朝早くにゴンドラに乗り、標高2273mのプラン・デ・コロネスに着いた。辺り一面、360度、ドロミテの山々が見渡せる単独峰。景色が雄大すぎてうまく距離感が掴めない。「あっけにとられる」とはこういうことを言うのだと思いながら、頂上のレストランに仮設されたプレスセンターに向かった。

選手たちを待ち構えた未舗装の激坂と観客の波

ラスト600mで勾配は再び22%にラスト600mで勾配は再び22%に photo:Kei Tsujiプラン・デ・コロネスはドロミテ有数のスキーリゾート。山を取り囲むように、麓にはリゾートホテルが立ち並ぶ。きっと冬場はヨーロッパ中から集まったスキー客でごった返すのだろう。「昔からスキーと言えばプラン・デ・コロネスに来たものだ」という地元カメラマンもいた。

四方八方から頂上に向かって伸びるゴンドラに乗って、観客が次々とゴール地点にやってくる。日射しは強烈で、肌がジリジリと焼けるのを感じる。標高2273mなので風は冷たいが、上半身裸の観客もいるほど暖かい。

選手たちはゴンドラで下山選手たちはゴンドラで下山 photo:Kei Tsujiしかしまだまだ頂上付近にはしっかりと雪が残っている。スキー板を持っていれば滑走は可能なぐらいに。

標高1187mのサンヴィジリオ・ディ・マレッベをスタートした選手たちはまず、標高1738mのパッソ・フルチアまで舗装路を駆け上がる。コース前半の路面は滑らかで、沿道の草木が緑と黄に輝く美しい景色が広がる。ところどころ勾配が15%を超える箇所も登場し、短い下り区間を含む。まだまだ前半は足慣らしに過ぎない。

冬期はスキー場としてオープンするプラン・デ・コロネス冬期はスキー場としてオープンするプラン・デ・コロネス photo:Kei Tsuji5.3km地点のパッソ・フルチアを過ぎるといよいよ未舗装区間へ。そこから7.6kmにかけて、延々とダートが続く。

しかし、意外にも路面は固く締まっている。小石が浮いている箇所もあるが、大部分はコンクリートを混ぜて踏み固めたようなダートだ。

激坂区間を終え、ゴールに向かう新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)激坂区間を終え、ゴールに向かう新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsujiちなみに、未舗装区間には13のコーナーが登場し、それぞれに歴代のチャンピオンの名前が付けられている。13ベッローニ、12ジラルデンゴ、11ブルネロ、10ビンダ、9グエッラ、8ヴァレッティ、7バルタリ、6コブレ、5コッピ、4ネンチーニ、3ゴール、2アンクティル、1パンターニ。

最後のパンターニコーナーを抜けるといよいよプラン・デ・コロネスのクライマックス。最大勾配24%の激坂が登場だ。ただでさえ勾配がきついのに路面はダート。しかも険しい上りの終盤に登場するのだから、半端な厳しさではない。どの選手も力を抜いて走ることなんて出来ない。蛇行する選手が続出した。

レース中の速報でお伝えしたように、第1ヒートで走った新城幸也(Bboxブイグテレコム)は47分20秒でゴール。最終的にステージ100位に入った。

中間計測ポイントでは122位通過だったので、ユキヤは後半の未舗装区間で挽回したことになる。ユキヤの「全部キツかった」という言葉がプラン・デ・コロネスの全てを表している。


気付けばイタリア勢5連勝!

観客に押されて再発進を試みるバイク観客に押されて再発進を試みるバイク photo:Kei Tsujiゴンドラでのアクセスの良さから、標高2273mだと言うのに、頂上付近には多くの観客が集まった。後半にかけて観客数はグングンと増えていく。有力選手たちが走る第3ヒートが始まる頃には、完全にコースが人で埋め尽くされた。

そんなコースに充満したのは、バイクのクラッチが焦げた臭い。さらにバイクが巻き上げた細かい砂埃がコースに立ち込める。せっかく山の空気が美味しいと思っていたのに、レース中の空気は非常に悪い。

モトが止まったため、止むなくバイクを担いで走り出すチームHTC・コロンビアのメカニックモトが止まったため、止むなくバイクを担いで走り出すチームHTC・コロンビアのメカニック photo:Kei Tsujiこの日ばかりはチームカーの入場が許されず、メカニックがホイールを担いでバイクの後部座席に乗車した。激坂区間で一旦ストップしたバイクは再発進出来ず、観客に押されて何とか事なきを得るバイクが続出。バランスを崩して転倒するバイクもあった。

メカニックが器用にスペアバイクを担ぐチームもあり、特に会場を沸かせたのが、マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTC・コロンビア)に付き添っていたメカニック。乗っていたバイクが立ち往生したので、ヘルメットを被ったまま、スペアバイクを担いで激坂をダッシュ。勾配が緩むとピノッティのスペアバイクに乗ってゴールを目指した。しかもかなり速かった。

大歓声の中を進むイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)大歓声の中を進むイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji総合上位陣がやってくる頃には、もうコースが見えないほどの混沌とした状態に。終盤は身動きができずにずっと激坂区間で撮影していたのだが、見るからに速かったのがステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)だ。

「本当に24%の勾配を上っているのか??」と思うほどのスピードで激坂区間をクリアしたガルゼッリ。下位を42秒も引き離す圧勝だった。

プラン・デ・コロネス頂上に詰めかけた観客プラン・デ・コロネス頂上に詰めかけた観客 photo:Kei Tsuji第10ステージまで完全にステージ優勝に見放されていたイタリア勢が、後半にかけてステージ5連勝。マリアローザはダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)が守ったが、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が着実にタイム差を詰めて来ている。

いよいよバッソの逆転総合優勝が現実味を帯びて来た。メンバーを残したリクイガスは、残りの5ステージで総攻撃を仕掛けてくるだろう。

text&photo:Kei Tsuji