2010年7月10日、ツール・ド・フランス第7ステージが165kmの中級山岳コースで行なわれ、山岳を攻略したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が第2ステージに続く2度目の独走勝利を飾った。今大会最初の山岳ステージだけに、早速総合成績に変動が起こり、シャヴァネルがマイヨジョーヌに返り咲いた。

フランス東部に広がるジュラ山系の丘陵地帯を進む選手たちフランス東部に広がるジュラ山系の丘陵地帯を進む選手たち photo:Cor Vosフランス東部に広がるジュラ山脈を舞台にした第7ステージ。翌日の本格的なアルプス山岳ステージの足慣らし的なステージであり、1級や超級の難関山岳は設定されていないが、4級から2級のカテゴリー山岳が合計6つ設定された厳しいコースだ。

この日も気温は上がり続け、最高気温が35度に達する過酷なコンディション。前日のインタビューで「山岳賞ジャージを守るためにも逃げたい」と語っていたジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)が、スタート直後に飛び出した。

逃げグループを形成するダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)やジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)逃げグループを形成するダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)やジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vos赤玉ジャージを着るピノーに合流したのは、クリスティアン・クネース(ドイツ、チームミルラム)、ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)、サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)の4人。

逃げグループのリードは最大8分30秒まで広がり、総合44位・3分18秒遅れのクネースがしばらく暫定総合トップに。

追走グループを率いるトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)追走グループを率いるトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Cor Vosメイン集団をコントロールしたのは、逃げグループに選手を送り込めなかったBboxブイグテレコム。アシストたちが献身的な集団牽引を見せ、逃げグループのタイム差をどんどん詰めて行く。新城幸也はほぼ先頭固定で集団を引き続け、タイム差縮小に大きく貢献した。

Bboxブイグテレコムのチームメイトの働きに応えるように、最後から2つ目の2級山岳クロワ・ド・ラ・セラでトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が動いた。

追走グループの中で走るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)追走グループの中で走るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vosチームメイトのシリル・ゴティエ(フランス)を連れて飛び出したヴォクレールには、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)やマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)が合流。遅れてシャヴァネルもこれに加わり、強力な追走グループが形成された。

この2級山岳クロワ・ド・ラ・セラで、先頭はピノーとホンドの2人に。このコンビは追走グループから1分のリードを保ったまま下りをこなし、ラスト4km地点で頂上を迎える最後の2級山岳ラムラ峠に突入した。

一時独走で山岳をこなすジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)一時独走で山岳をこなすジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vos5つのカテゴリー山岳全てを先頭で通過し、山岳賞ランキングのリードを広げたピノーは、このラムラ峠でホンドを引き離して独走開始。一方の追走グループではチームメイトのシャヴァネルがアタックを成功させ、単独でピノーを追う展開。

勢いあるシャヴァネルは、それまで逃げ続けていたチームメイトのピノーを抜いて先頭に。追走グループからはヴォクレールやクネゴ、ラファエル・バルス(スペイン、フットオン・セルヴェット)がアタックを仕掛けたがシャヴァネルには届かない。

メイン集団内で走るランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)やアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)メイン集団内で走るランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)やアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos結局シャヴァネルは追走グループを1分以上引き離してゴールにやってきた。雨のスパにゴールした第2ステージに続く独走勝利。歓喜のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

1分47秒遅れでゴールにやってきたメイン集団の中には、総合1位のファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)や総合2位ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)の姿は無し。独走勝利のシャヴァネルが、同時にマイヨジョーヌを奪回する荒技をやってのけた。

独走態勢を築くシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)独走態勢を築くシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vos「山岳よりも丘陵と言うべき勾配4%ほどの上りは自分向きだった。前にピノーが逃げていたので、最初はアタックするのを躊躇った。でも彼に合流した時、疲れ切っていた彼は『そのまま行け!』と言ってくれた。クイックステップは良いスパイラルに乗っている。2度も独走勝利を飾るなんてワンダフルだ!もちろんステージ3勝目も狙うよ!(レース公式サイトより)」

クイックステップはステージ優勝、マイヨジョーヌ、そしてマイヨアポワのリードを同時に手にした。トム・ボーネン(ベルギー)の欠場で戦力ダウンが危惧されていたが、蓋を開けれ見れば、ここまでツール前半戦最大の成功を収めている。

再びマイヨジョーヌに袖を通したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)再びマイヨジョーヌに袖を通したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vosこの日はカンチェラーラやトーマスら、TTスペシャリスト系の選手が総合上位から姿を消した。シャヴァネルはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)から1分25秒、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)から1分32秒のリードを得ている。

しかし翌日の第8ステージはアルプス最大の難関山岳ステージ。マイヨジョーヌを守る立場のシャヴァネルは「明日はコンタドールやシュレク、エヴァンスのような選手が活躍する日。全力で走ってみるけど、仮にマイヨジョーヌを失ったとしても大きな問題じゃない」と楽観的。カテゴリー1級の頂上ゴールでは、ビッグネームが今大会最初の山岳バトルを繰り広げる。


ツール・ド・フランス2010第7ステージ結果
1位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)4h22'52"
2位 ラファエル・バルス(スペイン、フットオン・セルヴェット)+57"
3位 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)+1'27"
4位 トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)+1'40"
5位 マチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)
7位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)+1'47"
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 エロス・カペッキ(イタリア、フットオン・セルヴェット)
166位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+22'17"

第7ステージ敢闘賞
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)33h01'23"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+1'25"
3位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)+1'32"
4位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'55"
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+2'17"
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+2'26"
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+2'28"
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・トランジションズ)+2'33"
10位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+2'35"
104位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+25'03"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)118pts
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)114pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)105pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)44pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)36pts
3位 マチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)28pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)33h03'18"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+1'44"
3位 ラファエル・バルス(スペイン、フットオン・セルヴェット)+2'07"

チーム総合成績
1位 アスタナ 99h12'43"
2位 ラボバンク +56"
3位 ケースデパーニュ +1'24"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos