国内ロードレースの開幕戦、西日本チャレンジロードレースのエリートクラスで津末浩平が7位、そして上位に4人が名を連ねたチームマッサ。「トップチームから声がかからない選手ばかりを集めたこのチームで、7位の数字だけ見れば成功と言っていい」と、三船雅彦監督は言う。

チームMASSA・フォーカス・アウトドアプロダクツチームMASSA・フォーカス・アウトドアプロダクツ photo:高木秀彰

新チーム「チームMASSA・フォーカス・アウトドアプロダクツ」は、昨シーズンでロードレースから引退した三船雅彦が立ち上げたチームだ。メンバーに伊藤翔吾、伊勢直人、小笠原崇裕、斉藤亮、笹井秀治、辻本学、藤本弥之助、竹浪芳晃、岸本勇気、ラム・カイツン。メインスポンサーにはダイワ精工。同社が取り扱うバイクブランド、フォーカスとアウトドアプロダクツがチーム名に入る。

お披露目となった3月15日の西日本チャレンジロードではエリートで7位津末、10位小笠原、11位伊藤、12位斉藤、アンダーでは9位伊勢、13位岸本という結果だった。


監督・三船雅彦が語るチーム初戦の西日本チャレンジ


3月15日の西日本チャレンジロードではエリートで7位津末、10位小笠原、11位伊藤、12位斉藤、アンダーでは9位伊勢、13位岸本という結果だった。フォトジャーナリストの高木秀彰が三船新監督に訊く。

-チームの初戦として結果はどうでしたか?

西日本チャレンジ アンダー2周目、岸本と伊勢はこの30秒後にエスケープグループを作る西日本チャレンジ アンダー2周目、岸本と伊勢はこの30秒後にエスケープグループを作る 「強いチームと選手があまりいなかったのでチャンスだった。シマノと愛三3人づつ、うちは7人。『各自認識してハイエナになってチャンスをどうモノにするか、自分達が勝つためにどうすればいいのか、考えろ』と言った。そこがわかってないと何回も失敗する。津末と伊藤が一番踏めていたから、二人を中心に、あと小笠原、登坂力で斉藤。
経験では勝ったことが無いのだから、この4人で行け。劣っているからこそ考えて行け、と。集団の中では意思疎通をして動いたけど、一番大事なポイントの2周目のペースアップで7人になったときに、そこに入らなければいけない。伊藤はそこに入ったが、何をすべきか考えられず、引かされて利用され、ちぎれてしまった。チームとしては何が何でもちぎれてはいけない場面だった。

結果的に津末の7位は正直、数字だけで見れば成功と言っていいと思う。去年までトップレベルの選手たちと比べたら全然話にならない、トップチームから声がかからない人間ばかりを集めたのだから、結果を出すのは無理と言っていい。それが無理じゃなかった、というところに評価すべき点がある。

しかし前で展開した7人での7位と、今回のように6人が行ってしまった後の7位では根本的に違う。7人で争っての7位でないと、その上は見えてこない。成績や欲はあるが、初戦としてはこんなもの。10位以内に2人入って欲しかったが、上位に4人入っているので悪い状況ではない」。

-どのような考えでチームを立ち上げたのですか?

エリート2周目の集団がバラバラになった瞬間。チームマッサの選手はその場に全員がいた。右端は優勝した品川真寛エリート2周目の集団がバラバラになった瞬間。チームマッサの選手はその場に全員がいた。右端は優勝した品川真寛 「上のチームに入れない選手がきっちり走る場もないし、こういうチームを作っておかないと、上位の4、5チームでしかレースができなくなる。それはレース界にとってもいい状態ではない。こういうチームが一つでも増えることが理想。全員がアンダーの年齢ではないが、やる気を持っている選手(今の日本の社会で25、6歳は若い部類だと思う)や、やる気を持ってやっているのにちゃんと面倒を見れないという状況は本当はよくない。

ダイワ精工はじめ多くのスポンサーが支援してくれて、現状はまだ大きなチームを作るに至っていないが、心ある企業が支援してくれれば面白いチームができる。シーズン通して台風の目になれるかは分らないけれど、皆が見て『いいチーム』と思えるようにしたい。

-若手を育成することと結果を出すことは、必ずしも一致しないと思いますが?

