「なんだ!全然登りじゃないじゃないか!」「ステージプロフィール、ちゃんと作ってくれ!」ステージプロフィール図によるとラストが「登りフィニッシュ」のはずだった第7ステージ。走ってみると、登らないまま平坦でフィニッシュしてしまう今日のコース。多くの選手たちはとまどいを隠せなかった。

ベビーカーでおうえんちゅうベビーカーでおうえんちゅう photo:Yuko Sato29日の第7ステージは、バンティンからタンピンまでの149.5km。海に近い標高の低いエリアで最初はほとんどアップダウンのない広い道を走り、コースの約3分の1を終えたところからゆるいアップダウンが続く。

途中3つのスプリントポイントと2つの山岳賞ポイントがあるが、基本的には「平坦」といっていいステージだ。

テレビカメラに囲まれる宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)テレビカメラに囲まれる宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ) photo:Yuko Satoじつは、レースガイド掲載のステージプロフィールでは、今日のコースのラスト数kmに、今日の第1山岳賞の登りと同程度の、標高差60mぐらいの登りがある。が、フィニッシュの写真を見ていただくとお分かりのように、じっさいは“頂上ゴール”という印象ののステージではない。実感としては「これから登りかと思ったらもうフィニッシュだった」というところか。

レースは朝11時のスタート。まずはいつものように各チームの日本人選手の姿を探す。宮澤崇史は日本とどこかの国のテレビカメラに囲まれている。「今日のコースはむずかしいか? そうは思いません。我々には充分なチャンスがある。Try to win!」

前日に逃げを試みた鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)前日に逃げを試みた鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) photo:Yuko Sato続いて今日はどう攻めるかきくと「今日はやる気です! 体調を見て最後チームの誰がいくか決めます。最後300mが右カーブで登っていて平坦ではないところが経験の見せどころで、いいですね。」

そしてきのう、最後は吸収されたもののステージ後半の逃げに乗った鈴木謙一。「きのうは短いステージだったのでアタックは最初から激しかったです。チームの誰かが逃げに入ることを目標にしていて、自分がタイミング的にうまくのりました。逃げに乗れてスプリントもできて、ただ結果がもうちょっとでした。これからも平坦が続くので、各ステージで狙っていきたいです。今日のステージでも逃げに乗れたら、コースの最後は若干登っているようなので、そこでうまくスプリントしていけたらと思います。」

スタート前に明るい表情を見せる土井雪広(スキル・シマノ)スタート前に明るい表情を見せる土井雪広(スキル・シマノ) photo:Yuko Sato土井雪広は「やっと来ましたねシクロワイアード!」と茶目っ気ある笑いで迎えてくれた。「今日のチームのオーダーはきのうと一緒! 今日のコース、あれ最後全然登ってないよ。ふつうのスプリント。フォーメーションは変わらない。登りでスプリンターもいるので、きのうみたいにパンクしないから… きのうパンクしたの、知らなかったんじゃない? 話聞きにこなかったでしょ? おとといのパンクも?」

 はい、その通りです、すみません土井選手。「いや、もうそれはいいんだけどさ(笑)」口調は厳しいが笑顔は優しい。お詫びして改めてお話をうかがった。

スタート地点に登場した福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)スタート地点に登場した福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Yuko Sato「きのうは、(プトラジャヤの)最後の周回全部コントロールして、最後の高速4車線のところで左にそれて右に曲がって橋わたって1kmのところでうちのエースがパンクして、1日失いました。その前はゲンティンの登り口でパンクして、ホイールがはまらなくて。…ということがありました! 今日はがんばります、職人として!」

そして福島晋一。「今日はけっこうアップダウンがあるみたいで、だとすると自分向きかなと。マナンのスプリントをサポートしながら、逃げもチェックしていきたいと思います。落車のけがですか? 日に日に回復していますんで。結果を出さないと!」

ーーマナン、こちらではすごい人気ですね?
「はい、彼がすごくアピールしてくれているので、自分も!と思います(笑)」

レースリーダーのプレゼンテーションでマナンが国旗を振るレースリーダーのプレゼンテーションでマナンが国旗を振る photo:Yuko Sato

プレスカーの車窓より。応援の人たちプレスカーの車窓より。応援の人たち photo:Yuko Sato今日の取材はプレスカー。今日のルートは、途中で止まらずスタートからフィニッシュに直行だ。

今日のコースは、最初は4車線の広い道路、そして2車線の道路に進み、町と町をつなぐゆるやかなアップダウンの道路を進んでいく。町を出ると道の両側にヤシ畑が広がり、また町へ…とそんな繰り返しだ。スタートでは日が差していたがまもなく空は灰色となって雨が降り出し、そしてほどなく小雨にかわり、フィニッシュに着く頃には雨はほとんどやんでいた。

フェルスターとの接戦を制したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)フェルスターとの接戦を制したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ) photo:Yuko Satoそしてゴールスプリントでこのステージの勝者となったのは、第1、2、6ステージとこの第7ステージで4勝となったグアルディーニ。フィニッシュラインを越えるさいに指を4本立て、4勝をアピールした。

フィニッシュ後、宮澤崇史は取材陣に囲まれるグアルディーニのそばで、「なにかすっきりしない」というような顔で待っていた。

ステージ6位に入った宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)ステージ6位に入った宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ) photo:Yuko Sato「コース図と違って全然登りじゃなかったね。まあ、とりあえず6位でUCIポイントも獲得したし、いいんじゃないかと思います。最後はグアルディーニをつれて行こうと思ったけど連れて行ききれなかった。」

土井は天を仰いで「マジつれえ!」とひとこと。「お願いだから勝ってくれ!せっかく足を使わせるような動きをしていたのに無駄になっちゃった。」

愛三工業レーシングチームの別府監督は「周りのチームは逃げの展開で、8人逃げが決まって。アタックはけっこう激しかったです。最後は鈴木が逃げて、ラスト5kmまで逃げていました。」

西谷泰治は「あれ、最後が登ってたらかなりいい番手で、チャンスだったのに…ステージプロフィールは正しく描いてくれよ…」と残念そう。「また3日間がんばります!」元気にそう締めくくった。

photo&text:Yuko.SATO