コラテックはヨーロッパ第一の工業国・ドイツを代表するブランドだ。その作りはドイツ車らしく質実剛健。各部が理論的に煮詰められており、流行やファッション性よりも性能をとことん追求しているのが特徴だ。それゆえ、長く乗っても飽きの来ない点も魅力である。

コラテック R.T. CARBONコラテック R.T. CARBON (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

コラテックをプロデュースするIKO社は、1960年代にドイツ(当時は西ドイツ)・ミュンヘン郊外で、現社長コンラッド・イルバッハー氏の父によって設立された。会社はバイエルンアルプスの山麓にあり、近くにはルードビッヒ2世によって建造されたノイシュバンシュタイン城とリンダーホフ城もある風光明媚な場所だ。創業当時はバイク&パーツの小売りが主な業務で、会社とはいってもその規模は「ショップ」に過ぎなかった。

1978年にコンラッド・イルバッハー氏がIKO社で働き始めると、色々な商品を海外から仕入れて、ドイツ各地の小売店に卸す輸入代理店に成長。また各種パーツの開発にも着手して、メーカーとしての機能も果たすようになる。

コラテック創立20周年記念のヘッドマークコラテック創立20周年記念のヘッドマーク 完成車に採用されるD-FITZのハンドルバー。流行のアナトミックシャロータイプだ完成車に採用されるD-FITZのハンドルバー。流行のアナトミックシャロータイプだ


86年には、当時としては画期的だったカーボンディスクホイールの開発に成功。さらに、カーボンクランクやカーボンシートポストなどを独自開発。これらは西ドイツナショナルチームに採用され、88年のソウルオリンピックでも多くのメダル獲得に貢献した。

IKO社はさらにフレーム開発にも着手し、90年に「コラテック」ブランドを立ち上げる。ヨットの技術を取り入れ、ケーブルテンションによるアジャスタブルフレームを製作するなど、当初から斬新なバイクを製作していたが、一方ではオーソドックスなロード、MTBフレームも製作し、これらはアマチュアの世界チャンピオンやワールドカップのウィナーを生み出すまでになった。こうしてコラテックはドイツを代表するレーシングブランドに成長したのである。

根本部分が後方にオフセットされたフォーク根本部分が後方にオフセットされたフォーク ボリューム感のあるトップチューブボリューム感のあるトップチューブ シートステーは上部が一本にまとまったモノステーだシートステーは上部が一本にまとまったモノステーだ


最近では2005年のジロ・デ・イタリアで「コラテック旋風」が吹き荒れたのが記憶に新しい。コラテックのバイクを駆るコロンビア・セッレイタリアのホセ・ルハノとイバン・パッラが3つの山岳ステージを制し、ルハノが山岳賞を獲得するとともに総合でも3位に食い込んだのである。

国内ではマトリックス・パワータグチームがコラテックを駆って活躍している。2010シーズンには大ベテランの阿部良之と真鍋和幸が加入し、実業団レースを中心に活躍した。

ダウンチューブに入るコラテックのロゴダウンチューブに入るコラテックのロゴ スマートなBBがバネ感を演出するスマートなBBがバネ感を演出する


今回インプレしたR.T. CARBONはフルカーボンの上級モデルだ。高品質なユニディレクショナルカーボンを採用し、モノコック製法でカッチリと作り上げられたフレームは、外観だけでなく実際に乗っても非常に力強い印象となっている。

何といってもその最大の特徴は、「プロコントロールフォーク」と名付けられたフォークだ。そのオフセットの具合が奇抜に見えるが、これは振動吸収性と直進安定性の向上を狙ったもの。上級者はライディングに集中でき、初心者はテクニック不足をバイクが補ってくれるのである。斬新なアイディアで成長してきたコラテックらしいフォークであるということができるだろう。

この角度からみると、フォークのオフセットがよくわかるこの角度からみると、フォークのオフセットがよくわかる シートチューブには後輪の逃げがある。TTバイクのような造形だシートチューブには後輪の逃げがある。TTバイクのような造形だ ダウンチューブ下にもコラテックの小さなロゴが並ぶダウンチューブ下にもコラテックの小さなロゴが並ぶ


今回、R.T. CARBONをテストをしたのは、元プロサイクリストの三船雅彦と自転車ジャーナリストの仲沢隆。いったい、その乗り味はどのようなものだったのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう。




―インプレッション

「バネ感の効いた乗り味でロングライドに最適」
三船雅彦(元プロサイクリスト)


「バネ感の効いた乗り味でロングライドに最適」(三船雅彦)「バネ感の効いた乗り味でロングライドに最適」(三船雅彦) カーボンらしい乗り味のバイクだ。最近のカーボンフレームはどれもボトムブラケット周りのボリュームを上げて、その剛性感によって進むような印象があるが、このR.T. CARBONはそれほどのボリュームをもっていない。その代わり、カーボンならではのバネ感が感じられ、それを利用してどこまでも走っていけるのだ。

