パリ〜ニースの最終第8ステージは、前日に失脚した元王者アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)の猛攻撃に沸いた。コンタドールはアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)にステージ優勝を奪われたものの健在をアピール。ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)は初総合優勝に輝いた。

コンタドールが再び動く

晴れ渡るニースをスタートする選手たち晴れ渡るニースをスタートする選手たち photo:Cor Vosパリ〜ニースの最終日は、例年同様地中海沿いのニースをスタート&ゴールとする119kmのショートコースで行なわれた。距離は短いが内容は濃い。ポルト峠、ラ・トゥルビ、エズ峠の3つの1級山岳が、最後まで総合の行方が分からない白熱した闘いを演出する。

レースは序盤から25名が抜け出す展開で、ポルト峠(長さ7.2km・平均7.2%)の上りが始まると、前日にリーダージャージを失ったコンタドールがメイン集団からアタック。総合4位のコンタドールが報復攻撃を開始した。

先頭グループを率いて山岳を進むアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)先頭グループを率いて山岳を進むアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos「失うものは何も無かった。たとえ可能性が低くても、集団内に隠れているより、攻撃を仕掛ける方が性に合っている」と語るコンタドールは、すぐさま先頭グループを捉え、そして4名を引き連れて飛び出していく。同時にリーダージャージのLLサンチェスが2度のパンクに見舞われたことも影響し、タイム差は広がった。

コンタドールはサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、アイトール・エルナンデス(スペイン、エウスカルテル)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、ケスデパーニュ)を引き連れてポルト峠をクリア。メイン集団は2分25秒遅れで通過した。

集団内で山岳をこなすルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)やアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)集団内で山岳をこなすルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)やアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosしかしなだらかな下りでは人数を揃えた大集団が圧倒的に有利だ。サクソバンク、クイックステップ、ケースデパーニュの総合トップ3チームが集団を牽引し、下りでタイム差を詰めて行く。

続く1級山岳ラ・トゥルビ(長さ7.6km・平均4.8%)の上り手前で集団は14秒までタイム差を詰めたが、捉えきれず、上り区間で再びコンタドールの背中は遠ざかった。

エズ峠でロペスガルシアを千切るアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)エズ峠でロペスガルシアを千切るアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vosラ・トゥルビの頂上通過時点で先頭はコンタドール、カザール、ロペスガルシアの3名に。再び1分のリードを稼ぎ出したコンタドールは、休むまもなく最後の1級山岳エズ峠(長さ4.2km・平均6.8%)に突入し、ロペスガルシアらを振り切って独走を開始した。

ハイスピードでエズ峠を駆け上がったコンタドールは、20秒リードしたまま峠頂上をクリアし、ニースまでの長い下りに突入する。一方のメイン集団ではアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)とフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がカウンターアタックを繰り出すと、前日の疲労からLLサンチェスはこの動きに反応できなかった。

集団から飛び出したコロムとシュレクは先頭コンタドールを捉え、メイン集団を20秒ほど引き離してゴール地点ニースの街へ。総合2位のシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)は落車で後退したが、何とか集団に復帰。このときチームカーを利用したがペナルティーは無かった。

総合ジャンプアップを狙うシュレクが前を引き続け、最終ストレートでコロムとコンタドールがスプリントバトル。序盤から逃げ続けたコンタドールを抑え込んだコロムが優勝。17秒遅れの集団先頭はジョナタン・イヴェール(フランス、スキル・シマノ)が穫った。


スペイン人選手の活躍が目立ったパリ〜ニース

アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)をスプリントで下したアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)をスプリントで下したアントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosチャレンジ・マヨルカヴォルタ・アオ・アルガルヴェでステージ優勝を飾っているコロムは今シーズン3勝目。新生カチューシャでは中心的存在だ。

総合5位でレースを終えたコロムは「総合争いは残念な結果に終わったが、この勝利は非常に嬉しい。平坦ステージで失った1分30秒が最後まで響いてしまった。加えて気管支炎にも悩まされたんだ。次の目標レースはブエルタ・アル・パイスバスコ(プロツアー第2戦・4月06日開幕)だ」と語っている。

総合表彰台、左から3位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)総合表彰台、左から3位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor VosLLサンチェスはレース中盤にチームメイトから孤立する場面も見られたが、ライバルたちの攻撃を抑え込んで総合優勝。「この勝利はチームメイトに捧げたい。彼らの働き無くしてこの勝利は無かった。彼らのおかげで落ち着いてレースをこなすことが出来たんだ」と語る。

オールラウンダーとして今後の活躍に注目が集まるが「サイクリングに関わるすべての選手、そしてすべてのスポンサーにとって、最も重要なレースはツール・ド・フランス。ケースデパーニュにはツールで勝てる選手が数名いる。今日僕はパリ〜ニース総合優勝者に輝いたけど、7月にはチームメイトとしてオスカル(ペレイロ)とアレハンドロ(バルベルデ)のアシストに務めるよ」とコメントしている。

各賞ジャージ受賞者、左から新人賞シールドライヤース、総合優勝LLサンチェス、ポイント賞シャヴァネル、山岳賞マルティン各賞ジャージ受賞者、左から新人賞シールドライヤース、総合優勝LLサンチェス、ポイント賞シャヴァネル、山岳賞マルティン photo:Cor Vos旧友のコンタドールについては「彼は偉大な選手。彼のゴールはこのパリ〜ニースではなくてツールだ。今回は僕に順番が回ってきて嬉しく思う」と語った。

シュレクはエズ峠のアタックが実を結び、総合2位にジャンプアップ。サクソバンクはフォイクトが総合6位に食い込み、チーム総合成績トップに輝いた。

シャヴァネルは総合3位にダウンしたが、ポイント賞ジャージをキープ。同時にクイックステップはケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)が新人賞トップに。山岳賞はトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)が守り抜いた。

最後まで闘志むき出しの走りを見せたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)最後まで闘志むき出しの走りを見せたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos初日の個人TTを制し、頂上ゴールでイエロージャージを奪い返し、そして前日の山岳ステージで崩壊したコンタドール。ステージ優勝&総合逆転劇には結びつかなかったが、攻撃を仕掛け、最後までライバルを翻弄。まさに今年のパリ〜ニースの主役だった。

最終的に総合4位で終えた2007年度のチャンピオンは「チームメイトには『昨日失ったものを今日取り返す』と宣言していたんだ。結果的にはステージ優勝を逃して、総合でもジャンプアップできなかった。でも満足のいくレースだったよ。ステージ2勝を飾ったし、(ツールに向けての)準備が順調だということを実感できた」と、ツールに向けて好感触を得た様子。次戦はアームストロング(アメリカ)とダブルエースで挑むブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオン(3月23日開幕)だ。

選手コメントはレース公式サイト、およびチーム公式サイト(アスタナ&カチューシャ)より。

パリ〜ニース2009第8ステージ結果
1位 アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)2h47'49"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+01"
4位 ジョナタン・イヴェール(フランス、スキル・シマノ)+17"
5位 クリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
7位 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)
8位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)
9位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)
10位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)

個人総合成績
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)30h53'51"
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'00"
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+1'09"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+1'24"
5位 アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)+1'47"
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)+1'59"
7位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)+2'29"
8位 ジョナタン・イヴェール(フランス、スキル・シマノ)+2'57"
9位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、Bboxブイグテレコム)+3'37"
10位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)+4'00"

ポイント賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

新人賞
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)

チーム総合成績
サクソバンク