2009年3月17日、ティレーノ〜アドリアティコの最終第7ステージが行なわれ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)が渾身のスプリント勝利を飾った。総合優勝はミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)。過去4年間海外勢に奪われていたタイトルを取り返した。

逃げるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、サイレンス・ロット)、ハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)、ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ)逃げるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、サイレンス・ロット)、ハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)、ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ) photo:Cor Vos最終ステージは今年もサンベネデット・デル・トロントにゴールする169kmの平坦コース。レース前半は標高515mの山岳ポイントを含む上りが登場するが、後半は海沿いのサンベネデットに敷設された完全フラットな10kmの周回コースを8周する。

この日のためにスプリンターたちは山岳を乗り越えてきた。スプリント劇場に注目が集まる中、10km地点で飛び出したのはオリヴィエ・カイセン(ベルギー、サイレンス・ロット)、ハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)、ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ)の3名。

大集団のスプリントで先頭に立つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)大集団のスプリントで先頭に立つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Cor Vos53km地点でこの3名のリードは7分10秒まで広がったが、サンベネデットの周回コースに入り、スプリンターチームが集団牽引を始めると、タイム差は階段を転げ落ちるように縮小。チームコロンビアやフランセーズデジュー、LPRブレークスが牽引する集団は、周回を重ねる毎にタイム差を詰めて行った。

最後まで抵抗したイグナチエフもラスト3kmで吸収され、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)のスパートも失敗。しばらく集団内で体制を整えていたチームコロンビアがラスト1kmで一気に先頭に立ち、そのまま最終ストレートにやってきた。

ファラーとの一騎打ちを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)ファラーとの一騎打ちを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Cor Vosカヴェンディッシュの最終発射台として集団を率いて姿を現したのは、平坦や山岳を問わない万能なアシストとして活躍するジョージ・ヒンカピー(アメリカ)だ。

ヒンカピーの後方からラスト200mでダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)がスプリントを開始したが伸びず、一回り低いポジションでカヴェンディッシュが抜きさって行く。これにタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)が挑戦状を叩き付けた。

表彰台で派手にシャンパンを開けるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)表彰台で派手にシャンパンを開けるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Cor Vos最後はカヴェンディッシュとファラーの一騎打ち。第3ステージではファラーがゴール寸前で刺しきったが、今回はカヴェンディッシュが先頭を譲らずにゴール。4日前の雪辱を果たした。

昨シーズン18勝を飾った23歳のカヴェンディッシュは、今シーズン早くも(カリフォルニア2勝ダウンアンダー2勝に続く)5勝目だ。週末に開催が迫るミラノ〜サンレモでは有力候補の一人に挙げられるが、本人は「(チームの顧問で4回サンレモで優勝している)ツァベルと二度コースを試走したけど、自分には厳しすぎるコースだと思った。今後2年間は集中してサンレモに挑みたい。そうすればようやくチャンスが回ってくると思う」と語っている。

総合表彰台、左から2位ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、優勝ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、3位アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)総合表彰台、左から2位ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、優勝ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、3位アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ) photo:Cor Vosカヴェンディッシュはミラノ〜サンレモに出場後、3月25日から29日までポーランドで開催されるトラック世界選手権にイギリス代表メンバーとして出場。過去に2回世界チャンピオンに輝いているマディソンに出場すると思われる。

そしてスカルポーニのティレーノ〜アドリアティコ初総合優勝が決定。第5ステージ個人TTでイタリア人最高の4位に入り、そして難関山岳第6ステージで優勝。オペラシオンプエルト関与による暗闇を抜け出したスカルポーニが、非の打ち所の無い走りで初の頂点に立った。

総合優勝者に対しても、当然質問はミラノ〜サンレモに及ぶ。スカルポーニは「サンレモはまだ1度しか入ったことが無い。2005年に走ったけど落車してしまったんだ(13分40秒遅れの133位で完走)。でもこのティレーノ〜アドリアティコの総合リーダージャージに敬意を表して、スタートラインにつきたい」と語っている。

ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が総合2位に入り、プロコンチネンタルチーム所属のイタリア人選手がワンツー勝利。2007年大会総合優勝者のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)は総合3位に入った。

昨年総合3位のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)は、前日の遅れが痛手となって総合4位。表彰台には手が届かなかったが、新人賞では2年連続でランキングトップに輝いている。

また、この日惨敗したイタリアンスプリンターたちはポイントを伸ばせず、初日にステージ優勝を飾ったジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)が最後までポイント賞ジャージをキープ。23歳のエルファレスはスプリンターながら総合14位に食い込む大健闘を見せた。

選手コメントはイタリア・ガゼッタ紙より。

ティレーノ〜アドリアティコ第7ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)4h09'46"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
3位 バーデン・クック(オーストラリア、ヴァカンソレイユ)
4位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
5位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
6位 アンジェロ・フルラン(イタリア、ランプレ)
7位 オレリアン・クレール(スイス、アージェードゥーゼル)
8位 ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)
9位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
10位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)

個人総合成績
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)27h37'22"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+25"
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+1'07"
4位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)+1'10"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'13"
6位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)+2'06"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)+2'32"
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン)+2'33"
9位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームコロンビア)+2'41"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+2'54"

ポイント賞
ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)

山岳賞
エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)

新人賞
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)