このバネ感の効いた乗り味は、長距離で威力を発揮する。ガチガチに硬いカーボンフレームと比較すると、疲れ方がまるで違うのだ。
私も現役時代の最後に旧モデルのR.T. CARBONに乗っていたが、長距離を走る時にはいつも驚かされたものだ。本当に疲れにくいバイクである。

踏み出しはとても軽い。そして、加速感もなかなかのものだ。グッと踏み込むと気持ちの良いフィーリングでスーッと加速していく。特に平坦で踏んだときの加速感の良さが最高だ。

振動吸収性も素晴らしい。特にフォークの振動吸収性は文句無し。バックからの突き上げも見事に緩和されるし、これならば少々荒れた路面でも何ら問題なく走破できるだろう。この辺の煮詰め方は、さすがヨーロッパのバイクであるという印象を受ける。

特徴的な形状のフォークだが、ハンドリングはとても素直だ。タイトなコーナリングも難なくこなし、直進安定性も高い。この辺の味付けは、プロチームへの供給も行っており、そこからのフィードバックも生きているのだろう。ハンドリングはかなりしっかりとしている。

ハードブレーキングでも安定していて、ビビり感などはない。強烈なストッピングパワーというほどではないが、ハイスピードからのフルブレーキングでも、何ら緊張感なく止まることができる。

使用用途としては、やはりレースで使いたい印象だ。週末のロングライドにも良いが、どちらかというとのんびり走るよりはファーストラン的な走り方に向いている。まあ、このバイクに乗れば、誰もが速く走りたくなると思う。


「乗り手を選ばない万能選手」
仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)


コラテックの社長であるコンラッド・イルバッハーは本当にナイスガイだ。日本国内で行われたイベントのために家族ぐるみで来日し、自らコラテックのバイクを駆ってレースを走ったりしている。そして、世界最大のバイクショー「ユーロバイク」でコラテックのブースへ取材に行くと、ニューモデルの説明を嬉しそうにしてくれる。本当にバイクが好きな男なのだ。

そんな男がプロデュースしているバイクが、悪かろうハズがない。ロードバイクを設計する上で最も重要なのは、バイクを愛している男が自分の理想を貫いてバイクを設計・製造することなのだ。決して会議の結果、最大公約数的にできるバイクや、サービス残業の末に完成したバイク、コストとの折り合いをつけたバイクが魅力的になることはない。コルナゴしかり、デローザしかり、ピナレロしかりである。

「乗り手を選ばない万能選手」(仲沢 隆)「乗り手を選ばない万能選手」(仲沢 隆)

このR.T. CARBONも、そんなコンラッド・イルバッハー氏の理想を具現化したバイクだと言うことができるだろう。フォークとチェーンステーの形状が特徴的だが、その効果を体感すると、そのアクの強さも納得できる。とくかく、個性に溢れたバイクである。

フォークの根本が後ろにオフセットしている形状は、コラテックが初めてやったものではない。ジャイアントの初代TCRのストレートフォークなども、同様の形状を持っていた。しかし、ここまで大胆にオフセットさせたのは、コラテックが初めてかもしれない。

効果のほどはなかなかのものだ。直進安定性が強く、まるでヘッドアングルを72゜くらいに寝かせたバイクのような安定感だった。もちろん、振動吸収性も良い。素晴らしいのは、クイックなハンドリングも損なわれていないということだ。実にコントローラブルなフォークである。

とにかくこのバイクは扱いやすく仕上がっている。上級モデルだからといって乗り手を選ばない。まさに万能選手。数学や理科などの理系科目だけでなく、現代文や古文なども得意で、さらに体育も5で、おまけに生徒会長をやっているみたいなヤツだ。上級者から初心者まで、何ら痛痒なく使いこなすことができるだろう。

コラテック R.T. CARBONコラテック R.T. CARBON (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

コラテック R.T. CARBON
フレーム:コラテック・モノコックカーボン
フォーク:コラテック・カーボン プロコントロールフォーク
サイズ:50、53cm(ホワイト×ブルーには48、55、57cmもあり)
カラー:ホワイト×ブルー、カーボン×レッド
価格:デュラエース完成車 529,200円
デュラエースコンパクト完成車 529,200円
アルテグラ完成車 384,300円
アルテグラコンパクト完成車 387,450円
105完成車 339,150円
105コンパクト完成車 340,200円
フレームセット 271,950円






インプレライダーのプロフィール

三船雅彦(元プロサイクリスト)三船雅彦(元プロサイクリスト) 三船雅彦(元プロサイクリスト)

9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム


仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)

ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどのロードレースの取材、選手が使用するロードバイクの取材、自転車工房の取材などを精力的に続けている自転車ジャーナリスト。ロードバイクのインプレッションも得意としており、乗り味だけでなく、そのバイクの文化的背景にまで言及できる数少ないジャーナリストだ。これまで試乗したロードバイクの数は、ゆうに500台を超える。2007年からは早稲田大学大学院博士後期課程(文化人類学専攻)に在学し、自転車文化に関する研究を数多く発表している。



text:Takashi.NAKAZAWA
photo:Makoto.AYANO
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