スタート直後に56人が逃げ、マリアローザが取り残された集団が12分という大差をつけられる前代未聞の事態となったジロ第11ステージ。このレースの不可解さを、選手や監督たちの声が裏付ける。

振出しに戻ったジロ。なぜこのような事態になってしまったのか。

土砂降りの雨の中、下りを進むメイン集団 前を追う勢いが無かったのはなぜ?土砂降りの雨の中、下りを進むメイン集団 前を追う勢いが無かったのはなぜ? photo:Riccardo Scanferla

シャンパンを開けるエフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ)シャンパンを開けるエフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsujiエフゲニー・ペトロフ(ロシア、カチューシャ)
逃げグループは総合争いの選手を含むとても大きなものだった。彼らのチームワークはとても強力で、僕らはカルペツがマリアローザグループにいたのでただ着いていけばいいだけだった。
ゴールまでの上りで僕はとてもフレッシュだったから自分のレースをした。カタルドとゲルデマンに続いてアタックしたんだ。ラスト1kmでゲルデマンを抜き、リードするのにとても力を使った。ラスト500mで彼らが後方に離れたのを見て、勝つチャンスがあると思った。
今までジロで何度も勝とうとしてきたけど、今度こそやったんだ!


マリアローザに袖を通したリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)マリアローザに袖を通したリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) photo:Kei Tsujiリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)  
とてもハッピーだ。妻に連絡したいよ。やったんだ!、やったんだ!!
まだ自分が何をしたのかよく分かっていない。でも僕はやったんだ。このジロでは何でも起こるね。僕らのチームは皆が思っているよりずっと強いよ。僕はマリアローザを守るために闘うよ。


ダン・フロスト監督(チームサクソバンク)
262kmのレースを、気温10度で、降りしきる雨の中を走るのはただ非現実的だ。私は今までに有力選手を含む大きな集団が逃げてしまうような、こんなレースは見たことがない。
リクイガスは追いつくのに十分なペースをつくることができないBMCとアスタナを見ているうちに、自分たちのチャンスを破滅させてしまったね。
我々は前の集団にうまく選手を送り込んだ。クリス(アンケル・セレンセン)はまさにモーターバイクのようにポルトとローラン(ディディエ)の前を走った。
リーダージャージを守るために全チームを破滅させたくはない。しかしこれからはシンプルに守るよ。一日一日様子を見よう。そして今を楽しもう!

マリアローザ集団は約12分の遅れでゴールにたどり着いたマリアローザ集団は約12分の遅れでゴールにたどり着いた photo:Kei Tsuji

クリスティアン・ヘン監督(チームミルラム)
まったくクレージーな一日だった。こんなのは今まで経験したことが無い。大きなグループが逃げ出した時も、有力選手たちは静かにしていたんだ。誰も反応しなかった。そしてみるみる大きなタイム差が、信じられないぐらいすぐについてしまった。
その状況は我々にとってただ理想的だった。ゲルデマンとルスがまんまと大きなタイム差を取り返すことができた。最後にリーナス(ゲルデマン)がステージを取りに行くギャンブルに出た。それが実を結ばなかったのはがっかりだけど、それでも我々はぐっと差を詰めることができたね。


マイケル・バリー(チームスカイ)とマシュー・ゴス(HTCコロンビア)が雨のラクイラを目指すマイケル・バリー(チームスカイ)とマシュー・ゴス(HTCコロンビア)が雨のラクイラを目指す (c)CorVosマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
長くてハードな一日だった。2人のチームメイトが僕のために完全に身を滅ぼしてくれた。チームに感謝したい。今週はタスマニア(※)がオーストラリアのサイクリングの中心だってことを証明したね。
※ゴスとリッチー・ポルトはタスマニア州の出身


シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
ジロのストーリーは今日変わったね。起こったことが信じられない。皆が最後まで協力しあって走った。今から違うジロが始まる。


カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
最初に20人ほどのグループが抜け出して行き、それから第2グループが形成された。トンドがその近くにいて、僕は一緒にそのグループに入ることができた。
僕は追いついた最後の選手だったよ。タイム差は5分、8分、20kmで10分というように、みるみる間に広がったんだ。

