5月20日、ジロ・デ・イタリア第12ステージは、ゴール手前12kmの3級山岳で、前日トップ10から陥落した有力選手たちの10人の逃げが決まり、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)がスプリントを制した。

スタートラインに最前列に並ぶマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)スタートラインに最前列に並ぶマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) photo:Riccardo Scanferlaこのジロでは珍しく、快晴のもとで行われた第12ステージ。チッタ・サンタンジェロ〜ポルト・レカナーティ間の206kmで争われた。数少ない平坦ステージだが、ゴール手前12km地点に設定された3級山岳ポテンツァ・ピチェーナがこの日の結果を大きく左右することになった。

この日を狙える選手として期待されたワウテル・ウェイラント(ベルギー、クイックステップ) は未出走。次第に有力スプリンターが減っていくこのジロの、最有力スプリンターはここまで2ステージで勝っているタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。

9km地点で飛び出したリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)9km地点で飛び出したリック・フレンス(オランダ、ラボバンク) photo:Kei Tsujiレースは9km地点でリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)がアタックを成功させると、18km地点でオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)が追走し、合流。先頭は3人になる。

この3人との差をコントロールするのはガーミン・トランジションズ勢。46km地点で6分25秒差をマークした後は、厳密なコントロールで5分前後のままレースは推移していく。

沿道にはダニーロ・ディルーカ(イタリア)が応援する姿も沿道にはダニーロ・ディルーカ(イタリア)が応援する姿も photo:CorVos129km地点の中間スプリント地点を先頭の3人は争い無く通過。集団ではポイント賞3位のジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)と10位のファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・ドイモ)の争いになり、サバティーニが4位通過。

148kmのこの日2つのうちの最初の3級山岳で逃げる3人と集団との差は減少。集団を牽引するのはガーミン・トランジションズ勢で、ファラーの勝利に意欲を見せる。残り50kmで差は3分に。

平坦路をひたすら逃げ続けるユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)ら3名平坦路をひたすら逃げ続けるユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)ら3名 photo:Riccardo Scanferla最後の3級山岳まで数キロの残り20km地点で差は1分を割り込み、いよいよ集団内でも動きが活発化。残り14kmでカイセン、フレンスが吸収されると、集団からフランチェスコ・ファイッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が飛び出し、一人粘るクリフトソフをパスして単独先頭に踊り出る。

この動きをきっかけに、登りで多くの選手が攻撃。山頂を越えて10名の先頭グループが形成されるが、ここには前日のステージで逃げを許し総合トップ10から陥落した有力選手たちばかりが含まれていた。

ガーミン・トランジションズがコントロールするメイン集団ガーミン・トランジションズがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsujiアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)を筆頭に、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)がここに入る。

さらにステージ狙いの選手としてフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)、ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)が入り、利害の一致する10人は全開でゴールまでの10kmを踏んでいく。

ヴォクレールやピノーを振り切ってゴールするフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)ヴォクレールやピノーを振り切ってゴールするフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji12秒後ろの集団に残されたのはマリアローザのリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)と、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)。懸命に前に追いつこうとするがなかなか差が縮まらない。ここにはウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)を前へ上げる新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)の姿も。

ペースが上がらないこの後続集団では苛立ちからかアルカンシェルを着るエヴァンスが走りながらダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)とあわや殴り合になる一幕も。リーギは前へ行くクネゴを助けるために集団のペースを緩めようとしたことがエヴァンスの思惑に合わず、小競り合いになったと説明している。2人には2000スイスフランの罰金が科された。

メイン集団のスプリントはロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)が制すメイン集団のスプリントはロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)が制す photo:Kei Tsuji昨日消沈した先頭の10人の勢いは止まらず、スカルポーニを先頭に残り1kmを通過。残り700mでニーバリが飛び出し、これにヴィノクロフが続く。少し差を開けた2人だが、後ろにはピノッティが残る8人を引き連れる形で追走。

残り100mで一気に加速して2人をパスしたのはポッツァート。切れ味鋭いスプリントで先頭に出ると、ヴォクレールの猛対を振り切ってゴールラインを切った。3位にはピノーが入った。

集団内でゴールするマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)集団内でゴールするマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) photo:Kei Tsujiロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)を先頭にやってきたマリアローザ集団は10秒遅れ。総合順位に大きく響く差ではないが、前日に総合10位から陥落した選手たちが軒並みモチベーションの高さを見せつける結果となった。ポルトはマリアローザを守ることに成功している。

この日のレースを受けて、ポイント賞ジャージのマリアロッソパッショーネはファラーからピノーの手に渡った。また、フーガ(逃げ)賞もフレンスが差をつけてトップに立っている。




ジロ・デ・イタリア2010第12ステージ結果
1位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)      5h15'50"
2位 トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)
3位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)
4位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)
7位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)

個人総合順位
1位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)      50h46'16"
2位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)           +1'42"
3位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ)   +1'56"
4位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +3'54"
5位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・ドイモ)     +4'41"
6位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)  +5'16"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)         +5'34"
8位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム)     +7'09"
9位 ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、サクソバンク)      +7'24"
10位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)      +8'14"

ポイント賞 マリアロッサ
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
サクソバンク

敢闘賞
フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)

フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos,Riccardo Scanferla

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