イタリアンバイクブランド、ボッテキアよりフルモデルチェンジを果たしたフラッグシップバイク「EMME4 SUPERLIGHT」をインプレッション。軽量化と高剛性化を狙ったコンパクトなリアトライアングルを新たに取り入れ、よりレーシング性能を高めた1台として登場している。



ボッテキア EMME4 SUPERLIGHTボッテキア EMME4 SUPERLIGHT (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ブランド名の由来となったオッタビオ・ボッテキア氏へのバイクサポートを開始した1909年より始まったとされ、老舗ブランドひしめくイタリアにおいても1世紀以上もの一際長い歴史を誇るバイクブランドがボッテキアだ。同氏はイタリア人として初めてツール・ド・フランスを制しただけでなく、第1ステージから最終ステージまでマイヨジョーヌを着用し続けた史上初のライダーとしても知られる。

その後も数多くのプロチームをサポートし、ジャンニ・モッタ(イタリア)の1966年ジロ・デ・イタリア総合優勝や、グレッグ・レモン(アメリカ)の1989年ツール・ド・フランス総合優勝などもボッテキアバイクによって達成されてきた。近年で言えばステファノ・ガルゼッリ(イタリア、当時アクア・エ・サポーネ)による2011年ジロ・デ・イタリア山岳賞獲得も記憶に新しいだろう。

2017シーズンからは同郷のUCIプロコンチネンタルチーム、アンドローニ・シデルメク・ボッテキア(旧アンドローニ・ジョカトーリ)へ機材サポートを行っており、プロレースシーンにてその性能を磨き続けている。

シートステーの接合位置を下げることで剛性と軽量性、空力性能を最適化するシートステーの接合位置を下げることで剛性と軽量性、空力性能を最適化する 角断面かつ大口径でねじれ剛性を高めるダウンチューブ角断面かつ大口径でねじれ剛性を高めるダウンチューブ 細身でストレート形状のフォークは軽量化にも貢献細身でストレート形状のフォークは軽量化にも貢献

そんなボッテキアのハイエンドレーシングバイク「EMME3 GARA」が3年振りとなるフルモデルチェンジを果たし、数字を1つ更新した「EMME4 SUPERLIGHT」として登場した。従来モデルに対しエアロフォルムやダイレクトマウントブレーキなどを投入し空力性能を追求したEMME3だったが、今作ではシンプルに重量剛性比を高める設計とすることでレーシング性能をより洗練させている。

前作から大きく変更された点として目につくのがコンパクトになったリアトライアングルだろう。接合位置を下げシートステー長を短くすることで高剛性かつ軽量化を実現し、素早い反応性をもたらしている。加えて細身の扁平形状を採用することで振動吸収性の向上にも寄与している。またエアロロードに多々採用されるデザインだけに空力性能の強化にも一役買っており、ブレーキキャリパーもシートチューブ裏に隠れるよう配置されることで空気抵抗の低減に繋がっている。

モデル名を大きくあしらったトップチューブ上部モデル名を大きくあしらったトップチューブ上部 直線的でシンプルなフレームデザインを採用。シフトワイヤーはダウンチューブ上部から内装される直線的でシンプルなフレームデザインを採用。シフトワイヤーはダウンチューブ上部から内装される
リアブレーキワイヤーはトップチューブ中央から伸びるルーティングリアブレーキワイヤーはトップチューブ中央から伸びるルーティング マッシブな造形でパワー伝達を高めるチェーンステーマッシブな造形でパワー伝達を高めるチェーンステー

フレームの成形方法も、各チューブをつなぎ合わせるように作られるボッテキアに特徴的であったボンデッドカーボンプロセスではなく、より軽量化を図れる一体成型のモノリステクノロジーへ変更。最適化されたカーボンレイアップの元、内部にバルーンを入れず内圧をかけて成形するダブルモールドモノコックテクノロジーにより、フレーム内部のシワをなくし従来の製法に比べ20%の強度アップと軽量化を果たしている。

フレーム素材には東レのT1000を始めT800、T700と言った高弾性炭素繊維を用いた1K、3Kのハイモジュラスカーボンを適材適所に使用する。それらをシンプルなフレームワークに落とし込むことでフレーム重量780g、同じくフルカーボン製のフォークは330gとフラッグシップに恥じない軽量値をマークしている。

