西薗良太(東京大学)がクローズアップされるようになったのはちょうど一年前の神宮クリテだった。その後はタイトルを総なめし、今や学連を代表するロード選手となった。4月から4年生になる西薗に、今までとこれからを訊いた。

シリーズチャンピオンの西薗良太(東京大学)シリーズチャンピオンの西薗良太(東京大学) photo:Hideaki.TAKAGI

大学対抗 リー・スンホ(韓国体育大学)、西薗良太(東京大学)、野口正則(鹿屋体育大学)ら大学対抗 リー・スンホ(韓国体育大学)、西薗良太(東京大学)、野口正則(鹿屋体育大学)ら photo:Hideaki.TAKAGI最終戦・神宮クリテでシリーズチャンピオンに輝く

2月21日に行われた神宮クリテでは大学対抗クラスにチームメイトとともに3人で出場し、結果は10位。熾烈なゴールスプリント争いでは6着だった。
「ラストは最高の位置についたのですが、(優勝した鹿屋の)野口選手の番手に。でも野口が一歩踏んだ瞬間に離れました。その最初の一歩が根本的に違いましたね」

序盤は積極的に動いたが中盤以降は集団中ほどをキープしていた。
「序盤はボクが動いたらみんな一斉に動いてきた。ボクはこのコースではそんなに強くないのに(笑)。そのときにポイ西薗良太を胴上げする東京大学自転車競技部西薗良太を胴上げする東京大学自転車競技部 photo:Hideaki.TAKAGIント2着になりました。今日みたいな完全フラットなスプリントはあまり得意じゃないんです。残り半分の時点であきらめて、得点が散ってくれることを祈って最後勝負を考えました。実際に得点は散ってくれましたけれど」

シリーズ11戦中なんと5勝

2009年度のロードレース・カップ・シリーズ戦は年間11戦だった。そのうち西薗はなんと5勝している。うち3勝はクリテリウムだ。高いレベルのスピードも武器の一つだ。
「上りだったり強風だったりという力勝負のゴールならば得意です。それらはそういう勝ち方ですね。シリーズ戦では前半の貯金があったし、後半も沈まず意外と取れたので安定していました。悪いときでも今日みたいにそれなりに見せ場を作ってきました。ある程度評価できると思います」

一番印象に残ったのはチームロード

2009年は数々のタイトルを総なめにした。でも、一番印象に残ったのは4位になったレースだった。
「日大や法政に勝てた6月の大潟村でのチームロードが一番印象に残っています。4人で力を合わせて走りました。柿木さんに配分してもらって、ボクが2分、マイケルが1分、そして10秒ずつと走った」
チームロードは3人目、4人目の力もある程度なければ結果を出せない競技だ。一人だけ強くても、また独善的でも結果は残せないのだ。

インカレを制した西薗良太(東京大学)が雄叫びを上げるインカレを制した西薗良太(東京大学)が雄叫びを上げる photo:Hideaki.TAKAGIインカレロードで優勝

すべての学連選手が目標とする「インカレ」。そのロードレースで主導権を握った走りで見事優勝した。
「インカレはもちろん目標としていたし、勝つための準備をしてきました。法政の2人(青柳と早川)が最後までいたのが若干想定外でしたが、いつでも仕掛けることができました。それよりも、チームとして中盤まで東さんが逃げたり、高木さんがアシストしてくれたりといろいろな形で支援してもらった。そちらのほうが嬉しいですね」



ツール・ド・北海道を走る西薗良太(東京大学)ツール・ド・北海道を走る西薗良太(東京大学) photo:Hideaki.TAKAGI満足できなかったツール・ド・北海道U23の2位

2009年のツール・ド・北海道は各ステージで鹿屋、法政、日大、順大など学連選手が活躍した。その中でもスピード系の内間康平(鹿屋)と上りの西薗の戦いは秒差にまでもつれこんだ。

「北海道は悔しかった。第2ステージのラスト3km。アップダウンでチャンスの場面とわかっていたのに、集団に埋もれてしまい前に出られなかった。あとは十勝岳の下り。せっかく上りで差をつけたのにうまく下れなかった。プラスのところはあまり覚えていないんです」

大学院進学を考えている

その西薗も4月からは4年生。進路が気になるところだが、大学院への進学を考えていると言う。

「大学院の試験が8月半ば。今度は個人TTを頑張りたいと思っています。これは時間が少なくても体を特化させれば狙えるんじゃないかと思っています」
「8月以降は白紙に近い。練習不足で体が戻ると思いますが。(学業などで練習できないときがあるという)学生レーサーの本道を行くということですね」

大学対抗シリーズチャンピオンを決めた西薗良太(東京大学)大学対抗シリーズチャンピオンを決めた西薗良太(東京大学) photo:Hideaki.TAKAGI1年後は実業団へ?

学連登録は4年間なので、来春、2011年4月からは大学院へ進学しても学連では走れない。

「実業団のTRクラスに出たくとも、金銭面や移動手段など今までどおりにはいかない。もちろん学業にも打ち込まなくてはならず、出場できるレースも限られる。そういう状況を聞き分けてくれるチームがあれば良いのですが。シリアスにできる環境を探す意味で、やすやす諦めるワケにはいかないですね」

学業と両立させながらのレーサー

西薗はスポーツ推薦入学ではない。東京大学自転車競技部も伝統的にある程度の強さを持っているが、決して強豪校ではない。
「トレーニングの面倒を見てもらっている柿木孝之さんに言われたことがあります。強豪校に入れば勝手に強くなるものじゃない。やはり選手自身が自覚を持ってきっちりやらないとダメ。ボクみたいな存在は無駄じゃないんじゃないか。"ここまではできる"という目標になれるかもしれない、と」

学生ロードレース・カップ・シリーズ総合を征し、表彰を受ける学生ロードレース・カップ・シリーズ総合を征し、表彰を受ける photo:Hideaki.TAKAGI東大の選手として見られること

東京大学はもちろん入学するのは最高に難しいし、4年で卒業するのもまた難しい。学業そのものだけでも多忙だ。周囲はどうしても「東大の西薗」として見てしまう。

「実際制約があるのは確かで、ほかの学生と同じ環境でやったとしたらまだ強くなる自信はあります。そのことについては別にいいんです。むしろ選手が一番イコールに見ているかもしれないですね。純粋なステータスで『上りはちょっと離されても下りなら追いつける選手』だとか(笑)。試合中は誰も大学名を考えていないから、一番公平かもしれませんね」

3月はニュージーランドへ学業に

「3月に20日間くらいニュージーランドへ行ってきます。メインは英語のスピーキングとリスニングのためで、ワイカト大学のプログラムに参加します。もちろん自転車を持っていきます。ジュリアン・ディーン(ガーミン・トランジションズ)出身地のクラブチームで一緒に走ることにしています。そこで、どうすれば自転車競技が本当に好きな人が増えるかということも見てきます」


帰国後の4月からは新しいステージが始まる。西薗の真骨頂は目標を自分で定めてそれに向けて努力し、そして結果を出すこと。
いっぽうプロロードレースの世界は、いつでも結果を出すこと、要望に応えることが求められる。西薗自身が今後、どのような選択をするのか、4月からの走りとともに目が離せない。

西園を囲む東京大学自転車競技部西園を囲む東京大学自転車競技部 photo:Hideaki.TAKAGI



photo&text:高木秀彰




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