クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミントランジションズ)は2年前のツール・ド・フランスを4位で終えたが、今年はさらに好成績を挙げることを目標としている。7月のツールで勝利を達成するために、ジロからスタートを切る。

2008年に着たマリアローザを再び着ることを目指して。しかし今年は最終日にそれを着ることが期待されている。

パレルモで行われたジロ・デ・イタリア2008第1ステージのチームタイムトライアルを制したチームガーミンパレルモで行われたジロ・デ・イタリア2008第1ステージのチームタイムトライアルを制したチームガーミン (c)Makoto.AYANO

ジロ2008第1ステージでマリアローザを獲得したクリスティアン・ヴァンデヴェルデジロ2008第1ステージでマリアローザを獲得したクリスティアン・ヴァンデヴェルデ (c)Makoto.AYANO「ヴァンデヴァルデにはグランツール勝利の可能性がある」と言われてきた。

ガーミン・トランジションズに所属する33歳のアメリカ人 ヴァンデヴェルデは、今年、ツール・ド・フランスではアンディ・シュレック(ルクセンブルク、チームCSC)やツールを2回制覇しているアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)という、より若く、より強いライバルに直面しなければならないだろう。

それに比べるとジロで「確実な優勝候補」として挙げられるのは、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)のみ。しかしエヴァンスはこの春から非常に好調ではあるものの、彼をサポートできる強いチームには欠けている。

果たして、ヴァンデヴェルデは今年のジロに勝利できるのだろうか?

「わからないよ、まったくわからない」彼はいつもの気さくな調子で答えた。

「僕の調子がいいことはわかってる。去年の僕よりずっと良いんだ。それに去年だって、(第3ステージで)落車するまではなかなか調子が良いと思ってたんだ」。

今年のジロはアムステルダムから始まる。イタリアに入ってからブーツのかかとに当たるところまで南下。山岳部はレースが再び北部にもどる最終週だ。ゾンコランとモルティローロの登りがジロ・デ・イタリアの勝敗を分けるだろう。ヴァンデヴェルデも同意見だ。

「もし山岳に差し掛かるときに好調だったら…」と続けたが、そこで躊躇した。

「とは言っても山岳はまだ先のことだろう? 2週間以上も先だ。まだまだまったく先のことだよ。去年のデニス(メンショフ)やカルロス(サストレ)のように、チャンスがあれば僕だって掴むさ。7月のツールのために温存するなんてことはしないよ」。

チーム・スカイのブラドレー・ウィギンズも、このガーミンの元チームメートと同じ状況だ。二人ともツール・ド・フランスに向けての調整のためにジロに出場するが、3位までに食い込む可能性や勝利の可能性があるのなら、それに賭けるだろう。

2008年にはヴァンデヴェルデはツール・ド・フランスの準備としてまずジロ・デ・イタリアに参加した。ガーミンはパレルモでのチームタイムトライアルを制し、ヴァンデヴェルデにマリアローザを着せた。

昨年、ヴァンデヴェルデは第3ステージで落車し、頚椎5箇所を破損したが、それまではヴァンデヴェルデとウィギンズの二人がチームガーミンを率いた。

「2008年は本当にうまくいったよ。ピンクジャージ(マリアローザ)を早くに手に入れたし、総合成績でもうまくいった。あの年の残りのレースに出るのに完璧な出だしだった。ガーミンはジロを使ってツールへの調整をするんだ。ウィギンズもジロを走って、2008年の僕と同じように意外な成果を挙げたよね。ちょっと不思議だな」。

インタビューに答えるクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミントランジションズ)インタビューに答えるクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミントランジションズ) (c)CorVosあれから2年。ガーミンは2番目のランクのチームから選手層の厚いトッププロツアーチームへと成長した。このアメリカンチームにはヴァンデヴェルデの他にもデーヴィッド・ミラー(イギリス)、タイラー・ファラー(アメリカ)そしてダニエル・マーティン(アイルランド)やジャック・ボブリッジ(オーストラリア)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア)らの強力な若手選手が所属している。

「デイヴ(ミラー)はすごく調子が良いし、タイラー(ファラー)もすごく調子が良い。マーティンは総合成績を狙って出場するんだけど、ジロの山岳地帯が彼には合っているんだ。どれもチームにとって、いいことだよ。以前は出せるカードがない状態だったんだ。2008年にはこんな会話はできなかったね」。

今日の14時47分、アムステルダムでのタイムトライアルのスタートを切った時、ヴァンデヴェルデは彼にとって初めてのグランツール制覇の可能性がいかなるものか、つかめるはずだ。



text: Gregor Brown
photo: Kei Tsuji, Cor Vos, Makoto.AYANO
translation: Yuko.Yamawaki