「スポンサーや自分のチームの立場で考えるならば、成績を残して成長してくれたら最高。だが、長いスパンで見たら、選手が一つのチームで活動を終えることは難しいと思う。自分達のできる範囲で選手を育てるということは、どうしても次のステップに向けたものになる。

将来的に人材育成、若手選手育成が評価されるチームになれば、チームとしてももっと多くスポンサーを取って活動できるし、そのときは独自のチーム色を出して、結果を求めるチームにしてもいい。今の段階では『アンダーでチャンピオンになった』とか、『Jサイクルツアーで6位になった』というときに、選手を正しく応援できる環境があるかというと、イエスとは言えない。いずれは快く送り出してあげられるようにしたいし、送り出した選手がチームマッサの出身だったということが大事だと思う。今の時点では目先の成績も大事だが、全体的なところを見て育成していけたらと思う。」


プロ・ロードレーサーから監督への転身


監督業一年目の三船雅彦。25年間のキャリアをいよいよ後進に伝授する監督業一年目の三船雅彦。25年間のキャリアをいよいよ後進に伝授する 三船氏は08年をもって25年間に渡る自転車競技人生に終止符を打った。10月のジャパンカップでゴールする姿を目撃した人も多いだろう。次いで12月のツアー・オブ・サウスチャイナシーでロードレース人生を終えた。そしてその翌日から次のステップへ向けてスタートを切った。親友が興すブランド「LUMA」で打ち合わせだ。その親友と三船氏の名を冠したこのブランドがチームジャージを製作する。

スポンサー各社と連絡を取り、デザインが出来上がっていく。そう、これは三船氏が監督となるTEAM MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTSのジャージなのだ。伝統的中国語の繁体字をデザイン化した「雅」を配したジャージは、まったくのオリジナルだ。

今でこそ海外で活動するためのレールは、幾人かの先達の努力によって何本か引かれている。しかし三船氏が高校を出た20年以上前は皆無に等しかった。
輪行袋とスーツケースだけで、なんのあても無くオランダへ渡り、自身で道を切り開き、クラシックレースなどで展開を作れる日本人として活躍するまでに至った。そこでは走ること以外のエネルギーも相当使ったに違いない。だからこそ、走ることだけに集中できるような環境を、向上心のある選手へ提供する場として立ち上げたのがこのチームだ。国内レースで結果を出し、そして国内有力チームや海外へ選手を送り出すことを目的にしているのだ。

チームMASSA・フォーカス・アウトドアプロダクツチームMASSA・フォーカス・アウトドアプロダクツ photo:高木秀彰

三船監督の元に集まったメンバー


今年は研修生も含めて11人のメンバーで戦う。過去に大きな実績を持つ者、異種目で実績を残す者、大きな実績は無いが向上心のある者などさまざまだ。チームマッサのメンバーは以下のとおりだ。

津末浩平 28歳 
エスペランス・スタージュより移籍、高校時代にインターハイ、国体、ツールドとうほくを制し、日本大学、ミヤタ・スバルへ進む。新チームではキャプテンの重責を担う

伊藤翔吾 25歳 
bcinoko.comより移籍、08年Jツアー西日本11位など

伊勢直人 22歳 
masahikomifune.com cyclingteamより移籍、08年ツールド熊野U23総合1位など

小笠原崇裕 28歳 
ロードレースを本チームで走る。MTB Jシリーズ08年総合4位、エクステラ07・08年日本チャンピオンなど

斉藤亮 28歳 
ロードレースを本チームで走る。MTB Jシリーズ08年総合15位、07年春まではクロスカントリースキーで日本代表としてワールドカップを転戦

笹井秀治 32歳 
masahikomifune.com cyclingteamより移籍、ロード・シクロクロスともに長く最上級クラスで走る

辻本学 39歳 
masahikomifune.com cyclingteamより移籍、1kmTTのスペシャリスト。今でも1分08秒で走る

藤本弥之助 31歳 
ロードレースを本チームで走る。MTB Jシリーズ08年総合17位

竹浪芳晃 29歳 
masahikomifune.com cyclingteamより移籍、毎朝5時からの練習を続けてチーム入りを果たす

岸本勇気 21歳 
チーム岡山より移籍、3月から転居して自転車に人生を賭ける

ラム・カイツン 24歳 
長く香港ナショナルチームで走る。TOJやツールド熊野に出場したことも。Jサイクルツアーも含め、可能なレースに出場する

チームマッサが乗るフォーカスCAYOチームマッサが乗るフォーカスCAYO

チームスポンサー&サプライヤー
・フォーカス:バイクフレーム
・アウトドアプロダクツ:バッグ等
・カンパニョーロ:コンポーネント、ホイール
・日本食研:食品等
・ヴィットリア:タイヤ
・オージーケーカブト:ヘルメット、グローブ
・コントロールテック:ハンドル・ステム・ピラー
・RUN-O:栄養価の高い卵
・キャットアイ:サイクロコンピュータ