リアシフトワイヤーはシートステー側からアクセスリアシフトワイヤーはシートステー側からアクセス ディスクブレーキキャリパー用の受けがあらかじめ設けられるディスクブレーキキャリパー用の受けがあらかじめ設けられる

ストレートなフォーク形状は従来から変わらずより細身に、かつクラウン部がヘッドと一体化したインテグレートなデザインが採用される。シートチューブはオーソドックスな丸型なのに対し、トップチューブやダウンチューブはねじれに強い角型断面となる。またEMME3においてはチェーンステーの剛性強化のためにチタン素材をインサートするテクノロジーが用いられたが、今作では軽量化を優先し同構造の搭載は見送られている。

またEMME4に大きな特長として、一つのフレームでリムブレーキ、ディスクブレーキいずれにも互換性を持つ点が挙げられる。チェーンステーにはあらかじめディスクブレーキキャリパー用の受けが設けられており、ブレーキタイプの切り替えが随時行えるよう設計されている。なお、フォークに関してはそれぞれのブレーキに専用品となるため、フレームセット購入時にいずれかを選択してほしい。

ボッテキアに共通の1-1/8~1-1/2インチテーパードヘッドにより安定したハンドリングを実現ボッテキアに共通の1-1/8~1-1/2インチテーパードヘッドにより安定したハンドリングを実現 プレスフィットBB86によりボリュームを確保したBB周りプレスフィットBB86によりボリュームを確保したBB周り オーソドックスな丸型のシートチューブオーソドックスな丸型のシートチューブ

販売はフレームセットとともにリムブレーキモデルの各種完成車にて行われる。ブランドカラーの赤を全面にあしらったMATT RED LABと、ブラック基調にレッドの差し色が入るMATT BLACK/REDの2色展開だ。今回はコンポーネントにシマノR8000系アルテグラを、ホイールにフルクラムのレーシング7 LGをアセンブルした試乗車にてテストした。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「攻撃的な性格の中にも優しさを感じるレーシングフレーム」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)


このバイクは実際の重量も軽いですし、走ってみても軽い生粋のイタリアンレーシングバイクといった感じですね。前に同じボッテキアのT1 TOURMALETに試乗したことがあるのですが、脚力のあるライダー以外お断りというような硬くソリッドな印象を受けました。このバイクも同じような溢れ出る剛性感はありますが、T1 TOURMALETほど脚を削って走るようなストイックな印象は薄くなっていますね。攻撃的な性格の中にも優しさを感じるレーシングフレームです。

「攻撃的な性格の中にも優しさを感じるレーシングフレーム」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)「攻撃的な性格の中にも優しさを感じるレーシングフレーム」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
近年のフラッグシップバイクに総じて言える、踏めば踏むほどリニアに加速してくれるのに、身体への反発は非常に少ないというのが特徴的ですね。ですので、例えば平地でパワーをかければどんどんスピードがあがっていき、気づいたらアウタートップに入ってしまうほどの加速感が味わえます。ギアを足していったとしても、引っ掛かりなくスムーズに反応していく感覚はまるでF1カーがギアチェンジして加速していくようで、溜めもなくダイレクトな走り心地ですね。

もちろん登りの軽さも際立っています。SUPERLIGHTとモデル名にもある通りレース向けの超軽量バイクといった走り心地ですね。一見細身のフレーム形状から実際に持った時の重量も軽く登り専用のクライミングバイクかなと思いがちですが、走ってみると平坦での高速巡航も全く不満なくオールラウンドレーシングバイクといった性格に仕上がっていると思います。

ルックスで特徴的なのが極めて細く造形されたフロントフォークですが、これだけ細身でいてもブレーキングやコーナリングでたわむといったこともありません。昨今のロードバイクは見るからに頑丈そうな太いフォークブレード形状のものが多い中で、乗る前は不安感もありましたが全く問題ないですね。カーボン技術もここまで来たかと思うと感心してしまいます。