さあ、これからは彼ら(ライバルたち)が僕に対してアタックする必要があるね。最終週はとても困難だ。今、再びすべてが可能になった。

今までに不運で失ったタイムをすべて帳消しにしたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)今までに不運で失ったタイムをすべて帳消しにしたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) photo:Kei Tsuji

クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)
誰もが今日起こったことのおかげで月に行ったけど、簡単なステージじゃなかった。モーリス(ポッソーニ)、スティーブ(クミングス)、マイケル(バリー)は集団の前でハードワークを強いられた。でも今日のおかげでブラドレー(ウィギンズ)は取り返し、最高の一日にすることができた。

今まで諦めずに闘い続けてきてよかった。今まで不運が尽きなかったけど、幸運は勇者に味方し、報いを受け取ることができた。
士気を高く持ってこれからも闘い続ければもっと報われると信じているよ。

チームはブラドレーを再び総合争いの舞台に戻すことができた。これからの僕らの目標は、ジロの最終週が始まるまでの、今日から次の休息日の間を、タイム差を失わないように無事に走ることだ。

休息日を迎えることができたら、ブレドレーと残りの選手たちがどういう調子かを見直すよ。火曜にはタイムトライアルがあるから、そこで最終週をどう闘うべきか再整理できるだろう。

チームスカイやケースデパーニュ、サクソバンクが懸命に逃げ集団を牽引チームスカイやケースデパーニュ、サクソバンクが懸命に逃げ集団を牽引 photo:Kei Tsuji

ネイル・ステファンス監督(ケースデパーニュ)
誰もがすぐに協調して働き始めた。我々の今日のゴールは総合上位陣に対して少しでも多くのタイム差を取り返すことだった。サクソバンクとサーヴェロ、スカイは同じことを考えていたはずだ。
結果的には想像していたよりもずっとうまく行った!


マリアローザを失ったアレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ)マリアローザを失ったアレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ) (c)CorVosロレンツォ・ラパージ監督(アスタナ)
20人が抜け出したことはレースラジオで聞いた。そして我々はゼッケンナンバーが読み上げられるのを待っていたんだ。しかしその情報はこなかった。

そうしたら次には40人のグループが逃げたと聞いた。ビッググループの選手のゼッケンナンバーが読み上げられたのは集団が8分の差をつけてからだ。それはちょっと問題だ...。

正しく状況を把握することが困難だった。もし前の集団で皆が協力しあっているとしたら...。追いつくことは簡単じゃない。もし3、4チームが協力しあって追っていれば...。しかしすでに手遅れだった。


ジョン・ルランゲ監督(BMCレーシング)
すぐにマズイことになると分かった。ブックウォルターが逃げに乗っていたが、誰も後方集団で反応しないから彼を呼び戻した。我々はタイム差を12分まで詰め、そしてアスタナが引き継いだ。

リクイガスが前に上がってくるのは遅すぎた。リクイガスが引き出すまで、前の逃げグループには40人がいて、後方のグループにはたった25人しかいなかった。もはや何もできることはなかった。

エヴァンス擁するBMCレーシングチームも集団牽引に参加エヴァンス擁するBMCレーシングチームも集団牽引に参加 photo:Riccardo Scanferla12分42秒遅れのメイン集団でゴールしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)12分42秒遅れのメイン集団でゴールしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji


ロベルト・アマディオ監督(リクイガス)
我々は前のグループにひとり選手を送り込んでいた。なぜマリアローザグループが逃げをこんなふうに許したのか理解できない。最後の方には我々も働いたけれど、他のチームの助けは得られなかった。ネガティブな一日だった。ハードに働いたけれど、何も得られなかったんだから。


トルステン・シュミット監督(サクソバンク)
このチームはリーダージャージを守ることに関してはとても経験がある。セレンセンやラーションなどツール・ド・フランスでレースをコントロールしてきた選手たちがいるからね。

リッチー(ポルト)のような若い選手にとってフェアじゃないから、僕らはこのジロで勝ったとは言いたくない。でも彼は人が思っているより山で強い。今まで見てきたように、このジロでは何でも起こるね。



ソースは現地取材、記者会見、チーム公式ウェブサイト、主催新聞ガゼッタ・デッロ・スポルト紙、選手個人のウェブサイトおよびTwitterなど。

text:Makoto.AYANO
photo:Kei.TSUJI、CorVos