委員会)に提出される見込みだ。疑惑に関与する選手やスタッフに、CONIが出場停止処分を下すこともありうる。

昨年4月に捜査が明るみに出て、BMCは一時的にバッランとサンタンブロジオを出場停止処分にした。2人ともレースに復帰し、サンタンブロジオはツール・ド・フランスでカデル・エヴァンスのアシストをつとめ、バッランは先月のパリ〜ルーベで6位に入っている。

イタリア紙ガゼッタ・デッロ・スポルトは昨日、バッランが2009年にヒト成長ホルモンと自己輸血、それにエリスロポエチン(EPO)を使用したと報じた。この年バッランは世界選手権で勝利している。月曜日にBMCはバッランとサンタンブロジオを再び出場停止にし、これによって2人はジロ・デ・イタリアへの出場を逃すことになった。

ガゼッタ紙も今日、マルツィオ・ブルセギンについても報じている。彼がランプレで走っていた2009年にEPOを使用したことを、コンドレッリと検察チームが発見したという報道だ。ブルセギンは2008年ジロで総合3位となっており、今年はモビスターチームのキャプテンとしてジロに出場することになっていた。だがブルセギンとマウロ・ダダルト(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、マルコ・バンディエラ(イタリア、クイックステップ)はそれぞれのチームから出場差し止めを言い渡されている。

捜査はグイード・ニグレッリ氏の薬局を中心に進められている。報道によれば、2008年と2009年にサロンニGMと2人のスポーツディレクター、ボンテンピとピオヴァーニが、選手たちにニグレッリ氏のもとを訪れるように勧めたという。捜査中にも関わらず、サロンニはチーム運営を続けている。だが、今はダミアーニが重責を負う立場となった。

オメガファーマ・ロットからランプレに移ったロベルト・ダミアーニ監督(左)オメガファーマ・ロットからランプレに移ったロベルト・ダミアーニ監督(左) photo:Cor Vosダミアーニは名将といわれるイタリア人で、オメガファーマ・ロットとの契約終了に合意し、フィリップ・ジルベールのアルデンヌ・クラシック3連覇に一役買ってから、ランプレに加わることになった。オメガファーマ・ロットに加わったのは2007年で、ツール・ド・フランスでエヴァンスが2度にわたって2位を獲得するのを助けた。それ以前にはマペイ、ファッサボルトロ、リクイガス、LPRで働いていた。

「サロンニはもともと、この役割を誰かにゆだねたいと思っていた」と、アピアーニはつけ加えた。「ちょうどいいタイミングだ。今このチームには、ダミアーニのような人物が必要だったからね」

ジロ第15ステージのガルデッチャを試走するミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)らジロ第15ステージのガルデッチャを試走するミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)ら photo:Cor Vosジロでランプレは、昨年総合4位だったミケーレ・スカルポーニ(イタリア)をエースとする。だが、スカルポーニにはパドヴァでの別のドーピング疑惑がかかっており、先月警察が彼の所持品を捜査したところだ。

イタリアのベネデット・ロベルティ検察官が、この捜査を命じたが、これはランス・アームストロングのトレーナーだったミケーレ・フェラーリ医師の捜査の一環だった。2006年、ミケーレ・フェラーリ医師は禁止薬物の処方で刑事告発されたが、裁判所は無罪とした。だがCONIはフェラーリ医師がイタリアのUCI登録選手と取引することを禁止した。

「実際、証拠が出ない限り、心配する理由はない」と、ランプレ・ISDの広報担当者アピアーニは言う。

ランプレは、ロベルティ検察官からさらなる証拠が示されるまで待つことにした。この場合、スカルポーニがジロの期間中に出場停止になるリスクもある。「スカルポーニはスポーツディレクターとも弁護士とも話をしている。チーム編成は、選手からの情報を元にして決めている。われわれは警察ではないんだ」

スカルポーニは2006年のドーピング捜査、オペラシオン・プエルトにも関与しており、出場停止処分をうけていた。

ロベルティ検察官の命令を受け、警察は選手の家宅捜索をおこなった。対象となったのは、モーリス・ポッソーニ(イタリア、チームスカイ)、イタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)とディエゴ・カッチャ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)、それに数名のカチューシャの選手たちだ。ポッソーニとヴィスコンティはジロへの出場を予定しているが、ファルネーゼヴィーニはカッチャを自宅待機とした。

スカイのデーヴィッド・ブレールスフォード代表は、先週シクロワイアードにポッソーニについて語った。彼によると「われわれは事実関係を立証しようとしている最中だ」とのことだ。そして発見されたもの次第では、スカイが「適切なアクションを取ることになるだろう」とも語った。

text:Gregor Brown in Torino, Italy
translation:Seiya Yamasaki