ジルベール?それともカヴェンディッシュ? ジャーナリストたちも最後まで誰が優勝候補なのか見極められなかったエリート男子で、勝利をさらったのはフースホフトだった。レース展開を見れば彼が勝つのも納得。フースホフトが勝てたのはなぜか? 声を集めてみた。

アルカンシェルに袖を通したトル・フースホフト(ノルウェー)が雄叫びを上げるアルカンシェルに袖を通したトル・フースホフト(ノルウェー)が雄叫びを上げる photo:Kei Tsuji「ジーロングの世界選手権ロードのコースは、カヴェンディッシュにはただキツすぎただけだ」 新・世界チャンピオンとなったノルウェーのトル・フースホフトはそう話す。ツール・ド・フランスではマイヨヴェールを逃し、スプリンターとしてのステイタスは少し下がっていた彼だが、以前よりも登りのこなせる力を身につけ、厳しいコースのワンデイクラシックにおいては変わらぬ強さ。その本領を発揮したのだ。

「マーク(カヴェンディッシュ)はピュアスプリンターだ。コースがフラットでは厳しくないとき、彼は世界最強のスプリンターだ。僕にとっての勝利は、コースが厳しくて最後に登りがあるときにやってくる。僕は"クラシックライダー以上"だ。峠を越えることができ、そして勝てた。今日のようなレースが好きだ」。

マッティ・ブレシェル(デンマーク)やトル・フースホフト(ノルウェー)がスプリントバトルマッティ・ブレシェル(デンマーク)やトル・フースホフト(ノルウェー)がスプリントバトル photo:Kei Tsujiフースホフトの勝利はスプリントでマッティ・ブレシェル(デンマーク)とアラン・デーヴィス(オーストラリア)を下してのもの。彼は追走グループに入り、カデル・エヴァンス(オーストラリア)やフィリップ・ジルベール(ベルギー)らをラスト2kmで捕まえ、理想的な展開に持ち込んだ。

「コースは未知のものだった。6月に聞いたときはスプリンターの闘いになるだろうと言われていた。しかし自分で確かめてみて、その厳しさにとても驚いた。まるでクライマーのためのレースなんじゃないかと。そして、U23のレースを観て、再びスプリンターのためのコースなのかと思った」。


厳しかったチャンラブラ・クレセントの上り。集団が縦に伸びる厳しかったチャンラブラ・クレセントの上り。集団が縦に伸びる photo:Kei Tsuji世界選エリート男子のレースは、メルボルンをスタートし、ジーロングまで83km平坦路を走り、ジーロングで15.9kmの厳しい周回コースを11周こなした。イギリスのマーク・カヴェンディッシュはチームメイトのジェレミー・ハントとともに海沿いのチームホテルの前でバイクを降りた。レポートによればそれは8周回目のことだったという。チームメイトのデーヴィッド・ミラーも8周を終えた時点でレースを止めた。

イギリスチームのパフォーマンスディレクター、デイブ・ブレイルスフォード監督は言う。
「このコースはカヴェンディッシュには厳しすぎた。とてもパンチが効いた、ハードで、毎周回選手たちをふるいにかけるタイプのコースだった。彼には今日その脚はなかった。トールはよくぞこのコースをいなした。我々としてはマークがピュア・スプリンター以上であることを期待したのだが...」。

ペースが上がったメイン集団からマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が脱落ペースが上がったメイン集団からマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が脱落 photo:Kei Tsuji優勝候補に挙げられたアメリカのスプリンター、タイラー・ファラーもこの日、最後のゴールスプリントには参加できなかった。

しかし、来年のコペンハーゲン世界選はピュア・スプリンター向きのコースだと言われている。だからカヴェンディッシュは今回のような3人体制でなく、9人のチームで臨みたいだろう。しかしイギリスがそうするには、ヨーロッパ大陸でのイギリスのナショナルランキングを引き上げなければいけない。

ブレイルスフォード監督は今から決意を語る。「来年こそは選手の数を増やすことが重要になってくる。コースは間違いなくマーク向き。スプリンターのためのコースだ」。

カヴェンディッシュは火曜日にジーロングを発ち、イギリスのマン島チームのメンバーとしてコモンウェルスゲームに出場するためにインドのデリーに向けて旅立つ。悔しさと、来年のアルカンシェルへの思いを胸に秘めて。


By Gregor Brown
photo:Kei Tsuji