ディスクブレーキにも対応する併用フレームということで、ブレーキタイプの違いで乗り味が変わってしまうという問題も起きずに済みますね。フォークさえ手に入ればディスクロードに出来るというのは拡張性も高く、将来ディスクブレーキがレースで解禁された時でも使えるので、長く付き合えるフレームとなりそうですね。

全体的な性能を加味するとやはりレースで勝利したい人に乗って欲しいですね。登りの多いコースやヒルクライムはもちろん、反応性も良いので加減速のあるクリテリムでも十分真価を発揮してくれると思います。どんなコースにも幅広く対応してくれるでしょう。ライダーのレベルが上がれば上がるほど本性を現してくれるイタリアンバイクですね。

「フラッグシップらしい高い反応性とマイルドな乗り心地が共存した1台」辻本尚希(L-Breath Bike)

ボッテキアのフラッグシップモデルだけあって、しっかりとした剛性感を感じます。そのためパワーをかけた分だけ加速してくれると言った印象で、トップスピードまで難なく加速していくことが出来ますね。ダンシングで踏んでいってもバイクが左右に振られること無く、かっちりと止まってくれるのでパワーを逃すこと無く推進力に変えてくれるといった印象です。ハイレベルなライダーの踏力にはしっかりと応えてくれるバイクですね。

「フラッグシップらしい高い反応性とマイルドな乗り心地が共存した1台」辻本尚希(L-Breath Bike)「フラッグシップらしい高い反応性とマイルドな乗り心地が共存した1台」辻本尚希(L-Breath Bike) フロント三角は大きくスローピングしていますし、リア三角は小さめに設計されていますので、後輪の追従性も高くレーシングバイクらしい反応性と走りを見せてくれますね。またヘッド周りは一般的なハイエンドモデル同様、硬めに出来ています。ただだからといってクイックな操舵感ではなく、少しマイルド目なハンドリングなのが特徴的です。

加えてフレームのトレイル値が長い設計となっているため、扱いやすいバイクの挙動で直進安定性も優れています。コーナリングも安定感があるため安心して車体を倒していけますし、高速巡航するシーンでもバイクがブレずに安定するためペダルに力を入れやすく、スピードが維持しやすくなっています。エンデュランス系バイクにも似たバイクの挙動を見せてくれます。

またフォークが細めのデザインとなっているためか、路面の凹凸などの状況をダイレクトにハンドルに伝えてくれますね。路面状況というのはレースでとっさの判断をする際に必要になるインフォメーションですので重要な性能ですよね。その分マイルドなハンドリングが多少の振動吸収も補っているため、疲労が蓄積するということはなさそうです。

ディスクブレーキも使用可能なフレームとなっていますが、エンド部分の剛性などはやや心配なところです。ですがディスクブレーキの制動力があればバイクの楽しみ方も広がりますし、このバイクのソフトなフィーリングとも相まってマッチすると思います。

使用シーンとしては、クリテリウムなどの加減速の激しいレースよりは、逃げに乗ってハイスピードを維持したまま高速でローテーションを回すようなシチュエーションで活きてくると思います。一定のペースで巡航して走る必要のあるレースではアドバンテージになってくれると思いますね。また剛性は高めですが優しく上質な乗り味ですので、ブルベなど距離を沢山走るハイレベルのライダーの方にもお勧めですね。

ボッテキア EMME4 SUPERLIGHTボッテキア EMME4 SUPERLIGHT (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ボッテキア EMME4 SUPERLIGHT
フレーム:フルモノコックHMカーボン、プレスフィットBB86
フォーク:SuperLightモノコックカーボン
カラー:MATT RED LAB、MATT BLACK/RED
サイズ:44、47、51、54
価 格:
カンパニョーロSUPERRECORD完成車 1,150,000円(税抜)
カンパニョーロPOTENZA完成車 590,000円(税抜)
シマノDURA-ACE完成車 1,000,000円(税抜)
シマノULTEGRA Di2完成車 790,000円(税抜)
シマノULTEGRA完成車 620,000円(税抜)
フレームセット 460,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

杉山友則(Bicicletta IL CUORE)杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。

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辻本尚希(L-Breath Bike)辻本尚希(L-Breath Bike) 辻本尚希(L-Breath Bike)

管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。

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ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:ベルスミス

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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