前日の個人TTでリードを広げた海外勢に対して、イタリア勢が逆襲に出た。ティレーノ〜アドリアティコ最難関山岳ステージでイタリアングループの逃げが決まり、オペラシオンプエルトに伴う出場停止処分を明けたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)がステージ優勝。同時に一躍総合トップに立った。

アップダウンが延々と続くコースを進むメイン集団アップダウンが延々と続くコースを進むメイン集団 photo:Cor Vos実質的にティレーノ〜アドリアティコの総合争いを決定づける第6ステージ。距離は今大会最長の235kmで、チンゴリ(74km地点・標高598m)とサッソ・テット(192km地点・標高1455m)の2つの山岳ポイントが登場する。

その他にもカテゴリーのつかない無数の上りが選手たちを待ち構え、獲得標高差は3000mを超えるタフステージだ。この日はパオロ・ベッティーニ(イタリア)がバイク乗車のコメンテーターとしてデビューした。

補給ポイントを通過して行くマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)ら逃げグループ補給ポイントを通過して行くマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)ら逃げグループ photo:Cor Vosレースは海沿いのチヴィタノーヴァ・マルケをスタートしてすぐ、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)、マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)、マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン)、パオロ・ロンゴボルギーニ(イタリア、バルロワールド)の4名のエスケープが決まる。

この4名はLPRブレークスとリクイガスがコントロールするメイン集団から最大7分のリードを得て山岳コースを逃げ続け、ゴール43km手前に佇むサッソ・テットでマルティネスが独走を開始した。

サッソ・テットで攻撃を仕掛けるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)サッソ・テットで攻撃を仕掛けるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Cor Vos14.6kmかけて標高1455mを駆け上がるサッソ・テットで集団は動いた。上りの中腹でダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)がアタックし、遅れて総合3位のスカルポーニがこれに合流。

ディルーカを振るい落としたスカルポーニには、イヴァン・バッソ、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(ともにイタリア、リクイガス)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)の3名が追いつき、リーダージャージのアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)や総合2位のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)は追走集団を形成して上りを進んだ。

雪の残るサッソ・テットで形成されたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)グループ雪の残るサッソ・テットで形成されたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)グループ photo:Cor Vos先頭マルティネスは独走のまま気温5度のサッソ・テットを登頂し、遅れること3分、バッソら4名は追走集団を1分15秒引き離して下りに突入した。

下りが苦手なバッソは、チームメイトのニーバリに食らいついてハイスピードダウンヒルをこなす。総合首位が危ういクレーデンの追走集団はマキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)が献身的に引いたが、逆に下りでもタイム差は広がるばかり。

サッソ・テットの下りで飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)サッソ・テットの下りで飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vosやがてラスト18kmでニーバリがバッソグループから飛び立ち、単独でマルティネスの追走を開始。ニーバリは10kmに渡って独走したが、スカルポーニとガルゼッリに封じ込められ、攻撃が仇となってバッソグループから遅れて行く。そしてラスト7kmで、ここまで200km以上逃げていたマルティネスは吸収&パスされた。

クレーデンを含む追走集団は、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)の牽引によってタイム差を詰めたが、先頭のバッソグループには追いつかない。

上りゴールを制したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、右のバイクにベッティーニが乗る上りゴールを制したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、右のバイクにベッティーニが乗る photo:Cor Vos丘の上に佇むゴール地点カメリーノの街に向かう上りで、バッソは攻撃的にペースを上げたが、スカルポーニとガルゼッリは千切れない。カメリーノの狭い街中を駆け抜ける先頭3名は、ラスト200mから始まる勾配12%の上りでスプリントバトル。バッソが力無く後退する中、ガルゼッリを破ったスカルポーニが悠々と両手を広げた。

総合上位のクレーデンらが1分以上遅れたため、総合成績には大きな変動が見られた。ステージ優勝を飾ったスカルポーニは、同時に総合トップに躍進。2007年に総合9位に入っているこのティレーノ〜アドリアティコで、平坦コースの最終日を前にしてリーダージャージを獲得した。

リーダージャージを獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)リーダージャージを獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Cor Vosリバティーセグロス時代の2006年にオペラシオンプエルト(スペインで勃発した大規模なドーピング捜査)への関与が疑われ、2007年5月に一件への関与を自供したスカルポーニ。18ヶ月の出場停止処分が明けた昨年8月から、ディキジョヴァンニで走っている。地元フィロットラーノにほど近いカメリーノのゴール地点には「スカルポーニ応援団」の旗が躍った。

ステージ2位のガルゼッリは総合2位に浮上し、クレーデンは辛うじて総合表彰台をキープ。ロヴクヴィストは総合4位に順位を下げたが、新人賞ジャージはキープしている。またこの日、昨年の覇者ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)は静かにレースを去った。



ティレーノ〜アドリアティコ第6ステージ結果
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)6h36'12"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+01"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+03"
4位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)+1'09"
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)+1'11"
6位 ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)+1'15"
7位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)
8位 ルーカ・マッツァンティ(イタリア、カチューシャ)
9位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)
10位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、LPRブレークス)

個人総合成績
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)23h27'26"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+25"
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+1'07"
4位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)+1'10"
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+1'13"
6位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)+2'06"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、ミルラム)+2'32"
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン)+2'33"
9位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームコロンビア)+2'41"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+2'54"

ポイント賞
ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)

山岳賞
エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)

新人賞
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)